6
視覚潰し(ライトメーター)の放った弾は、そのまま一方通行(アクセラレータ)の脳に直撃し、
その瞬間、
一方通行(アクセラレータ)の体が、消滅した。
「…ほう♪楽しませてくれるそうですわねぇ」
視覚潰し(ライトメーター)は、あまりその事実を考えないようにし、次の手を考える。
先ほどの一方通行(アクセラレータ)は、能力を使用できる状況ではなかった。
さらに、一方通行(アクセラレータ)の能力では、あのような演出をすることは出来ない。
ということは、
(…心理掌握(メンタルアウト)、と言いましたっけ?あの女が、一枚噛んでいるようですわね!)
すぐに銃口を鏡子へと変える視覚潰し(ライトメーター)。
だが、
その瞬間、
一方通行(アクセラレータ)の体が、消滅した。
「…ほう♪楽しませてくれるそうですわねぇ」
視覚潰し(ライトメーター)は、あまりその事実を考えないようにし、次の手を考える。
先ほどの一方通行(アクセラレータ)は、能力を使用できる状況ではなかった。
さらに、一方通行(アクセラレータ)の能力では、あのような演出をすることは出来ない。
ということは、
(…心理掌握(メンタルアウト)、と言いましたっけ?あの女が、一枚噛んでいるようですわね!)
すぐに銃口を鏡子へと変える視覚潰し(ライトメーター)。
だが、
「遅いですよ、凄く」
そんな声が、視覚潰し(ライトメーター)のすぐ近くでした。
視覚潰し(ライトメーター)が視線を下に逸らすと、
腰の辺りで海軍用船上槍(フリウリスピア)を構えて姿勢を低くしている、五和が映った。
とっさに下に向けて発砲する視覚潰し(ライトメーター)。
しかし、五和は銃口が自分に向けられようとしている時点で回避行動に移っていたため、五和には当たらない。
(…まずい!?私の能力が、効いていない…!?くっ、また発動すればなんとか――ッ)
楽観的に物事を考えることで、能力使用への障害を生まないようにする視覚潰し(ライトメーター)。
そして、一瞬の後、彼女の能力は再発動された。
視覚潰し(ライトメーター)が視線を下に逸らすと、
腰の辺りで海軍用船上槍(フリウリスピア)を構えて姿勢を低くしている、五和が映った。
とっさに下に向けて発砲する視覚潰し(ライトメーター)。
しかし、五和は銃口が自分に向けられようとしている時点で回避行動に移っていたため、五和には当たらない。
(…まずい!?私の能力が、効いていない…!?くっ、また発動すればなんとか――ッ)
楽観的に物事を考えることで、能力使用への障害を生まないようにする視覚潰し(ライトメーター)。
そして、一瞬の後、彼女の能力は再発動された。
が、
後ろからさっきを感じ、身をかがめ地面に伏す視覚潰し(ライトメーター)。
その次の瞬間、
彼女の、地面に伏した状態の頭の上を、凄い速さで氷と炎が飛んでいった。
「…」
思わず、行動が少し停止してしまう視覚潰し(ライトメーター)。
その先に、何が待ち受けているのかも分かっているのに。
と、そう考えた時には、
彼女の元に、グループBの全メンバーが集っていた。
後ろからさっきを感じ、身をかがめ地面に伏す視覚潰し(ライトメーター)。
その次の瞬間、
彼女の、地面に伏した状態の頭の上を、凄い速さで氷と炎が飛んでいった。
「…」
思わず、行動が少し停止してしまう視覚潰し(ライトメーター)。
その先に、何が待ち受けているのかも分かっているのに。
と、そう考えた時には、
彼女の元に、グループBの全メンバーが集っていた。
その中の一人――――リーダーの一方通行(アクセラレータ)が、まるで死刑宣告を言い放つ裁判官のように視覚潰し(ライトメーター)に告げる。
