とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

2-02

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(12)

「ちょっと!これ、どういうこと!?」

第13学区のとある小学校に到着するなり御坂美琴は絶叫していた。
このとある小学校は生徒数が4000人を超す超マンモス校である。
当然、運動場や体育館などの設備も巨大なものであった。

「だからって、なんでヒヨコ小屋が東○ドームほどデカイのよーっ!!」

雄叫びをあげる御坂美琴の肩を姫神秋沙が指でチョンチョンとつつき一枚の印刷物を差し
出した。

「多分。これが理由」

その紙には「第15回全校一斉ヒヨコ飼育コンテスト実施要領」と書かれてあった。
実施要領には生徒一人の持ちヒヨコは3羽までといったルールなどが書かれてある。
どうやら少なくとも10000羽を越えるヒヨコ達がこの中で飼育されているようだ。

実施要領を読み終えた御坂美琴はそれを両手でクシャクシャに丸めると地面に叩きつけた。

「一体どこのどいつよ。こんな馬鹿げた企画を考えたヤツはあぁぁーっ!」

フーッフーッと肩で二度大きく息をしてようやく御坂美琴は落ち着きを取り戻した。

「しっかし、10000羽の中からあのヒヨコ爆弾ってヤツを見つけなきゃなんないの?
 こりゃ、ちょっと手こずるかもしんないわね」
「まあとりあえず中に入ってみないとな。御坂、できるか?」
「アンタ!誰に向かって言ってんのよ!」

電撃使い(エレクトロマスター)最高位の御坂美琴の前では小学校の電子錠など無いに
等しい。あっさりと4人はヒヨコ小屋(ただし○京ドームサイズ)に突入する。
いくつかのドアを抜けると目の前に広い空間が現れた。
室内でありながらそこはまるで牧場のようであり小山や人工の小川まで造られてあった。
大きな木も植えられてはいるが地面は基本的には芝生のような背の低い草で覆われている。
その緑の絨毯の上を無数の黄色い物体が動き回っていた。

「全くこんな大それた施設まで造るなんてなに資源の無駄遣いしているのかしら。
 たかがヒヨコのために……………………
 ヒヨコなんてこんなにちっちゃいのに……
 いくらキュートなお目々をしてるからってヒヨコのためだけにこんな施設を造るなんて
 …………………………………………
 もぉーっ、なんて素敵なのかしら!!」

感動に震える御坂美琴のスーツは既にステルスモードに切り替わっており、御坂美琴が
動物に避けられる最大の原因である電磁波を遮断してくれている。
そのためここにいるヒヨコ達は御坂美琴や御坂妹から逃げようともしない。
それどころか御坂美琴の足下に寄ってきては靴の先をツンツンとつついたりする。
その姿を目の当たりした御坂美琴は悲鳴を上げた。

「キャー!なんてラブリーなの。あなた達!!
 まんまるでフカフカでピヨピヨでよちよちで──────っ!」

目をキラキラ輝かせる御坂美琴は一羽のヒヨコを両手で優しく包み込むと顔の高さまで
持ち上げてスリスリと頬ずりしだした。
しかもそのヒヨコを持ったまま「キャーッ!そっちの子もこの子以上に超ラブリー!」
などとのたまっている。
ヒヨコ小屋に突入してから30秒も経っていないのにここに来た目的はすっかり忘れて
いる様子だった。

「あれもヒヨコ、これもヒヨコ、ミサカの目に映る黄色い個体全てがヒヨコ……
 ミサカの理想郷はこんな所に在ったのですね、とミサカは感嘆の声を上げます」

さすがに遺伝子レベルでそっくりなだけあって御坂妹も御坂美琴と同じ反応をしている。

「あーっ、お姉様!その子は私がホッペでスリスリしようと心に決めていたヒヨコです
 とミサカはミサカのヒヨコを今まさに横取りしようとするお姉様に警告を発します」
「何言ってんの。この子は私と目があったときに私に大好き光線を送ってきたのよ。
 だからこの子は私に頬ずりして欲しいに決まってるの!
 アンタは足下のその子で良いじゃない」
「確かにこの子のつぶらな瞳は超キュートなのですが頭に1枚ある逆立った羽毛がなぜか
 某上位個体を連想させます、とミサカはやっぱりそっちの子が良いなと未練たっぷりに
 お姉様にヒヨコの交換を持ちかけます」

上条は御坂美琴と御坂妹のはしゃぎっぷりをただ唖然と見ている。
そんな上条の袖を姫神秋沙が引っ張った。


(13)

