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「どうした!超能力者か!?」
「何なんだあいつは……」
ワゴン車の運転席で、建物の中で、それぞれ言葉を吐く浜面とショチトル。
運転席に座る浜面は垣根帝督が視界に入っておらず、突然の攻撃に混乱している。
一方ショチトルは垣根の存在は認めたようだが、それが学園都市第二位の男だとは気づいていないらしい。
つまりは唯一絹旗最愛だけが現状の危機を正しく理解していることになる。
「どうした!超能力者か!?」
「何なんだあいつは……」
ワゴン車の運転席で、建物の中で、それぞれ言葉を吐く浜面とショチトル。
運転席に座る浜面は垣根帝督が視界に入っておらず、突然の攻撃に混乱している。
一方ショチトルは垣根の存在は認めたようだが、それが学園都市第二位の男だとは気づいていないらしい。
つまりは唯一絹旗最愛だけが現状の危機を正しく理解していることになる。
だが――
理解しているからといって、現状を好転させられるかと問われれば答えは否であった。
理解しているからといって、現状を好転させられるかと問われれば答えは否であった。
(超無理ですよ……勝てる訳がない。学園都市第二位と、レベル5と戦って勝てる見込みなんて超有りません。…………無論、だからと言って逃げられる訳もないですが。車に乗って建物から出れば、その瞬間光線で車ごと消し飛ばされるのが落ちですから)
打つ手なし。
最初から負けが見えている。
ならばそんな勝負はするだけ野暮だ。
さっさと諦めて、降伏するなり隠れてやりすごすなりして機を待とう。
生き残れればそれでいい。
逆に言えば、自分の生命より優先するものなど何もないのだ。
最初から負けが見えている。
ならばそんな勝負はするだけ野暮だ。
さっさと諦めて、降伏するなり隠れてやりすごすなりして機を待とう。
生き残れればそれでいい。
逆に言えば、自分の生命より優先するものなど何もないのだ。
今までの絹旗最愛だったら、そう考えていただろう。
しかし――
しかし――
(佐天さん…………)
打つ手がなくとも、投了出来ない理由が今の絹旗にはあった。
バタンッ、と絹旗はワゴン車の助手席の扉を『外側から』閉めた。
「お、おい!どういうことだよ絹旗!」
慌てて助手席の窓を開けて叫んでくる浜面に、絹旗は淡々と返す。
「すいません、先程仕留めた狙撃手の仲間の能力者が報復しに追って来たようです。なので浜面は佐天さんを連れて超先に病院へ行って下さい。道なりに10分程超飛ばせば隣街に着きますので。そこからGPS機能でも使えば超すぐに見つかると思います」
「お前はっ!?」
「ちょっとばかしあの能力者を足止めしておきます。別に大した能力者ではありません。私の能力でも超充分対処可能ですから」
誰がどう聞いても強がりにしか聞こえなかった。
遠距離から砲撃を行うような能力に、自分の周囲数センチの窒素を操ることくらいしか出来ない絹旗が敵う訳がなかった。
それでも、絹旗は戦うことを決意した。
「だから浜面は何としても佐天さんを病院に送り届けて下さい。絶対に佐天さんを死なせないで下さい」
「お、おい!どういうことだよ絹旗!」
慌てて助手席の窓を開けて叫んでくる浜面に、絹旗は淡々と返す。
「すいません、先程仕留めた狙撃手の仲間の能力者が報復しに追って来たようです。なので浜面は佐天さんを連れて超先に病院へ行って下さい。道なりに10分程超飛ばせば隣街に着きますので。そこからGPS機能でも使えば超すぐに見つかると思います」
「お前はっ!?」
「ちょっとばかしあの能力者を足止めしておきます。別に大した能力者ではありません。私の能力でも超充分対処可能ですから」
誰がどう聞いても強がりにしか聞こえなかった。
遠距離から砲撃を行うような能力に、自分の周囲数センチの窒素を操ることくらいしか出来ない絹旗が敵う訳がなかった。
それでも、絹旗は戦うことを決意した。
「だから浜面は何としても佐天さんを病院に送り届けて下さい。絶対に佐天さんを死なせないで下さい」
今までの自分とは違う。
流されるままではない。
敵わないからと引き下がったりはしない。
怖いからと言われるがままにはならない。
自らの意志で以て戦場に赴く。
一人の少女を――守るために。
流されるままではない。
敵わないからと引き下がったりはしない。
怖いからと言われるがままにはならない。
自らの意志で以て戦場に赴く。
一人の少女を――守るために。
絹旗最愛という少女は、この日この瞬間、確かに『変わった』のだ。
「――分かった。約束する。お前の友達は絶対に死なせない」
浜面が、力強く言った。
それは先程電話口で最後に言った言葉と同じ強さを持っていて、
――そして浜面は今まで絹旗が一度も見たことがない顔をしていた。
浜面が、力強く言った。
それは先程電話口で最後に言った言葉と同じ強さを持っていて、
――そして浜面は今まで絹旗が一度も見たことがない顔をしていた。
それを見て、思う。
あぁ、これが本当の浜面なのだと。
あぁ、これが本当の浜面なのだと。
今まで、どうして浜面が何も為してくれないものかと苛立っていたが、それはとんだ御門違いだったようだ。
彼は決して、正義の為に悪と戦う、と言ったありふれた正義の味方ではないのだ。
彼の戦う理由はただ――誰かを守る為。
守るべき誰かがいる時、浜面仕上は誰よりも何よりも強くなる。
それが浜面仕上という男の素質であり、本質。
彼は決して、正義の為に悪と戦う、と言ったありふれた正義の味方ではないのだ。
彼の戦う理由はただ――誰かを守る為。
守るべき誰かがいる時、浜面仕上は誰よりも何よりも強くなる。
それが浜面仕上という男の素質であり、本質。
ならば話は簡単だ。
「浜面、滝壺さんのことどう思います?」
「は?何だよ、こんな時に」
「超可愛いですよね」
「いや突然何言い出すんだよ!」
「否定はしないんですね」
「な……そりゃ、まぁ……」
