とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 8-352

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匿名ユーザー

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ゴッパァァン!!と水の檻に突撃してきた一方通行が無理やり御坂妹を檻から引きづり出した。
「しっかりしろ!こンなことまでさせといて死ンだら承知しねェぞ!!」
一方通行の腕の中で御坂妹はぐったりと身体の力が抜け、辛そうに息をしている。
どうやら意識を失ったようだ。
(これ以上は無理だァ…どうにかしてここから逃げださねェと…ッ!?)
しかし、状況は一方通行に思考の時間を与えてくれはしない。
御坂妹を抱える一方通行の前にミーナ=シンクジェリが躍り出た。
「キミがその娘を抱えるその瞬間を待ってたよ!!」
満面の笑みで叫ぶミーナは手にしているガラス玉をあらぬ方向に投げ捨てた。
パッキィィィン!!とかん高い音と共にガラス玉が破裂し、大量の水があふれ出す。
「物に触れている時に触れている部分に『反射』は適応してないんでしょう?じゃないと、何にも触れることが出来ないんだから」
と、溢れ出した大量の水がミーナの指先に集まり始めた。
圧縮するように小さくなっていく水の塊は直径、3センチくらいになるところでその動きを止める。
「つまりは、”その娘もろとも貫いてしまえばキミの『反射』は効果をなさない”!!」
ミーナが水の塊を集めている指先を腕を動かすことで横薙ぎに振るった。
シュン、と空を切る音。
一方通行は『それ』を上に飛ぶことで回避する。
瞬間、ズバァァ!!と屋上の一部が両断された。
水の塊から音速を軽く超えるマッハ4程の速度で射出された水がコンクリートを両断したのだ。
(ウォーターカッターかァ!?)
「さっきも言ったのにもう忘れたの?空中じゃ身動きが取れないんだよ!!」
上を見上げ、ミーナは照準を上へと飛んだ一方通行に向ける。
再び、腕を横薙ぎに振るった。ダイヤモンドすらも切り裂く水の刃が途中にあるものすべてを切断しながら一方通行へと迫る。
「クッソがァァァァ!!!」
一方通行は空中で無理やり身体を回転させ、ミーナに背中を見せた。
その背中にウォーターカッターが激突する。
直後。
ズバァァァン!!と一方通行の能力によりベクトルを変換させられたウォーターカッターは真下にあるビルを一刀両断した。
あまりにも綺麗に切断されたビルは倒壊することもなく、こつぜんとそこに立つ。
ミーナの水のベクトルを操れない一方通行の意図してのことではなかったが、そのことは一方通行にとって好都合だった。
(今、ここでやるべきことは一つだけ。御坂妹(コイツ)を連れてどこか安全な場所に移動することだァ。だったら…)
一方通行は着地する時のエネルギーを使い、全力で屋上の地面を踏み潰す。


ゴガァァァァァン!!という轟音とともに今までの戦闘でボロボロになったビルはダメージに耐えきれずに倒壊した。


「なっ!?」
ミーナが驚きに思わず声を出した。
足場の崩れていく中、一方通行がベクトル変化を使い大きく跳んだのを見た彼女はうっすらと微笑みを顔に浮かばせる。
「さすがは第一位。やってくれるね」
その呟きは、ビル倒壊の音にかき消された。