「上条君。爆弾はどうしよう?」
「まあ、まだ時間は十分にあるから焦らなくても良いけどさ。
 ところで姫神はこれだけのヒヨコを見て何か思うことはないのか?」
「……ヒヨコ……それはキジ目、キジ科、ニワトリの雛。
 雌であれば採卵用レイヤーとなる。でも雄だと食肉用ブロイラーに。
 そしてこの子達もほとんどが雄。……哀れ……合掌」

「こらこら、姫神。ヒヨコ達に手を合わせるんじゃない」
「(しまった。いつもの癖で……)ゴメン。
 それでどうしよう?このままだとあの二人は使えない」
「まあ少しぐらいは好きにさせてやろう」

そういって上条は芝生に腰を降ろした。
上条がヒヨコ達と戯れる御坂姉妹を眺めていると右隣に姫神秋沙がちょこんと座った。
上条は気付かなかったが姫神秋沙は時々上条をチラっと見ては膝の上に置いた両手を
モジモジさせていた。

(御坂さんも妹さんもヒヨコに夢中。
 邪魔者のいない今こそ上条君との距離を縮める絶好のチャンス!
 そのためにもまず適度なスキンシップを増やさないと……
 さりげない仕草で上条君の右手に私の左手を重ねるの!
 でも、あからさまなのはダメ!上条君が引いちゃうから。
 そう。上条君に話しかけようとして身体をひねったらたまたま左手が重なっちゃう
 っていうのが理想)

頭の中で何度もシミュレーションを繰り返した末ようやく姫神秋沙は決心した。

(スーッ、ハーッ。よし。行くわよ!秋沙。
 さん……
 にー……
 いち……)
「で、姫神は本当にヒヨコに興味ないのか?」
「ゼロッ…………
 って、何?どうしたの?上条君」

「そうか、興味ゼロなのか。女の子ならみんな可愛いものが好きなのかと思ったけど。
 まあ、御坂達のはしゃぎっぷりが異常なのかもな」
「そっ、そんなこと無い。私も大好き。
 淡白な白身はタンパク質が豊富だし、しかも安いからお買い得!」 
「いや食材として感想じゃなくてさ……っていうかその方が姫神らしいのかな」
「えっ、あっ、そうじゃなくて(わーっ、バカバカ。私の馬鹿!)」

最悪のタイミングで上条に先手を取られた姫神秋沙は妙にテンパっていた。

(おっ、落ち着くのよ。秋沙
 さっきはちょっと失敗しちゃったけどチャンスはまだある。
 ちょっと早いけど次はお弁当作戦よ!)

「上条君。今日おにぎりを作ってきたの。ちょっと早いけど二人を待っている間に食べて
 みる?」
「でも、それ姫神の弁当なんだろ?」
「今日はたくさん作ってきたから。大丈夫!」

姫神が巫女装束の袂から取り出したのは竹皮を紐でくくったお弁当で中にはおにぎりと
タクアンが入っていた。

「すげーな、姫神。こりゃ美味そうだ」
「(よしっ!作戦成功!そしてここで飛び切りの笑顔でだめ押しするの。秋沙!)
 上条君。いっぱい食べて」
「じゃあ、お言葉に甘えて」

「あっ、ちょっと待って!上条君の手に土が付いてる。
 だから私が食べさせてあげる。はい!アーン」
「ちょっと待て、姫神。いくら何でもそんな恥ずかしい真似は……」
「良いから良いから。(御坂さん達がこっちに気付く前に)早く!アーン」

仕方なく上条は言われるままに口を開け差し出されたおにぎりをモグモグと食べてみた。

「どう?美味しい?」
「美味い!ただのおにぎりがこんなに美味いのはやっぱり姫神が料理上手だからかな?」
「うふっ、褒めてくれたのなら嬉しい。はい!残りも食べて」
「おっ、サンキューッ」

上条は次のおにぎりを姫神に口に運んで貰いそれを美味しそうに食べている。
一方、その横で姫神秋沙は自分の指先を見つめたまま固まってしまった。
先ほど上条がおにぎりを頬張ったとき姫神の人指し指に上条の唇が当たったのだ。
しかもその指には上条に食べさせたおにぎりのご飯粒がくっついていた。

(さっき上条君の唇が私の人指し指に当たったは確か。
 そして何故か指にはご飯粒がくっついている。
 ご飯粒が指にくっついたままじゃ私は困る。
 でも捨てる訳にもいかないから私が食べるしかない。
 そう。決して私は上条君と間接キスをしようとしている訳じゃない。
 仕方なくこのご飯粒を食べるだけ。
 例え人指し指を口にくわえるのがはしたないって言われてもご飯粒がついているから
 いけないの。例えそれが上条君との間接キスになったとしても……
 そう……間接キス…………どっ、どうしよう?)

