とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 8-420

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匿名ユーザー

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土御門は、まず最初にこのような図を書いた。

                           妹達
                ―――――――――――――――――――――
               │                               |
     浜         │                              |        妹
     面         |        妹達     インデックス      |        達
               |        打ち止め   滝壺           |       
               |        妹達                    |
               |                               |
               |                               |
               |                               |
                ―――――――――――――――――――――
                           妹達

※ 線が凸凹なのは仕様です…ご了承下さい。ってかいらねぇかorz


「とりあえず、こんな感じだにゃー」
どこからともなく取り出した紙に、ペンで図を書き終わった土御門が言った。
「この図で、大体は理解できると思うが…その上で説明させてもらう」
特に誰も発言しないので、土御門が話しを始めた。
「まず、線の説明だが。分かっていると思うが、とある建物を表している」
「だから、その建物ってどこにあってどんなものなんだよ」
「それは教えるわけにはいかない。だが、インデックスも匿うことになってるんだ。窓のないビルを3段くらいグレードダウンさせたもの、と考えれば大差ない」
土御門の言う窓のないビルとは、学園都市総括理事長が…『存在』している建物のことだ。
「…」
それだけの言葉で、上条は言いくるめられる。
「そこにインデックスたちを匿う。中にいる妹達(シスターズ)は6人だ」
いつのまにか、『インデックス』を匿うことになっている。
「外にいる妹達(シスターズ)と浜面は、警備に当たってもらう。異変があれば、即時報告させてもらう」
…妹達(シスターズ)はともかく、あの浜面は警備できるのだろうか。何か特殊な感じはするが、やはり所詮ただの無能力者(レベル0)だし…と、上条は少し浜面の心配をするのだが、土御門は浜面のことなど心配していないらしい。そのまま話を続けた。
「中の打ち止め(ラストオーダー)と妹達(シスターズ)については、先ほど説明したとおりだ。インデックスは、妹達(シスターズ)たちから状況を教えてもらい、魔術面からの対策を練ってもらう。…基本仕事はなしになると思うがな」
インデックスを少し見ながらいう土御門。インデックスは特に気にしない。
「滝壺は、妹達(シスターズ)や打ち止め(ラストオーダー)の補助。なぜか能力者の能力が使いやすいそうだから、能力追跡(AIMストーカー)を使ってもらう。反動はなさそうだしな」
やはり対フィアンマ戦のときに滝壺と面識がある面子なので、滝壺の能力使用は少し心配していたのだが、問題なさそうなのでほっとする。
「で、非常事態が起こった場合には、どこかのグループ自体を派遣するか、学園都市側の戦力を送るらしい。
学園都市側の戦力だった場合、警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)が送られるはずだ」
はずだ、と言っているが…インデックスはまったく理解できない単語だし、それ以外の当事者達はここにはいない。
「…とまぁ、今回、グループに所属していない俺達の戦力の仕事の説明はこれで終了したいのだが、いいか?」
特に異存はない。そもそも土御門の話が完璧すぎる。
「…それじゃ、そろそろ妹達(シスターズ)も来るころだしな。御坂美琴、インデックスはいい加減にこの場を離れて、彼女達に話を伝えてくれ」
若干厄介払いに聞こえなくもない…というかそれにしか聞こえない言葉なのだが、美琴とインデックスはすんなり頷いた。なぜか土御門の身体から、そうさせる雰囲気があふれている。
(…やっぱり、何か違うよなぁ…こいつもちゃんとした『プロ』だし、それ以上のものも感じさせられる)
上条はそんなことを考えながら、去っていく少女二人の背中をなんとなく見つめていた。


「…で?」
「で?って…何のことだ、カミやん?」
上条が発した突然の言葉に、土御門が不思議そうな顔をする。
「とぼけんなよ。あの二人を追い出したんだから…こみいった話でもするつもりだろ?」
少々口ごもりながら言う上条。
「なんかカミやんもこっちの世界に慣れてきちゃったかにゃー?」
苦笑しながら言う土御門。
「?特にドロドロした話は無いように思えますが」
神裂が言う。だが、あの学園都市のことだ。やはり何を考えているのか、想像つくはずがない。ましてや魔術サイドの神裂には。
「簡単に言えば、今回の反乱因子戦の作戦には、ちょっといろいろと裏があるってことぜよ」
「ハッ、大層なこと言いやがって。どうせ本当の裏は俺らには教えるつもりはねェンだろォが」
一方通行(アクセラレータ)が鼻で笑いながら言う。
「だろうな。まぁ、俺は伝えられたこと、全て話すつもりでいるが」
そう言って、土御門はまた話し始めた。




