とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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匿名ユーザー

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「はーい。補習の授業を始めるですー。今日は先生がプリントを作ってきたのですー」
 そう言いながら生徒にプリントを配っていくのは、短いピンクの髪をした身長百三十五センチの教師、月詠小萌だ。
 十二歳、つまり小学六年生の子供にしか見えないのだが、列記とした大人である。
 巷では生きる学園七不思議、等と言われているらしい。
 七不思議になった理由は単純で、どうみてもロリコンさんが好みそうな外見にしか見えないから、だ。
「なあなあ」
「何だにゃー? 土御門さんに何か話でもあるのかにゃー?」
 小萌先生がプリントを配り始めた直後、話し始めたものがいた。
 片方は青髪ピアス。外見はその名の通りで、三大テノールもびっくりの野太い男ヴォイスを出す。
 片方は金髪にグラサンと、如何にも『不良』といった感じの青年だった。名前を、土御門元春という。
 にゃーにゃー言っているが、彼の身長は百八十センチだという事を言っておく。男の娘ではない。
「はいそこー? 補習ぐらいはちゃんと受けるのですよー?」
 小萌先生が二人に軽く注意をする。
 だが二人は気にせず、
「どうよ最近? 彼女とか、出来たん?」
「何度も言わせるんじゃないにゃー。オレは舞夏一直線なんだにゃー」
「相変わらずお前は義妹一直線なんやなー……。ああ、小萌センセー最高や」
 物騒な会話をしていた。
「…………うっ」


 誰かの嗚咽が聞こえた。しかも少女の。


 クラスの全員が驚いて小萌先生のほうをみる。
 そこには、
「あらー? 小萌先生がお泣きに……」
 クラス全員の頭の中で、『小萌先生が泣いた→犯人は誰だ→そういえばさっき小萌先生が誰かを注意していた→青髪ピアスと土御門だった気がする→ならばそいつらが犯人だ』という式が三秒で出来上がった。
 クラス全員が(二人除く)鈍器を握る。どうしてそんなものを持っているのかが不思議だ。
「……逃げますか、土御門?」
「望む所だぜい」
 そうは言ったものの、ここは割かし高い場所に位置する教室で、しかも脱出口は教室前方と後方にある扉のみ。
 脱出口は怒ったクラスメイトに封鎖されていた。
 当然、怒り狂ったクラスメイトから逃げられる筈も無く、教室内に愉快な悲鳴が響いた。



「ったく……」
 土御門達がどうなったかはさておき。
 一部の馬鹿共を除き、今日は休日だ。
 二百三十万いるうちの八割以上が学生のこの学園都市では、休日は殆どの人が休みになる。
 常盤台中学に通う御坂美琴は、自動販売機の前にいた。常盤台中学といえば、学園都市でも五本の指に入るといわれている御嬢様学校だ。
 灰色のプリーツスカートに半袖のブラウスにサマーセーター。何の変哲も無い中学校生徒の格好をしている。まあ、彼女の通っている中学校は何の変哲もないことはないのだが。
 御嬢様学校に通っているので頭も良く、更に彼女は能力者で溢れるこの学園都市でも七人しかいない『超能力者(レベルファイブ)』なので、補習等とは無縁だ。
 御嬢様御嬢様といっても、彼女を見たら御淑やかなイメージが崩れるだろう。
「ここの自販機って何時来ても壊れてるわね……、っと!」
 そういいながら、回し蹴りを自販機に決める美琴。
 パンツが見えるかもとか言うやからもいるかもしれないが、美琴はスカートの下に短パンを装着しているので何ら問題は無い。
 御嬢様なら、普通に硬貨を入れて買うべきだが、美琴はそういったことを全く気にしない。
 と、そこに、