「まァ、そこらの漫画か何かならここで種明かし、ってェことになるンだろォけどよォ」
その口が、禍々しく曲がる。
「…『まだ』テメェら全員を潰したわけじゃァねェンだ。このまま死ね」
そして、
『死』が宿っている、悪魔の右手を、まるで罪人を救う救世主のように視覚潰し(ライトメーター)へと差し伸べた。
「まァ、そこらの漫画か何かならここで種明かし、ってェことになるンだろォけどよォ」
その口が、禍々しく曲がる。
「…『まだ』テメェら全員を潰したわけじゃァねェンだ。このまま死ね」
そして、
『死』が宿っている、悪魔の右手を、まるで罪人を救う救世主のように視覚潰し(ライトメーター)へと差し伸べた。
7
そして、神裂に向けて発砲した。
彼女の存在は、彼女自身能力やほかの超能力者(レベル5)によって気づかれていないはずである。
それにより放たれた弾と神裂との距離は、実に3M。
どう考えたって、人間に避けることの出来る範囲を超えている。
だから、触覚壊し(センサーブレイク)は神裂が倒れる音とともに一気にほかの連中も殺そう、と考えていたのだが―――――
血飛沫は、上がらない。
それどころか、悲鳴や人の倒れる音さえ聞こえない。
――――いや、それ以上に恐るべきことが、彼女の視覚を伝って脳に伝えられた。
彼女の存在は、彼女自身能力やほかの超能力者(レベル5)によって気づかれていないはずである。
それにより放たれた弾と神裂との距離は、実に3M。
どう考えたって、人間に避けることの出来る範囲を超えている。
だから、触覚壊し(センサーブレイク)は神裂が倒れる音とともに一気にほかの連中も殺そう、と考えていたのだが―――――
血飛沫は、上がらない。
それどころか、悲鳴や人の倒れる音さえ聞こえない。
――――いや、それ以上に恐るべきことが、彼女の視覚を伝って脳に伝えられた。
…一瞬前まで目の前にいた人間全員が、触覚壊し(センサーブレイク)の視覚できる範囲にいない。
…いや、と、触覚壊し(センサーブレイク)は思う。
もしかしたら…、
自分が相手しているのは――――
と、そこまで考えたとき、
もしかしたら…、
自分が相手しているのは――――
と、そこまで考えたとき、
「七閃」
という女の声が聞こえた。
その声の主の居場所を確かめようと、周囲を見回す触覚壊し(センサーブレイク)だが、
その目に映ったのは、
その声の主の居場所を確かめようと、周囲を見回す触覚壊し(センサーブレイク)だが、
その目に映ったのは、
ただ、眼前に迫り来る『死』――――、それだけだった。
「…ふむ?」
神裂火織は、自分の帯刀している日本刀…七転七刀の柄に手を載せて体を緊張させたままの状態で言った。
「…あの、女教皇(プリエステス)?」
その神裂の背後に、しりもちをついたまま起き上がれないでいる対馬が言った。
「何ですか?」
「…あの、できれば私たちにも何が起こったのか、説明をしてほしいのですが…」
私たち、というのは天草式のメンバーのことを言っているのだろうが、海原も何が起こったのかは分かっていない。なぜか余裕綽々の笑みを浮かべているから分かりにくいが。
「ああ、それですか」
あくまで戦闘態勢を崩さず、神裂は言う。
「まず、私のすぐ近くで発砲音がしました。おそらく3M手前程度のところでしょうか?私はそれに気づきました」
いや、誰だって気づくのだろうが…
―――――『普通の人間』なら、気づいた時点でもう手遅れだ。
「しかし、周りに私たち以外の人間は存在しません。事態が理解できなくなった私は、とりあえずあなたたちを抱えて回避行動に移ったまでです」
―――――しかし、神裂は果たして『普通の人間』なのだろうか?