指先を見つめること17秒、決心した姫神秋沙が震える指先を口にくわえようとした瞬間

「「あーーーっ!」」

御坂姉妹の叫び声がヒヨコ小屋の中に響き渡った。


(14)

御坂達に見つかったと思った姫神秋沙はくわえかけた指を慌てて身体の後ろに隠した。
一体何があったのかと思った上条当麻は声のあがった方向に顔を向けた。

その先では御坂御琴と御坂妹がそれぞれ直径4m程の丸い芝生の中心に立ちつくしている。
正確に言えば彼女達の周りからヒヨコが居なくなっていただけだっだ。
しかも彼女達が動くと「モーゼの十戒」よろしく黄色い海が左右に分かれ道を空けていく。
どうやら「電磁波などを『一時的に』隠してくれるステルスモード」が終了したようだ。

上条がヤレヤレとため息をついた時今度は背後の姫神秋沙が「あー!」という声をあげた。
振り返った上条が見たものは人差し指を見つめたまま固まっている姫神秋沙だった。

「どうした?姫神」
「え?なっ、なんでもない」
「その指、ケガでもしたのか?」
「そっ、そんなことない」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫。大丈夫。うん。ホント」

上条が問い掛けても姫神秋沙は愛想笑いを浮かべたまま何事もないと主張するだけだった。
上条としてもそれ以上問いただすこともできず、仕方なく御坂姉妹へ向き直った。

上条が向き直るのを見届けると姫神秋沙は静かに後ろを振り返った。
そこには姫神秋沙の野望を打ち砕き姫神秋沙を奈落の底に叩き落とした1羽のヒヨコが
ピヨピヨ鳴いていた。

30秒前、姫神秋沙は身体の後ろに回した手を不意につつかれたのだ。
驚いて手を戻してみると人指し指に付いてあったハズのご飯粒が無くなっていた。
上条との間接キスという妄想に浸っている時間が長かった分、姫神秋沙の受けたショック
も大きかった。

ただご飯粒が無くなっただけならまだ姫神秋沙は立ち直れたかもしれない。
はしたないと言われようが指をくわえさえすれば目的(間接キス)は達成できたのだから。
しかしこのヒヨコはご飯粒だけでなく上条の唇が触れた指先までつつきやがったのだ。
上条との間接キスをヒヨコに奪われた以上、今更指をくわえてもそれはもはやヒヨコとの
間接キスでしかない。

姫神秋沙は自己弁護の理論武装をしようとしていた1分前の自分を恨んだ。
こんなことなら本能のままに指をくわえれば良かったなどと過激な考えまで芽生えてくる。
しかしその原因を作ったヒヨコは姫神秋沙の苦悩も知らずピヨピヨと鳴き続けている。
その姿を見た姫神秋沙はおもむろにヒヨコを両手で顔の前に持ち上げて小声で話しかけた。

「あなたは私の大切なご飯粒、いいえ!上条君との間接キスを私から奪ったのよ!
 こんなチャンスは二度と来ないかもしれないのに。
 あなた。ひょっとして自分はちっちゃいからって許されるとでも思ってる?
 ……………………
 焼き鳥、蒸し鶏、竜田揚げ。酒蒸し、照り焼き、みそ炒め。ローストチキン、棒々鶏。
 手羽先、唐揚げ、香草焼き。鶏皮、鶏ハム、鶏つくね。チキンナゲット、オムライス。 
 チキン南蛮、親子丼。チキンピカタ、フリッター。チキンカレー、チキンカツ。……
 早く大きくなりなさい。ふふっ」

上条は不意に背後から襲ってきた悪寒に驚き後ろを振り返るとそこにはヒヨコに優しげに
語りかける(ように見える)姫神秋沙の姿があった。

(なんだ。やっぱりなんだかんだ言っても姫神だって可愛いもの好きがなんだ。
 …………じゃあ、さっきの悪寒はどこから来たんだろう?…………
 まあ、気のせいだな。うん、きっとそうに違いない)

『知らぬが仏』とはよく言ったものである。

一方、御坂美琴は悲しげな声でヒヨコ達に訴え掛けていた。

「なんで、どうしてなの?私達あんなに解り合っていたじゃない!
 さっきまでの思わせぶりな態度は何だったの!?
 ひどいわ!貴方達!私の心を弄んだのね!」

いつまでも御坂美琴に三文芝居を続けさせる訳にはいかないので上条は重い腰を上げるこ
とにした。

(15)

「おーい!御坂アンド御坂妹!
 あの時ラストオーダーは『ステルスモードは一時的だ』って言ってたろ!
 それに最後まで話を聞かずに飛び出すから『スーツの容量は10分が限界なの』って話も
 聞いてなかったんだな。やっぱり」
「そっ、そんな……」
「ミサカの理想郷がたった10分の夢だったなんて現実はなんと残酷なのでしょう
 とミサカはちょっとセンチな気分でつぶやきます」

