「ミサカ、巫女と美琴(みさかみことみこと)」第4話「ホワイトバニーの幻影」
(Chap.4)
土曜日19:55 第21学区天文台へ続く道路
天文台へと続く片側1車線の道路には山側に歩道があり街灯が30mごとに設置されている。点
在する街灯の下だけは明るいものの辺りはすっかり暗闇に包まれている。道路以外に人工物など
何もないその山腹の路肩に一台のオープンカーが駐車していた。
在する街灯の下だけは明るいものの辺りはすっかり暗闇に包まれている。道路以外に人工物など
何もないその山腹の路肩に一台のオープンカーが駐車していた。
そのオープンカーに小さな電子音が鳴り響くと運転席の影がゴソリ!と動く。リクライニングさせた
運転席に寝そべっていた一方通行が視線を向けたバックミラーには暗闇の中、道路を照らす街灯
のみが映っている。その一つの街灯の明かりの下に暗闇から1つの人影が吐き出された。
運転席に寝そべっていた一方通行が視線を向けたバックミラーには暗闇の中、道路を照らす街灯
のみが映っている。その一つの街灯の明かりの下に暗闇から1つの人影が吐き出された。
「ちッ、場所も時間も予定通りか。まあいい。誰が黒幕だか知らねェが今回は掌の上で遊ンでやる」
オープンカーから飛び降りた一方通行の紅い瞳は15m先の街灯の下に佇む人影を捉える。そ
れは長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズそして
腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好をしたウエスタンルックサムライガールだった。
れは長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズそして
腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好をしたウエスタンルックサムライガールだった。
そこから少し離れた林の中ではその様子を覗き見る香焼と建宮が小声で会話を交わしていた。
(教皇代理。プリエステスはホワイトバニーで出撃していただけるって話じゃなかったんすか?)
(そうなのよ。それが相手が上条当麻殿ではないと判った途端、ならばホワイトバニーになる必要
などありません!とか言って嬉々としてあのまま突撃されたのよ。くそッ!詰めを誤ったのよな!)
(そうなのよ。それが相手が上条当麻殿ではないと判った途端、ならばホワイトバニーになる必要
などありません!とか言って嬉々としてあのまま突撃されたのよ。くそッ!詰めを誤ったのよな!)
「天草式十字凄教の神裂火織と申します。故あって貴方とお手合わせさせて頂きます」
「ふン!オマエが誰でもイイけどよォ。本気で俺と殺す(やり)合う覚悟があるなら掛かってきな!」
「参ります!!」
「ふン!オマエが誰でもイイけどよォ。本気で俺と殺す(やり)合う覚悟があるなら掛かってきな!」
「参ります!!」
轟(ごう)ッッ!!
神裂火織が流れるような動作で右掌を前方に差し出すと爆炎が一方通行目指して噴き出した。
噴き出した爆炎は一方通行から見ればあたかも神裂火織が爆発したように見えたはずだ。しかし
一方通行は動じない。
神裂火織が流れるような動作で右掌を前方に差し出すと爆炎が一方通行目指して噴き出した。
噴き出した爆炎は一方通行から見ればあたかも神裂火織が爆発したように見えたはずだ。しかし
一方通行は動じない。
(ふン!そっちが能力を使ってくれるなら手間も省けるってもンだぜ。
これ程の業火ならテメェは骨も残せねェだろうが、恨むならテメエの強すぎる能力を恨むンだな)
これ程の業火ならテメェは骨も残せねェだろうが、恨むならテメエの強すぎる能力を恨むンだな)
だが爆炎が神裂火織の身体を焼くことはなかった。
一方通行に触れた爆炎は相手に反射することなく七色の光の粒に分解されてしまったからだ。
光の粒に分解された爆炎は一方通行の身体にまとわりつく感触を残して左右に流れ、路肩に留め
ていた車を歩道へ押し流し激しく横転させる。
一方通行に触れた爆炎は相手に反射することなく七色の光の粒に分解されてしまったからだ。
光の粒に分解された爆炎は一方通行の身体にまとわりつく感触を残して左右に流れ、路肩に留め
ていた車を歩道へ押し流し激しく横転させる。
(…………何だ?今のは…………)
不可解な現象に一方通行は眉をひそめる。
(さっきの炎は学園都市の能力者の炎とも、今まで闘ってきた雑魚魔術師どもの炎とも違う!)
一方通行が思考をめぐらせようとした時、大気が震えだし突如轟音が鳴り響いたかと思うと上空
300mの何もないハズの場所から真横へと直径50mはある巨大な火柱が噴き出した。一方通行は
その火柱を一瞥するとこの不可解な現象を引き起こした目の前の敵を睨み付ける。ところがその相
手も一方通行同様に今の状況に戸惑っているようだった。
300mの何もないハズの場所から真横へと直径50mはある巨大な火柱が噴き出した。一方通行は
その火柱を一瞥するとこの不可解な現象を引き起こした目の前の敵を睨み付ける。ところがその相
手も一方通行同様に今の状況に戸惑っているようだった。
(なンだァ?こいつまでキョトンとしやがって。どォいゥことだ?