心なしか頬を赤く染めて答える浜面に、
「ま、今はそれくらいでいいです」
絹旗は満足気に呟いた。
「浜面、滝壺さんのことどう思います?」
「は?何だよ、こんな時に」
「超可愛いですよね」
「いや突然何言い出すんだよ!」
「否定はしないんですね」
「な……そりゃ、まぁ……」
心なしか頬を赤く染めて答える浜面に、
「ま、今はそれくらいでいいです」
絹旗は満足気に呟いた。
(――いずれ、浜面にも体晶のことを話しましょう。きっと浜面なら、滝壺さんのことも救ってくれる。今回佐天さんの為に駆けつけてくれたのと同じ様に。そしてその時も、私は私自身の意志で戦いましょう)
今まで何も変わらなかったのは、誰かに期待して自分が何もしようとしなかったから。
自分から変えようと思えば、浜面と滝壺を引き合わせ、自分が彼らを精一杯サポートすれば――そこに道は開けるはずだ。
今まで何も変わらなかったのは、誰かに期待して自分が何もしようとしなかったから。
自分から変えようと思えば、浜面と滝壺を引き合わせ、自分が彼らを精一杯サポートすれば――そこに道は開けるはずだ。
確かな確信を胸に抱き、絹旗はそれをこの場を乗り切る原動力とする。
「それでは、私が合図したら道路に飛び出して下さい。それと同時に追っ手に攻撃を仕掛けて足止めをしますので、その隙に超全速力で安全圏まで逃げて下さい」
しっかりと紡がれるその言葉は、もう強がりではなかった。
言葉と同様に確かな足取りで絹旗は車を離れようとする。
「それでは、私が合図したら道路に飛び出して下さい。それと同時に追っ手に攻撃を仕掛けて足止めをしますので、その隙に超全速力で安全圏まで逃げて下さい」
しっかりと紡がれるその言葉は、もう強がりではなかった。
言葉と同様に確かな足取りで絹旗は車を離れようとする。
「絹旗」
その背に、浜面が声をかける。
「――死ぬなよ」
短い言葉に、
「超当然です」
同じく短く返して、絹旗は気づく。
もしかしたら、浜面がここに来てくれたのは、泣いている自分のことを助けるためでもあったのかもしれない、と。
そして今も、銃弾を真っ向から受けても死なない自分のことを心配してくれている。
(――なんだか、やたら嬉しくなりますね)
思い、胸がきゅん、となる絹旗。
その背に、浜面が声をかける。
「――死ぬなよ」
短い言葉に、
「超当然です」
同じく短く返して、絹旗は気づく。
もしかしたら、浜面がここに来てくれたのは、泣いている自分のことを助けるためでもあったのかもしれない、と。
そして今も、銃弾を真っ向から受けても死なない自分のことを心配してくれている。
(――なんだか、やたら嬉しくなりますね)
思い、胸がきゅん、となる絹旗。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?きゅん?
(ちょっといや超待つのです絹旗最愛胸きゅんって相手あの浜面ですよ浜面鼻にピアスとかつけちゃうような超馬鹿っぽい奴で実際馬鹿だしルックスも別にイケてる感じでは超ないですしなにより浜面には滝壺さんの方がお似合いですってあぁぁぁぁぁこの言い方じゃまるで私も浜面に超好意を抱いていて慎んで身を引くシュチュみたいになってますぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!)
「ど、どうした!?」
突然頭を抱えてクネクネし始めた絹旗に、声をかけた浜面だったが、
「な、なな、なんでもないですからぁぁぁ!!」
と叫びつつ放たれた絹旗の右ストレートをまともに顔面に受け、
「ぶぉふぉぁあ!!!」
と悲鳴を上げながら運転席におさまる。
その惨状に目を向けずに、絹旗は今度こそワゴン車から離れ、建物の中に入った。
「ど、どうした!?」
突然頭を抱えてクネクネし始めた絹旗に、声をかけた浜面だったが、
「な、なな、なんでもないですからぁぁぁ!!」
と叫びつつ放たれた絹旗の右ストレートをまともに顔面に受け、
「ぶぉふぉぁあ!!!」
と悲鳴を上げながら運転席におさまる。
その惨状に目を向けずに、絹旗は今度こそワゴン車から離れ、建物の中に入った。
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「話は終わったのか?」
建物内に戻ってきた絹旗に、赤いセーラー服を着た少女――ショチトルは問う。
「……ていうかどうした。顔が真っ赤だぞ?」
「いやほんとなんでもないですから!とりあえず保留!超保留にしときます!」
あたふたと叫ぶ絹旗。
「――まぁ、足手まといにだけはなるなよ」
そう言うショチトルは、大剣――マクアフティルを地面に突き立て、当然のように真っ直ぐ垣根のいる方向を睨んでいた。
「……一応言っておきますけど、浜面と一緒に車で逃げて下さったっていいんですよ?」
「それはこっちの台詞だ、大馬鹿野郎」
にべなく切り捨てるショチトル。
それを聞いて、やれやれですね、と絹旗は僅かに苦笑する。
「それで、あの男は何者なんだ?お前は何か知っているようだったが」
「ええ、私の組織のリーダーの不始末でやってきてしまった疫病神です。学園都市第二位、『未元物質』の垣根帝督。実力じゃ二人がかりでもまるで敵いやしませんよ」
「……どうするつもりだ」
あっけからんとした絹旗の敗北宣言に、ショチトルは怪訝な声を上げるが、絹旗は臆しない。
「力で負けるなら策を練るまでです。簡単なことですよ、何も超巨大兵器を相手にするわけじゃありません。クェンサー達に比べれば、超楽なミッションです」
「……クェンサー?」
「一度見ればハマること間違いなしの、おすすめC級映画の主人公ですよ。という訳で、作戦会議といきましょう。お互いの能力のネタばらしをして、そこから活路を見出していきましょうか」
彼方の垣根を見据え、絹旗は不敵に笑った。
「話は終わったのか?」
建物内に戻ってきた絹旗に、赤いセーラー服を着た少女――ショチトルは問う。
