とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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「ミサカ、巫女と美琴(みさかみことみこと)」第4話「ホワイトバニーの幻影」

(Chap.3)

 土曜日10:10 学園都市内某ビルの一室

 学園都市内某ビルの一室に一人の少女が飛び込んできた。 

「なにごとです!?建宮」

 少女は世界でも20人程しかいない聖人でありロンドンでも五指に入る実力を持つ魔術師である。
齢18歳にして女教皇として天草式十字凄教をまとめる少女はナイスバディと落ち着いた話ぶりから
実年齢よりも年上に見られることが多く、上条からは『結婚適齢期を過ぎているようにしか見えない』
とまで思われている、ある意味で幸薄い少女である。

「実は我々では対処できない不測の事態が起こりまして。
 是非とも女教皇様(プリエステス)のお力をお貸し頂きたいのです」

 深刻そうに話し始める建宮斎字につられ、神裂火織もその表情を真剣なものに変える。

「一体何があったのです?」
「実は……………………津島がギックリ腰になってしまいました」
「はあ?…………それは大変…………なのでしょうが……………………
 どうしてそれが私を呼び出すほどの不測の事態なのです?」

 先が見えない話の展開につい間抜けな返事をしてしまう。

「我々は今学園都市の依頼で動いている傍ら、我ら独自の判断で上条殿の協力者となって
 頂けそうな能力者への対魔術師戦闘訓練を行っているのはプリエステスもご存じのはず」
「ええ。五和が随分と頑張ってくれたと聞いています」

「先日行った模擬戦闘では彼女達は五和を打ち破る程までに成長いたしました。
 今回の模擬戦闘では津島に腕を振るってもらうハズだったのですが…………、
 このような事態となりどうしたものかと思案していたところなのです」
「そういうことですか。…………では津島の代役を立てるしかありませんね」
「おおッッ!!プリエステスがそう言って頂けるとはありがたい。ではこれをどうぞ!」
「えっ????」

 不意に建宮から押しつけられた風呂敷包みを訳も判らぬまま受け取ってしまった神裂火織は
頭の上に?マークをいくつも浮かべてしまう。

「これは………………一体、なんなのです?」

 渡された風呂敷包みの結び目に手を掛けた神裂火織であったが結び目を解いた瞬間その手が
ピタッと止まってしまう。風呂敷包みの中からウサギの耳が飛び出したせいなのだが、それをウサギ
の耳だと正しく認識するに至り風呂敷に掛けた右手がプルプルと震えだす。

 そして下を向いていた顔がクワッ!!とあがり建宮を睨み付けたかと思うと風呂敷包みごとお色気
エロバニーを床に叩き付けた。そして建宮の胸ぐらを掴むと脅すように問いかける。

「建宮!あれは一体何ですか!?」
「はあ?
 あれは津島の代役を引き受けて頂いたプリエステスに着て頂くコスチュームですが…………
 何か問題でも?」
「大ありですッ!!何故私があんな破廉恥なものを着ないといけないのです!?」
「なにを仰る、プリエステス!!これは全て上条当麻殿のためなのですぞ!」
「うっ!」

 上条当麻の名を出されると神裂火織も弱い。それを知っている建宮は一気にたたみ掛ける。

「上条殿は今や魔術サイドにおいて最も耳目を集める科学サイドの存在なのですぞ。
 我ら天草式十字凄教が公然と上条殿と関わりを持てば魔術サイドにおいて良からぬ憶測をされる
 可能性がある。だから我らはキシサクマアという架空の秘密結社を創ったのではありませんか?
 プリエステスもそのことはご承知のはず!ならば事ここに至ってなにを躊躇なさるのです!?」
「くっ………………ッ」
「先ほどプリエステスが仰ったではありませんか。これは津島の代役なのですぞ。
 上条殿のお仲間との模擬戦闘を行うのにプリエステス以上の適任者などおりましょうか!?」

 こめかみに青筋を浮かべ怒りに身体を震わせる神裂火織であったが、一見正論にも思える建宮
のたたみ掛けに反論の糸口すら見つけることができない。かといって怒りの炎を鎮めることもできる
ハズもなかった。

「………………………………建宮。これは誰の入れ知恵です?
 はっ、そうか!土御門ですね。土御門でしょ!こんなことするのは土御門に違いありません。
 あん畜生!ごぉぉらあぁぁぁぁあああああ!!土御門ぉぉおおおおおおおおおお!
 どうせどこかで覗き見して笑ってやがるんだろぉがああああああああああああ!
 とっとと出て来やがれ!
 そのニヤけた面ぁぁぁ真っ二つに叩き切ってやらぁぁああああああああああ!」