「さっきまでの話は、聞いての通り『外野』の連中についてだ。今度は『内野』…実際に殴りあう、俺らについての作戦を話す」
流石にまじめ口調で話す土御門。
「まず、しなければならないことだが…当然、反乱因子の打倒。これを最優先に動く」
「今更そんなことは良い。さっさと話を飛ばせ」
一方通行(アクセラレータ)がつまらなさそうに言う。
「そういうわけにもいかなくてな。まぁ、適当に聞き流してもらってかまわない。続けるぞ」
どうせ誰の意見も聞きつけるつもりはないくせに、周りの人間を見渡す土御門。
「それで、反乱因子打倒のために、それぞれのグループに役割を与える」
「またか。っつっても、ただ単に敵を倒せば良い、って事じゃないんだよな?」
上条が呆れ半分で聞く。
「そんなに単純じゃない。まず、反乱因子打倒、という一つの項目を、四つの項目に分けて考える」
土御門が上条を真正面から捕らえる。
「まず、カミやんのグループ、Aにやってもらう項目。反乱因子の分散だ」
戦闘において、敵勢力の分散は定石だろう。
だが、それだからこそ上条は意見する。
「おい、俺らのグループに、そんな役割押し付けられても…出来るか、わからねぇぞ?」
上条は今まで数々の戦場を乗り越えてきたわけだが…今回のような、裏で行われていることに首を突っ込んだ覚えはない。ただ純粋に敵を倒してきただけだ。
そう考えると、こんな役割をまっとう出来るのは…アニェーゼ部隊しかいないように思える。そして、肝心のアニェーゼたちは…言っちゃ悪いが、正直あまり戦力になりそうにない。
そういうことで、自分のグループには不適切なもんだと上条は考えたわけだが、
「大丈夫だ、カミやん。そこら辺は、全て『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が解決してくれる」
「…はぁ?何で俺の右手が?」
土御門が上条の右手に話を振ってきた。
幻想殺し(イマジンブレイカー)。
その右手に宿る、謎のチカラ。
今まで、数々の修羅場を乗り越えさせてくれた、上条の唯一のとりえ、なのだが。
敵勢力の分散、なんてものに使えるなんて思えない。
「いいや、そうじゃない。カミやんのその右手に、あっちが勝手に群がってくるだろ、って話だ」
まるで上条の思考が読めているかのように言う土御門。
「レベルが上がれば上がるほど、カミやんの右手は脅威だ。そして、例え絶対能力者(レベル6)でも、単独でカミやんを突破できるかどうか…ってことで、カミやんのグループには自然と敵が集うはず。役割はまっとうだ」


「待て!お前の説明は理解できたが、それだったらもう少し有能な人材が必要じゃねぇか!!?」
理解できたは良いが、そうしたらさらに理解してしまう問題。
「だから、大丈夫だってカミやん。全ては幻想殺し(イマジンブレイカー)が解決してくれる」
「本日二度目だよなぁそれ。そして、それには限度ってものがある」
流石に、上条一人で絶対能力者(レベル6)二人は無理だ。瞬殺だ。
「そこら辺も上に考えがあるから、こんな無茶苦茶な作戦を立ててるんだと思うぞ。カミやんのその右手――――幻想殺し(イマジンブレイカー)を、そう簡単に手放すとも考えられないしな」
そう言われてしまえば、納得するほかない。
「ってことで、Aグループは、敵勢力の分散、および打倒に徹してもらう。まぁ、前者はカミやんが勝手にやってくれちゃうだろうから、ようは相手をフルボッコにしちゃえば良いだけの話だ」
「フルボッコってなあ…こっちがやられる側だと思うぞ」
上条はげんなりしながら言ったが、その言い草だと諦めがついているように感じられる。
「オイ、テメェを殺すのはこの俺、ッてェ決まってンだからな。勝手に死にやがったら百倍増しで殺す」
一方通行(アクセラレータ)から暖かい声援を送られた上条。
…もしかしたら、明日自分は墓も立てられずにどこかの塵になってるのでは?と、少々本気で思ってしまう上条だった。
「…って、どこもこみいった話なんてねぇじゃねぇか」
上条が、ふと突っ込む。いや、一方通行(アクセラレータ)の発言はちょっとアレなのだが。
「だって、あの超能力者(レベル5)が居たらいろいろと反発してくるからー。聞いてるだけでもうカミやんを殺したくなってきちゃうぜぃ。それでもいいってんなら、呼び戻すが良い」
わけの分からないことを言う土御門。日本語としてもおかしい気がしないでもない。
「その点については、私も同意ですね。出来ればあの二人は話に関わらないほうが、やりやすいかと」
神裂も土御門に同調する。妙に上条をちらちら見てるのが気になるが。
「だなァ。メンドイ事は好きじゃねェ」
なんか一方通行(アクセラレータ)も賛同してしまっている。
そして、特にあの二人がいてもらわなきゃ困る事態でもないので、上条はとりあえず回りの意見に合わせることにした。というか、合わせるしかないように思えた。
「…ま、まぁ…お前らがそういうんなら、それでも」
よく事態は理解できないが、何か言ったら上条に火の粉(なんて生易しいものじゃない気がする)が降りかかりそうなので、ここは無難にそういって話を終わらせる上条。
「理解したんなら、それで良い」
なんか上から目線なのが気に入らないが、反発する理由も無いので上条は反応しなかった。
「じゃ、次は一方通行(アクセラレータ)のグループ、Bについてだ」