「……ていうかどうした。顔が真っ赤だぞ?」
「いやほんとなんでもないですから!とりあえず保留!超保留にしときます!」
あたふたと叫ぶ絹旗。
「――まぁ、足手まといにだけはなるなよ」
そう言うショチトルは、大剣――マクアフティルを地面に突き立て、当然のように真っ直ぐ垣根のいる方向を睨んでいた。
「……一応言っておきますけど、浜面と一緒に車で逃げて下さったっていいんですよ?」
「それはこっちの台詞だ、大馬鹿野郎」
にべなく切り捨てるショチトル。
それを聞いて、やれやれですね、と絹旗は僅かに苦笑する。
「それで、あの男は何者なんだ?お前は何か知っているようだったが」
「ええ、私の組織のリーダーの不始末でやってきてしまった疫病神です。学園都市第二位、『未元物質』の垣根帝督。実力じゃ二人がかりでもまるで敵いやしませんよ」
「……どうするつもりだ」
あっけからんとした絹旗の敗北宣言に、ショチトルは怪訝な声を上げるが、絹旗は臆しない。
「力で負けるなら策を練るまでです。簡単なことですよ、何も超巨大兵器を相手にするわけじゃありません。クェンサー達に比べれば、超楽なミッションです」
「……クェンサー?」
「一度見ればハマること間違いなしの、おすすめC級映画の主人公ですよ。という訳で、作戦会議といきましょう。お互いの能力のネタばらしをして、そこから活路を見出していきましょうか」
彼方の垣根を見据え、絹旗は不敵に笑った。
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「なかなか出てこねぇな。本当にいるのかよ、情報間違ってたんじゃねぇか?」
垣根帝督は廃棄施設へのランダム攻撃――日光を未元物質に通し、この世のものとは別の法則による回折現象で光線の様に変化させるものだ――を続けながら一人ごちる。
『スクール』の構成員である少年の話では、このあたりに狙撃手を始末した『アイテム』の構成員のうち二人が潜んでいるらしい。
本来の予定では、親船最中の狙撃が成功するにしろ失敗するにしろ、それによって警備が薄くなった素粒子工学研究所から『ピンセット』を強奪することになっていたのだが――狙撃手は親船最中の講演会が始まる前に見つかって殺されてしまい、その結果親船の講演会は何事もなかったように(実際表向きには何もなかったのだが)現在も続いているようで、素粒子工学研究所の警備が薄くなる様子もない。
その上狙撃手という遠距離支援の戦力も失った今、『ピンセット』強奪作戦は延期せざるを得なかった。
そうして暇になってしまった1日を『有効活用』しようとここまでやってきたのだが……
「これで実は中にいませんでしたなんて展開だったら、俺って結構恥ずかしい奴なんじゃ……」
垣根が割と本気で心配し始めたところで変化が起こった。
けたたましいエンジン音とともに、建物の一つからワゴン車が飛び出したのだ。
「やっとか」
呟き、垣根がそちらに光線の照準を合わせようとしたまさにその時。
光線によって建物に空いた穴の一つから、垣根の立っている方向へ向けて何かが飛び込んできた。
「!」
ワゴン車への攻撃を中断し、そちらに意識を向ける垣根。
それは、道路の両脇にいくつも並べられている、事故の衝撃緩衝用の大量の水が詰まった特殊繊維で作られたバルーンだった。
バルーンは垣根に当たることはなく、その少し手前で地面にぶつかった。
(何だ?俺に当てるつもりで失敗したのか?だがそもそも衝撃緩衝用のバルーンなんて当てたって大した威力にはならないだろうに)
そう思う垣根は、しかしすぐにその真意に気づく。
「なかなか出てこねぇな。本当にいるのかよ、情報間違ってたんじゃねぇか?」
垣根帝督は廃棄施設へのランダム攻撃――日光を未元物質に通し、この世のものとは別の法則による回折現象で光線の様に変化させるものだ――を続けながら一人ごちる。
『スクール』の構成員である少年の話では、このあたりに狙撃手を始末した『アイテム』の構成員のうち二人が潜んでいるらしい。
本来の予定では、親船最中の狙撃が成功するにしろ失敗するにしろ、それによって警備が薄くなった素粒子工学研究所から『ピンセット』を強奪することになっていたのだが――狙撃手は親船最中の講演会が始まる前に見つかって殺されてしまい、その結果親船の講演会は何事もなかったように(実際表向きには何もなかったのだが)現在も続いているようで、素粒子工学研究所の警備が薄くなる様子もない。
その上狙撃手という遠距離支援の戦力も失った今、『ピンセット』強奪作戦は延期せざるを得なかった。
そうして暇になってしまった1日を『有効活用』しようとここまでやってきたのだが……
「これで実は中にいませんでしたなんて展開だったら、俺って結構恥ずかしい奴なんじゃ……」
垣根が割と本気で心配し始めたところで変化が起こった。
けたたましいエンジン音とともに、建物の一つからワゴン車が飛び出したのだ。
「やっとか」
呟き、垣根がそちらに光線の照準を合わせようとしたまさにその時。
光線によって建物に空いた穴の一つから、垣根の立っている方向へ向けて何かが飛び込んできた。
「!」
ワゴン車への攻撃を中断し、そちらに意識を向ける垣根。
それは、道路の両脇にいくつも並べられている、事故の衝撃緩衝用の大量の水が詰まった特殊繊維で作られたバルーンだった。
バルーンは垣根に当たることはなく、その少し手前で地面にぶつかった。
(何だ?俺に当てるつもりで失敗したのか?だがそもそも衝撃緩衝用のバルーンなんて当てたって大した威力にはならないだろうに)
そう思う垣根は、しかしすぐにその真意に気づく。
バルーンに、赤いセーラー服を着た少女がしがみついているのを見て。
(能力か何かでこいつを建物から俺のところまで飛ばし、着地の際のクッション代わりにバルーンを使ったってことか……いや、確か情報ではここにいるのは2人。とするとワゴン車の運転手と目の前のこいつで残りは0。射出はこいつ自身の能力か?)