クソッ!初めてテレポーターと殺し(やり)合った時のことを思い出しちまった。あン時はまだ3次元
空間限定の演算式しか組んでなかったから5次元空間を通って3次元空間に跳躍してくる攻撃を
上手く反射できなかったからな。5次元空間に拡張した演算式の組み直しにもう少し手間取って
いたらヤバかった!だが今度のはテレポーターの攻撃とも何かが違う)
クソッ!初めてテレポーターと殺し(やり)合った時のことを思い出しちまった。あン時はまだ3次元
空間限定の演算式しか組んでなかったから5次元空間を通って3次元空間に跳躍してくる攻撃を
上手く反射できなかったからな。5次元空間に拡張した演算式の組み直しにもう少し手間取って
いたらヤバかった!だが今度のはテレポーターの攻撃とも何かが違う)
一方、神裂火織も今の現象に戸惑っていた。ただ相手の怪訝そうな顔つきから相手もこの現象が
何であるか良く判っていないことだけは理解できた。
何であるか良く判っていないことだけは理解できた。
(このままではラチがあきません!もう一度行きます)
ドバッ!!と冷気の固まりが一方通行を襲う。
冷気とは言え神裂火織の放つ冷気はいわば-196℃の液体窒素の奔流であり生身の人間が喰
らえば数秒で氷柱と化すほどの威力だった。
冷気とは言え神裂火織の放つ冷気はいわば-196℃の液体窒素の奔流であり生身の人間が喰
らえば数秒で氷柱と化すほどの威力だった。
一方通行は右手をかざして迫り来る冷気のベクトルを反転させる。しかし今回も冷気は反射され
ずにまるで指の間から水がすり抜けていくように一方通行の右後方に七色の光となって流れ木々
をなぎ倒していった。
ずにまるで指の間から水がすり抜けていくように一方通行の右後方に七色の光となって流れ木々
をなぎ倒していった。
そして不意に地鳴りが起こりドゴッ!と大きく揺れたかと思うと500m程離れた山腹が突然爆発
し、大量の木々や岩や土砂を空中へ撒き散らした。これが通常の爆発と違うのは明らかであった。
なにせ爆発した山肌の下から何千本もの氷の槍が剣山のようにせり出していたのだから。
し、大量の木々や岩や土砂を空中へ撒き散らした。これが通常の爆発と違うのは明らかであった。
なにせ爆発した山肌の下から何千本もの氷の槍が剣山のようにせり出していたのだから。
(この攻撃もやっぱり今までの能力者とも魔術師とも違う!なんだ一体?)
神裂火織自身も気付いてはいないが神裂火織が繰りだす炎や冷気は7次元世界の炎や冷気で
ある。人間が認識できるのはたかだか3次元世界に顔を出したその一部であるが魔術の真の威力
は高次元世界に隠れたその本体の大きさによって決まる。上位の魔術師ほどより高次元の炎や
冷気を扱うため見た目は下位の魔術師のものと同じでもその威力は桁違いになるのだった。
ある。人間が認識できるのはたかだか3次元世界に顔を出したその一部であるが魔術の真の威力
は高次元世界に隠れたその本体の大きさによって決まる。上位の魔術師ほどより高次元の炎や
冷気を扱うため見た目は下位の魔術師のものと同じでもその威力は桁違いになるのだった。
一方通行は7次元世界の炎を5次元世界で反射したため5次元世界で引き千切られた7次元世
界の炎がその原型を失い七色の光へと分解されたのだ。しかも一方通行は巨大な氷山を水上部
分だけベクトル変換により押し戻したようなものであるから、その衝撃で水面下にある氷山の本体が
砕け水上に顔を出したのが先ほど空中に生じた火柱や山腹に現れた数千本もの氷の槍であった。
界の炎がその原型を失い七色の光へと分解されたのだ。しかも一方通行は巨大な氷山を水上部
分だけベクトル変換により押し戻したようなものであるから、その衝撃で水面下にある氷山の本体が
砕け水上に顔を出したのが先ほど空中に生じた火柱や山腹に現れた数千本もの氷の槍であった。
結局、神裂火織も何故このような現象が起こるのか理解できなかったがこのまま一方通行に魔術
攻撃を繰り返せば周りに及ぼす被害が甚大になることだけは容易に理解できた。だから一方通行
に向けていた右手を降ろすと七天七刀の柄を強く握りしめるのだった。
攻撃を繰り返せば周りに及ぼす被害が甚大になることだけは容易に理解できた。だから一方通行
に向けていた右手を降ろすと七天七刀の柄を強く握りしめるのだった。
「どうした?もう手品はお終いか?」
