とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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「ミサカ、巫女と美琴(みさかみことみこと)」第4話「ホワイトバニーの幻影」 

(Chap.2)

 土曜日10:00 学園都市内の某ビルの一室

「うわっはっは────ッ!」

 薄暗い室内に響き渡る大声に上条は軽い頭痛をおぼえこめかみを強く押さえつける。ひときわ明
るいスクリーンには例によってクワガタみたいに黒光りするツンツンした黒髪を持つ男が高笑いして
いる。

「貴様達!
 ブラックキャットを退けた位で勝った気でいるんじゃなかろうな!
 いい気でいられるのも今の内だけなのよな!
 貴様らは我らの首領を怒らせたのだ!!
 こうなった以上貴様らの命運もここまでだ!
 あの世への餞別に貴様達には我らの首領のお姿を拝ませてやるのよな。
 そのお姿を目に焼き付けて冥途に逝くが良いッッッッ!!」

 男が右手で指差す方向にカメラが首を振るとスクリーンに大階段が映し出される。そしてカメラが
階段を舐めるように上昇するとそこには奥行き40m程の広い空間があり、カメラのズームによって
奥にある拝殿のような建物がドドーンと大映しになった。その扉は開け放たれてはいるが白い布地
が入り口を覆っており中を伺い知ることはできない。だが、そこにキシサクマアの首領が居ることは
確かだった。

 入り口の上のポップな字体で書かれた『首領』という看板がかなり痛々しいのだが…………
あえてそのことにはツッコまない上条であった。

(毎回毎回テメーらのボケに律儀にツッコむほど上条さんはお人好しではありません!
 この白けた空気が骨身に染みたら少しは反省しやがれ!)

 その横で御坂美琴も姫神秋沙に小声で話しかけていた。

「この人達って悪の組織を真面目にやる気あるのかしら?
 それともウケるって本気で思っているのかしら?」
「ウケ狙いなら寒すぎる。大真面目ならただの馬鹿!」

 いくら待てども上条達からツッコまれずとうとう耐えきれなくなった男は小さな咳払いをしてしまう。

「コホン…………まあ所詮、貴様らでは我らの高尚な美的センスを理解できんのよな!
 まあ良い!!さあ、我らが首領の前にひれ伏すが良いッッ!!」

 すると突然、拝殿の奥が明るくなり白い布地に首領のシルエットが浮かび上がる。

うっ!!その瞬間上条は思わず小さなうめき声を上げていた。

 実は何となく嫌な予感はしていたのだが、まさか的中するとは思っていなかった。浮かび上がった
首領のシルエットは斜めに構えた立ち姿である。日本人女性とすればかなり長身ではあるが、出る
べき所は出て締まるべき所は締まっているナイスバディな肢体とポニーテールにまとめた長い髪の
シルエットがこの人物が女性だと告げている。

 ついでに言えば背丈以上ありそうな棒状の何かを左手に携えているシルエットは上条にとある
ウエスタンルックサムライガールを連想させた。

(神裂!お前なのか!?)

 しかし今となってはキシサクマアの首領が誰かということはもはや大した問題ではない。今直面する
問題はその人物の頭頂部。そこに本来人間にはあるはずのない二本の影が伸びていることだ。
ピョンと跳ね上がった2本のシルエットはどう見ても、いくら目をこらそうが何度瞬きしようがウサギ
の耳以外の何者でもなかった。ついでにお尻に付いた丸い物体や蝶ネクタイ付き付け襟や両手首
のカフスのシルエットまでがくっきり映っていたりするから、もはや答えは一つしかない。

(神裂ィィィッッ!!お前もかぁぁぁぁあああああ!?)

「ねえ、アレって…………バニーガール…………よね!?」
「多分。ということは。今回の相手も…………変態さん?」

 御坂美琴と姫神秋沙がヒソヒソ話をしている横で上条は思い出したくもない悪夢に苛まれていた。
その悪夢の元凶はミーシャ=クロイツェフ、ヒューズ=カザキリに続く第3の天使の存在だった。
あの時病室に突入してきた堕天使エロメイドこと神裂火織の血走った目を思い出した瞬間、上条はヘビ
に睨まれたカエルのように硬直し、冷たい汗が止めどなく背中を流れ落ちるのだった。

「どうだ、恐れおののいたか!?
 このお方こそ我らが気高き首領ホワイトバニー様だッッッッ!!
 ホワイトバニー様に掛かれば貴様達などケチョンケチョンなのよな。
 うわっはっは────ッ!
 今夜20時に第21学区の天文台で開かれる小学生を招いた天体観測会を我々は襲撃する。
 せいぜい首を洗って待っておるが良い!!」

