第一章 悪魔と修道女 Dark_White_And_Bright_White Ⅱ
一方通行(アクセラレータ)の取った行動は、極めて単純だった。
足に力を入れ、地面を蹴って走り出す。
が、『一方通行』という能力があれば、話は変わってくる。
一方通行は、足に掛かるベクトルを操作し、地面を蹴る力を増幅させたのだ。
多大な推進力を得た白い悪魔は、目の前の異様な男へ急接近した。そのまま、一方通行は拳を振るう。
足に力を入れ、地面を蹴って走り出す。
が、『一方通行』という能力があれば、話は変わってくる。
一方通行は、足に掛かるベクトルを操作し、地面を蹴る力を増幅させたのだ。
多大な推進力を得た白い悪魔は、目の前の異様な男へ急接近した。そのまま、一方通行は拳を振るう。
「ま、しょうがないか。何せ君は第一位だもんね」
だが、一方通行の拳は空を切るだけだった。目の前にいた筈の男は、体をとっさに横に動かしたらしかった。
このままでは体ががら空きだ。そう考えた一方通行は、拳と足に込めたベクトルを操作、そのまま力を分散。これにより、反動を無くす一方通行。
一方通行は、再度男と向き合う。
見ると、男は煙草に火をつけ銜えていた。もしこの男が十代だったら違法行為だ。だが、あくまでも日本での話なので、『外』がどうかは知らないが。
「僕の名前はステイル=マグヌス。イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の一員で魔術師――――」
「自己紹介なンかしてる暇があったら逃げてみろってンだ!」
そう叫びながら、一方通行は拳を振るう。だが、ステイルと名乗った男はまたもや一方通行の拳を避ける。どうやらステイルは、運動神経がかなりいいようだ。
「やるねェ、ステイルさンよォ?」
「はあ……。全く、君には言葉は通じないようだね」
「おいおい、ここは戦場だぜ?言葉が通じる、とでも思ってンのか?」
はあ、と。
ステイルが溜め息をつく。
そんなステイルの様子に、一方通行は青筋を立てる。
「ま、いっか。一瞬で殺してやンよ」
一方通行が、両腕を天へと突き出す。そして、口の中で何かを呟き始める。
すると、不思議な事に一方通行の両腕に空気が集まり始める。それに伴い、倒れている少女の白い修道服がなびき始める。
一方通行の呟きが更に速度を増していく。空気は風へと成り変る。
「な、何だこれは……!? 風が、集まってきている……?」
先程まで余裕の表情だったステイルが、段々と焦りを見せ始めた、その時。
このままでは体ががら空きだ。そう考えた一方通行は、拳と足に込めたベクトルを操作、そのまま力を分散。これにより、反動を無くす一方通行。
一方通行は、再度男と向き合う。
見ると、男は煙草に火をつけ銜えていた。もしこの男が十代だったら違法行為だ。だが、あくまでも日本での話なので、『外』がどうかは知らないが。
「僕の名前はステイル=マグヌス。イギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』の一員で魔術師――――」
「自己紹介なンかしてる暇があったら逃げてみろってンだ!」
そう叫びながら、一方通行は拳を振るう。だが、ステイルと名乗った男はまたもや一方通行の拳を避ける。どうやらステイルは、運動神経がかなりいいようだ。
「やるねェ、ステイルさンよォ?」
「はあ……。全く、君には言葉は通じないようだね」
「おいおい、ここは戦場だぜ?言葉が通じる、とでも思ってンのか?」
はあ、と。
ステイルが溜め息をつく。
そんなステイルの様子に、一方通行は青筋を立てる。
「ま、いっか。一瞬で殺してやンよ」
一方通行が、両腕を天へと突き出す。そして、口の中で何かを呟き始める。
すると、不思議な事に一方通行の両腕に空気が集まり始める。それに伴い、倒れている少女の白い修道服がなびき始める。
一方通行の呟きが更に速度を増していく。空気は風へと成り変る。
