「さて。洗濯物がだるくて抜け出したは良いものの、これからどうしましょうか?」
アニェーゼ=サンクティスは薄暗い旧歩道を修道服で闊歩していた。その手には蓮の杖が握られている。
例の洗濯物は「部隊長の命令です」とか適当な事言ってカテリナに丸投げしたので問題は無いだろう。そもそも、あんな殺人レベルの洗い物を任されては命が幾つ有っても足りた物では無い。「適当に歩いてりゃ、時間も潰せるでしょうね」と、呑気な事呟きながら蓮の杖(護身用)をくるくると回す。
アニェーゼ=サンクティスは薄暗い旧歩道を修道服で闊歩していた。その手には蓮の杖が握られている。
例の洗濯物は「部隊長の命令です」とか適当な事言ってカテリナに丸投げしたので問題は無いだろう。そもそも、あんな殺人レベルの洗い物を任されては命が幾つ有っても足りた物では無い。「適当に歩いてりゃ、時間も潰せるでしょうね」と、呑気な事呟きながら蓮の杖(護身用)をくるくると回す。
「しっかしまぁ……この旧歩道。さっさと取り壊しちまえば楽でしょうに」
道幅が十m程の旧歩道にはアニェーゼ以外の人影は無く、ゴーストタウンの様な印象を受ける。ゴミこそ無い物の、お世辞にも綺麗とは言えない歩道を歩きながらアニェーゼは周りを見渡し、目を細める。
(酷い場所ですね。目に付く商店は八割がシャッターの下りきった閉店状態だし、歩道は全く整備されちゃいませんし、路地裏では女の子が絡まれてるし……え?)
その時アニェーゼ=サンクティスの目に入ったのは暗くて湿った路地裏に居る数個の人影。その殆どがスーツっぽい黒服の男で、それに囲まれる状態にある一人だけの少女がそれ等を獣のような目で睨みつけている。少し近づいてよく見てみると東洋系の少女のようだ。
なんと言うか穏やかな雰囲気では無い。パターンで言えば女の子大ピンチ。
道幅が十m程の旧歩道にはアニェーゼ以外の人影は無く、ゴーストタウンの様な印象を受ける。ゴミこそ無い物の、お世辞にも綺麗とは言えない歩道を歩きながらアニェーゼは周りを見渡し、目を細める。
(酷い場所ですね。目に付く商店は八割がシャッターの下りきった閉店状態だし、歩道は全く整備されちゃいませんし、路地裏では女の子が絡まれてるし……え?)
その時アニェーゼ=サンクティスの目に入ったのは暗くて湿った路地裏に居る数個の人影。その殆どがスーツっぽい黒服の男で、それに囲まれる状態にある一人だけの少女がそれ等を獣のような目で睨みつけている。少し近づいてよく見てみると東洋系の少女のようだ。
なんと言うか穏やかな雰囲気では無い。パターンで言えば女の子大ピンチ。
(あっちゃー、あれはまずそうですね。警察でも呼んでどうにかして貰うか、それとも……)
アニェーゼは手にある『蓮の杖(ロータスワンド)』を見る。恐らくコレを地面に叩きつければ、あの少女に近づく男の頭は嫌な音を立てて流血を始める事だろう。『蓮の杖(ロータスワンド)』とはそういう物だ。
(しかし、へんな事にわざわざ首突っ込むのも面倒くせえですし……)
大変ですねーと呑気に呟くアニェーゼ。そうこうしている間に男は完全に女の子を襲っちゃいます的雰囲気を醸し出して、ゆっくりと少女へ近づいていく。
アニェーゼは手にある『蓮の杖(ロータスワンド)』を見る。恐らくコレを地面に叩きつければ、あの少女に近づく男の頭は嫌な音を立てて流血を始める事だろう。『蓮の杖(ロータスワンド)』とはそういう物だ。
(しかし、へんな事にわざわざ首突っ込むのも面倒くせえですし……)
大変ですねーと呑気に呟くアニェーゼ。そうこうしている間に男は完全に女の子を襲っちゃいます的雰囲気を醸し出して、ゆっくりと少女へ近づいていく。
(さて、どうしましょうか………ん?)