「お姉さま~っ!」


 突如として、其処まで何も無かった空間に人が現れた。
 それは少女の形をしており、また美琴とはサイズ違いの同じ服を着ていた。その人物は美琴に抱きつこうと手を広げていたのだが、美琴が数歩横に移動した事により地面に打ち付けられてしまった。
「く、黒子っ!? どうしてここにっ!?」
「うふふ。わたくしは、お姉さまの行く所なら何処へでもぐべはっ!?」
 黒子、といわれたその少女は、起き上がりながら言葉を言っている最中に美琴から回し蹴りを貰い、また地面に打ち付けられた。
 茶髪のツインテールに、AAという小さい胸いやすいません嘘です許してくださいってば。
 これからの成長に期待できる胸をしている。
 本名は白井黒子。白黒と呼んではいけない。
 黒子は『風紀委員(ジャッジメント)』という学生組織に入っている。
 おもな仕事は基本的の校内の治安維持だが、校外の治安維持活動もしている。黒子はおもに後者を仕事にしている。
 ここまで聞くと割りといい子に思える。
 だが、黒子は顔面の汚れを手で払いながらこう言い放った。
「さあ、お姉さま~? 今日は休日なんだから黒子と水入らずどぶはっ!?」
 本日二回目の美琴による回し蹴り直撃である。
 この黒子という少女、美琴の事を『お姉さま』と呼び、慕っているのだ。
 慕っているだけならまだいい。
 黒子の場合、既に『百合』という領域にまで足を踏み入れてしまっているのだ。
 それ故、たまに行き過ぎる。いや、常時行き過ぎてる。
「はあ……。ま、いいわ。しょうがないから今日一日あんたと付き合ってあげる」
 ここの『今日一日』というのがミソで、これをはずすと告白したことになるから要注意だ。
「本当ですの!? じゃあ、早速買い物に行くんですの!」
 この返事に対し、思わず間の抜けた表情をする美琴。御嬢様とは思えない。
「……今日は変な要求をしないのね。珍しい」
「失敬なっ! わたくしだって淑女ですのよ? 買い物だって嗜みますわっ!」
 少し意味が分からないが、美琴は適当に頷いた。
 ともあれ、ショッピングだ。
(ゲコ太の服とかあるかな……?)
 ゲコ太というのは、とあるカエルの隣に住んでいるおじさんカエルだ。乗り物に弱く、ゲコゲコしてしまうというキャラ設定らしい。
 所謂少女趣味という奴だ。
「お姉さま~? またゲコ太の事とかを考えているんですの?」
「なっ……!? そ、そそそそんな事無いわよ!?わ、私だって普通の服を着るわよ!?」
 明らかに上擦った声で答える美琴。嘘だということがバレバレだ。
「んふふふふ……」
「な、何よ気色悪い……」
 黒子が変な笑みを浮かべる。御嬢様とは思えない。
「ま、いいですわ。ささ、行きましょうお姉さま」
「は? あ、うん……」
 黒子は美琴の手を握る。
 その瞬間、二人の姿が消えた。
 黒子の能力は大能力(レベルフォー)の『空間移動(テレポート)』。
 三次元的空間を無視して物質を転移出来る能力だが、三次元から十一次元への特殊変換時に計算をするため、脳に多大な負担が掛かってしまうのだが、そこは常盤台に通っているだけはある、ということだろう。
 ともかく、黒子と美琴は『空間移動』により、早々とこの場から消え去った。



 二人が消えたので、この空間は蹴られた哀れな自販機がぽつんとおいてある侘しい場所になってしまった。
 と、そこに、
「ここが今日の実験場か……?」
 白い髪に紅い眼、そして柄の悪い目つきをした男がやってきた。
 彼の名は『一方通行(アクセラレータ)』。学園都市に七人しかいない『超能力者(レベルファイブ)』の中でも頂点に立つ第一位(さいきょう)だ。
 能力名も『一方通行』といい、力のベクトルを自由自在に操る能力を持つ。
「お待たせしました、とミサカは謝罪の言葉を述べます」
 一方通行とほぼ同時に、『御坂美琴』が現れた。
 容姿、身につけているものは先程ここにいた御坂美琴と殆ど同じだ。違うことといえば、頭につけているゴーグルとスカートの下に短パンを履いていないということだろう。
「待たせンなよ、クソが。で? 今回で何回目になるンだ?」
 といっても、一方通行は大して待っていないのだが。
 一方通行の挑発的な言葉に対し、
「はい。今回で五千六百十八回目です、とミサカは冷静に答えます」
 感情のこもっていない声で答える『御坂美琴』。
 彼らが言っているのは、『絶対能力進化(レベル6シフト)』という計画のことだ。
 そして、御坂美琴に良く似た少女の正体は、
欠陥電気(レディオノイズ)、ねェ?『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』とかいう機械野郎に自分の命運を弄ばされて満足かい?」
「構いません、とミサカは言います。元々要らなくなった私達を再利用する為の計画ですから、とミサカは事実を述べます」
 元々は『量産能力者(レディオノイズ)計画』にて開発された彼女達。
 偶発的に生まれる超能力者を確実に生み出す、という趣旨の実験だったのだが、生み出された御坂美琴の『妹達(シスターズ)』は御坂美琴(オリジナル)の一%にも及ばない欠陥品だった為、実験は失敗。
 生み出してしまった二万体にも及ぶ『妹達』をどうしようかというところに飛び込んできたのが、この 『絶対能力進化』という計画である。
 『二万のシチュエーションで、二万のレディオノイズを殺害する』といった内容で、目的は一方通行を『絶対能力者(レベル6)』という超能力者の上へと進化させることだ。
 今回が、一万回目の実験。シチュエーションは、『人が使う場所での戦闘』、だ。
「さァて、今回は何をして楽しませてくれるのかな? 哀れな子羊ちゃンよォ!」
 この言葉を合図に、戦闘の火蓋は落とされた。