「いいえ!まだまだッ!七閃ッッ!!」
「いいえ!まだまだッ!七閃ッッ!!」
神裂火織が操る七本の鋼糸(ワイヤー)がアスファルトを削りながら四方八方から一方通行に迫
る。しかし目標を切り裂くはずの鋼糸は一方通行に触れた途端ギン!と金切り音を立てて弾かれ、
一方通行から四方のアスファルトに亀裂が入ったかと思うと、進行方向ににある街灯や横転した
オープンカーをズタズタに切り裂きスクラップに変えていく。
反射してきた2本の鋼糸の先端を神裂火織は両手を振るい鋼糸の根本を操って迎撃する。僅か
0.1秒の間に神裂火織と一方通行の間にいくつもの火花が炸裂する。そして一瞬遅れて一方通
行の背後の木がなぎ倒された。
る。しかし目標を切り裂くはずの鋼糸は一方通行に触れた途端ギン!と金切り音を立てて弾かれ、
一方通行から四方のアスファルトに亀裂が入ったかと思うと、進行方向ににある街灯や横転した
オープンカーをズタズタに切り裂きスクラップに変えていく。
反射してきた2本の鋼糸の先端を神裂火織は両手を振るい鋼糸の根本を操って迎撃する。僅か
0.1秒の間に神裂火織と一方通行の間にいくつもの火花が炸裂する。そして一瞬遅れて一方通
行の背後の木がなぎ倒された。
「オイ!今のは一体何のお遊戯なンだァ?いい加減、本気を出さねェと速攻でブッ殺すぞ!!」
「時間差をつけた最後の一本が本命だったのですが…………
やはり貴方の反射に死角は無いようですね。ではこれではどうです?」
「グダグダ言ってねェで、さっさと掛かってくりゃいいンだよ。三下!」
「時間差をつけた最後の一本が本命だったのですが…………
やはり貴方の反射に死角は無いようですね。ではこれではどうです?」
「グダグダ言ってねェで、さっさと掛かってくりゃいいンだよ。三下!」
相手が聖人だろうが何だろうが関係ない。
一方通行はあくまで面倒くさそうに言い放つ。
事実、ここで一方通行がすることなど何もなかった。能力を反射に設定している以上、相手がどん
な能力を繰り出そうが一方通行には関係ない。相手は反射した自身の能力に傷つき倒れていくだ
けなのだから。
一方通行はあくまで面倒くさそうに言い放つ。
事実、ここで一方通行がすることなど何もなかった。能力を反射に設定している以上、相手がどん
な能力を繰り出そうが一方通行には関係ない。相手は反射した自身の能力に傷つき倒れていくだ
けなのだから。
しかし次の瞬間一方通行が予期せぬ事が起こる。
眉間に皺を寄せる一方通行の瞳はスパッと縦に裂けた自身のシャツの右袖を捉えた。身体に傷
が付いた訳ではない。しかし敵の攻撃が反射をすり抜けたという事実は一方通行を驚愕させた。
眉間に皺を寄せる一方通行の瞳はスパッと縦に裂けた自身のシャツの右袖を捉えた。身体に傷
が付いた訳ではない。しかし敵の攻撃が反射をすり抜けたという事実は一方通行を驚愕させた。
(なンで俺のシャツが裂けてンだ!?一体何が起こりやがった?
妙なもンは何も通過しなかったハズだ)
妙なもンは何も通過しなかったハズだ)
一方通行の動揺する表情を見て神裂火織は薄く笑みを漏らす。
同時に自嘲気味にまるで独り言のように言葉を吐き出した。
同時に自嘲気味にまるで独り言のように言葉を吐き出した。
「ふっ!やはり『西新宿のせんべい屋』のようにはいきませんね。まだまだ未熟です。
でも、この方法ならあなたを傷付けることぐらいはできそうですね」
(何しやがったンだ、コイツは!?未知の能力でも使いやがるのか?)
「種明かしをさせていただくと先ほど貴方のシャツを切り裂いたのは直径1000分の1ミクロン
のチタン合金製の糸なんです」
(ざけンな!たとえ目に見えねェぐらい細い糸だろうが俺の反射をくぐり抜けられるハズはねェ!
欺瞞情報で俺を混乱させる気か?こいつァ!?)
「今のをハッタリだと思っているようですね?ではもう一度行きます!」
でも、この方法ならあなたを傷付けることぐらいはできそうですね」
(何しやがったンだ、コイツは!?未知の能力でも使いやがるのか?)
「種明かしをさせていただくと先ほど貴方のシャツを切り裂いたのは直径1000分の1ミクロン
のチタン合金製の糸なんです」
(ざけンな!たとえ目に見えねェぐらい細い糸だろうが俺の反射をくぐり抜けられるハズはねェ!
欺瞞情報で俺を混乱させる気か?こいつァ!?)