<11:30 AM>


ゴバン!!と辺り一面瓦礫だらけの場所で小さな爆発が起こった。
飛んでいく瓦礫が音を立てて地に落ちる。
「いや~障壁作ってなかったらホント死んでたよ」
その爆発の中心にミーナ=シンクジェリは笑いながら立っていた。
その身体には傷一つ、埃一つついていない。
「そう簡単に殺させてはくれないみたいだね」
「…………当たり前だよ。彼にだって僕らと同じように『護るべきもの』がある。」
ひとり言のように呟くミーナの言葉に答える声があった。
「カンダ……死んでなかったんだ?」
「…………勝手に殺されたら困るね。だいたい、君に極力被害が及ばないようにしたのは僕だよ」
「わかってるよ。それにしても、彼にはしてやられたね…まさかビルごと破壊するなんて」
「…………最後のあの瞬間、彼は僕から風の制御をいくつか取り返していたしね」
「取り返す?どうやって…」
「…………僕の操る風の動きを逆算して、だろうね。もっとも、彼のことだろうからそれより凄いことをやっていても不思議ではないけれど」
ふ~ん、と呟きミーナは姿の無い声との会話を続ける。
「やっぱり凄いんだね、彼は。見た限りはただのモヤシだったけど…」
「…………彼の力だけでなく、『護るべきもの』があったことも大きいさ」
その声を聞いたミーナは息を吐き、適当な瓦礫の山を選んで腰かける。
「『護るべきもの』ね……ボクはもうなくしちゃった」
青い瞳に悲しみの色をにじませながら呟くミーナはどこか遠くを見るように天を仰ぐ。
「…………キミがなくしたと思っているだけで『護るべきもの』をキミはいくつも持っていると思うよ?」
「気休めだね。今、ボクが護るものなんて自分の意地ぐらいしかないじゃないか」
フフッ、と笑うミーナは指を自らの肉に食い込ませた。
「ボクの魔法名は『Credo952』」
呟くように話すミーナの表情はお世辞にも明るいとは言えないものだった。
「その意は『我がすべては約束のためだけに』さ。この魔法名については確かカンダには話したよね?」
「…………聞いているよ。聞いていなければ僕は魔術師なんていう意味のわからない者と手を組んではいない」
「そっか。そう言えば、クリスは今、何をしてるんだっけ?」
「…………確か『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』を担当してる」
「『幻想殺し(イマジンブレイカ―)』か……ボクたちローマ正教徒としては存在を許してはいけないもの。神を冒涜する罪深き罪人」
「…………神やらなにやら、何度聞いても僕は理解できないよ」
それでいいのさ、とミーナは風に髪をあおられながら目を細めた。
「キミ達『科学』がボクたち『魔術』なんてものを理解する必要はない。無理に理解しようとすればそれだけでなにか問題が起きるだけだから」
その言葉に、姿なき声は押し黙る。
「本来、相容れるものではないボクらがこうして共闘してることがすでに驚きさ。いくら目的は同じでも所詮は水と油。まじわることは出来やしないんだ」
どこか、悲しげな表情をするミーナは何もかもを諦めたような顔でそう言った。
と、ミーナが腰かけていた場所から尻を上げる。
「さぁて、無駄話は終わり。さっさとボクらの本来の仕事に戻ろう」
その表情は先ほどのような曇りはなく、いつものような明るい表情だった。
「……………じゃあ、確認しよう。次に僕らが狙う標的は?」
トッ、とミーナの隣に緑色の髪をした少年が降り立つ。
その無表情な顔はどこか寂しそうな色が浮かんでいるように見えた。
「10万3000冊の魔導書を管理する魔導書図書館。『禁書目録(インデックス)』の回収」
何度も同じことを言ってきたかのように事務的な言葉。
しかし、言葉のように簡単に口にできるほど、この仕事は楽なものではない。
それが分かっていながらも二人の少年少女は止まらない。
その理由は、ただの目的のためか、ただの意地のためか。
はたまた、まったく別のもののためか。
そうして、二人の男女はその場から姿を消した。