「な、何だこれは……!? 風が、集まってきている……?」
先程まで余裕の表情だったステイルが、段々と焦りを見せ始めた、その時。
一方通行の視界が、少女の白い修道服に僅かな裂け目が入ったのを捕らえた。
(……ッ)
一方通行はその事を確認すると、心の中で密かに息を呑む。そして、両腕に集まっていた風を徐々に空気へと変え、攻撃を無力化していく。
「……何だい? まさか戦いをやめるとか言い出すんじゃないだろうね?」
「テメェには関係ねェよ」
白い悪魔がそう凄むと、異様な男は一歩後ずさる。
だが、白い少女を狙っている男がそこでひく訳が無かった。
「まあ、丁度いい。――――Fortis931。この『魔法名』の下に、君を殺そう」
一方通行はその事を確認すると、心の中で密かに息を呑む。そして、両腕に集まっていた風を徐々に空気へと変え、攻撃を無力化していく。
「……何だい? まさか戦いをやめるとか言い出すんじゃないだろうね?」
「テメェには関係ねェよ」
白い悪魔がそう凄むと、異様な男は一歩後ずさる。
だが、白い少女を狙っている男がそこでひく訳が無かった。
「まあ、丁度いい。――――Fortis931。この『魔法名』の下に、君を殺そう」
自らをFortis931と名乗った男は、一方通行に対してそう宣言する。
対し、一方通行は少女の下へと歩みだす。
「炎よ」
タバコを吐き棄てながら、ステイルはそう呟く。すると、そのタバコの火をなぞるかのように、炎で造られた剣が姿を現す。
一方通行は、それを無視する。
「舐めてくれるね――――!」
ステイルは、炎の剣を横に振るう。それは一方通行の体に当たり、爆発する。
だが、その爆発は剣を模っていた炎とともに四方八方に散っていく。
「な――――ッ!?」
「あァ?」
予想外の出来事に対し、両者ともが驚愕を示す。ただ、ステイルのほうが度合いが強く、一方通行は驚愕と言うよりも不思議がっているようだった。
「灰は灰に、塵は塵に。吸血殺しの紅十字――――!」
炎の剣を、ステイルは今度は二本生み出した。右手に持つのは紅い炎の剣、左手に持つは青白い炎の剣。炎を生み出した魔術師は、それを水平に投げた。
だが、やはり一方通行は白い少女へと歩み寄る。まるで、自らに迫りくる一対の炎なぞ見えていないかのように。
炎は一方通行にぶつかり、今度は主に横に逸れていった。逸れた炎が生えていた木々に当たり、木が一瞬にして炎上する。
炎上した木を横目で見た一方通行は、僅かに眉をひそめる。
だが、それだけだった。
今の一方通行の頭の中には、白い少女を連れ出すと言う事しかない。そう、先ほどまであった敵意と殺意が嘘みたいに消えてしまったのだ。一方通行自身もこの考えに疑問を持っているのだが、今は何故か少女を助け出す事が最優先のことに思えた。
「ま……待て! その子は――――」
「黙ッてろ、カスが」
その一言で、ステイルの動きが固まる。一方通行の瞳は見えなかったのだが、あまりにも凶悪すぎる『声』によって、ステイルは反射的に固まってしまったのだ。
こいつはヤバイ。
ステイルは、頭の中でそう確信し、また一歩下がってしまう。
「仕切りなおしだ。今度会ッた時にはぶち殺してやンよ」
一方通行はそう吐き棄て、白い少女を抱えて飛び去る。
先程までのステイルならば、彼を追おうとしただろう。だが、一方通行が飛んだ瞬間、当たり一体に爆風が撒き散らされたせいで、彼の姿がよく見えなくなってしまったのだ。
爆風が起きた原因は、一方通行がベクトル操作を利用し、足の脚力を何十倍にも跳ね上げた事にある。
だが、追えなかった原因はそれでけではなかった。
対し、一方通行は少女の下へと歩みだす。
「炎よ」
タバコを吐き棄てながら、ステイルはそう呟く。すると、そのタバコの火をなぞるかのように、炎で造られた剣が姿を現す。
一方通行は、それを無視する。
「舐めてくれるね――――!」
ステイルは、炎の剣を横に振るう。それは一方通行の体に当たり、爆発する。