「なんか、厄介払いみたいだったわよね、さっきの」
隣を歩いているインデックスに、美琴は言った。
「うん。でも、私は仕方ないかも。完全記憶能力者だし、魔術サイドだし」
インデックスが、特に考えなく答えた。
「でも、それじゃあの…露出度満点の奴は?魔術サイド、っていう方なんでしょ?」
おそらく美琴が言っているのは、神裂のことだろう。本人が聞いたら、一瞬で『救われぬ者に救いの手を(Salvere000) 』と言い放つだろう。
「神裂火織、のこと?多分あの人は後で記憶をいじられると思うよ」
インデックスが、本当にあっさり…あっさり言った。
「…記憶、を?」
美琴が、思わず、という表情で聞き返す。
「うん。そっちじゃあんまりやらないことかもしれないけど、それぐらい日常茶飯事かも」
これも、あまり興味なさそうにいうインデックス。
自身の内に煮込みあがる怒りを思わずインデックスにぶつけるところだった美琴だが、思いとどまってインデックスに聞く。
「それだったら、あんたがいたって良いじゃない」
「別にいなくても良いんだよ。それに、私の記憶をいじるのは、かなり面倒だから」
やはり、美琴の質問を即答するインデックス。
その言葉の意味は、完全記憶能力者だから、禁書目録(インデックス)だから…という、二つの意味があるのだろう。改めてこの少女の異様な様を見せ付けられる美琴。
「…」
学園都市も、かなり裏世界に浸っていると思っていたが、インデックスたちの世界も同じくらい浸かっている…そう美琴は思った。
そして、その両者が互いに衝突試合、そのどちらかが勝ったとしても…あまり良い未来は想像できない。そう思ってしまう。
(…って、何考えてんだか…なんか、私らしくないなぁ)
はぁ、と美琴はため息をつく。インデックスが訝しげに見てくるが、美琴はスルーする。
(…このごろ、こんなのが多い気がする…いや、多い。私の内に…何かもう一つの存在があって、そいつの考えが私に反映されているみたいに)
と、そこまで考えて、『それ自体が【そいつ】の考えでは?』とか思ってしまう美琴。簡単に言えば、軽い錯乱状態に陥りそうな状況だ。
「ねぇ、大丈夫?短髪、なんか気分悪そうかも」
その言葉を聞いてさらに気分が悪くなる美琴なのだが、食って掛かる気もない。
本当に、この頃はこんなのが多いのだ。いきなり『学園都市に未来はあるのか』とか『この世界が少しずつ、だが確実にずれ始めている』とか、そんなことを考え始めてしまう。
自分の内に存在する、もう一つの存在によって。
美琴自身、その考えは持っている。しかし、断固否定している。ありえるはずが無い、と決め付けているからだ。