<11:25 AM>

「御坂が……死んだ?俺の…せいで?」
上条と土御門はいったん、相手の視界から逃れるために適当に選んだ自動車の後ろに隠れていた。
相手は姿が見えないと攻撃できない、という土御門の考えによるものだが同時に相手の姿も見えなくなってしまうものなので、苦肉の策と言えよう。
周りからは絶えず少女の足音と爆発音が聞こえていたが上条には聞こえてはいない。
聞いたことがあまりにも衝撃的だったから。
「んなことがあるか!?テメェみたいなのに御坂がやられるわけが……ッ!?」
「大声をだすなかみやんッ!!場所がばれる」
思わず大声を出す上条の口を土御門が塞ぐ。
相手の場所も分からず、現在居る場所すらもよくわからない状態で敵と戦うのはあまりにも無謀だ。
「冷静になれかみやん……今、ここでお前がキレても状況は何一つとして改善しない」
「……クソッ、」
そう吐き捨てて上条は拳を握りしめる。
冷静になど、なれるはずがなかった。
「私、みたいなのに『御坂美琴』は殺せない?そんなことがどうしてわかんのよ?」
知った声で、知った姿をした少女は上条に追い打ちをかけるように口を動かす。
「御坂美琴。ひたすらな努力で学園都市に七人しかいない超能力者(LEVEL.5)の第三位にまで登りつめた常盤台中学のエリートお嬢様。その功績や人格により多くの人間に慕われ、その
の力になりたいという人間も多くいる。そんな彼女を殺すのは確かに簡単じゃないわね」
だからこそよ、と少女は前置きし笑いながらこう言った。
「アッハハハ…おっかしいな~その人望そのものが弱点になるってことをどうしてアンタは気付かないのよ」
ドクン、と自分の胸が大きく高鳴るのを上条は感じた。
自分が考えてしまったことに身体が大きく反応する。
自分を殺そうとした少女は最初、どのようにして自分を殺そうとした?
「まさか、お前……」
呆然と呟く上条は混乱する頭で思う。
そこから考えられることなんて”一つしかないじゃないか”。
ジジジ…、とカメラのシャッターをきるような音がした。
「やっと気付きましたの?これだから頭の悪い殿方は嫌いですわ」
その声に上条は心臓が止まるかと思った。




さっきまでとは違った鈴のような少女の声。
その声に上条は聞き覚えがある。
ジジジ…、と音がした。
「とうまがそんなんだから、短髪は死んじゃったんだよ?」
この声にだって上条には聞き覚えがある。
「わかってるんですかー上条ちゃん」「かみやんのせいで一人の女の子が死んでしまったんやで~」「知ってましたか?御坂さんって結構友達思いなんですよ」「そうなんだよね~印象
と違って子供っぽいし、一緒に話してて楽しいとってもいい先輩なんですよ~」「そんな罪もない女の子が、君のようなクズのせいで死んでしまったんだよ?」「他の誰でもありません
。上条当麻、あなたのせいです」「どう責任をとるおつもりですか?とミサカは首を傾げながら大事なことを確認します」「そんなことわかりきって……」
ジジジジジジジジ!と音がした。
聞こえてくる様々な声と一緒に自分の荒い息遣いが上条の耳に届く。
極限にまで開かれた上条の瞳は今にも瞳孔が開いてしまいそうだった。
(落ちつけよ、上条当麻。まだあいつが御坂を本当に殺したかなんてわからねえじゃねえか……)
胸を手で押さえ過呼吸になりそうな息遣いを正常に戻しながら、上条は心を落ち着かせていく。
(御坂を信じろ。俺が死ななかったんだから、御坂が死ぬわけがねえ。あいつだったら簡単に偽物だって気付くに決まってる)
ひぅ、と息を吐く。
いまだに止まらない多くの声を聞きながらそれが偽物だということを認識する。
異常な息遣いは徐々に元に戻り、心臓の鼓動も治まっていき、


「おーすっビリビリ!こんなとこでなにやってんだ?」


こんな言葉を聞いてしまった。
心のどこかにヒビが入ったような気がした。
ジジジ…、と音がした。
「長々と話したけどさ、あの御坂美琴に近づくのにはこの言葉だけで充分だったわよ」
また美琴の声に変ったことも、すかした話し声も上条の耳には届いていない。
(コイツ、今………誰の声で言いやがった?)
唇が渇き、気持ちの悪い汗が身体を伝う。
「アンタにも見せてやりたかったな……」
興奮でもしているのか、震えた声を出しながら少女は言葉を紡ぐ。
その声は地下駐車場に反響し、強制的に上条の鼓膜を震わせるものだった。
「『上条当麻』の姿で『御坂美琴』に銃を突きつけた時の、あの絶望の表情をさッ!!!」