アニェーゼはその時、その男の肩に『奇妙な形のシンボル』が貼り付けられている事に気づいた。十字に斜め線の一本入った黒色の紋章。彼女はそれに見覚えがある。
(……!! あの男!? ちっ、悩んでる暇は無さそうですね……)
決断したアニェーゼは路片に落ちていた石を拾い上げ、黒服男へと投げつけた。
アニェーゼはその時、その男の肩に『奇妙な形のシンボル』が貼り付けられている事に気づいた。十字に斜め線の一本入った黒色の紋章。彼女はそれに見覚えがある。
(……!! あの男!? ちっ、悩んでる暇は無さそうですね……)
決断したアニェーゼは路片に落ちていた石を拾い上げ、黒服男へと投げつけた。
バシッ! という音がして、絹旗に詰め寄る男の頭が若干横に振られた。
男はすぐさま衝撃の来た方向に憤怒の顔面を向ける。
「ったく。いい年して女の子なんか襲ってんじゃないですよロリコン野郎」
「……What?」
アニェーゼが石を投げたのは攻撃が目的ではなく、注意をこちらへ向けさせるための物だった。そして、計画通り男は修道姿の少女の方へと意識を向けた。
アニェーゼは限りなく声を低くして術式発動のための詠唱を始め、それに合わせて杖の先端がゆっくりと開き始める。
男はすぐさま衝撃の来た方向に憤怒の顔面を向ける。
「ったく。いい年して女の子なんか襲ってんじゃないですよロリコン野郎」
「……What?」
アニェーゼが石を投げたのは攻撃が目的ではなく、注意をこちらへ向けさせるための物だった。そして、計画通り男は修道姿の少女の方へと意識を向けた。
アニェーゼは限りなく声を低くして術式発動のための詠唱を始め、それに合わせて杖の先端がゆっくりと開き始める。
「Tutto paragone. Il quinto dei elementi. Ordina la canna che mostra pace ed ordina.Prima. Segua la legge di Dio ed una croce. Due Cose diverse sono connesse.」
(万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開。偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ)」
(万物照応。五大の元素の元の第五。平和と秩序の象徴『司教杖』を展開。偶像の一。神の子と十字架の法則に従い、異なる物と異なる者を接続せよ)」
アニェーゼは詠唱が終わると同時に『蓮の杖』を地面へと力の限り叩きつける。
その衝撃は若干のタイムラグを持って男の頭へと伝達された。先程とは比べ物にならない轟音が鳴り響き、男は頭を抑えて腰を折った。
「貴様……!!」
その衝撃は若干のタイムラグを持って男の頭へと伝達された。先程とは比べ物にならない轟音が鳴り響き、男は頭を抑えて腰を折った。
「貴様……!!」
「Era giapponese capace a discorso? Io sono tenero per essere capace adattarsi a quella ragazza. Io non ho niente per fare con me realmente.」
(なぁんだ、日本語喋れるじゃないですか。そっちの女の子に合わせるなんて案外優しいんですね。私には全く関係有りませんけど)
(なぁんだ、日本語喋れるじゃないですか。そっちの女の子に合わせるなんて案外優しいんですね。私には全く関係有りませんけど)
わざとイタリア語で返すアニェーゼ。案の定理解していない男は一瞬戸惑い、その隙にもう一発『蓮の杖』からの伝達攻撃を浴びせる。そして、今度こそ男は完全に動かなくなった。
何が起こっているのか分からない他の男達(+絹旗)。アニェーゼが鼻で笑ってもう二,三発同じを行動をし終えた頃には、絹旗の周りの黒服男達は全員地面に突っ張って、昇天していた。