「今のをハッタリだと思っているようですね?ではもう一度行きます!」
今度はシャツだけでなく一方通行の左肩までもが音もなく裂けた。傷は浅いものの鮮やかな切り
口から滲む血が一方通行のシャツを赤く染め始める。
口から滲む血が一方通行のシャツを赤く染め始める。
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
『出現した敵戦力は1名のみ。とミサカは大気中のお姉様方に現状を簡潔に報告致します』
御坂妹からの戦況報告は上条、御坂美琴、姫神秋沙のインカムに届いていた。
『やっぱり、予告ビデオに出てきた女(ヤツ)なの!?』
『観測された顔立ちならびに体格より東洋系の若い女性である確率は78%、ただし予告ビデオの
ようなバニーなコスチュームではありません。残念でしたね。当麻さん!っとミサカはちょっとトゲの
ある言い方で当麻さんに向けたメッセージをこっそりと報告致します』
「痛って────ッ」
『観測された顔立ちならびに体格より東洋系の若い女性である確率は78%、ただし予告ビデオの
ようなバニーなコスチュームではありません。残念でしたね。当麻さん!っとミサカはちょっとトゲの
ある言い方で当麻さんに向けたメッセージをこっそりと報告致します』
「痛って────ッ」
両耳を御坂美琴と姫神秋沙に同時に左右から引っ張られ上条は思わず声をあげてしまう。
「へ────ッ!やっぱりバニーが良いんだ!アンタってッ!!」
「なんせ相手は見事な巨乳。そうだったね。上条君ッ!!」
「待て、そんな目で俺を睨むんじゃない!
だから落ち着けって!止めろ!ビリビリするんじゃねえ!それに特殊警棒も出すんじゃないッ!
そもそも俺はそんなこと一言も言ってねえだろうがッ!!」
『てっきり当麻さんはガッカリされるものだと思っていました、っとミサカは追い打ちをかけてみます』
『こら!御坂妹。だ・か・ら・俺はガッカリなんかしちゃいねえよッ!!』
「なんせ相手は見事な巨乳。そうだったね。上条君ッ!!」
「待て、そんな目で俺を睨むんじゃない!
だから落ち着けって!止めろ!ビリビリするんじゃねえ!それに特殊警棒も出すんじゃないッ!
そもそも俺はそんなこと一言も言ってねえだろうがッ!!」
『てっきり当麻さんはガッカリされるものだと思っていました、っとミサカは追い打ちをかけてみます』
『こら!御坂妹。だ・か・ら・俺はガッカリなんかしちゃいねえよッ!!』
『まあ良いわ!それよりさっき空から噴き出した炎とか山腹を突き破った氷の槍は一体何なのよ!』
『わかりません!とミサカは潔くキッパリと回答します。先ほどの現象とこちらの戦闘との因果関係は
不明。ただし、敵戦力の火炎攻撃ならびに冷気攻撃に関連していた可能性は高いと判断します』
「火炎に冷気かね。多重能力者(デュアルスキル)な訳ないからやっぱり今回の敵も魔術師ね!」
『でっ。どうなの。戦況は』
『一方通行の左腕からの出血を確認、っとミサカはあの一方通行が傷付いたことに驚きつつ戦況が
膠着状態に入ったことを報告します』
「あの一方通行に傷を負わせるって……………………キシサクマアの首領って一体どんな化け物
なのよ!まったく!」
『わかりません!とミサカは潔くキッパリと回答します。先ほどの現象とこちらの戦闘との因果関係は
不明。ただし、敵戦力の火炎攻撃ならびに冷気攻撃に関連していた可能性は高いと判断します』
「火炎に冷気かね。多重能力者(デュアルスキル)な訳ないからやっぱり今回の敵も魔術師ね!」
『でっ。どうなの。戦況は』
『一方通行の左腕からの出血を確認、っとミサカはあの一方通行が傷付いたことに驚きつつ戦況が
膠着状態に入ったことを報告します』
「あの一方通行に傷を負わせるって……………………キシサクマアの首領って一体どんな化け物
なのよ!まったく!」
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
二度も身体を傷付けられれば一方通行も敵の攻撃が反射をすり抜けたのだと認めざるを得ない。
(クソッ!判らねえェ。
さっき俺の反射を通過したのは必要最低限の可視光と可聴音に重力に酸素ぐらいなもンだ。
チタンなんてもンは通過しなかったハズだ。一体コイツは何を使って攻撃してやがるッ!?)
さっき俺の反射を通過したのは必要最低限の可視光と可聴音に重力に酸素ぐらいなもンだ。
チタンなんてもンは通過しなかったハズだ。一体コイツは何を使って攻撃してやがるッ!?)