 また、とある場所では。


「痛っ! ……落ちちゃった……。でも、魔術師から逃げないと……!」
 あるマンションの物干し竿に、白い修道服に身を包んだ少女が落ちた。
 だが、気にするものは誰一人としていない。
 その物干し竿が付属している部屋には、誰も住んでいないからだ。
「大丈夫。『歩く教会』の強度は絶対なんだから」
 少女はその身を奮い起こし、屋根の上へと飛ぶ。



「さて、準備は終わったな」
 窓のないビルの一室に存在している、『人間』アレイスター。学園都市における最高権力者だ。そして彼は、男にも女にも聖人にも囚人にも子供にも老人にも見えた。簡単に言えば、見るものによって数十、いや数百、数千もの姿に見えることになる。
 尤も、彼が最高権力者であるということを知っている人間は少ないのだが。そして、この普通の手段では進入不可能なこのビルに入ることを許可された人間は、殆どいないのだが。
 その四角いスペースの真ん中にある、円筒形の生命維持装置の中に彼はいた。
 『人間』アレイスターは、赤い液体で満たされたその装置の中に、逆さまに浮かんでいた。その赤い液体は、彼の体の細胞の一つ一つに干渉していく。
 その装置と彼の周囲は、眩い光で埋め尽くされていた。
 だが、この部屋には『照明機器』と呼ばれるものが存在しない。
 しかし、この部屋は光で溢れている。
 原因は、四方の壁に隙間なく取り付けられているモニターにあった。そのモニターの映像を鮮明にするため、モニター自身が光っているのだ。
 そして、その映像には学園都市の様子が捉えられていた。
「それにしても、我ながら狂った事をしたものだ」
 『人間』アレイスターは、一日前にとある魔術を行使した。
 勿論彼が行使したのではない。彼は『考え出した』だけだ。その魔術を行使したものは、今はここにはいない。
 エイワスというのが、その者の名だ。
 彼はある事情により封印されている。
 『人間』アレイスターがとある魔術を行使した事を知っているものは、この世界の中でアレイスターとエイワスのみだ。
 狂った事、というのはとある魔術を行使した事だろう。

 あるモニターでは、白い髪に紅い瞳を持った少年と、茶色の短髪で常盤台中学の制服を着た少女が激突していた。分は明らかに少年の方にあった。
 あるモニターでは、白い修道服を着た少女が二人の追っ手から逃げ惑っていた。打ち落とされるのは時間の問題だろう。
 あるモニターでは、黒いツンツン頭の少年がアレイスターと全く同じ形の生命維持装置の中に入れられていた。中を満たす液体はアレイスターのものより濃い。そして逆さまではなく、頭の部分が機械で覆われていた。

「さ、私は私の仕事をするか」
『人間』アレイスターは、何かを操作した。そして、何かが動く音がする。
『なんでしょうか』
 部屋に、女のものと思われる声が響く。
「『座標移動(ムーブポイント)』か? 頼みたいことがある」
『どうせろくなのじゃないんでしょ?』
 『座標移動』、と呼ばれた彼女は溜め息を漏らした。
 結標淡希というのが彼女の名前だった。
 彼女の能力は、ある座標にあるものを任意の座標に移動させる事ができる。アレイスターがいる場所には扉や窓といわれるものがないので、彼女の能力は大変重宝している。
 本当は彼女自身がこちら側に来てくれれば手っ取り早いのだが、今はこのモニターの映像を見られるわけにも行かないし、彼女は現在は自分自身にはその能力を行使できない。
 昔能力が暴発したせいだ。彼女は現在それがトラウマになっている。
 尤も、彼女はトラウマを乗り越えるのだが、今の彼女はまだ苦しめられている。
「これから私が指定する座標にあるものを、ある人物に届けていただきたい」
『分かりました。ある人物とは?』
『座標移動』は殆ど無機質な声で言う。
 彼女は近々反乱を起こす。仕方ないと言えば仕方ないか、と『人間』アレイスターは考える。


「学園都市第一位だ」


『……ッ!?』
 『座標移動』の、驚愕と恐怖を交えた声が聞こえた。無理もないだろう。今第一位といえば、全盛期のころの『一方通行』だ。恐怖の念を抱かないものが異常だ。
「そう臆するな。君には『モノ』を届けてもらうだけ。第一位の手元にいきなり『モノ』が現れるように仕向けてくれればいい」
『……分かりました。では早く座標を』
 無駄話をするのもいいのだが、そうすると都合が悪い。
 よって、アレイスターは座標を暗号すら使わずに伝えた。
「変な気は起こさないで頂きたい。君は一刻も早く第一位のもとへ『モノ』を届けてくれ」
『座標移動』からの、返事はなかった。
「さて、これが終わったら後は観察だけだ」
『人間』アレイスターは、ポツリと、そう呟いた。
 彼の口元に浮かんでいるのは、笑みだった。喜怒哀楽全ての感情に当てはまらない、説明不能の笑み。
 その笑みが絶える事は、なかった。

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