だが、その爆発は剣を模っていた炎とともに四方八方に散っていく。
「な――――ッ!?」
「あァ?」
予想外の出来事に対し、両者ともが驚愕を示す。ただ、ステイルのほうが度合いが強く、一方通行は驚愕と言うよりも不思議がっているようだった。
「灰は灰に、塵は塵に。吸血殺しの紅十字――――!」
炎の剣を、ステイルは今度は二本生み出した。右手に持つのは紅い炎の剣、左手に持つは青白い炎の剣。炎を生み出した魔術師は、それを水平に投げた。
だが、やはり一方通行は白い少女へと歩み寄る。まるで、自らに迫りくる一対の炎なぞ見えていないかのように。
炎は一方通行にぶつかり、今度は主に横に逸れていった。逸れた炎が生えていた木々に当たり、木が一瞬にして炎上する。
炎上した木を横目で見た一方通行は、僅かに眉をひそめる。
だが、それだけだった。
今の一方通行の頭の中には、白い少女を連れ出すと言う事しかない。そう、先ほどまであった敵意と殺意が嘘みたいに消えてしまったのだ。一方通行自身もこの考えに疑問を持っているのだが、今は何故か少女を助け出す事が最優先のことに思えた。
「ま……待て! その子は――――」
「黙ッてろ、カスが」
その一言で、ステイルの動きが固まる。一方通行の瞳は見えなかったのだが、あまりにも凶悪すぎる『声』によって、ステイルは反射的に固まってしまったのだ。
こいつはヤバイ。
ステイルは、頭の中でそう確信し、また一歩下がってしまう。
「仕切りなおしだ。今度会ッた時にはぶち殺してやンよ」
一方通行はそう吐き棄て、白い少女を抱えて飛び去る。
先程までのステイルならば、彼を追おうとしただろう。だが、一方通行が飛んだ瞬間、当たり一体に爆風が撒き散らされたせいで、彼の姿がよく見えなくなってしまったのだ。
爆風が起きた原因は、一方通行がベクトル操作を利用し、足の脚力を何十倍にも跳ね上げた事にある。
だが、追えなかった原因はそれでけではなかった。
純粋な、恐怖だ。
白い悪魔が吐いた言葉に恐怖し。
白い悪魔が取った行動に恐怖し。
何より――――、白い悪魔と炎の魔術師との単純な力量差に恐怖した。
「……神裂に救援を頼むしかないか」
未だに恐怖が抜けないステイルは、何処か上の空でそう呟いたのだった。
白い悪魔が取った行動に恐怖し。
何より――――、白い悪魔と炎の魔術師との単純な力量差に恐怖した。
「……神裂に救援を頼むしかないか」
未だに恐怖が抜けないステイルは、何処か上の空でそう呟いたのだった。
「はァ……」
ステイルを受け流し、自らの部屋に戻った一方通行。
ここには必要最低限のものしか置くスペースが無い。というかそういったものしか置く気がない一方通行には、狭いこのスペースで充分だった。
彼は、何時も自分が寝るソファーに白い修道女を寝かせていた。
彼女の名前は、分からない。解るのは、彼女は『学園都市』の人間ではない、ということだけだ。
見たところ、少女に外傷は無い。だが、彼女が纏っている修道服には傷がちらほらと見えた。
そう、先程あの男と戦ったときに、己がつけた傷も。
「さァて、どォすッかなァ……」
何処と無く、一方通行がそう呟いたとき。
「お――――」
突如、修道女が目を覚ます。
「あァ、やァッと起きたか」
一方通行が次に何を聞こうかと頭を巡らせていた、その時。
ステイルを受け流し、自らの部屋に戻った一方通行。
ここには必要最低限のものしか置くスペースが無い。というかそういったものしか置く気がない一方通行には、狭いこのスペースで充分だった。
彼は、何時も自分が寝るソファーに白い修道女を寝かせていた。
彼女の名前は、分からない。解るのは、彼女は『学園都市』の人間ではない、ということだけだ。
見たところ、少女に外傷は無い。だが、彼女が纏っている修道服には傷がちらほらと見えた。
そう、先程あの男と戦ったときに、己がつけた傷も。
「さァて、どォすッかなァ……」