 そして犯行予告ビデオのエンドロールが流れ始めた。

「「「「はああぁぁぁぁぁぁぁぁ────────────ッ!」」」」

毎度のことながら盛大なため息を漏らす御坂美琴、姫神秋沙、ミサカ10032号。
その中で御坂美琴はまるで自分に言い聞かせるかのように皆に話しかける。

「まあ、あんな馬鹿みたいな格好したブラックキャットだって意外と手こずったんだから
 このホワイトバニーって女もひょっとしたら強敵かもしれないし、気は引き締めないとね」
「でしょ?ミサカもそう思ってオリジナル達のスーツを開発部に超特急で改良して貰ったの!
 ってミサカはミサカは褒めて褒めてって感じでこの1週間の苦労をオリジナルに報告してみる」

「え” ッ!!ま、まさか私達が今着てるスーツって…………その改良品?」
「えっへん!そうなの、ってミサカはミサカは得意満面で即答してみる」
「じゃ、じゃあ、今回のミッションはこのスーツは無しってことで良いかしら?」
「えーっ!?せっかく無理言って改良して貰ったのに、ってミサカはミサカはシベリア寒気団より
 冷たいオリジナルの薄情さに不満タラタラ顔でブウたれてみる」
「だからよ!どうせロクでもない機能を付けたんでしょ!?」

「そんなこと無いのにって、ミサカはミサカは反論してみる。
 論より証拠を示すからみんな一緒に『チェンジ!ハイパーモード』って叫んでみて!」

仕方なく、言われたセリフをやる気の無さ100%で棒読みする3人。

「「「チェンジ。ハイパ~モード」」」

 未だ堕天使エロメイドの呪縛に捕らわれていた上条だがスーツが発した目映い閃光のおかげで
ようやく現実に帰還することができた。しかし現実に帰還した途端目にした光景は上条にさらなる衝
撃を与えた。

「ブフッッッッ!!バ、バ、バ、バッ、バニーが一杯!」

 上条の目の前には赤バニー、青バニーそしてピンクバニーがいた。色違いのバニースーツを着
た3人の美少女はそれぞれ違った反応をしていた。

 身をねじりつつ両手で胸元と太ももを必死で隠そうとする御坂美琴。
 無表情にバニースーツに変形したスーツのあちこちをポンポンと叩き感触を確かめる御坂妹。
 バニースーツのデザインを確かめつつさりげなくポーズをとる姫神秋沙。

「ちょっ、一体なんなのよ。これ!?」
「これは俗に言うバニースーツというものでしょうか?
 とミサカはスーツをこんなものに変形させる意図はなんでしょうと少し首を傾けつつ率直な疑問
 を呟きます」
「このデザイン。意外といけるかも。あっ。ピンクと思ったら。細かい紅白のストライプ」

 三者三様の反応を示す3人を見回しラストオーダーは「ふ──うっ」とため息をつく。

「目には目を!ウサギにはウサギを!って考えて開発して貰ったけどちょっと失敗だったかな
 ってミサカはミサカは今更ながらちょっと後悔してみたり。
 バストサイズで完敗のオリジナル達だから数で勝負してみようって思ったけど
 並が1に貧が2じゃあ三人寄ったって勝負にならなかったみたい。
 あーあッ、資源と人材と時間を無駄遣いしちゃったかな?
 ってミサカはミサカは腕組みしたまま独り言を呟くように反省してみる」

 その時、パリリッッ!!という小さな空電音が生じたことに打ち止めは気付かない。
 そして室内に地獄の底から響いてくるようなドスのきいた声が静かに響き渡る。

「ふっふっふっ!どうやらアンタは『今』こ・こ・で・死にたいみたいね!」

 前髪から青白い火花を撒き散らす御坂美琴の目は完全に据わっている。そして打ち止めを確実
に仕留める必殺の間合いへとその右足を踏み出した。しかし御坂美琴の前進は姫神秋沙の右手
に制される。

「ちょっと待って。御坂さん」
「なによ!秋沙、あなたあの子の肩を持つつもり?」
「大人なら。もう少し心に余裕を持った方が良い」

 頭に血がのぼっていた御坂美琴であったが姫神秋沙にたしなめられるように指摘されると
ちょっと気恥ずかしそうに頬を指先でさする。

「うっ…………ハハッ、そうね、ちょっと大人気なかった…………かな?」
「そう。せめて。あの子が遺言を残すぐらいの時間は待ってあげないと」
「………………………………」

 とんでもないことを淡々とのたまう姫神秋沙に一瞬その意図を理解できなかった御坂美琴も
姫神秋沙の目を見た瞬間に理解する。既に姫神秋沙も殺す(やる)気満々だったのだ。

(殺す(やる)ときは一緒よ。御坂さん)
(OK!秋沙)