考えている内に、セーラー服の少女――ショチトルはバルーンから飛び降り、危なげなく地面に着地する。
一方でワゴン車は既に車道に出ており、急加速をかけてこの場から離脱しようとしていた。
「……はん、成る程。そういうことか。いいぜ、そのゲーム、乗ってやるよ」
状況から一つの仮説を導き出した垣根は、目の前の少女に対して挑戦的に告げた。
考えている内に、セーラー服の少女――ショチトルはバルーンから飛び降り、危なげなく地面に着地する。
一方でワゴン車は既に車道に出ており、急加速をかけてこの場から離脱しようとしていた。
「……はん、成る程。そういうことか。いいぜ、そのゲーム、乗ってやるよ」
状況から一つの仮説を導き出した垣根は、目の前の少女に対して挑戦的に告げた。
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(絹旗の言ったとおり、こっちの意図に気づいたようだな……)
ゲームに乗ると言った垣根の言葉を聞き、ショチトルは建物内で絹旗と交わした会話を思い出す。
(絹旗の言ったとおり、こっちの意図に気づいたようだな……)
ゲームに乗ると言った垣根の言葉を聞き、ショチトルは建物内で絹旗と交わした会話を思い出す。
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「建物からワゴン車が飛び出し、それを追いかけるのを阻むようにショチトルさんが立ちはだかる……それを見た垣根はどう思うでしょうか?」
「……車の中に何か重要な物質、何としても破壊されてはならないものを積んでいて、戦線から離脱させよとしている、か」
かつて雲海の蛇に乗り、切り札である太陽の蛇を御坂美琴の猛攻から守ろうとした経験を思い出しながらショチトルは言った。
「そうですね、そしてそれはあながち間違っている訳ではありません。確かに佐天さんを死なせる訳にはいきませんから。しかし垣根は、その物資は自分達を不利、ないし私達を有利にする何か、だと推測する筈です。まさか暗部と何の関わりもない女子中学生を逃がそうとしているとは考えないでしょう。……かと言って、無害な少女だから逃がしてくれ、と言っても超信用してはくれないでしょうが」
「……つまりお前はこう言いたいわけか。敢えて私達がワゴン車を守るように立ち振る舞うことで、垣根帝督の本来の目的であろう『アイテム』の構成員――これには私も含まれるんだろうな――その抹殺より、ワゴン車の追跡の優先順位を高くさせる、と」
「ええ、その結果垣根の攻撃は『私達を殺すため』のものから『私達をより短時間で振り払うため』のものに超変わるはず。これだけでも私達の生存率は超上がります」
「だがそれはワゴン車を――つまりは佐天涙子とお前の連れの命をベットする行為だ。垣根帝督が私達を振り払い、ワゴン車に追いついてしまったら、まず間違いなく消される」
「その通りです。しかし、追いつかれなければほぼ間違いなく消されません。ワゴン車が病院、少なくとも隣街まで入ってしまえば、垣根も下手に手は出せなくなるでしょう。学園都市の『表』が気がつくところで能力を使えば、超希少な能力ですしね、ほぼ確実に上層部にマークされ行動に超制限がかかります。『スクール』は今何かを超企てているようです。内容はわかりませんが、それを考えると行動を制限されるのは『スクール』の望むところではないでしょう」
「だが、後日改めてあいつらが『事故』に遭う可能性は?」
「それもないでしょう。日が空けばワゴン車で輸送していた物資の内容を調べる暇も出来ます。そこで、運ばれていたのが物資ではなく中学生の怪我人で暗部と何の関わりもないとわかれば、超放っておくはずです。垣根が『ムカついたから殺す』なんて超破天荒な性格をしていなければですがね……少なくともウチのリーダーより人格者であれば大丈夫でしょうが」
「……私達がまずすべきことはワゴン車が安全圏に脱するまで垣根帝督を引きつけておくこと」
「えぇ、それだけは失敗してはならない超重要案件です。そしてそれが完了したら、フェイズ2に移行します」
「私達自身が垣根帝督から逃れる、と」
「そうです。ワゴン車に追いつけないと分かれば、垣根は『私達を殺すため』の攻撃に切り替え、本来の目的を達成させようとするでしょうからね。五体満足で逃げられれば御の字です。
「建物からワゴン車が飛び出し、それを追いかけるのを阻むようにショチトルさんが立ちはだかる……それを見た垣根はどう思うでしょうか?」
「……車の中に何か重要な物質、何としても破壊されてはならないものを積んでいて、戦線から離脱させよとしている、か」
かつて雲海の蛇に乗り、切り札である太陽の蛇を御坂美琴の猛攻から守ろうとした経験を思い出しながらショチトルは言った。
「そうですね、そしてそれはあながち間違っている訳ではありません。確かに佐天さんを死なせる訳にはいきませんから。しかし垣根は、その物資は自分達を不利、ないし私達を有利にする何か、だと推測する筈です。まさか暗部と何の関わりもない女子中学生を逃がそうとしているとは考えないでしょう。……かと言って、無害な少女だから逃がしてくれ、と言っても超信用してはくれないでしょうが」
「……つまりお前はこう言いたいわけか。敢えて私達がワゴン車を守るように立ち振る舞うことで、垣根帝督の本来の目的であろう『アイテム』の構成員――これには私も含まれるんだろうな――その抹殺より、ワゴン車の追跡の優先順位を高くさせる、と」