ブツン、と上条の中で何かが音を立てて”キレた”。
意識をせずに上条は立ち上がり、食いしばった歯からギリギリと音を鳴らして、
「お、…あ、……」
「……ッ!?待て、かみやん!!」
「…てめえェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」
土御門の静止の声を無視し、上条は知り合いの姿をした少女のもとへと疾走した。
さっきから大声を出している相手の場所などわざわざ確認するまでもない。
相手との距離は五十メートルもなかった。
「気が短すぎんのよ、あんたは。それだから簡単につけこまれる」
自動車の陰から躍り出た上条を見て、『御坂美琴』の姿をする少女は薄い笑みを浮かべる。
血で赤く染まる腕を上げ、右手を上条に向けた。その動作に合わせ、上条も右手を少女に向けた。
同時、ドッガァァァァァン!!という轟音が鳴り響く。
「なんでだよ!?どうして御坂なんだ!?あいつは……魔術とはなんの関係もねえじゃねえか!!」
目の前で起こる爆風を握りつぶすようにして消し去って、上条は突っ走った。
対し、少女は決して余裕を崩さず、右手を上条の真上にある天井に向けた。
「なんで?どうして?クク、ハハハハ!!そんなの決まってるじゃない。アンタのそばに『御坂美琴』が居たからよ!!」
上条の真上にあった天井が爆発した。衝撃に耐えきることのできないコンクリートは形を崩し、上条が走ってきた場所に落石のように激突する。
ちょうど、上条を追いかけた土御門の道を塞ぐように。
「く…ダメだかみやん!そいつと戦うべきは今じゃない!!」
土御門の声も、冷静を失っている上条には届かない。
拳を握りしめて、歯を食いしばりながら、上条は少女の懐へと跳びこんだ。
「そんなこと聞いちゃいねえんだよ!!俺が聞きたいのは”どうして御坂を殺す必要があったのか”ってことだ!!」
いつもと違う怒りに身を任せた、大きく振りかぶって、全体重を乗せた、全力の重い拳。
しかし、それは同時に直線的で避けやすい攻撃だった。
少女は少しだけ胸を反らすことで完全に拳を受け流し、ニヤリと笑う。
「邪魔だから♪」
ゴン!!と上条の背中に鈍器で殴られたような衝撃が走った。
それは少女に殴られたからと気付いた時には肺から空気を吐き出し、受け流された力も作用して上条は身体を地面に転がされていた。




「避けないと…死ぬわよ」
底冷えするような言葉を受け、上条は後ろを見ずに右手だけを向けた。
バキン!!と何かが砕けるような音と共に、発生した爆炎は消失する。
「ふっざけんな!!人の命をなんだと思ってやがる!」
倒れたままの身体で、手を軸に足を振るようにして上条は少女の足を払った。
わっ、と小さな声をあげて少女は地面に尻もちをつく。
「一発で済むと思うなよ」
相手に態勢を立て直す暇など与えずに、上条は素早く立ち上がって拳を振りかぶる。
その拳をそのまま振りおろそうとして、
ジジジ…、と音がした。
「私も殺すの?とうま」
目の前にいる者の姿を見て、上条の拳が止まる。
「イ、ン…デック、ス……?」
時間にして、数秒の動揺だっただろう。
しかし、その数秒を少女は見逃さない。
ジジジ…、と音がした。
「当麻はホントに…優しいねッ!!」
再び、美琴の姿になった少女は足を最大まで折り曲げ、上条の顎目掛けて一気に伸ばす。
ゴン!!と少女のスラッと伸びる綺麗な足がアッパーカットぎみに上条の顎に直撃した。
「ゴ…、オ……」
脳を直接揺さぶられ、ふらふらと後ろに数歩下がる。
そんな上条に少女は容赦なく蹴りを突き刺した。
鳩尾に入る蹴りを受けて、上条は後ろに吹き飛ばされる。
「その優しいところに、私は惚れたんだから」
地面を数メートル転がって止まった上条を、少女の右手がとらえる。
上条の背中にサーチライトのような赤い光線が一筋突き刺さり、すぐにその色は緑へと変色した。
少女の魔術術式が発動する。