「まだ判りませんか?あなたを傷付けたのは正真正銘チタン合金製の不可視の糸です。
とはいえ、本来ならこんなものであなたを傷付けることなどできるはずもありません。
ですから今回は糸の表面に少々細工を施しておきました。」
「表面に細工だァ?………………………………まさか、そォ言ゥことか!?」
「気付きましたか?間違っていたら今度地面に落ちるのはあなたの首ですよ」
とはいえ、本来ならこんなものであなたを傷付けることなどできるはずもありません。
ですから今回は糸の表面に少々細工を施しておきました。」
「表面に細工だァ?………………………………まさか、そォ言ゥことか!?」
「気付きましたか?間違っていたら今度地面に落ちるのはあなたの首ですよ」
次の瞬間、キンッ!という微かな音が鳴り響く。すると一方通行の背後にあった街灯の支柱に細
い斬線が走り照明がスッと消え落ちる。そして斬線に沿って街灯の上部構造がずり落ちズゴッ!!
と音を立てて道路に突き刺さるとゆっくりと傾き始め大音響を響かせて横倒しになった。
い斬線が走り照明がスッと消え落ちる。そして斬線に沿って街灯の上部構造がずり落ちズゴッ!!
と音を立てて道路に突き刺さるとゆっくりと傾き始め大音響を響かせて横倒しになった。
「なるほど。
まさかチタンの糸の表面を酸素分子でびっしりコーティングしてやがったとはなッ!
そりゃ俺の反射にも引っ掛からねェ訳だ。
オマエ達もなかなかどォして大した(科学)技術を持ってるじゃねェか?」
「見事です。
でもひとつだけ訂正して頂きます。
学園都市の科学技術をもってしてもこの不可視の糸は作れません!僅か1000分の1ミクロンの
チタン合金製の糸に金属を切り裂く強度を与えることも、そして斬撃に耐えられるほど強固に酸素
原子をチタン合金に吸着させることはできません。それを可能にしたのは技術ではなく魔術です」
「そんなこたァ、どうでもイイ。
で?どォすンだ。せっかく俺に勝てる唯一のチャンスをみすみす手放すなンてよォ!
オマエ、そんなに早死にしてェのか?」
まさかチタンの糸の表面を酸素分子でびっしりコーティングしてやがったとはなッ!
そりゃ俺の反射にも引っ掛からねェ訳だ。
オマエ達もなかなかどォして大した(科学)技術を持ってるじゃねェか?」
「見事です。
でもひとつだけ訂正して頂きます。
学園都市の科学技術をもってしてもこの不可視の糸は作れません!僅か1000分の1ミクロンの
チタン合金製の糸に金属を切り裂く強度を与えることも、そして斬撃に耐えられるほど強固に酸素
原子をチタン合金に吸着させることはできません。それを可能にしたのは技術ではなく魔術です」
「そんなこたァ、どうでもイイ。
で?どォすンだ。せっかく俺に勝てる唯一のチャンスをみすみす手放すなンてよォ!
オマエ、そんなに早死にしてェのか?」
手の内さえ判ればそれが科学だろうが魔術だろうが関係ない。
しかし神裂火織を指差す一方通行の言葉が終わらない内にその手に鋭い痛みが走る。思わず
手を引いた一方通行の手の甲には一本の朱線が走っていた。
しかし神裂火織を指差す一方通行の言葉が終わらない内にその手に鋭い痛みが走る。思わず
手を引いた一方通行の手の甲には一本の朱線が走っていた。
「あなたこそ、そんなおしゃべりをする余裕なんてあるのですか?
本来、私は攻撃する前にわざわざあなたに予告する必要など無いのですよ」
(ちィィィ!)
本来、私は攻撃する前にわざわざあなたに予告する必要など無いのですよ」
(ちィィィ!)
再びキンッ!という音が鳴り響くと今度は一方通行の右隣の大木がなぎ倒される。
「そうです。この攻撃から逃れるためにはあなたは酸素を全て反射し続けるしかありません。
しかし無酸素状態であなたはあと何分耐えられますか?」
(確かにこのままじゃヤバイ!なら、酸欠になる前に速攻ォで片ァ付けてやるッ!)
しかし無酸素状態であなたはあと何分耐えられますか?」
(確かにこのままじゃヤバイ!なら、酸欠になる前に速攻ォで片ァ付けてやるッ!)
地面を軽く蹴っただけで一方通行は矢のようなスピードで神裂火織に迫る。その意図は単純だ。
不可視の糸を防ぐことができないのならそれを操っているものを倒せば良い。ただそれだけだ。
相手の切り札を封じた以上一方通行を遮るものなど何もない。相手がテレポーターでもない限り
一方通行から時間稼ぎの逃走を図ることも不可能であろう。しかし神裂火織まであと7mと迫った
とき、突然地面が眩く発光し一方通行はその光に飲み込まれてしまった。
不可視の糸を防ぐことができないのならそれを操っているものを倒せば良い。ただそれだけだ。
相手の切り札を封じた以上一方通行を遮るものなど何もない。相手がテレポーターでもない限り
一方通行から時間稼ぎの逃走を図ることも不可能であろう。しかし神裂火織まであと7mと迫った
とき、突然地面が眩く発光し一方通行はその光に飲み込まれてしまった。
(なンだァ、この光は?攻撃じゃァねェが…………チッ!目くらましか!?クソッ、逃がすかよ!)