「ええ、その結果垣根の攻撃は『私達を殺すため』のものから『私達をより短時間で振り払うため』のものに超変わるはず。これだけでも私達の生存率は超上がります」
「だがそれはワゴン車を――つまりは佐天涙子とお前の連れの命をベットする行為だ。垣根帝督が私達を振り払い、ワゴン車に追いついてしまったら、まず間違いなく消される」
「その通りです。しかし、追いつかれなければほぼ間違いなく消されません。ワゴン車が病院、少なくとも隣街まで入ってしまえば、垣根も下手に手は出せなくなるでしょう。学園都市の『表』が気がつくところで能力を使えば、超希少な能力ですしね、ほぼ確実に上層部にマークされ行動に超制限がかかります。『スクール』は今何かを超企てているようです。内容はわかりませんが、それを考えると行動を制限されるのは『スクール』の望むところではないでしょう」
「だが、後日改めてあいつらが『事故』に遭う可能性は?」
「それもないでしょう。日が空けばワゴン車で輸送していた物資の内容を調べる暇も出来ます。そこで、運ばれていたのが物資ではなく中学生の怪我人で暗部と何の関わりもないとわかれば、超放っておくはずです。垣根が『ムカついたから殺す』なんて超破天荒な性格をしていなければですがね……少なくともウチのリーダーより人格者であれば大丈夫でしょうが」
「……私達がまずすべきことはワゴン車が安全圏に脱するまで垣根帝督を引きつけておくこと」
「えぇ、それだけは失敗してはならない超重要案件です。そしてそれが完了したら、フェイズ2に移行します」
「私達自身が垣根帝督から逃れる、と」
「そうです。ワゴン車に追いつけないと分かれば、垣根は『私達を殺すため』の攻撃に切り替え、本来の目的を達成させようとするでしょうからね。五体満足で逃げられれば御の字です。
まとめると、フェイズ1。垣根からワゴン車を逃がせば私達の勝ち。追いつかれれば垣根の勝ち。
フェイズ2。垣根に殺されずに私達がここから逃げられれば私達の勝ち。私達を殺せれば垣根の勝ち。
フェイズ2。垣根に殺されずに私達がここから逃げられれば私達の勝ち。私達を殺せれば垣根の勝ち。
――これはそういうウォーゲームです」
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ゲームに乗ってきた垣根に向かって、ショチトルはバルーンから飛び降りた勢いを殺さないままに走り出す。
当然このバルーンは、絹旗が建物の中から力任せにぶん投げた物だ。
常人なら地面にバルーンが着地した時の反動で投げ出されるだろうが、かつて米国の戦闘機と渡り合うほどの速力を持った雲海の蛇を操っていたショチトルにとっては造作もない。
ショチトルは眼前の敵を見据え、虚空から大剣――マクアフティルを出現させる。
「機能的な学園都市にしちゃ随分ごてごてした得物だな。本当に斬れんのか?」
「心配するな。今すぐに試させてやる」
余裕の表情で軽口を叩く垣根に、ショチトルはマクアフティルを袈裟に斬りつける。
だが、
ガギィ!と音を立てて、マクアフティルは垣根に届く前に何かに阻まれる。
白い色をした硬質の板のようなものが、忽然と垣根の前に現れたのだ。
「斬れてねぇぞ?」
「……成る程な、これが『未元物質』か」
「はん、知ってたか。俺も有名になったもんだ」
垣根は目の前の板をノックするようにコン、と叩いて得意気に言う。
「こいつは硬度を強化した『未元物質』。対戦車ミサイルぶっ込んだって、壊せやねぇよ。『ここの世界の物理法則』に縛られたものじゃな」
「……そうか、そいつは好都合だ」
「あ?」
「お前の『武器』が強いほど、私にとっては都合がいいのさ」
言って、ショチトルは『自殺術式』を発動した。
ゲームに乗ってきた垣根に向かって、ショチトルはバルーンから飛び降りた勢いを殺さないままに走り出す。
当然このバルーンは、絹旗が建物の中から力任せにぶん投げた物だ。
常人なら地面にバルーンが着地した時の反動で投げ出されるだろうが、かつて米国の戦闘機と渡り合うほどの速力を持った雲海の蛇を操っていたショチトルにとっては造作もない。
ショチトルは眼前の敵を見据え、虚空から大剣――マクアフティルを出現させる。
「機能的な学園都市にしちゃ随分ごてごてした得物だな。本当に斬れんのか?」
「心配するな。今すぐに試させてやる」
余裕の表情で軽口を叩く垣根に、ショチトルはマクアフティルを袈裟に斬りつける。
だが、
ガギィ!と音を立てて、マクアフティルは垣根に届く前に何かに阻まれる。
白い色をした硬質の板のようなものが、忽然と垣根の前に現れたのだ。
「斬れてねぇぞ?」
「……成る程な、これが『未元物質』か」
「はん、知ってたか。俺も有名になったもんだ」
垣根は目の前の板をノックするようにコン、と叩いて得意気に言う。
「こいつは硬度を強化した『未元物質』。対戦車ミサイルぶっ込んだって、壊せやねぇよ。『ここの世界の物理法則』に縛られたものじゃな」
「……そうか、そいつは好都合だ」
「あ?」
「お前の『武器』が強いほど、私にとっては都合がいいのさ」
言って、ショチトルは『自殺術式』を発動した。
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「っ!」
垣根は、目の前に展開された『未元物質』に違和感を感じた。
(何だ?コントロールが……!)