 完璧にブチ切れモードに突入した神裂火織を前にしても建宮斎字は涼しい顔を崩さない。

「はしたないですぞ。プリエステスともあろうお方が。少しは落ち着いて下さい」
「何を呑気なことを言っているのです!こんなことをされて冷静でいられる訳ありません!」
「勘違いをなされているようですが今回はたまたま津島の体調不良のせいでプリエステスに
 代役をお願いしただけのこと。この件に土御門殿は関わっておりませんぞ」
「いいえ!きっとあの野郎が裏で糸を引いている筈です!さあ正直に白状なさい!!」
「考え過ぎです。それより、そろそろお覚悟をお決めになって下さい」

「イヤ、それは…………そのッ…………そ、そうです!今すぐ回復魔術で津島を治療しましょう!
 そうすれば全て丸く収まるではありませんか!?」
「それが申し上げにくいのですが、あいにく津島は今女性の日でもありまして………………」
「な……………………ッ、そっ、それなら…………
 そう!首領が別に女性である必要など無いでしょう?
 建宮!あなたが首領だという設定で予告ビデオを撮り直せば良いのではありませんか!?」
「いえ、既に犯行予告ビデオは発送済みでして………………」

 そう言った建宮が指を鳴らすと室内の照明が落ち壁際に設置されたスクリーンに上条達が見た犯
行予告ビデオが映し出される。そして首領の登場シーンに差し掛かると神裂火織が大声をあげる。

「なっ!なんですか!?建宮!このシルエットは!?」
「何ですかと言われましてもこれは津島ですが。どう致しました?プリエステス」
「このシルエットは私のものでしょッ!!」
「何を仰います。どこから見ても津島ではありませんか」

「しかし建宮!津島にしては………………その、なんです。少し、胸が豊か過ぎませんか?」

 津島に気を遣ったのか、問い詰める声も最後がゴニョゴニョと尻すぼみになっては迫力不足にな
るのは否めない。建宮もそれを承知しているのかしれっと返答する。

「それは仕立屋が迂闊にも寸法を間違えまして急場をしのぐため仕方なく胸に詰め物をしたから
 です。まあそのせいもあってシルエットにせざるを得なかったのですが、そのおかげでこうして
 プリエステルのご協力を得ることができるのですから『人生塞翁が馬』とはよく言ったものです」

「なにを白々しい。
 ではなぜポニーテールなのです?しかも七天七刀まで持っているではありませんか?」
「これは上条当麻殿の女性の好みが『寮の管理人のお姉さん』タイプだという情報を入手しました
 ので急遽津島にロングヘアーと竹箒をセットしただけのことです。
 しかし、そう言われて見れば何となくプリエステスに似ている気もしてきました。
 何にせよ。これでプリエステスの御出陣になんも問題が無いことが確認できました。
 ですからご遠慮なさらずに。さあ!!」
「いえ、それは…………「「「「「「 さ あ 」」」」」」…………」

 神裂火織の最後の抵抗は周囲から一斉に掛けられた声に遮られてしまった。ここに至り神裂火織
はいつの間にか建宮をはじめとする浦上、牛深、香焼、諫早、野母崎ら天草式十字凄教の男衆に
取り囲まれていることに気付く。

「どっ、どうしたのですか?あなた達のその迫力は…………」

 不退転のオーラをまとわせ神裂火織に迫る天草式十字凄教の男衆。その迫力に思わず後ずさる
神裂火織であったがとうとう壁際まで追い詰められてしまう。

「「「「「「 さ あ 」」」」」」

 天草式十字凄教の男衆に逃げ道を全て塞がれた神裂火織はとうとう力無く項垂れてしまった。
それを首肯と判断した男衆は揃って喜びの声を上げる。

「「「「「「おお、それでこそ。我らが女教皇様(プリエステス)」」」」」」

 その時、隣室のモニターでその様子を冷ややかに見ていた対馬と五和は呆れたように呟く。

「全く!ウチの男どもときたら、この情熱を他の何かにつかえないものかしら」
「はは、まあ、そう…………ですね、はあぁぁ────ぁ」


%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%

土曜日19:30 第21学区天文台テラス

 ようやく夜の帳に包まれた天文台のテラスのベンチに一組の少年と少女が並んで腰掛けていた。
天体観測用に開放されたテラスは一切の照明が落とされており少女の紅潮した頬を照らすのは
星明かりのみであり、その少女が右手を挙げて夜空に輝く一つの星を指差す。