眩い発光は一瞬で収まったが今敵を見失えば敵の射程を把握していない一方通行が不利にな
るのは明白である。逃走に転じたハズの相手を逃がすまいと一方通行は素早く周囲を探索する。
しかし意外にも前方7mの場所すなわち地面が発光する前と同じ位置に神裂火織は立っていた。
先ほどの発光が逃走用の目くらましでは無かったことに少々気抜けしたせいで一方通行は自分に
起こった不思議な現象に気付くのが遅れてしまった。
るのは明白である。逃走に転じたハズの相手を逃がすまいと一方通行は素早く周囲を探索する。
しかし意外にも前方7mの場所すなわち地面が発光する前と同じ位置に神裂火織は立っていた。
先ほどの発光が逃走用の目くらましでは無かったことに少々気抜けしたせいで一方通行は自分に
起こった不思議な現象に気付くのが遅れてしまった。
(???なンで、さっきから同じ場所にいるんだ俺は!?)
先ほど地面が発光してから既に3秒は経っているハズなのに一方通行は今なお発光前と同じ位
置にいた。一方通行がその能力を打ち切った訳ではない。外部から加わる力を全てベクトル変換
し推力に変換している手応えはある。一方通行の感覚としてはスピードを落とすことなく今なお前
進しているハズなのに相手との距離が一向に縮まらない。まるで一方通行が今存在している空間
ごと同じ速度で引き戻されているかのようだった。
置にいた。一方通行がその能力を打ち切った訳ではない。外部から加わる力を全てベクトル変換
し推力に変換している手応えはある。一方通行の感覚としてはスピードを落とすことなく今なお前
進しているハズなのに相手との距離が一向に縮まらない。まるで一方通行が今存在している空間
ごと同じ速度で引き戻されているかのようだった。
(なんだァ!?ミサカネットワークとの接続をジャミングされた訳じゃない。
俺の能力は正常に働いている。じゃァなンでヤツに近づけねェ!?。
念動力?…………いや!周りに念動力者の力場なンて存在しちゃいねェし、そもそもそンな
もンで俺が止められるハズはねェ。
催眠術…………そんなチンケな心理攻撃でもねェ。
じゃァ一体何が俺の身体を拘束してやがる?)
俺の能力は正常に働いている。じゃァなンでヤツに近づけねェ!?。
念動力?…………いや!周りに念動力者の力場なンて存在しちゃいねェし、そもそもそンな
もンで俺が止められるハズはねェ。
催眠術…………そんなチンケな心理攻撃でもねェ。
じゃァ一体何が俺の身体を拘束してやがる?)
その時一方通行は気付いていなかった。その足下の地面に描かれた魔法陣に。
一方通行を襲った七閃が跳ね返された時、神裂火織は弾かれた鋼糸を使って一方通行と自分と
の間に魔法陣が描いていた。それはある方向へは進めるが反対方向には進めなくなるように空間
を湾曲させる『無限回廊』という名の高位魔法陣である。
一方通行を襲った七閃が跳ね返された時、神裂火織は弾かれた鋼糸を使って一方通行と自分と
の間に魔法陣が描いていた。それはある方向へは進めるが反対方向には進めなくなるように空間
を湾曲させる『無限回廊』という名の高位魔法陣である。
(早くコイツの攻撃を解析しないと流石の俺もヤバイ。タイムリミットまで30秒位しかねェ!
さっきの火炎に冷気といいコイツの攻撃は一体どォなってやがる。
テレポーターと殺し(やり)あった時の奇妙な現象とも違う。…………待て…………そうかっ!
もしかしてそういうことか。なンてこった。気付くのが遅すぎた。今から間に合うか!?)
さっきの火炎に冷気といいコイツの攻撃は一体どォなってやがる。
テレポーターと殺し(やり)あった時の奇妙な現象とも違う。…………待て…………そうかっ!
もしかしてそういうことか。なンてこった。気付くのが遅すぎた。今から間に合うか!?)
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
『一方通行が敵に突進するも現在何らかの方法で敵にその動きを拘束されている模様、とミサカ
は手に汗握りつつ戦闘の実況を続けます』
「あの一方通行を拘束するって…………魔術ってそんなこともできる訳?」
「俺に聞かれたって、俺だって判らねえよ!」
「ごめんなさい。わたしにも判らない」
「魔術っていったい何なのよ!?」
『御坂妹!もう少し詳しく教えてくれないか?』
『……………………』
『おい!御坂妹!どうした!?』
は手に汗握りつつ戦闘の実況を続けます』
「あの一方通行を拘束するって…………魔術ってそんなこともできる訳?」
「俺に聞かれたって、俺だって判らねえよ!」
「ごめんなさい。わたしにも判らない」
「魔術っていったい何なのよ!?」
『御坂妹!もう少し詳しく教えてくれないか?』
『……………………』
『おい!御坂妹!どうした!?』
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
一方通行は目を閉じると推進力へのベクトル変換を止めて静かに地面に降り立った。その額には
珠の汗が浮かんでいる。一方、目の前で突然地面に降り立つ一方通行に神裂火織は緊張感を高
める。
珠の汗が浮かんでいる。一方、目の前で突然地面に降り立つ一方通行に神裂火織は緊張感を高
める。
(タイムリミットまで30秒は残っているはずですが、ひょっとして降参する…………訳ありませんね。
しかしこの無限回廊はそう易々と突破できませんよ。さあ!どうします?)