次の瞬間、『未元物質』が垣根の意志を無視し、垣根に向かって突っ込んできた。
「ちっ!」
垣根は中空に球状の『未元物質』を出現させ、それを板状の『未元物質』に高速でぶつけることで軌道をずらそうとする。
だが、
(こっちもか!?)
唐突に球状の『未元物質』のコントロールまでが利かなくなり、垣根に襲いかかってくる。
「んだよそりゃ!」
悪態を吐きながら、垣根は地面に身を転がして二つの『未元物質』から逃れる。
(くそっ!他人の能力に干渉する能力なのか!?)
離れたところで立ち上がると、今度はショチトルに狙いを定める。
(この女が何かやってんのは間違いねぇ。こいつに一発ぶち込めば沈黙する筈だ)
そして、今度は槍状にした『未元物質』を出現させるとショチトルに向かって投擲した。
だが、槍状の『未元物質』はショチトルの数メートル前方で突然停止すると、穂先を180度回転させて垣根の方へ戻ってきた。
(これも駄目か!)
更に板状と球状の『未元物質』のコントロールも操られたままであるらしく、3つの『未元物質』が垣根を襲う。
「くそったれ!」
やむを得ず、垣根は能力の使用を切った。
途端に3つの『未元物質』は跡形もなく消失する。
(自分で消すのは出来るのか……だが)
前方には再びマクアフティルを振り上げるショチトルの姿。
垣根は今度は『未元物質』を出さず、身体を捻ってそれを避ける。
(攻撃も防御も封じられたってか。キツいな、おい!)
「っ!」
垣根は、目の前に展開された『未元物質』に違和感を感じた。
(何だ?コントロールが……!)
次の瞬間、『未元物質』が垣根の意志を無視し、垣根に向かって突っ込んできた。
「ちっ!」
垣根は中空に球状の『未元物質』を出現させ、それを板状の『未元物質』に高速でぶつけることで軌道をずらそうとする。
だが、
(こっちもか!?)
唐突に球状の『未元物質』のコントロールまでが利かなくなり、垣根に襲いかかってくる。
「んだよそりゃ!」
悪態を吐きながら、垣根は地面に身を転がして二つの『未元物質』から逃れる。
(くそっ!他人の能力に干渉する能力なのか!?)
離れたところで立ち上がると、今度はショチトルに狙いを定める。
(この女が何かやってんのは間違いねぇ。こいつに一発ぶち込めば沈黙する筈だ)
そして、今度は槍状にした『未元物質』を出現させるとショチトルに向かって投擲した。
だが、槍状の『未元物質』はショチトルの数メートル前方で突然停止すると、穂先を180度回転させて垣根の方へ戻ってきた。
(これも駄目か!)
更に板状と球状の『未元物質』のコントロールも操られたままであるらしく、3つの『未元物質』が垣根を襲う。
「くそったれ!」
やむを得ず、垣根は能力の使用を切った。
途端に3つの『未元物質』は跡形もなく消失する。
(自分で消すのは出来るのか……だが)
前方には再びマクアフティルを振り上げるショチトルの姿。
垣根は今度は『未元物質』を出さず、身体を捻ってそれを避ける。
(攻撃も防御も封じられたってか。キツいな、おい!)
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(『自殺術式』が利いている……こういう風にも使えるとは、思いもしなかったな)
ショチトルはマクアフティルを振るいながら思う。
(『自殺術式』が利いている……こういう風にも使えるとは、思いもしなかったな)
ショチトルはマクアフティルを振るいながら思う。
作戦会議において、互いの能力の詳細をバラしあった絹旗とショチトル。
無論ショチトルのそれは魔術なのだが、細かいところはごまかして、『空気中に散布した媒介を通して、相手の所持している武器のコントロールを奪う能力』だと説明した。
すると、絹旗がそれに異論を唱えた。
絹旗との戦いにおいてショチトルは絹旗の手にしたコンテナのコントロールを奪ったが、その時絹旗は正確には武器を所持していなかった。
能力を用いて、自分の身体から数ミリのところに浮かせていただけ。
つまりは、『実際に手に持っていた訳ではない』と言うのだ。
そこから絹旗はショチトルの『自殺術式』に一つの仮説を生み出した。
即ち、『自殺術式』は『相手の所持している武器』のコントロールを奪うのではなく、『ショチトルが、相手が所持していると認識している武器』のコントロールを奪う。
絹旗は『自分だけの現実』が何とか、とよく分からないことを言っていたが、成る程『自分の認識に準じる』というのは分からない話ではない。
『自殺術式』の核である『原典』は自分の肉体と融合している。
ならば自分の認識が『原典』の生み出す現象に影響を与えるというのは有り得ない話ではない。
無論ショチトルのそれは魔術なのだが、細かいところはごまかして、『空気中に散布した媒介を通して、相手の所持している武器のコントロールを奪う能力』だと説明した。
すると、絹旗がそれに異論を唱えた。
絹旗との戦いにおいてショチトルは絹旗の手にしたコンテナのコントロールを奪ったが、その時絹旗は正確には武器を所持していなかった。
能力を用いて、自分の身体から数ミリのところに浮かせていただけ。
つまりは、『実際に手に持っていた訳ではない』と言うのだ。
そこから絹旗はショチトルの『自殺術式』に一つの仮説を生み出した。
即ち、『自殺術式』は『相手の所持している武器』のコントロールを奪うのではなく、『ショチトルが、相手が所持していると認識している武器』のコントロールを奪う。