「あれがデネブ。それにあっちがアルタイルにベガ。今の時期でも夏の大三角ってまだ西の空に
 よく見えるのよね」
「へぇ────!御坂ってなんでも良く知ってるなあ」
「なに言ってんのよ。こんなの常識でしょ!高校生にもなってなんで知らないのよ」
「あのな────ッ!そうそう星座に興味のある男子高校生がいてたまるか!!」

「それじゃ、良いこと教えてあげる!
 アンタの星座の水瓶座って今の時期だと南の空の低い所にあるのよ。
 えーっと、ほらあの背の高い木の少し上の方にあるのがそうよ。」
「はあ?水瓶座って言われても俺にはサッパリ判んねえぞ!?
 一体どの星を繋げりゃ水瓶になるってんだ?」

「馬鹿ねッ!水瓶座って言ったって別に星が水瓶の形に繋がってんじゃないわよ。
 ほらあそこから星を繋げると2本の流れになるでしょ!あれが水瓶から流れ出る水なのよ。
 その右にある星々が水瓶を持つ人の身体になっていてそれが全部集まって水瓶座なのよ」
「そういわれてもなあ?どの星のこと言ってんだぁ?」
「もう!ほら私が指差している星よ!わかるでしょ?」

 そう言って御坂美琴は星座を指差す右手を上条の顔の横に近づける。
 そこまでされると適当に相槌打って話を切り上げる訳にもいかなくなり、上条も真剣に水瓶座を
探さざるをえなくなってしまった。上条はまるでライフルの照準器の覗くように右目を閉じ御坂美琴
の肩越しに御坂美琴の右手が指す星々を探し始める。ただし、そのシチュエーションが星空の下
寄り添いながら甘い恋物語を語り合う恋人同士のようであることにまだ二人とも気付いていない。

 しかし星を探す上条の髪が御坂美琴の耳をくすぐった瞬間御坂美琴の体内を電流が駆け抜け、
肩がビクン!と跳ね上がる。上条の体温を頬に感じるほど自分達が寄り添っていることに気付いた
途端その小さな胸がキュン!と締め付けられ、ドックンドックンと心臓から送り出される血潮が瞬く
間に全身を火照らしていく。

「おい!今指を動かさないでくれよ。俺だって一生懸命探してんだからさ!」
「お…………ッ、おう!」

 思考回路がオーバーヒート寸前の御坂美琴はなんだか訳の判らない返事をしてしまう。

(ダメ!心臓がバクバクする。身体が熱くて汗が止まんない!汗くさいって思われたらどうしよう?)

 すると御坂美琴の横で星を探す上条の動きがふと何かに気付いたかのように不意に止まった。

「あれ?…………変だな?」
「えっ、なっ何?変な事なんてなぁ────んにもないじゃない!!」
「そう言えばなんで御坂が俺の星座を知ってんだ?」
「え?だって、ほら。…………そう!以前アンタと雑談してる時にそんな話になったことがあるのよ」
「えっ!?そうだっけ?」
「そうよ!だから深く考えない!…………………………ちなみに」

 御坂美琴はここで言葉を区切ってフゥ──ッ!と一息入れる。そして覚悟を決めると、

「…………私の星座は 「ちょっと!」座よ」
「??…………ちょっと座?」
「へっ!?ちっ、違うわよ!今のは私じゃなくて」
「ちょっと!…………上条君。御坂さん!」

──その声はベンチに座る二人の真後ろから掛けられたものだった。

「なんだ。姫神か!?」
「なんだとはまたずいぶんなご挨拶。ひょっとしてお邪魔だった?」
「ば、馬鹿言え!」
「冗談はさておき。もうすぐ予定の時間。そろそろ配置につかないと」
「えっ?もうそんな時間なのか?」
「でも秋沙。今回はラストオーダーが時間と場所をやけに細かく指定してきたけどの本当に相手は
 ラストオーダーの言った通りにやって来るのかしら?」

「今回。キシサクマアを迎撃するのは私達じゃない。
 私達は天文台に被害が及ばないように対処するのが役目。つまりはサポート役。
 天文台から道路を50m下った所で不測の事態に備えて待機しておけば良い」
「まあ、どこの誰が相手するのかは知らないけど、考えられる不測の事態って何なのかしらね?」
「さあ?例えば。その誰かさんがあっさり返り討ちに遭っちゃうとか?」
「まあ、その辺りの情報は御坂妹から逐一連絡が来るはずだからさ!」

「聞こえますか?ミサカは指示された観測ポイントに到着しました。
 とミサカはインカムを使ってお姉様達に現状を報告します。
 NVゴーグルも正常に稼働中。敵戦力出現予定時間まで後30秒。カウントダウンを開始します」



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