ゴッガァァァァン!!という轟音が響いた。
しかし、最初は上条を狙ったものであっただろう魔術は上条に傷を負わせることなかった。
真横から。
唐突に跳び出してきた土御門が、少女の右腕を蹴りあげて、狙いを外したからだ。
「チィ…しつこい!!」
「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう」
交差する二つの視線。
狙いを外された魔術が天井を破壊し、瓦礫が落下した。
少女は後ろに跳び、土御門と上条はそれとは反対に避ける。
地面へと激突した瓦礫が、音と共に砂煙を巻きあげた。
「離せ土御門!!」
そんな中、上条は土御門によって地面に叩き伏せられていた。
ジタバタと暴れる上条に土御門は静かに、はっきりと言う。
「さっきから何度も言っているぞ、かみやん。”冷静になれ”」
なにを言ってるんだコイツは、と上条は思った。
「御坂が殺されたってのに、冷静でなんかいられるかよッ!!」
「知ったことか…そんなことに気を取られていたら勝てるものにも勝てやしない」
ゾッとするような言葉。
まるで仮面でもつけているかのように表情を変えない土御門に上条は怒りを爆発させた。
「『そんなもの』だと?ナメた口利いてんじゃねえぞ!!お前にだって、大事なもんの一つや二つあるだろうが!!」
「大事なもの?そりゃたくさんあるさ。だけど、それの中の一つが殺されましたって言われて、そこまで我を忘れるのはおかしくないかにゃ~?」
どこまでも、どこまでも冷徹な言葉。
上条はブルブルと身体を震わせて、歯を食いしばった。
一つだけ、思ってしまったことがある。
―――お前だって…舞夏を失ってしまえばその気持ちが…――
「そんな考えは…おかしいだろうがよぉ……」
そんなことを思ってしまったという罪悪感と、やはり土御門の言う事ことは認められないという思いから、上条は絞り出すように言葉を紡いだ。
そんな上条を見ても、土御門は眉ひとつ動かさずに口を開く。




「いいや、おかしくない」
よく考えてみろかみやん、とひとり言のように呟いて、


「かみやんにとっての大事なものってのは、そんなに信用できないものなのか?」


トッ、と上条の頬に何か生温かいものがあたった感触がした。それは、上条の頬を伝って地面に落ちる。
落ちたものを見てみると、それは鉄臭い、粘着性のある赤黒い液体だった。
「……え?」
「相手の言葉を鵜呑(うの)みにするな。そいつがお前の大事なものを壊したって証拠がどこにある?」
ポツポツ、と赤黒い液体が地面に少しずつ落ちていく。
「諦めの悪いかみやんらしくもない。『もう死んでしまった』と諦めてるのはお前だ」
赤黒く、鉄臭く、そして生温かい液体の斑点が地面に増えていく。
「お、前……魔術を使ったのか?」
「あ?……ああ、ちょっと相手の動きを止めるために少しな。でも、今はそんなこと”どうでもいい”」
自分の身体など気にするな、と土御門は言外に語る。
拘束を解き、ゆっくりと立ち上がりながら土御門は真剣な眼差しで上条を見て、
「もう一度聞くぞ?”お前の大事なものってのは、そんなに信用できないものなのか?”」
顔から、腕から、身体から血を流しながら、そう言った。
上条は気付く。
なぜ、土御門が魔術を使ったのかを。
思えば、どうしてこんなスキだらけの自分達を敵は攻撃してこなかったのかと。
上条は気付く。
美琴のことを信用せずに、勝手に相手の言葉に惑わされて、一人で暴走していたのは自分ではないかと。
思えば、先ほどから土御門が上条に言っていたのはひとえに『冷静になれ』という言葉だったではないかと。
気付いて、思う。
「………わりぃ…土御門」
「今度ジュースでもおごってくれたら許してやるにゃー」
ああ、おごらせてもらうぞ、と言いながら上条は腰を上げた。
その目には静かな闘志が浮かんでいる。



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