しかしこの無限回廊はそう易々と突破できませんよ。さあ!どうします?)
10秒後、一方通行は口元に笑みを浮かべると静かに右足を一歩踏み出す。すると神裂火織との
距離が一歩分近づいた。そして突然笑い声を上げた。それは正確には声では無い。前方の空気
を直接振動させて自分の声を作り出しているのだ。
距離が一歩分近づいた。そして突然笑い声を上げた。それは正確には声では無い。前方の空気
を直接振動させて自分の声を作り出しているのだ。
『フハハハッ!まったくもって愉快だぜ!
まさか7次元世界を経由して俺という存在に干渉してやがったとはな!恐れ入ったぜ。
だがタネがわかりゃァあとは簡単じゃねェか!』
まさか7次元世界を経由して俺という存在に干渉してやがったとはな!恐れ入ったぜ。
だがタネがわかりゃァあとは簡単じゃねェか!』
一方通行が左足を踏み出すと当然のように神裂火織との距離が一歩分縮まる。その当たり前の
ような光景に神裂火織は戦慄する。無限回廊を正面から突破した魔術師など一人も存在しない。
ような光景に神裂火織は戦慄する。無限回廊を正面から突破した魔術師など一人も存在しない。
無限回廊はその性質ゆえに敵の侵攻ルートが限定できる拠点防衛では絶大な効果を発揮する
ものの遊撃戦で使われることはなかった。魔術を知らない科学サイドが相手ならと考えていた神裂
火織も一方通行がカラクリに気付いてしまえば一旦後退してから回り込んでくるだろうとは想定して
いた。しかしまさか正面からこの術式を破ってくるとは夢にも思わなかった。
ものの遊撃戦で使われることはなかった。魔術を知らない科学サイドが相手ならと考えていた神裂
火織も一方通行がカラクリに気付いてしまえば一旦後退してから回り込んでくるだろうとは想定して
いた。しかしまさか正面からこの術式を破ってくるとは夢にも思わなかった。
無限回廊はハムスターが遊ぶホイールに例えることができる。ハムスターが1次元世界(ホイール
内壁)をどれだけ走ろうとも2次元世界において連結された世界(ホイール)からは決して抜け出せ
ないように無限回廊は3次元世界の特定の領域を7次元世界において連結させる術式である。
内壁)をどれだけ走ろうとも2次元世界において連結された世界(ホイール)からは決して抜け出せ
ないように無限回廊は3次元世界の特定の領域を7次元世界において連結させる術式である。
もっとも無限回廊は囚えたモノの前進を阻むが後退を妨げるものではない。それは一本の紐で作
る蚊取り線香のような渦巻きを思い浮かべれば理解しやすいだろう。渦の内側に向かって進む限り
終端に辿り着いても1周前に通過した場所に落ちてしまうため渦を抜け出すことは永遠にできない
が、逆方向に進みさえすれば簡単に脱出できる。
る蚊取り線香のような渦巻きを思い浮かべれば理解しやすいだろう。渦の内側に向かって進む限り
終端に辿り着いても1周前に通過した場所に落ちてしまうため渦を抜け出すことは永遠にできない
が、逆方向に進みさえすれば簡単に脱出できる。
だが一方通行はあえて前進を続けた。その上湾曲させた3次元世界を連結する7次元世界から
の干渉をベクトル変換し閉ざされた世界の秩序(ルール)を強引に書き換えていく。魔術師である
神裂火織は自分の使う術式の科学的原理を理解している訳ではない。しかし展開した術式が一方
通行によって浸食され喰い荒らされていく感触は神裂火織を震撼させた。
の干渉をベクトル変換し閉ざされた世界の秩序(ルール)を強引に書き換えていく。魔術師である
神裂火織は自分の使う術式の科学的原理を理解している訳ではない。しかし展開した術式が一方
通行によって浸食され喰い荒らされていく感触は神裂火織を震撼させた。
(まさかこの無限回廊を正面から突破してくるとは…………さすがは学園都市第一位。
まさに化け物レベルですね)
まさに化け物レベルですね)
まるで散歩するかのように無限回廊を歩いて来る一方通行に神裂火織はもはや無意味となった
無限回廊を解く。同時に魔法陣を描いていた鋼糸が地面から飛び上がり一方通行の身体に絡み
つく。それら鋼糸の終端は周囲の木々に巻き付けられていた。
無限回廊を解く。同時に魔法陣を描いていた鋼糸が地面から飛び上がり一方通行の身体に絡み
つく。それら鋼糸の終端は周囲の木々に巻き付けられていた。
『馬鹿が!こンなもンで何秒俺を止められると夢見てンだァ!オマエ』
一方通行が一歩進むたびに鋼糸が巻き付けられた周囲の木々がミシミシと音を立ててたわんで
いく。神裂火織の鋼糸は左文字の銘を継ぐ刀鍛冶が打ち上げた国宝級の一品である。それら異常
な程の頑強性を持つ鋼糸でさえもギリギリと悲鳴を上げ、一方通行があと3歩あるけば鋼糸の戒め
は限界を迎えるだろう。
いく。神裂火織の鋼糸は左文字の銘を継ぐ刀鍛冶が打ち上げた国宝級の一品である。それら異常
な程の頑強性を持つ鋼糸でさえもギリギリと悲鳴を上げ、一方通行があと3歩あるけば鋼糸の戒め
は限界を迎えるだろう。
『大見栄切って登場したくせにセコい手ばっか使いやがって!