―――――否。
「軽く100M程度はなれたのですが、やはり誰かが存在するようには見えませんでした。しかし、そこは超能力が何か関係しているのだろうと割り切り、攻撃行動に移りました。『わざわざ銃を使わなければいけないほど弱い相手』ならば、この短時間で長距離を異動することは出来ないと思っていましたからね」
―――――神裂は、『普通の人間』なはずがない。
「とりあえず、七閃をやたらめったらに放っただけだったのですが、何回か手ごたえが伝わりましたよ。おそらくまだそう遠くに入ってないはずですから、今から捕獲に行きましょう」
―――――闇に堕ちた『普通の人間』ではなく、神から生まれた『聖人』なのだから。
―――――もともと、彼女が住んでいる世界とほかの人間が住んでいる世界は、根本的に違っている…という、ただそれだけの話。
改めて目の前にたっている『存在』について思い知らされ、今更ながら自分たちの手は神裂には届かないことを、天草式は知った。
神裂火織は、自分の帯刀している日本刀…七転七刀の柄に手を載せて体を緊張させたままの状態で言った。
「…あの、女教皇(プリエステス)?」
その神裂の背後に、しりもちをついたまま起き上がれないでいる対馬が言った。
「何ですか?」
「…あの、できれば私たちにも何が起こったのか、説明をしてほしいのですが…」
私たち、というのは天草式のメンバーのことを言っているのだろうが、海原も何が起こったのかは分かっていない。なぜか余裕綽々の笑みを浮かべているから分かりにくいが。
「ああ、それですか」
あくまで戦闘態勢を崩さず、神裂は言う。
「まず、私のすぐ近くで発砲音がしました。おそらく3M手前程度のところでしょうか?私はそれに気づきました」
いや、誰だって気づくのだろうが…
―――――『普通の人間』なら、気づいた時点でもう手遅れだ。
「しかし、周りに私たち以外の人間は存在しません。事態が理解できなくなった私は、とりあえずあなたたちを抱えて回避行動に移ったまでです」
―――――しかし、神裂は果たして『普通の人間』なのだろうか?
―――――否。
「軽く100M程度はなれたのですが、やはり誰かが存在するようには見えませんでした。しかし、そこは超能力が何か関係しているのだろうと割り切り、攻撃行動に移りました。『わざわざ銃を使わなければいけないほど弱い相手』ならば、この短時間で長距離を異動することは出来ないと思っていましたからね」
―――――神裂は、『普通の人間』なはずがない。
「とりあえず、七閃をやたらめったらに放っただけだったのですが、何回か手ごたえが伝わりましたよ。おそらくまだそう遠くに入ってないはずですから、今から捕獲に行きましょう」
―――――闇に堕ちた『普通の人間』ではなく、神から生まれた『聖人』なのだから。
―――――もともと、彼女が住んでいる世界とほかの人間が住んでいる世界は、根本的に違っている…という、ただそれだけの話。
改めて目の前にたっている『存在』について思い知らされ、今更ながら自分たちの手は神裂には届かないことを、天草式は知った。
8
精神操作(メンタルコントロール)の目の前に、外国製らしき大剣が突きつけられた。
「ッ」
とっさのことに、何かを発音することもできず、後ろに跳び退る精神操作(メンタルコントロール)。
必死に後ろに転がってから体勢を立て直し、隙なく拳銃を前に構えると、
大剣を構えているのは、あの妙な服を着た男だった。
その大剣は本来両手持ちなのだろうが、その男は右手一つで軽々と扱っている。
(…通常ではあまり考えられない筋力、ですか…でも、鍛えればあの程度は…)
しかし、重要なのはそこではないようですね、と精神操作(メンタルコントロール)は考える。
(能力者が、武器を所持している?しかも常備しにくい大剣…まさか、外からの刺客でしょうか?)