何処と無く、一方通行がそう呟いたとき。
「お――――」
突如、修道女が目を覚ます。
「あァ、やァッと起きたか」
一方通行が次に何を聞こうかと頭を巡らせていた、その時。
「おなかへったっ!」
と、修道女が起き上がりながら元気一杯に吼えた。
「なッ……!?」
だが、一方通行を真に驚かせたのはそこではない。
「なッ……!?」
だが、一方通行を真に驚かせたのはそこではない。
吼えた、と同時に起き上がり立ち上がった修道女の修道服が、するりと地面に落ちたのだ。
当然、少女はその体を一方通行の目前にさらす事となる。
唯一残った帽子のような白いフードのみが、無常にひらひらとなびいていた。
「ねえ、どうしたのそこの君。おなかへったって言ってるんだよ?」
唖然とする一方通行に対し、自らがどのような状況に陥っているのかを理解していない少女が言う。
「ねえ? おなかへったって――――」
そこで、一方通行の視線の意味をようやく理解したのか、少女は自らの体へと視線を下げる。
無論、そこには素っ裸の自分の姿が。
絶叫が、狭い一方通行の部屋を支配した。
唯一残った帽子のような白いフードのみが、無常にひらひらとなびいていた。
「ねえ、どうしたのそこの君。おなかへったって言ってるんだよ?」
唖然とする一方通行に対し、自らがどのような状況に陥っているのかを理解していない少女が言う。
「ねえ? おなかへったって――――」
そこで、一方通行の視線の意味をようやく理解したのか、少女は自らの体へと視線を下げる。
無論、そこには素っ裸の自分の姿が。
絶叫が、狭い一方通行の部屋を支配した。
「全く、お前は何なンだ」
目をあけたと思ったら、いきなり絶叫をした少女に一方通行は言う。
返事は帰ってこない。
「あーもォ、ハイハイ分かりましたよ。俺が悪かッたですよ」
返事は帰ってこない。
「……何だ? お前は何が望みだ?」
やはり返事は帰ってこない。
「……オイ。いい加減――――」
「出来た」
一方通行がキレる一歩手前の時に、少女はそんな言葉を漏らす。
「出来たァ? なァにが出来たッてェ?」
「『歩く教会』の修復なんだよ」
『歩く教会』、という単語に一方通行は思考を巡らす。当然、教会が歩くはずも無い。とすれば、それは何かの能力名か。
だが、少女が掲げたのは、数多の安全ピンで補修をされた修道服だった。
「まったく。いきなり解けるから困っちゃうよね。『歩く教会』の防御力は法王級なんだから」
目をあけたと思ったら、いきなり絶叫をした少女に一方通行は言う。
返事は帰ってこない。
「あーもォ、ハイハイ分かりましたよ。俺が悪かッたですよ」
返事は帰ってこない。
「……何だ? お前は何が望みだ?」
やはり返事は帰ってこない。
「……オイ。いい加減――――」
「出来た」
一方通行がキレる一歩手前の時に、少女はそんな言葉を漏らす。
「出来たァ? なァにが出来たッてェ?」
「『歩く教会』の修復なんだよ」
『歩く教会』、という単語に一方通行は思考を巡らす。当然、教会が歩くはずも無い。とすれば、それは何かの能力名か。
だが、少女が掲げたのは、数多の安全ピンで補修をされた修道服だった。
「まったく。いきなり解けるから困っちゃうよね。『歩く教会』の防御力は法王級なんだから」
と、そこで。
少女の話を受動的に聞いていた一方通行が、能動的に動き始める。
「おい、ちょォッと待ちやがれ。法王ッて言うのは『ローマ法王』とかの事か?」
「そうだよ。この『歩く教会』はトリノ聖骸布を正確にコピーした物だから、『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』級の攻撃じゃないと傷は付けられなかったんだよ」
過去形であるところに未練がましさを感じる一方通行だったが、それよりも気になる単語があった。
(……なンなンだコイツ。服破けて絶叫したかと思ッたら、今度は変な事をほざきやがる。頭イカレてンじゃねェのかァ?)