絹旗は『自分だけの現実』が何とか、とよく分からないことを言っていたが、成る程『自分の認識に準じる』というのは分からない話ではない。
『自殺術式』の核である『原典』は自分の肉体と融合している。
ならば自分の認識が『原典』の生み出す現象に影響を与えるというのは有り得ない話ではない。
――そして、そこから生み出された戦術がこれだ。
『未元物質』を垣根帝督の所持する武器だと認識することで、『未元物質』を『自殺術式』の影響下に置く。
単純だが、それ故に強力。
流石に絹旗の操る窒素のように目に見えないものでは認識のしようがないが、目に見える物体で、尚且つ垣根が操っているという前情報があれば、その白い物体を『垣根帝督の所持する武器』と認識することは難しくなかった。
それそのものが超能力の産物ということがあってか、垣根が自分の意志で消失させることまでは阻めないようだが、それでも相手の攻め手を奪えたことは大きい。
実際、垣根は先程から『未元物質』を出すのを止め、マクアフティルを避けることに専念している。
(これならば、いけるかもしれないな……)
マクアフティルを振るい、逃げ場を制限することで、ショチトルは垣根を誘導していく。
そして、
(よし、行け!絹旗!)
垣根が、事前に絹旗と決めていた『所定の位置』に飛び込んだ。
単純だが、それ故に強力。
流石に絹旗の操る窒素のように目に見えないものでは認識のしようがないが、目に見える物体で、尚且つ垣根が操っているという前情報があれば、その白い物体を『垣根帝督の所持する武器』と認識することは難しくなかった。
それそのものが超能力の産物ということがあってか、垣根が自分の意志で消失させることまでは阻めないようだが、それでも相手の攻め手を奪えたことは大きい。
実際、垣根は先程から『未元物質』を出すのを止め、マクアフティルを避けることに専念している。
(これならば、いけるかもしれないな……)
マクアフティルを振るい、逃げ場を制限することで、ショチトルは垣根を誘導していく。
そして、
(よし、行け!絹旗!)
垣根が、事前に絹旗と決めていた『所定の位置』に飛び込んだ。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
(訳わかんねぇぞ、おい!)
心中で毒づき、垣根帝督はショチトルのマクアフティルを避け続ける。
もともと運動神経は良い方であるし、かつての一方通行のように能力に頼り切った戦い方をしないように身体は鍛えている。
加えてショチトルの方がマクアフティルの扱いに不慣れであることから、何とかショチトルの攻撃を避けられている。
だが、避けるだけではどうしようもない。
反撃をしなければ、と思い『未元物質』が乗っ取られているメカニズムを解明しようとしているのだが――
(ぜってぇおかしい。AIM拡散力場に何の干渉も起きてないってのはどういうことだ?能力のコントロールを奪われてるのに、力場に乱れがないってのはありえねぇ……)
一言で言えば、分からない、に尽きる。
『超能力とはまるで別次元の力』を使っているとしか思えない。
(くそ、能力に頼り切りにならないっつったって、全く使えない状況ってのは……いや)
そこで垣根は気づいた。
(こっちのコントロールは奪われていないのか……)
こっちとは、垣根が自分の周囲に漂わせている、視認できないほど微細なサイズの『未元物質』の群れのことだ。
垣根はそれを常時展開し、自身に危機が迫ることがあれば即座に対応出来るようにしている。
第三位の超電磁砲が、電磁波の反射を利用して自分へ向けられた攻撃を探知出来るのと似たようなものだ。
垣根の場合は、更に幾つかの数式を組み込み、自分に向かってくる攻撃に自動で反応して『未元物質』の防壁を作ることが出来るようにしてある。
防壁がかえって邪魔になったり、防壁用の演算能力が負担になるような高速戦闘中以外は、その機能は大抵オンになっている。
とまれ、その極小の『未元物質』のコントロールは奪われていないようだ。
(視認出来るものしか操れねぇのか?…………ん?なんだこりゃ)
極小の『未元物質』にはある程度の分析機能も備わっている。
垣根はそれによって空気中に漂う停滞回線の存在を発見したりもしたのだが――
(空気中に異物が混ざってやがる。それも停滞回線とは違う。これは………!?)
考えている内に目の前に迫ってきていたショチトルに気づき、慌てて回避行動を取る垣根。
だが、
(しまっ――!)
ショチトルの眼前から飛び退いた瞬間、今まさに意識を集中させていた極小の『未元物質』が、攻撃を探知した。
向かって左側。
ショチトルが飛び出してきた建物がある方だ。
辛うじて視線だけ向けると、すぐ目の前に電話ボックスほどの大きさのコンテナが迫っていた。
(まだ中にもう一人いやがったのか!くそ、『間に合わねぇ』!)
それは、コンテナを防げないという意味ではない。
むしろその逆だ。
眼前が白く染まる。
オフにしていなかった自動防御の数式が、『勝手に防壁を作り出してしまった』のだ。
垣根の鼻先に出現した、四畳半の畳を縦にしたのと同じくらいの面積と厚さを持つ『未元物質』の板が、コンテナを阻み、ガァァン!!と大きな音を立てる。
そして、
「クッソぉぉォォォがぁぁァァァァ!!!」
瞬時にコントロールを奪われた『未元物質』が、ゼロ距離から垣根を強襲し、学園都市第二位の能力者である垣根帝督は、避けることも叶わずに、自らの能力の産物である『未元物質』の板によって20メートル程弾き飛ばされた。
(訳わかんねぇぞ、おい!)