「ありえる、って考えてしまえば、簡単な話なのにねぇ…人間って、不便な生き物ね」

ビクン!と、美琴の身体が痙攣した。
今の声…確実に聞こえた、謎の声。まるで…
自分の内に存在する、もう一つの存在の声。
(…ダメだ。本当にもう、そんな考えしか浮かばなくなってる…ッ!!)
その綺麗な茶色の髪を、華奢な両手でかきむしる美琴。
ふと気づけば、インデックスは隣にいなかった。おそらく、様子がおかしい美琴のことを考えて先に行ったのだろう。本人は厚意のつもりだろうが、美琴にとってはただ心細くなってしまうだけだった。
「…は、早く追いかけなきゃ…」
思わず声に出して言う美琴。そして、その場から駆け足で去っていった。


「でェ?俺たちは上条の後ろについて、隙を見て反乱因子どもを殺せ、ッてかァ?」
一方通行(アクセラレータ)が、土御門を睨みながら言った。
「ああ。戦力的にもグループBは優秀だから、力は足りなくても質があるグループAとくっつければ、それなりの戦果を挙げられるだろう」
「そうじゃねェ。なンで俺が上条の援護役なンてしなきゃならねェッ!?」
どうやら、話の方向はそれらしい。
「まぁまぁ。そういきがるなよ一方通行(アクセラレータ)。たまにはこういう仕事も良いだろ?」
「仕事じゃねェだろォが」
珍しく一方通行(アクセラレータ)が突っ込んだのにも関わらず、土御門はスルーして話を進める。
「そういうことで、グループBの勝利条件は『迅速な反乱因子の制圧』。具体的には、カミやん率いるグループAに気を取られている反乱因子を後ろから叩く、ってことだ」
「いや、待て土御門。そんな作戦立てたら、一方通行(アクセラレータ)が拗ねて俺のことを攻撃しかねないと思うんだけど」
「流石にそれは無いと思うぜカミやん。あの一方通行(アクセラレータ)も、そこまで子供じゃないだろう」
この二人にそんなことを言われては、もはや黙るしかない一方通行(アクセラレータ)。
…かと思われたが、一方通行(アクセラレータ)はすぐさま反撃した。
「知らねェよンなもン。俺はそンな作戦に乗ンねェぞ」
断固拒否する一方通行(アクセラレータ)。
…マジで拗ねた子供みたいだな、とか上条は思ったが、口にする勇気は持ち合わせていない。
「良いのか一方通行(アクセラレータ)?グループAを支持しなければ、あの超能力者(レベル5)は死ぬかもしれないぞ?」
あの超能力者(レベル5)とは、おそらく美琴のことだろう。軍覇がいきなり話に出てくるとは考えにくい。
「アア?別にンな野郎に興味ねェよ。何が言いてェ」
土御門は一方通行(アクセラレータ)にガン見されながらも、普通に話を続ける。
「いや、御坂美琴が死ねば、妹達(シスターズ)や打ち止め(ラストオーダー)はどうなっちまうのかな、って」
一瞬、その言葉に一方通行(アクセラレータ)は驚きの表情を見せた。
だが、すぐさまポーカーフェイスになり、反論する。
「どうにもならねェだろ。別に元となった人間が死ねば、クローンは死ななければならない、なンて法則はどこにもねェ」
「確かに法則は無いが、ミサカネットワークが御坂美琴の力によって支えられているものだとすれば?」
「…何?」
一方通行(アクセラレータ)が聞き返す。
「ミサカネットワークが死ねば、妹達(シスターズ)はただのレベル2程度の能力者だ。しかもその存在が公にさらされれば、学園都市の評判はガタ落ちする。そうなる前に、学園都市ならば妹達(シスターズ)を殺そうとするとは考えられないか?」
土御門が、独断で言った。
一方通行(アクセラレータ)は少し考え、こう言う。
「ミサカネットワークが、御坂美琴の力によって支えられてる、って仮説の根拠は?」
「ない。だが、DNAレベルで同じ人間だ。出来ていなくとも、やろうと思えばできるんじゃないか?」
そういえば、あのガキがそんなことを言ってたな――――ふとそんなことを思い出す一方通行(アクセラレータ)。
「どっちにしろ、この作戦に乗らなければ、お前の学園都市での評判は落ちるぞ?それに、お前が協力したくない理由は、ただの感情論だ。そんなちっぽけなものにお前は左右されるのか?」
そこにさらに追い討ちを仕掛ける土御門。
その言葉で、あの学園都市最強の能力者の表情が揺らぐ。
「…チッ」
そう舌打ちし、一方通行(アクセラレータ)は目を閉じて上を向いた。
「承諾してもらえたか?」
「…仕方ねェだろ」
それだけの返事に、土御門は満足そうな笑みを浮かべた。
(…コイツの交渉術には注意した方がよさそうだな…)
(そういえば、以前私も土御門の口車に乗せられて『あんなこと』をやってしまいましたね…)
そんな時、外野の二人は妙に客観的に土御門を分析していた。