恐らく、少女が言った言葉は『学園都市』に関係している物ではないだろう。もしも関係しているのならば、一方通行には分かるはずだからだ。
とすれば、何か。『学園都市』以外の超能力開発期間から来た少女なのか。だが、それだとここには辿り着けないだろう。
そういえば、少女は『ローマ法王』とも言った。確か、それはキリスト教の最高位だったはずだ。つまり、少女は宗教に関係しているのだろう。だが、科学で溢れたこの学園都市で、宗教を信仰しているとは考えにくい。
だとすれば、少女は何処から来た事になる。
一方通行がそのような思考を巡らせていたとき、
「――――そういうことだよ。分かった? あ、そういえば自己紹介してなかったね。私は『禁書目録(インデックス)』って言うんだよ。正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumで、魔法名は『dedicatus545』。こっちの言葉だと、『献身的な子羊は強者の知識を守る』って意味になるのかな?」
恐らく一方通行が思考を巡らせている間も話を続けていたらしい少女――確かインデックスと名乗ったか――の話の中に、今までインデックスの話を全く聞いていなかった一方通行の注意を惹きつける単語が登場した。
魔法名。
一方通行と交戦したあのステイル=マグヌスとか言う人物も、確かそんな事を口にしていた。
「おい、ガキ」
「私にはインデックスっていう名前があるんだから、そっちで呼んでくれると嬉しいな」
「いや、そのインデックスッてのは明らかに偽名だろォが」
「私の名前はインデックスなんだよ」
沈黙する一方通行。
このままでは埒が明かないと考えた一方通行は、先程までのやり取りを無視して本題に入る。
少女の話を受動的に聞いていた一方通行が、能動的に動き始める。
「おい、ちょォッと待ちやがれ。法王ッて言うのは『ローマ法王』とかの事か?」
「そうだよ。この『歩く教会』はトリノ聖骸布を正確にコピーした物だから、『竜王の殺息(ドラゴンブレス)』級の攻撃じゃないと傷は付けられなかったんだよ」
過去形であるところに未練がましさを感じる一方通行だったが、それよりも気になる単語があった。
(……なンなンだコイツ。服破けて絶叫したかと思ッたら、今度は変な事をほざきやがる。頭イカレてンじゃねェのかァ?)
恐らく、少女が言った言葉は『学園都市』に関係している物ではないだろう。もしも関係しているのならば、一方通行には分かるはずだからだ。
とすれば、何か。『学園都市』以外の超能力開発期間から来た少女なのか。だが、それだとここには辿り着けないだろう。
そういえば、少女は『ローマ法王』とも言った。確か、それはキリスト教の最高位だったはずだ。つまり、少女は宗教に関係しているのだろう。だが、科学で溢れたこの学園都市で、宗教を信仰しているとは考えにくい。
だとすれば、少女は何処から来た事になる。
一方通行がそのような思考を巡らせていたとき、
「――――そういうことだよ。分かった? あ、そういえば自己紹介してなかったね。私は『禁書目録(インデックス)』って言うんだよ。正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumで、魔法名は『dedicatus545』。こっちの言葉だと、『献身的な子羊は強者の知識を守る』って意味になるのかな?」
恐らく一方通行が思考を巡らせている間も話を続けていたらしい少女――確かインデックスと名乗ったか――の話の中に、今までインデックスの話を全く聞いていなかった一方通行の注意を惹きつける単語が登場した。
魔法名。
一方通行と交戦したあのステイル=マグヌスとか言う人物も、確かそんな事を口にしていた。
「おい、ガキ」
「私にはインデックスっていう名前があるんだから、そっちで呼んでくれると嬉しいな」
「いや、そのインデックスッてのは明らかに偽名だろォが」
「私の名前はインデックスなんだよ」
沈黙する一方通行。
このままでは埒が明かないと考えた一方通行は、先程までのやり取りを無視して本題に入る。
「で? お前はなンなンだ?」
一方通行のこの質問に、インデックスは少し間を置いてからこう答える。
「十万三千冊の『禁書』を抱える魔導図書館。だから、私の名前は『禁書』目録なの。私が持ってる十万三千冊は、世界中のありとあらゆる魔導書を集めた物。だから、色々な人が狙ってくるんだよ」
笑顔で話しながら、恐らくは暗い話題を話すインデックス。
恐らく、彼女はここに辿り着くまでに様々な恐怖を味わったに違いない。もしかしたら、一方通行と同じレベルの。
「十万三千冊だァ? ンなもン、何処にあるッてんだァ?」
一方通行は思ったことを億尾にも出さず、次の質問を仕掛ける。
「頭の中」
対し、インデックスは即答した。
「……まァさか、憶えてるとか言わねェよなァ?」
「その通りだよ」
全く持って訳がわからない。