…とりあえず、殺す必要がありますね…と、精神操作(メンタルコントロール)は引き金にかけた手に力を込めて…
次の瞬間、
ガチャリ、と、
精神操作(メンタルコントロール)の後頭部に、何か冷たい金属のような物が押し当てられていた。
とっさに後ろを振り返ろうとするが、その、何かよく分からない金属のような物で無理矢理押さえつけられる。
「やめろよ。どっちが優勢かぐらい、分かってるだろう?」
後ろから聞こえたのは、先ほど狙いを定めていた金髪の男の声。
しかし、明らかに違う、と精神操作(メンタルコントロール)は思う。
さっきの男の声からは、特に何も感じられなかった。言ってしまえば、友達と普通に話す男子の声みたいなものだ。
だが、今耳から伝わってきた声は、違う。
まるで言葉だけで相手を操ってしまうような、それでいて相手にまったく自由を与えない、拷問官のような声。
さっきの声とは、似ても似つかない。
その声の主が、言う。
「さて、一応確認するが…反乱因子、で良いな?」
「…本当に、確認するまでもない質問、ですね…」
なぜか少し笑いながら、精神操作(メンタルコントロール)は応える。
「肯定だな。では、今からお前をちょっとしたところに送るが、抵抗はしないように」
言葉ではそう言っているが、抵抗してくることぐらい承知だろう。
…腕や足の一、二本、持って行かれるか…?と精神操作(メンタルコントロール)は危惧するが、
やはり抵抗しないわけにはいかない。
だが、状況は絶望的。
理由は知らないが、なぜか自分の存在は完璧に相手にバレている。
そして、それらの相手の実力も、未だ未知。
おそらく相手の方は、自分たちのことを少しは分かっていることだろう。少なくとも、超能力者(レベル5)であることは割れているはずだ。
…この状況を、打破できるでしょうか…?
精神操作(メンタルコントロール)は考える。
…いや、
打破できるかどうか、ではありませんね。
精神操作(メンタルコントロール)は、結論付ける。
…打破しなければ、なりません。
「ッ」
とっさのことに、何かを発音することもできず、後ろに跳び退る精神操作(メンタルコントロール)。
必死に後ろに転がってから体勢を立て直し、隙なく拳銃を前に構えると、
大剣を構えているのは、あの妙な服を着た男だった。
その大剣は本来両手持ちなのだろうが、その男は右手一つで軽々と扱っている。
(…通常ではあまり考えられない筋力、ですか…でも、鍛えればあの程度は…)
しかし、重要なのはそこではないようですね、と精神操作(メンタルコントロール)は考える。
(能力者が、武器を所持している?しかも常備しにくい大剣…まさか、外からの刺客でしょうか?)
…とりあえず、殺す必要がありますね…と、精神操作(メンタルコントロール)は引き金にかけた手に力を込めて…
次の瞬間、
ガチャリ、と、
精神操作(メンタルコントロール)の後頭部に、何か冷たい金属のような物が押し当てられていた。
とっさに後ろを振り返ろうとするが、その、何かよく分からない金属のような物で無理矢理押さえつけられる。
「やめろよ。どっちが優勢かぐらい、分かってるだろう?」
後ろから聞こえたのは、先ほど狙いを定めていた金髪の男の声。
しかし、明らかに違う、と精神操作(メンタルコントロール)は思う。
さっきの男の声からは、特に何も感じられなかった。言ってしまえば、友達と普通に話す男子の声みたいなものだ。
だが、今耳から伝わってきた声は、違う。
まるで言葉だけで相手を操ってしまうような、それでいて相手にまったく自由を与えない、拷問官のような声。
さっきの声とは、似ても似つかない。
その声の主が、言う。
「さて、一応確認するが…反乱因子、で良いな?」
「…本当に、確認するまでもない質問、ですね…」
なぜか少し笑いながら、精神操作(メンタルコントロール)は応える。
「肯定だな。では、今からお前をちょっとしたところに送るが、抵抗はしないように」
言葉ではそう言っているが、抵抗してくることぐらい承知だろう。
…腕や足の一、二本、持って行かれるか…?と精神操作(メンタルコントロール)は危惧するが、
やはり抵抗しないわけにはいかない。
だが、状況は絶望的。
理由は知らないが、なぜか自分の存在は完璧に相手にバレている。
そして、それらの相手の実力も、未だ未知。
おそらく相手の方は、自分たちのことを少しは分かっていることだろう。少なくとも、超能力者(レベル5)であることは割れているはずだ。
…この状況を、打破できるでしょうか…?