「ってことで、次はねーちんのグループ、Cぜよ」
土御門が、一方通行(アクセラレータ)から目を離して言った。
「ねーちんのグループは、かなり戦力が高い。ねーちんの戦力は言うまでもなし、海原の馬鹿ヤロウは勝手に力をつけやがって、一歩間違えればねーちんさえも倒せるほどの魔術師になった。他に天草式の連中もなかなかの戦力になるだろう。もしかしたら、グループBだけで絶対能力者(レベル6)を一人打倒できるかもな」
「…それで、何を課そうというのですか?」
神裂が、不審気に土御門を見つめる。
「それに、かなり実践的な奴が集まってるから、レベルの高い項目を遂行してもらいたい。ってことで、やってもらいたい項目は『反乱因子の戦力の分析、それに見合ったグループの配置、他のグループへの助太刀、反乱因子の打倒』だ」
「…かなり無理があると思うのですが」
神裂が、無表情に言う。というか、絶対無理があると思う、と上条は考える。
「大丈夫だと思うぞ。ねーちんは世界で20人といない聖人だし、海原は魔道書の原典を二冊も所持している。
そのほかのメンバーも天草式で構成されてるから、ねーちんとの協力作業が出来るだろう。ほら、これくらいのことぐらい出来るように思えないか?」
「あなたの口車に乗せられる気はありません。そもそも、課せられた事項に他のグループが干渉している時点で、他のグループと連絡を取る必要が出てきます。どうやって取れ、とあなたは言うつもりですか?」
土御門のかなり説得力のある台詞をあっさり返し、今度は攻めに入る神裂。
「魔術を使えばいいだけだ。グループAはアニェーゼ部隊、グループBは天草式、グループDは俺と建宮。今言った奴らと連絡を取れる魔術を発動すれば良いだろ?」
しかし、それもやはりあっさりと返す土御門。
神裂は少し考え、こう言った。
「…いいでしょう、通信方法についてはあなたに従います。ですが、実際にそんなことをしながら、反乱因子の分析や戦闘ができるものでしょうか?」
「できるだろう。相手は自分たちの的が魔術を使ってくることを知らない。そこにねーちんたちが魔術で殴りこみに行けば、動揺して隙も出来るはずだ。そこを叩けば、意外に簡単に終わるかもだぞ」
本格的に反論できなくなっていく神裂。いい加減諦めればいいのに、と上条は思う。
「し、しかし、相手が科学サイドにしか分からないような技などを使ってきた場合に、どう対処しろと?」
「とりあえずはその場しのぎをして俺たちに伝える。そしたら俺たちのほうがなんとかする」
もう、神裂にあとがあるようには思えない。
そこに、やはり先ほどと同じく土御門が追い討ちをかける。
「そもそも、何で引き受けたくない?ねーちんが引き受けなかったら、他のグループがこの重要任務を引き受けることになる。それでも良いのか?」
救われぬ者に救いの手を(Salvere000) 。神裂が名乗っている魔法名だ。
基本的に他者を傷つけたくはない神裂の性分からすれば、こう言われては反論できない。
今まで反発していたのは、自分のグループの構成員たちに危険が及ぶ、という思考があったからだろう。
だが、神裂はようやく重い頭を縦に振った。
「…分かりました、引き受けましょう」
「流石はねーちん」
茶化すように言う土御門。
「ですが、危険な状況になれば、問答無用で土御門、あなたの応援を要請します。いいですね?」
「まっ、それくらいならいいぜぃ」
あっさりと引き受ける土御門。
「で、俺のグループ、Dはだな。『反乱因子の分析、打倒。および他のグループの同行の掌握、戦況の掌握。そのときの状況に見合った最善の策の実行』だな」
「…」
土御門以外の全員が無言になった。
「…おい、土御門。それは…」
「大丈夫大丈夫。いっちゃなんだが、正直今の俺はねーちんを倒せるくらいだし、他のメンバーも優秀優秀。これくらいやんないと割に合わないぜよ」
いつの間にかいつもの口調に戻る土御門。本人にとって、もう話し合いは終了したことになっているらしい。
「…まァ、コイツがそう言うンなら好きにさせればいいだろ」
一方通行(アクセラレータ)が、半分投げやりに言う。
「ですね。勝手にやって勝手に自滅する土御門も見ものです」
「ちなみに、そんな風になる気はないから安心していいぜぃ」
土御門がそういい、なんか妙な雰囲気で話し合いは終了…したらしい。なんかいろいろ腑に落ちねぇな…と上条は思った。