「全く、この人数で女の子を襲うなんて大の大人のやる事じゃねえですよ。反省して平伏せててください」
少なくともアニェーゼが言える事では無いだろうが、それを指摘できる人間はこの場には居ない。
何が起こっているのか分からない他の男達(+絹旗)。アニェーゼが鼻で笑ってもう二,三発同じを行動をし終えた頃には、絹旗の周りの黒服男達は全員地面に突っ張って、昇天していた。
「全く、この人数で女の子を襲うなんて大の大人のやる事じゃねえですよ。反省して平伏せててください」
少なくともアニェーゼが言える事では無いだろうが、それを指摘できる人間はこの場には居ない。
「え……っと、なんだか超解りませんが取りあえず御礼は超言っときましょうか」
絹旗は見舞い品のヌイグルミをしっかりと抱きかかえて頭を下げた。アニェーゼは顔を逸らして「別に構いませんよ」と澄ました声で言葉を返す。そして倒れている謎の男達を見ながら、眉を寄せて質問した。
絹旗は見舞い品のヌイグルミをしっかりと抱きかかえて頭を下げた。アニェーゼは顔を逸らして「別に構いませんよ」と澄ました声で言葉を返す。そして倒れている謎の男達を見ながら、眉を寄せて質問した。
「それより、あなたはなんでこんなゴツイ男たちに囲まれていやがったんです? もしかしてこの男達は『そっちの人達』だったりして、追い詰められてたとか?」
「そんな事、私にも超解りませんよ。そこの骨董屋でヌイグルミを買って出てきたらいきなり超囲まれて訳がわかりません……ていうか、貴方誰です?」
ここに来てその質問か、と珍しく息を吐くアニェーゼ。
「アニェーゼ=サンクティス。まぁ、あれです。見ての通り修道女やってます」
「……絹旗最愛。見てのとおり、超日本人です」
外国だと自己紹介されたら、自分も返すのだろうか? と適当に考えた絹旗は『学園都市の人間である事を隠して』よく分からない自己紹介を返した。
「で、『じゃっぽーね(日本)』の方が一体こんな所で何してやがるんです?」
「……ええ、実は……」
この人は修道女(つまり優しい)、という事を前提にして絹旗は事情を(嘘を交えて)話し出した。
「そんな事、私にも超解りませんよ。そこの骨董屋でヌイグルミを買って出てきたらいきなり超囲まれて訳がわかりません……ていうか、貴方誰です?」
ここに来てその質問か、と珍しく息を吐くアニェーゼ。
「アニェーゼ=サンクティス。まぁ、あれです。見ての通り修道女やってます」
「……絹旗最愛。見てのとおり、超日本人です」
外国だと自己紹介されたら、自分も返すのだろうか? と適当に考えた絹旗は『学園都市の人間である事を隠して』よく分からない自己紹介を返した。
「で、『じゃっぽーね(日本)』の方が一体こんな所で何してやがるんです?」
「……ええ、実は……」
この人は修道女(つまり優しい)、という事を前提にして絹旗は事情を(嘘を交えて)話し出した。
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その夜。
「……シスター・アニェーゼ。洗濯物を放っぽらかしてどこに行ったのかと思えば……その娘は一体何者なんです?」
「し、シスター・アニェーゼが例の少年みたいな行動を!!」
「人に洗濯物押し付けといて何やってるかと思えば……」
イギリス清教女子寮。その食堂の一角。場は騒然としていた。
ルチア、アンジェレネ、カテリナが代表で問い詰めるアニェーゼの横に居たのは、
「……始めまして。絹旗最愛と申します」
まさしく絹旗最愛その人だった。
ルチアはさらに声を鋭くする。
「……その娘の自己紹介はもう何回も聞きました。アニェーゼ、もう一度聞きますがどうゆう事ですか?」
「えっと……それはですね……(汗)」
「説明を。シスター・アニェーゼ」
泣き目の少女にはアニェーゼ部隊長だったころの面影など、もはや存在しない。
その夜。
「……シスター・アニェーゼ。洗濯物を放っぽらかしてどこに行ったのかと思えば……その娘は一体何者なんです?」
「し、シスター・アニェーゼが例の少年みたいな行動を!!」