 司令室にジャキン!!という金属音が響き渡たると特殊警棒の放電音が御坂美琴の放電音と
耳障りなハーモニーを奏で始める。

「あれ?どうしたの?
 ってミサカはミサカはいつの間にか険しい表情になってるオリジナル達に問いかけてみたり」
「20秒。19。18。…………」
「なに、何?何してるの?
 ってミサカはミサカはこれは何の遊びかなって目をキラキラさせて質問してみたり」
「…………死亡遊技。…………14」
「それってどうやって遊ぶの?
 ってミサカはミサカは聞いたことのない遊びにワクワクしながら質問を続けてみる」
「10。9。……………」
「お待ち下さい!!」

 姫神秋沙のカウントダウンは残り9秒で中断された。

「お待ち下さい!っとミサカは暴発寸前のお二方に重ねてお願いしてみます」
「「あなた(あんた)、邪魔するつもり!?」」
「はい、とミサカは力強く断言します。
 上位個体に引導を渡すのはミサカ10032号の役目です。
 お二方といえどもお譲りする訳にはいきません」

 そして弾倉をサブマシンガンに叩き込むと流れるような動作で銃口を打ち止めに向ける。

「さようなら。上位個体のことは決して忘れません
 とミサカは安全装置を解除しつつ心にもないセリフをしれっと吐き出します」

 直後、ドガガガガッ!!という銃撃音が鳴り響き、放たれた何十発ものゴム弾が司令席の椅子の
背もたれと後方の白スクリーンをズタボロに引き裂いていく。

 しかし銃撃後ズタボロに引き裂かれた椅子には打ち止めの姿はなかった。直前に机の下に身を
沈めて銃弾を避けていたのだ。机の前面パネルは着弾の衝撃でボコボコに凹んではいたがゴム弾
の貫通は許さなかった。

「ハッハーッ、そんな攻撃でこのミサカを倒せるとでも思っているの────ッ
 ってミサカはミサカは只のミサカの攻撃なんて全てお見通しだよ────ッて感じの上から目線
 で余裕のセリフを吐いてみる」
「くッ!やはりゴム弾などではなく実弾に換装しておくべきでした
 とミサカは痛恨の失態に地団駄を踏んで悔しがります」
「やーい!悔しかったら当ててごらんッ!
 ってミサカはミサカは机から転がり出て司令室からの脱出を図ってみる」

 転がり出た打ち止めは上条の背後に回り上条を盾とすると出口に向かってジリジリと移動する。
対してミサカ10032号も打ち止めへと追撃の銃口を向ける。

「おい、ちょっと、待て!御坂妹。落ち着け!!」
「もとよりミサカは冷静です、とミサカは冷静である証拠に先ほどの失敗を繰り返さぬようゴム弾から
 実弾に換装済みであることを胸を張って当麻さんに報告します」
「実弾って!?こらーっ!俺を巻き込むな!!」

「当麻さんもきっと判ってくれるはず
 とミサカは世界平和のためには仕方のないことなのですと当麻さんに代わり力強く宣言します!」
「こら!勝手に他人を納得したことにしてんじゃねェ!」
「さようなら、上位個体。今度こそ息の根を止めてさしあげます
 とミサカは今まで受けた数々のイタズラを回顧しつつようやく幕引きができるこの因縁に感慨深く
 トリガーを引き絞ります」

 再びドガガガガガガッ!!という銃撃音が室内に鳴り響く。

「強制割り込みコード発令。チェンジ!ハイパーモード!」

 銃撃と同時に打ち止めが発した割り込み指令により上条は眩い閃光に包まれる。

「それを目くらましにしようとしても無駄です
 とミサカは予備のマガジンを装填し出口までの予想逃走経路に弾幕を張ってみせます」

 予備のマガジンを全て撃ち尽くすとようやく司令室に静寂が訪れた。立ちこめた硝煙が晴れると
そこにはマント姿の上条が立っており、雨霰と叩き付けられた実弾を上条の身体を盾にして回避し
た打ち止めがその影から顔を出す。

「残念でしたッ!そんな攻撃程度じゃ新しいスーツに傷一つ付けられないんだから
 ってミサカはミサカは声高らかに勝利宣言してみる」

 その隣で変形した自分のスーツを見た上条がワナワナと震え出す。

「これってまさか…………」
「そう!うさぎに対抗するならタキ○ード仮面が一番なの!
 ってミサカはミサカは発想の素晴らしさを自画自賛してみる」
「なんでおまえがセー○ー○ーンなんかを知ってやがる!?」
「セー○ー○ーンなら第一シリーズからセー○スターズまで全200話コンプリートなの
 ってミサカはミサカはミサカネットワークの映像ライブラリの充実ぶりをさりげなく自慢してみる」
「ふっ、上位個体の嗜好のために全ミサカに2時間のアニメ鑑賞が課せられたのは10日前です
 とミサカは補足説明にかこつけて上位個体に対する不満をここぞとばかりに吐露してみせます」


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