心中で毒づき、垣根帝督はショチトルのマクアフティルを避け続ける。
もともと運動神経は良い方であるし、かつての一方通行のように能力に頼り切った戦い方をしないように身体は鍛えている。
加えてショチトルの方がマクアフティルの扱いに不慣れであることから、何とかショチトルの攻撃を避けられている。
だが、避けるだけではどうしようもない。
反撃をしなければ、と思い『未元物質』が乗っ取られているメカニズムを解明しようとしているのだが――
(ぜってぇおかしい。AIM拡散力場に何の干渉も起きてないってのはどういうことだ?能力のコントロールを奪われてるのに、力場に乱れがないってのはありえねぇ……)
一言で言えば、分からない、に尽きる。
『超能力とはまるで別次元の力』を使っているとしか思えない。
(くそ、能力に頼り切りにならないっつったって、全く使えない状況ってのは……いや)
そこで垣根は気づいた。
(こっちのコントロールは奪われていないのか……)
こっちとは、垣根が自分の周囲に漂わせている、視認できないほど微細なサイズの『未元物質』の群れのことだ。
垣根はそれを常時展開し、自身に危機が迫ることがあれば即座に対応出来るようにしている。
第三位の超電磁砲が、電磁波の反射を利用して自分へ向けられた攻撃を探知出来るのと似たようなものだ。
垣根の場合は、更に幾つかの数式を組み込み、自分に向かってくる攻撃に自動で反応して『未元物質』の防壁を作ることが出来るようにしてある。
防壁がかえって邪魔になったり、防壁用の演算能力が負担になるような高速戦闘中以外は、その機能は大抵オンになっている。
とまれ、その極小の『未元物質』のコントロールは奪われていないようだ。
(視認出来るものしか操れねぇのか?…………ん?なんだこりゃ)
極小の『未元物質』にはある程度の分析機能も備わっている。
垣根はそれによって空気中に漂う停滞回線の存在を発見したりもしたのだが――
(空気中に異物が混ざってやがる。それも停滞回線とは違う。これは………!?)
考えている内に目の前に迫ってきていたショチトルに気づき、慌てて回避行動を取る垣根。
だが、
(しまっ――!)
ショチトルの眼前から飛び退いた瞬間、今まさに意識を集中させていた極小の『未元物質』が、攻撃を探知した。
向かって左側。
ショチトルが飛び出してきた建物がある方だ。
辛うじて視線だけ向けると、すぐ目の前に電話ボックスほどの大きさのコンテナが迫っていた。
(まだ中にもう一人いやがったのか!くそ、『間に合わねぇ』!)
それは、コンテナを防げないという意味ではない。
むしろその逆だ。
眼前が白く染まる。
オフにしていなかった自動防御の数式が、『勝手に防壁を作り出してしまった』のだ。
垣根の鼻先に出現した、四畳半の畳を縦にしたのと同じくらいの面積と厚さを持つ『未元物質』の板が、コンテナを阻み、ガァァン!!と大きな音を立てる。
そして、
「クッソぉぉォォォがぁぁァァァァ!!!」
瞬時にコントロールを奪われた『未元物質』が、ゼロ距離から垣根を強襲し、学園都市第二位の能力者である垣根帝督は、避けることも叶わずに、自らの能力の産物である『未元物質』の板によって20メートル程弾き飛ばされた。
♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀♀
はるか後方へ吹き飛ばされる垣根帝督。
それを、絹旗最愛はコンテナを投擲した体勢のまま眺めていた。
はるか後方へ吹き飛ばされる垣根帝督。
それを、絹旗最愛はコンテナを投擲した体勢のまま眺めていた。
初めは『絹旗とショチトルが二人とも出て接近戦を仕掛ける』という作戦を提案したのだが、ショチトルが『今日知り合ったばかりの相手とコンビネーションが上手く行くわけがない、連携の隙を逆に垣根に利用されて自滅するのがオチだ』と反対したため、ショチトルが接近戦、絹旗が後方支援を担当することになった。
そして、この時のショチトルの『自滅』という発言から、絹旗が思いついたのがこれだ。
そして、この時のショチトルの『自滅』という発言から、絹旗が思いついたのがこれだ。
初めは絹旗は動きを見せず、垣根が周囲に気を払う余裕を無くしたところで奇襲的に攻撃を仕掛け、自動防御機能を引き出した上でそれを乗っ取り自滅させる。
結果垣根は自らの強大な力で自分の首を閉めることになる。
自動防御機能が作動しなかったならそのままコンテナで押しつぶしてしまえるから問題はなかったのだが――この様子ならコンテナで攻撃するより余程大きなダメージが見込めることだろう。
結果垣根は自らの強大な力で自分の首を閉めることになる。
自動防御機能が作動しなかったならそのままコンテナで押しつぶしてしまえるから問題はなかったのだが――この様子ならコンテナで攻撃するより余程大きなダメージが見込めることだろう。
「こんなもんですか」
無様に地面に倒れ伏す垣根帝督を見ながら、絹旗は呟いた。
「楽勝ですよ、超能力者」
無様に地面に倒れ伏す垣根帝督を見ながら、絹旗は呟いた。
「楽勝ですよ、超能力者」
――無論、どれだけカッコイイ台詞を吐いたところで、常時パンツ丸見せ状態というビジュアルによって、何もかも台無しになってしまっていたのだが。