「人に洗濯物押し付けといて何やってるかと思えば……」
イギリス清教女子寮。その食堂の一角。場は騒然としていた。
ルチア、アンジェレネ、カテリナが代表で問い詰めるアニェーゼの横に居たのは、
「……始めまして。絹旗最愛と申します」
まさしく絹旗最愛その人だった。
ルチアはさらに声を鋭くする。
「……その娘の自己紹介はもう何回も聞きました。アニェーゼ、もう一度聞きますがどうゆう事ですか?」
「えっと……それはですね……(汗)」
「説明を。シスター・アニェーゼ」
泣き目の少女にはアニェーゼ部隊長だったころの面影など、もはや存在しない。
アニェーゼは絹旗と出会ってからの経緯を話した。
説明を聞く限り、「行き場の無い女の子なんですから泊めてあげましょう」との事だった。
ルチアは呆れて息を吐く。アンジェレネは驚の顔で固まっていて、カテリナは首をかしげている。ルチアは多少疲れた顔をして、ちょこんと座っている絹旗を横目で見た。
「シスター・アニェーゼ。そんな説明で納得するとでも思ったのですか?」
「まぁまぁ、良いじゃありませんか」
割り込んできたのはオルソラ。相変わらずのニコニコ笑顔で絹旗を見つめて、
「迷える羊を匿うのも聖職者の仕事。寮のお手伝いをする代わりに泊めて差し上げるというのはどうでしょうか?」
ルチアはそれを聞き、改めて絹旗を見る。別段怪しくは見えないがどうも信用できない。
「そ、そう言うことですよ、ルチア。それなら文句ねえでしょう?」
「……そうですね。そこの少女に関しては別に構わないとして、アニェーゼは『ちょっと話す事が有る』ので来てください」
びくっ! と、アニェーゼの肩が揺れる。他のシスター達は「あー説教だな」と適当に考えて、それぞれ部屋へと戻っていった。絹旗はオルソラに連れられてゲスト専用の宿泊部屋へ。シスター達が完全に消えた後、ルチアとアニェーゼは誰にも観見されぬように静かに食堂を後にした。
説明を聞く限り、「行き場の無い女の子なんですから泊めてあげましょう」との事だった。
ルチアは呆れて息を吐く。アンジェレネは驚の顔で固まっていて、カテリナは首をかしげている。ルチアは多少疲れた顔をして、ちょこんと座っている絹旗を横目で見た。
「シスター・アニェーゼ。そんな説明で納得するとでも思ったのですか?」
「まぁまぁ、良いじゃありませんか」
割り込んできたのはオルソラ。相変わらずのニコニコ笑顔で絹旗を見つめて、
「迷える羊を匿うのも聖職者の仕事。寮のお手伝いをする代わりに泊めて差し上げるというのはどうでしょうか?」
ルチアはそれを聞き、改めて絹旗を見る。別段怪しくは見えないがどうも信用できない。
「そ、そう言うことですよ、ルチア。それなら文句ねえでしょう?」
「……そうですね。そこの少女に関しては別に構わないとして、アニェーゼは『ちょっと話す事が有る』ので来てください」
びくっ! と、アニェーゼの肩が揺れる。他のシスター達は「あー説教だな」と適当に考えて、それぞれ部屋へと戻っていった。絹旗はオルソラに連れられてゲスト専用の宿泊部屋へ。シスター達が完全に消えた後、ルチアとアニェーゼは誰にも観見されぬように静かに食堂を後にした。
女子寮の構造は以外に広く、二五〇弱の修道女達が生活していても滅多に使われる事のない(もはや必要性を感じられない)部屋は幾つも有る。その中に一つ、『女子寮』には全く使う機会などない『相談室』、つまり『懺悔室』という物が存在する。本来『懺悔』は『寮』ではなく『清域(教会等)』で行われる事柄であるため『寮』にとっては、この部屋の存在価値は皆無に等しい。
そして、数年前に大掃除で入ったきりで埃だらけのこの『懺悔室』にてアニェーゼとルチアと対面していた。
そして、数年前に大掃除で入ったきりで埃だらけのこの『懺悔室』にてアニェーゼとルチアと対面していた。
「……で、ルチア、話っていうのは?」
アニェーゼの顔からは動揺の色は完全に消えて、代わりに冷たい眼が備わっている。