十万三千冊ともなると、一方通行でも憶えきれないだろう。憶えているとなると、それは超能力でも使ったと言う事になる。
いや、そういえば『完全記憶能力』という体質もあったっけと一方通行が考えていると、
「私は完全記憶能力者だから、そんな事簡単なんだよ」
案の定こんな答えが帰ってきた。
「でも、私には十万三千冊は使えないんだよ。何故って、私には魔力がないからね」
「魔力ゥ? お前バカか? 科学だらけのこの学園都市で――――」
「魔術はあるんだよ」
嘲笑する一方通行に向かって、インデックスは真面目にそういった。
「魔術って言うのは、『超能力者』みたいな才能ある人たちに追いつこうと、才能のない人たちが作ったものなの。だから下準備だってかかるし、努力だっている。でも、奇跡的な現象を必然的に起こせる物だから、強力ではあるかも」
数時間前の一方通行ならば、この言葉を鼻で笑っていただろう。
だが、あの炎を操るステイルにあった今ならば、鼻では笑えない。何せ、実際にその現場をこの目で見てしまっているのだから。
それに、もしステイルが操った炎が『超能力』ではなく『魔術』だとしたら、『反射』が適用されなかったのにも説明がつく。
「でも、君みたいな人には魔術は使えないからね。見た感じ、君は『超能力者』でしょ? そういう人が魔術を使おうとすると、体を壊しちゃうから」
一方通行には魔術を使う気はさらさらないのだが、インデックスが無意識に使った『超能力者』という言葉がそのまま自分を表しており、何故か少し笑えた。
「まあ、あんまり長居してると君に迷惑かけちゃうからね。私はもう去るね」
と、インデックスは腰を上げる。
「おい、どォ言う事だ。このまま去るなンて許さねェ」
いきなり別れを告げたインデックスに、一方通行は何故か引き止めてしまう。
「……じゃあ。私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
インデックスは、笑顔でそんな事を言う。その問いに対し、一方通行は。
「……ついていくも何も、俺は既に地獄の底に住ンでるンだよ」
こう答えた。
一方通行のこの質問に、インデックスは少し間を置いてからこう答える。
「十万三千冊の『禁書』を抱える魔導図書館。だから、私の名前は『禁書』目録なの。私が持ってる十万三千冊は、世界中のありとあらゆる魔導書を集めた物。だから、色々な人が狙ってくるんだよ」
笑顔で話しながら、恐らくは暗い話題を話すインデックス。
恐らく、彼女はここに辿り着くまでに様々な恐怖を味わったに違いない。もしかしたら、一方通行と同じレベルの。
「十万三千冊だァ? ンなもン、何処にあるッてんだァ?」
一方通行は思ったことを億尾にも出さず、次の質問を仕掛ける。
「頭の中」
対し、インデックスは即答した。
「……まァさか、憶えてるとか言わねェよなァ?」
「その通りだよ」
全く持って訳がわからない。
十万三千冊ともなると、一方通行でも憶えきれないだろう。憶えているとなると、それは超能力でも使ったと言う事になる。
いや、そういえば『完全記憶能力』という体質もあったっけと一方通行が考えていると、
「私は完全記憶能力者だから、そんな事簡単なんだよ」
案の定こんな答えが帰ってきた。
「でも、私には十万三千冊は使えないんだよ。何故って、私には魔力がないからね」
「魔力ゥ? お前バカか? 科学だらけのこの学園都市で――――」
「魔術はあるんだよ」
嘲笑する一方通行に向かって、インデックスは真面目にそういった。
「魔術って言うのは、『超能力者』みたいな才能ある人たちに追いつこうと、才能のない人たちが作ったものなの。だから下準備だってかかるし、努力だっている。でも、奇跡的な現象を必然的に起こせる物だから、強力ではあるかも」
数時間前の一方通行ならば、この言葉を鼻で笑っていただろう。
だが、あの炎を操るステイルにあった今ならば、鼻では笑えない。何せ、実際にその現場をこの目で見てしまっているのだから。
それに、もしステイルが操った炎が『超能力』ではなく『魔術』だとしたら、『反射』が適用されなかったのにも説明がつく。
「でも、君みたいな人には魔術は使えないからね。見た感じ、君は『超能力者』でしょ? そういう人が魔術を使おうとすると、体を壊しちゃうから」
一方通行には魔術を使う気はさらさらないのだが、インデックスが無意識に使った『超能力者』という言葉がそのまま自分を表しており、何故か少し笑えた。
「まあ、あんまり長居してると君に迷惑かけちゃうからね。私はもう去るね」
と、インデックスは腰を上げる。
「おい、どォ言う事だ。このまま去るなンて許さねェ」
いきなり別れを告げたインデックスに、一方通行は何故か引き止めてしまう。
「……じゃあ。私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」
インデックスは、笑顔でそんな事を言う。その問いに対し、一方通行は。
「……ついていくも何も、俺は既に地獄の底に住ンでるンだよ」
こう答えた。