精神操作(メンタルコントロール)は考える。
…いや、
打破できるかどうか、ではありませんね。
精神操作(メンタルコントロール)は、結論付ける。
…打破しなければ、なりません。
そうして、精神操作(メンタルコントロール)は絶望的戦況の中、抵抗を始める。
9
「おいおーい。ぜんぜん役に立ってねぇじゃんかよ、こいつら?もう死んじまうぞ?」
否定事項(ノットアクション)が、垣根聖督に向かって言う。
「ふむ。相手も予想以上に強いこともあってか、あまりデータも採れなかったしな」
聖督には、特に困ったような様子はない。
「どうするつもりぃ?まさか、このまま無駄死にで終わらせるつもりかなぁ?」
希望現実(リアルホープ)が、甘ったるい声で言う。そのくせして無表情だから、絶対能力者(レベル6)の中では一番奇妙だ、と聖督は感じる。
「今まで力を制御(セーブ)していたが、もはやその必要もないな。さっさと力を解放させて、手傷を負わせたほうがこちらの利益になるだろう」
と、聖督はそう言いながら、その部屋の唯一の出入り口である、強固な扉のほうに視線を投げる。
「原子変換(ナノチェンジャー)なら、1000人抜きやってくるって言ってたぞ?良いのか、あいつにそんなにホイホイ人材投げて」
否定事項(ノットアクション)が聖督に言い、そして聞く。
「絶対能力者(レベル6)の育成のためだ、それくらいなんともない」
「いやぁー、超能力者(レベル5)量産計画も驚きの、なんと大能力者(レベル4)超量産計画!残り3万人近くいるんだっけかぁ?」
「うげ、そんないんのかよ気持ち悪ぃな。んだったらサクっと殺したほうがいいかもな?」
絶対能力者(レベル6)が、各自思い思いの発言を勝手にする。
「いや、そうともいかんよ。死体処理に1000人近く回さなければいけないし、護衛や反乱防止にもかなりの人員を割いている。水道水の水みたいに、出しっぱなしでいいようなものではない」
「つっても、俺らが殺す分には惜しみなく投げるんだろ?ほんとどうかしてるよなぁ」
否定事項(ノットアクション)が、つまらなさそうに言う。
「それに、さすがに大能力者(レベル4)じゃ物足りなくなってきたよぉ、僕は。あいつもそうだから、1000人抜きやるーとか言い出したんでしょぉ?もういっそさぁ、超能力者(レベル5)量産して繰んないかな?」
意外に最後の言葉は本心らしく、珍しく語尾を上げなかった希望現実(リアルホープ)。
しかし、聖督はその願いを一刀両断する。
「無理だな。学園都市がその力を注いでもなしえなかったことだ、さすがにこの私では出来んよ。大能力者(レベル4)の量産で精一杯だ」
PCの画面から目を逸らさずに言う聖督。
と、いきなり扉が開き、何者かがその部屋に入ってきた。
その人物は、
「あ、お帰り原子変換(ナノチェンジャー)さん♪どうだったぁ大能力者(レベル4)1000人抜き?ってか1000人殺しかなぁ?ww」
凛とした美少女…原子変換(ナノチェンジャー)だった。
否定事項(ノットアクション)が、垣根聖督に向かって言う。
「ふむ。相手も予想以上に強いこともあってか、あまりデータも採れなかったしな」
聖督には、特に困ったような様子はない。
「どうするつもりぃ?まさか、このまま無駄死にで終わらせるつもりかなぁ?」
希望現実(リアルホープ)が、甘ったるい声で言う。そのくせして無表情だから、絶対能力者(レベル6)の中では一番奇妙だ、と聖督は感じる。