「……最初は叱る為にわざわざ薄暗いこの部屋に呼んだのですが……その表情からすると彼女(絹旗)に関しては少々事情があるようですね」
アニェーゼは鼻で笑った。そして、普段寮では絶対に見せない冷徹な笑みを溢す。
「まさか、この私があんな行き倒れに同情するとでも思ってねえですよね?」
ゾクリ、と。ルチアの背筋が寒気を帯びる。幾らこの女子寮に来て丸くなったとは言え、やはり『オルソラ=アクィナスの件』までのアニェーゼと、根本的な部分は変わっていない。
アニェーゼの顔からは動揺の色は完全に消えて、代わりに冷たい眼が備わっている。
「……最初は叱る為にわざわざ薄暗いこの部屋に呼んだのですが……その表情からすると彼女(絹旗)に関しては少々事情があるようですね」
アニェーゼは鼻で笑った。そして、普段寮では絶対に見せない冷徹な笑みを溢す。
「まさか、この私があんな行き倒れに同情するとでも思ってねえですよね?」
ゾクリ、と。ルチアの背筋が寒気を帯びる。幾らこの女子寮に来て丸くなったとは言え、やはり『オルソラ=アクィナスの件』までのアニェーゼと、根本的な部分は変わっていない。
つまり、『異教徒の迫害』。
傘下に入っているイギリス清教やローマ正教として同盟を結んでいるロシア成教、そして『例の少年』のような例外を除けばアニェーゼは基本的に他教徒や無宗教を嫌う。見た瞬間に殴り掛かるような猟奇的位では無い物の、行き場を失った極東人の少女に手を差し伸べるような事をするとは思えない。もちろん、男達の囲まれていた東洋人の少女を助けるなどいう行為はルチアの知っているアニェーゼ=サンクティスという人物とは到底かけ離れた行動のはずだ。
「……では、何故あの少女を助けたのです? 日本人の少女に同情すべき所など、少なくとも貴方には無いはずですが」
「重要なのは襲われてた方じゃなくて、襲ってた方なんですよ」
「……?」
理解が及ばないルチアは少々首を傾げた。アニェーゼは見下した様に言葉を続ける。
「簡単な話ですよ。女を襲っていた男の肩に『黒十字に斜め線の一本入ったシンボル』が貼り付けてあったってだけですから」
「……!? それは……!?」
「まさか英国にも『あいつら』が居るとは思っても無かったですが」
ルチアは二の次を紡げない。黒十字に斜め線の一本入ったシンボル、というのは彼女にも見覚えがあったからだ。
「……『対十字教黒魔術(アンチゴットブラックアート)』………!!!」
アニェーゼ部隊の『ローマ正教に居たころ』の主な仕事は、大規模な戦闘や反対勢力の殲滅などの比較的規模の大きな役所であった。そして、その数有る『仕事』の中に、名指しで『対十字教黒魔術討伐』という項目が存在したのである。
「……では、何故あの少女を助けたのです? 日本人の少女に同情すべき所など、少なくとも貴方には無いはずですが」
「重要なのは襲われてた方じゃなくて、襲ってた方なんですよ」
「……?」
理解が及ばないルチアは少々首を傾げた。アニェーゼは見下した様に言葉を続ける。
「簡単な話ですよ。女を襲っていた男の肩に『黒十字に斜め線の一本入ったシンボル』が貼り付けてあったってだけですから」
「……!? それは……!?」
「まさか英国にも『あいつら』が居るとは思っても無かったですが」
ルチアは二の次を紡げない。黒十字に斜め線の一本入ったシンボル、というのは彼女にも見覚えがあったからだ。
「……『対十字教黒魔術(アンチゴットブラックアート)』………!!!」
アニェーゼ部隊の『ローマ正教に居たころ』の主な仕事は、大規模な戦闘や反対勢力の殲滅などの比較的規模の大きな役所であった。そして、その数有る『仕事』の中に、名指しで『対十字教黒魔術討伐』という項目が存在したのである。
「昔は奴らも可愛い物だったんですよ。個人で出来もしないクーデターを起そうとして、失敗しての繰り返し。私達も苦労しませんでしたね」
だが、最近になって『対十字教黒魔術』は『一つの組織』と化していて、その規模は世界にも及ぶ物に成っている。ヨーロッパ本土を拠点とし、ロシア、アフリカや米大陸などの『十字教の及ぶ場所』ならどこにでも出没する集団となっているのだ。