それがオマエの器の小ささを表していることに気付かねェのかよォ!』
それがオマエの器の小ささを表していることに気付かねェのかよォ!』
一方通行の宣言に神裂火織は目をしばたたくと少し自虐的な笑みを浮かべる。
(フッ!…………その通りです。痛いところを突かれました。
やはり相手を酸欠にして穏便に勝利しようなどという考えがそもそも甘かったようです。
こちらも捨て身でいかなければなりません。…………ならば!)
やはり相手を酸欠にして穏便に勝利しようなどという考えがそもそも甘かったようです。
こちらも捨て身でいかなければなりません。…………ならば!)
唐突に一方通行に巻き付いていた鋼糸がシュルルッ!と解けると神裂火織の元に引き戻される。
『ン??』
「あなたの仰るとおりです。姑息な作戦は止めにしました。
糸も戻しましたからどうぞ深呼吸なさって下さい」
『俺がそンな見え透いた手に引っ掛かる間抜けだと思ってるのか?それともしおらしくすれば俺が
見逃してくれるとでも勘違いしてンのか?』
「いいえ、あなたが私の術を正面から破ったように私もあなたの能力を正面から打ち破りたくなった
だけです。それにあなたが負けた理由を後で酸欠のせいにされても困りますから」
『ぬかしやがれ!』
「あなたの仰るとおりです。姑息な作戦は止めにしました。
糸も戻しましたからどうぞ深呼吸なさって下さい」
『俺がそンな見え透いた手に引っ掛かる間抜けだと思ってるのか?それともしおらしくすれば俺が
見逃してくれるとでも勘違いしてンのか?』
「いいえ、あなたが私の術を正面から破ったように私もあなたの能力を正面から打ち破りたくなった
だけです。それにあなたが負けた理由を後で酸欠のせいにされても困りますから」
『ぬかしやがれ!』
一方通行はそんな言葉を素直に信じるほど甘くはない。だが余裕の表情で隠してはいたがその
時点で一方通行に余裕がなかったのも事実だ。酸欠に加えてミサカネットワークへの過負荷(オー
バーロード)が問題だった。7次元世界から干渉する力の解析と演算式の書き換えが代理演算を
圧迫し3次元世界での有害な酸素分子の反射という本来なら戦闘の片手間にできたハズの演算式
の書き換えすらできなかったのだ。暫しの休戦状態を利用してあるサイズ以上の酸素クラスターが
反射フィルターをすり抜けないように演算式を組み直すと慎重に外気を吸い込んだ。
時点で一方通行に余裕がなかったのも事実だ。酸欠に加えてミサカネットワークへの過負荷(オー
バーロード)が問題だった。7次元世界から干渉する力の解析と演算式の書き換えが代理演算を
圧迫し3次元世界での有害な酸素分子の反射という本来なら戦闘の片手間にできたハズの演算式
の書き換えすらできなかったのだ。暫しの休戦状態を利用してあるサイズ以上の酸素クラスターが
反射フィルターをすり抜けないように演算式を組み直すと慎重に外気を吸い込んだ。
(フ──ッ、本当にあの糸は引っ込めたみてェだな。しかしコイツは何を考えてやがる。
攻撃の前にいちいち俺に予告したり対策を練る余裕を与えたりするのはなンでだ!?)
攻撃の前にいちいち俺に予告したり対策を練る余裕を与えたりするのはなンでだ!?)
一方、神裂火織は呼吸を浅く時に深く繰り返し魔力を極限まで練り上げる。そして己が身を『神を
殺す者』へと作り替えていく。血管筋肉神経内臓骨格、それら全てが『神を殺せるように』組み替え
られていく。
殺す者』へと作り替えていく。血管筋肉神経内臓骨格、それら全てが『神を殺せるように』組み替え
られていく。
「やはりあなたには最初から私の魔法名を名乗るべきでした」