「今まで力を制御(セーブ)していたが、もはやその必要もないな。さっさと力を解放させて、手傷を負わせたほうがこちらの利益になるだろう」
と、聖督はそう言いながら、その部屋の唯一の出入り口である、強固な扉のほうに視線を投げる。
「原子変換(ナノチェンジャー)なら、1000人抜きやってくるって言ってたぞ?良いのか、あいつにそんなにホイホイ人材投げて」
否定事項(ノットアクション)が聖督に言い、そして聞く。
「絶対能力者(レベル6)の育成のためだ、それくらいなんともない」
「いやぁー、超能力者(レベル5)量産計画も驚きの、なんと大能力者(レベル4)超量産計画!残り3万人近くいるんだっけかぁ?」
「うげ、そんないんのかよ気持ち悪ぃな。んだったらサクっと殺したほうがいいかもな?」
絶対能力者(レベル6)が、各自思い思いの発言を勝手にする。
「いや、そうともいかんよ。死体処理に1000人近く回さなければいけないし、護衛や反乱防止にもかなりの人員を割いている。水道水の水みたいに、出しっぱなしでいいようなものではない」
「つっても、俺らが殺す分には惜しみなく投げるんだろ?ほんとどうかしてるよなぁ」
否定事項(ノットアクション)が、つまらなさそうに言う。
「それに、さすがに大能力者(レベル4)じゃ物足りなくなってきたよぉ、僕は。あいつもそうだから、1000人抜きやるーとか言い出したんでしょぉ?もういっそさぁ、超能力者(レベル5)量産して繰んないかな?」
意外に最後の言葉は本心らしく、珍しく語尾を上げなかった希望現実(リアルホープ)。
しかし、聖督はその願いを一刀両断する。
「無理だな。学園都市がその力を注いでもなしえなかったことだ、さすがにこの私では出来んよ。大能力者(レベル4)の量産で精一杯だ」
PCの画面から目を逸らさずに言う聖督。
と、いきなり扉が開き、何者かがその部屋に入ってきた。
その人物は、
「あ、お帰り原子変換(ナノチェンジャー)さん♪どうだったぁ大能力者(レベル4)1000人抜き?ってか1000人殺しかなぁ?ww」
凛とした美少女…原子変換(ナノチェンジャー)だった。
原子変換(ナノチェンジャー)は言う。
「やはり手応えがなかったな。所詮雑魚が1000人集まっても雑魚だ。大能力者(レベル4)は大能力者(レベル4)だな」
「だが、ある程度戦闘にも慣れてきただろう?」
聖督が聞くが、原子変換(ナノチェンジャー)は無愛想に言う。
「計4000も殺せばさすがに覚える。というか、逆にもう戦闘に対して緊張感を持てなくなった」
と、そこで聖督がまた言った。
「ところで、君の服についているそれは何だ?血か?」
おそらく聖督が言っているのは、原子変換(ナノチェンジャー)の体中にべっとりとこぶりついている赤黒いしみのことだろう。
原子変換(ナノチェンジャー)は特に感慨なく、
「ああ、返り血だ。別に支障がなかったから放置していたのだが、不快感を催すのならば消そう」
そういって、原子変換(ナノチェンジャー)は一瞬目を閉じた。
そして目を開けたときには、もう彼女の体には、血など一滴もついていなかった。
「ところで、超能力者(レベル5)たちは今どうなっている?」
何事もなかったかのように問う原子変換(ナノチェンジャー)。周りもまったく気にしていないのだが。
「ああ、今から力を解放させるところだ。さて、相手を何人殺せるか」
聖督は、PCのモニタを見つめたままだ。
「全員は殺せないと?」
「だろうな。そうでなければ、君たちの出番は一気に減るぞ?」