「最近では十字教所属の魔術師が襲撃されるなんてのもよく聞く話ですし。まぁ、英国にまで策的範囲が及んでいるとは予想外ですよ。本当に」
だが、最近になって『対十字教黒魔術』は『一つの組織』と化していて、その規模は世界にも及ぶ物に成っている。ヨーロッパ本土を拠点とし、ロシア、アフリカや米大陸などの『十字教の及ぶ場所』ならどこにでも出没する集団となっているのだ。
「最近では十字教所属の魔術師が襲撃されるなんてのもよく聞く話ですし。まぁ、英国にまで策的範囲が及んでいるとは予想外ですよ。本当に」
絹旗と自称する少女は『対十字教黒魔術』に襲われていた。しかも話を聞く限り、彼女は何の前触れも無く彼等に囲まれたという。つまり、それは彼女(絹旗)が『対十字教黒魔術』に糸的に狙われているという事。そして、その狙われた少女を『匿ったという事』は……、
「あの女を使って『下衆共(対十字教黒魔術)』を誘き出します。上手くいけば奴らの英国支部まで潰せるかも知れませんからね」
「あの女を使って『下衆共(対十字教黒魔術)』を誘き出します。上手くいけば奴らの英国支部まで潰せるかも知れませんからね」
つまりはそうゆう魂胆が有ったのだ。
(なんか超上手くいきましたね……ラッキーです)
絹旗は修道女によって持て成されたゲストルームのベットの上で胡座をかいて放心していた。
絹旗は修道女によって持て成されたゲストルームのベットの上で胡座をかいて放心していた。
絹旗が赤毛で三つ網なシスターに素直に(嘘を交えて)事情を話したのには理由と言うべき思い出があったからである。
とても小さい頃、まだ彼女が『外』に居た頃に、娘が学園都市の入るか入らないかで両親が大喧嘩した事がある。自分の目の前で両親がいがみ合いを繰り返す姿を見た絹旗はショックを受け、何も考えずに家を飛び出し、何時間か夜の町を歩き回った後教会に保護された経験があった。
その時、自分を泊めてくれたシスターが凄く優しかったのを覚えている。絹旗の中では『修道女=優しい』という方程式がその時から出来上がっていたのだ。
とても小さい頃、まだ彼女が『外』に居た頃に、娘が学園都市の入るか入らないかで両親が大喧嘩した事がある。自分の目の前で両親がいがみ合いを繰り返す姿を見た絹旗はショックを受け、何も考えずに家を飛び出し、何時間か夜の町を歩き回った後教会に保護された経験があった。
その時、自分を泊めてくれたシスターが凄く優しかったのを覚えている。絹旗の中では『修道女=優しい』という方程式がその時から出来上がっていたのだ。
(まぁ、予想通り超すんなり泊めてくれましたけど……なんか超違和感がありますね)
裏の世界で数年を過ごした絹旗は『人を信じる事』より『人を疑う事』を優先する性格になっていて、どうも上手く行き過ぎな雰囲気に違和感を感じていた訳だが、
(別に『外』の人間如きに私の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』が敗れるなんて超ありえませんし、心配する必要は超無いと思いますが)
幾ら絹旗といえど深い睡眠に入ってしまえば『窒素装甲』を維持する事は難しい。ここは警戒して浅い睡眠を超キープしときましょうか、と適当に考えて、絹旗は宣言通り浅眠で夜を明かした。
裏の世界で数年を過ごした絹旗は『人を信じる事』より『人を疑う事』を優先する性格になっていて、どうも上手く行き過ぎな雰囲気に違和感を感じていた訳だが、
(別に『外』の人間如きに私の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』が敗れるなんて超ありえませんし、心配する必要は超無いと思いますが)
幾ら絹旗といえど深い睡眠に入ってしまえば『窒素装甲』を維持する事は難しい。ここは警戒して浅い睡眠を超キープしときましょうか、と適当に考えて、絹旗は宣言通り浅眠で夜を明かした。