「だから!二人ともそんなに落ち込むなって。
 お前達はその後の説明も聞いてなかったんだろ。
 ステルスモードはリセットするのに1時間掛かるけど再起動できるらしいぞ」
「え?そうなの」
「そうだ!」
「じゃあ私達、ここで1時間待ってれば良いのね!」

「その前に、御坂!お前ここへ来た目的を完璧に忘れてるだろ!」
「目的?…………って何だっけ?」
「ヒヨコ爆弾だよ。ヒヨコ爆弾!」
「そういえばそんなこと言われた気もするわ」

「お前なぁ……。じゃあ今から爆弾探すからな」
「「えーーっ!?」」
「えーーっ!?じゃない。
 爆弾を1時間で探しだしゃ、また10分間ヒヨコ触り放題なんだからさ」
「でもこんだけのヒヨコの中から爆弾なんてどうやって探し出すのよ?」
「それなら大丈夫!今、良いアイデアが浮かんだ」

5分後

「ちょっと、アンタ!覚えてなさい」
「何言ってんだ。御坂!お前の可愛いヒヨコ達のためなんだぞ」
「まったく、なんで私達だけが働かなきゃなんないのよ!」

上条のアイデアは御坂美琴と御坂妹を並べて牧場内をくまなく歩かせることであった。
本物のヒヨコなら御坂達の電磁波におびえて逃げ出すはずである。
現に御坂達が移動すると黄色いヒヨコ達が左右に分かれ彼女達に道を空けている。
もし御坂達が近寄っても逃げないヒヨコがいたらそれがヒヨコ爆弾だということだ。

一方、御坂美琴もこれが確実に爆弾を見つける良い方法であると頭では納得している。
しかし自分がヒヨコ達にどれほど嫌われているかをこうまで見せつけられては心穏やかで
いられるハズがない。
それに上条と姫神秋沙が小山の頂上に座って「頑張れー!」などと呑気にエールを送って
くるのも気に入らない。
三分の一ぐらい来たところでとうとう御坂美琴がキレた。

「あーっ!もう、ちんたらやってらんないわよ。こうなったら私の電撃で!」

御坂美琴が前髪から静電気のような火花を散らして盛大に電磁波を放出すると御坂美琴を
中心とする半径15m以内にいたヒヨコというヒヨコがワラワラと逃げていった。

「これならあっという間に探せるわ!
 まっ、美琴っさんにかかればこんなものよね。ほーほっほっ!」

高笑いする御坂美琴は自分の犯した過ちにまだ気付いていなかった。
完全に怯えきったヒヨコ達はもう二度と御坂美琴に近づくことはなく、御坂美琴が自分の
浅はかさに気付き打ちひしがれるのは37分後の話である。
しかも御坂美琴の同類としてヒヨコ達に嫌われた御坂妹からの罵声が追い打ちをかけるの
だった。

「全く後先考えず行動するとはお姉様はなんて馬鹿野郎なんでしょう
 とミサカはこんなお馬鹿さんが私達のオリジナルだなんて恥ずかしくてたまりませんと
 舌鋒鋭くお姉様を糾弾します」

未来のことなど知らない御坂美琴は上機嫌で爆弾探し(ヒヨコ脅し)を再開した。

遡ること30分前、学園都市某所にて

「建宮さん!」
「どうした、五和?」
「どうして私達まだアジトにいるんですか?
 上条さん達はもうヒヨコ小屋へ行っちゃったんでしょ?」
「心配せずとも、簡単にヒヨコ爆弾が探し出せるハズないのよな。
 我らの出番は彼らがヒヨコ爆弾を探し出した時よ。
 五和はその時先頭に立つのだからしっかり準備をして貰わないとな」

「じゃあ、その準備ってのが何で写真撮影なんですか?」
「知らんのか?五和。ちゃんと記録を撮っとかないとその後が大変なんだぞ。
 カットが変わる度に髪型や小道具が変わっていたらおかしいだろ!」
「いったい何の話をしてるんです?
 とにかく、こっちはこんな恥ずかしい格好なんてさっさと終わらせたいんです!」

(うむ。五和のやつは我らの口車に乗って潔く小悪魔エロキャットを着てくれた。
 問題はいかにして女教皇様(プリエステス)にこのお色気エロバニーを着て貰うかなのよな。
 まずは小悪魔エロキャット姿の五和の写真を添えて五和の活躍をお伝えするとして
 最後の一押しをどうしたら良いものか。うーむ)
「建宮さん。真剣に悩んでるフリしても騙されませんよ」
「いや本気で悩んでいたのだが……仕方ない。そろそろ出発するのよな」


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