「それは困るな」
今まで発言していなかった否定事項(ノットアクション)が、ポツリと言う。
「んじゃ、今度は俺が大能力者(レベル4)のこと殺してくっから」
そう言い、手で原子変換(ナノチェンジャー)を扉の前からどかせて部屋を出て行く否定事項(ノットアクション)。
「開放させるのならばさっさと開放させたらどうだ?さすがにもう持ちこたえられないだろう」
原子変換(ナノチェンジャー)の目には、必死で逃げ回っている超能力者(レベル5)の姿が、モニタを通じて映っている。
「いやぁ、滑稽だねぇ~。弱いことが罪だってことを改めて感じさせられるよwww」
希望現実(リアルホープ)が、心底面白そうに言う。
聖督はそれを無視し、
「では、開放させるとするか」
その手を開いた。
その中には、色とりどりの綺麗な宝石のようなものが眠っていた。
が、聖督が手を開いた瞬間、それらは蒸発したように消えてしまった。
「ある程度の戦果とデータは挙げてくれよ、超能力者(レベル5)」
特に望んでいるような抑揚もない声で、聖督は言った。
「やはり手応えがなかったな。所詮雑魚が1000人集まっても雑魚だ。大能力者(レベル4)は大能力者(レベル4)だな」
「だが、ある程度戦闘にも慣れてきただろう?」
聖督が聞くが、原子変換(ナノチェンジャー)は無愛想に言う。
「計4000も殺せばさすがに覚える。というか、逆にもう戦闘に対して緊張感を持てなくなった」
と、そこで聖督がまた言った。
「ところで、君の服についているそれは何だ?血か?」
おそらく聖督が言っているのは、原子変換(ナノチェンジャー)の体中にべっとりとこぶりついている赤黒いしみのことだろう。
原子変換(ナノチェンジャー)は特に感慨なく、
「ああ、返り血だ。別に支障がなかったから放置していたのだが、不快感を催すのならば消そう」
そういって、原子変換(ナノチェンジャー)は一瞬目を閉じた。
そして目を開けたときには、もう彼女の体には、血など一滴もついていなかった。
「ところで、超能力者(レベル5)たちは今どうなっている?」
何事もなかったかのように問う原子変換(ナノチェンジャー)。周りもまったく気にしていないのだが。
「ああ、今から力を解放させるところだ。さて、相手を何人殺せるか」
聖督は、PCのモニタを見つめたままだ。
「全員は殺せないと?」
「だろうな。そうでなければ、君たちの出番は一気に減るぞ?」
「それは困るな」
今まで発言していなかった否定事項(ノットアクション)が、ポツリと言う。
「んじゃ、今度は俺が大能力者(レベル4)のこと殺してくっから」
そう言い、手で原子変換(ナノチェンジャー)を扉の前からどかせて部屋を出て行く否定事項(ノットアクション)。
「開放させるのならばさっさと開放させたらどうだ?さすがにもう持ちこたえられないだろう」
原子変換(ナノチェンジャー)の目には、必死で逃げ回っている超能力者(レベル5)の姿が、モニタを通じて映っている。
「いやぁ、滑稽だねぇ~。弱いことが罪だってことを改めて感じさせられるよwww」
希望現実(リアルホープ)が、心底面白そうに言う。
聖督はそれを無視し、
「では、開放させるとするか」
その手を開いた。
その中には、色とりどりの綺麗な宝石のようなものが眠っていた。
が、聖督が手を開いた瞬間、それらは蒸発したように消えてしまった。
「ある程度の戦果とデータは挙げてくれよ、超能力者(レベル5)」
特に望んでいるような抑揚もない声で、聖督は言った。