「…で、何やってたんだお前ら」
これは浜面が、唐突にいなくなって唐突に現れてきた上条たちに聞いた言葉だ。
まぁ、当然の質問だろう。
それに上条は、
「何って…知りたいのか?」
「は?」
「ただの無能力者(レベル0)のお前が…これを知ったらどうなるのか、分かった上で聞いてるのか??」
「え…?いや、話が理解できないけど?なんか知ってて当たり前、みたいな調子で言われる言葉のひとつも理解できねぇんだけど」
「…なら、聞くな。聞かない方が身のためだ」
「…わ、分かった…」
そんな二人の会話を、馬鹿馬鹿しそうに見つめていた一方通行(アクセラレータ)に、突然少女が飛びついた。
「飛びついた、なンて生易しいモンじゃねェぞこれェ!?クソがッ、離れろッ!?」
「んじゃーミサカに内緒で何をやっていたのか教えてー、ってミサカはミサカはあなたの首を少し絞めつついってみる」
「…喧嘩売ってんのかテメェ…ぶっ殺すぞ」
「ミサカを殺したら、あなたの能力は失われるよ♪ってミサカはミサカは愉快にいってみる」
半分以上本気で言われた、一方通行(アクセラレータ)の『ぶっ殺すぞ』を、あっさり返して見せる打ち止め(ラストオーダー)。
そんな光景を、土御門はうらやましそうに見つめる。
「…やっぱし一方通行(アクセラレータ)もカミやん病にかかってるぜよ…俺も一発…いや、百発くらいカミやんに殴られてこよ…」
「思考回路がかなりおかしいと思うのですが土御門。あなたにはそんな趣味があったのですか?」
「別に俺はMではないが、もちろんのこと高校生男子として健全な趣味は持ち合わせてるぜぃ」
「…理解できないです…いえ、だからって説明しないでください汚れます私にそのような知識を詰め込もうとしないでください私は神聖なる信徒のままでいたいんです土御門あなたのように堕落しようとは思いません」
…帰ってきても、馬鹿な話しかしない一同。良く言えば平和、悪く言えば馬鹿だ。
と、そんな時。

「あれ?とうま、短髪はー?」
突然、インデックスの声が上条の耳に響いた。
浜面だけではなく、滝壺のこともあしらっていた上条はそれを一時中断し、後ろを振り返る。
そこには、不思議そうに首をかしげているインデックスが突っ立っていた。
「…短髪、って美琴のことだよな。てか、お前と一緒だったじゃねぇか。どうしたんだよ?」
ちゃんとインデックスの質問には答えず、上条は逆にインデックスに聞く。
「わかんない。なんか気分悪そうだったから、おトイレかなー、って思って先にしすたーずって人たちのところに行ったんだけど、質問攻めにされてどう答えて良いのか分からなかったからとりあえず戻ってきたんだよ」
インデックスは完全記憶能力の持ち主だが、こと現代科学については疎い、なんてレベルの話ではない。
そんなインデックスが科学ワード満載の質問まみれにされれば、助けを求めてもどこも不思議ではない。
問題は、そこではない。
「気分が悪そうだった?あの美琴が??」
本人がそこにいれば、一億ボルトくらいの電撃は流すであろう言葉を発する上条。
「うん…あ、でも、気分悪そうというか…なんか、考え事してたような気もするかも」
「考え事?あの美琴が??」
やっぱりその場に美琴がいれば大変なことになりそうな言葉を発する上条なのだが、それは本気で言っている言葉だった。
彼女が、気分を悪そうにしているところなんて想像できない。強いて言えば、後輩の黒子に何かやられたときくらいだろう。それくらい、彼女は前向きに生きているように見える。
その彼女が、考え事ときた。
上条は、一度美琴のそういう場面に関わったときがある。
そのときの彼女は、本当に深刻な問題を、本気で考えていた。生と死、どちらをとるか…そんなことさえも考えるほどに。

また、同じくらいの問題が起こっているのではないだろうか。


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