11
チックショウ、と聴覚潜り(ノイズキラー)が呻いた。
なんで、と視覚潰し(ライトメーター)は思った。
馬鹿な、と触覚壊し(センサーブレイク)は途方に暮れた。
それでも、抵抗する、と精神操作(メンタルコントロール)は決意した。
そして、
なんで、と視覚潰し(ライトメーター)は思った。
馬鹿な、と触覚壊し(センサーブレイク)は途方に暮れた。
それでも、抵抗する、と精神操作(メンタルコントロール)は決意した。
そして、
今、彼ら(超能力者)本当の力が、解放された。
「…………ハッ」
聴覚潜りは、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)の効力によりあらわになる。
『クッ、クフフッ、ハハァァァッ!!!!』
だがそれにもかかわらず、聴覚潜りは歓喜の声を上げた。
そして次の瞬間、
「がっ!?」
「く……」
「っ、ぅぁ……」
上条と聴覚潜りを除いた、その場にいた全員が地面に崩れ落ちる。
「なっ……」
その光景に上条は目の前に敵がいるのにも目を向けず、硬直してしまった。
その上条に、
「へぇ~、テメェガ幻想殺し……上条当麻カ」
満足したような、歪んだ笑みを象った聴覚潜りがそう語りかけた。
その言葉に上条は呪縛から解き放たれたかのように、反射的に振り返って聴覚潜りを殴り飛ばした。
かのように思えた。
「ッ!?」
上条の拳は、何故か空を切る。
さっき聞こえた聴覚潜りの声は、確かに上条のすぐそばで聞こえていた。
にもかかわらず、
今聴覚潜りは、上条から10m程度距離を取った場所に悠然と立っている。
「ハハァ。テメェノことヲどう殺すか考えてたガ、どうやらこういうことで良いらしいナァ!」
聴覚潜りはそう叫び、その細い身体で上条に突進してきた。
「くそっ」
何が起こっているのかはほとんど理解できないが、とりあえずは聴覚潜りを撃退しようとする上条。
聴覚潜りの突進の起動を先読みし、上条は2,3歩踏み出して拳を振るった。
だが、
(また!?)
やはり、聴覚潜りはそこにはいなかった。
そこのほとんど反対の場所で、上条に接近している。
「オラッ!」
拳を振り切って無防備な上条の顔面に、細い聴覚潜りの拳が突き刺さる。
「ぐっ!」
その攻撃に、上条は後ろへ倒れこむ。
だが、あまりダメージは蓄積されていない。やはり能力者は、拳で語り合うのは性分ではないのだ。
が、だからと言って、
「ハァ~ァ。いいなぁ、自分ノ手デ人間ヲ思う存分殴るっテのも」
何発もその拳を喰らって、立っていられるわけはない。
聴覚潜りは、手の関節をボキボキと鳴らしながら上条に近づいてくる。
それを見て上条は、
(……なんだ、さっきのは…何が起こった?)
さっきの現象を、何とか理解しようとしていた。
上条の右手のことを考えれば、相手が能力や魔術を使っている、とは考えにくい。
だったら、聴覚潜りはたいそうな身体能力の持ち主、だということだろうか?
が、それも成り立たない。もしそうなら、上条を殴り飛ばした一撃で、上条の意識は吹っ飛んでいるはずだ。
では、一体何が。
そう考えていた上条の前に、聴覚潜りがたどり着く。
「……何やっテんだテメェ? 殺さレて欲しイのか」
聴覚潜りは、そう言って上条へと拳を振り上げる。
それに上条は、
聴覚潜りは、上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)の効力によりあらわになる。
『クッ、クフフッ、ハハァァァッ!!!!』
だがそれにもかかわらず、聴覚潜りは歓喜の声を上げた。
そして次の瞬間、
「がっ!?」
「く……」
「っ、ぅぁ……」
上条と聴覚潜りを除いた、その場にいた全員が地面に崩れ落ちる。
「なっ……」
その光景に上条は目の前に敵がいるのにも目を向けず、硬直してしまった。
その上条に、
「へぇ~、テメェガ幻想殺し……上条当麻カ」
満足したような、歪んだ笑みを象った聴覚潜りがそう語りかけた。
その言葉に上条は呪縛から解き放たれたかのように、反射的に振り返って聴覚潜りを殴り飛ばした。
かのように思えた。
「ッ!?」
上条の拳は、何故か空を切る。
さっき聞こえた聴覚潜りの声は、確かに上条のすぐそばで聞こえていた。
にもかかわらず、
今聴覚潜りは、上条から10m程度距離を取った場所に悠然と立っている。
「ハハァ。テメェノことヲどう殺すか考えてたガ、どうやらこういうことで良いらしいナァ!」
聴覚潜りはそう叫び、その細い身体で上条に突進してきた。
「くそっ」
何が起こっているのかはほとんど理解できないが、とりあえずは聴覚潜りを撃退しようとする上条。
聴覚潜りの突進の起動を先読みし、上条は2,3歩踏み出して拳を振るった。
だが、
(また!?)
やはり、聴覚潜りはそこにはいなかった。
そこのほとんど反対の場所で、上条に接近している。
「オラッ!」
拳を振り切って無防備な上条の顔面に、細い聴覚潜りの拳が突き刺さる。
「ぐっ!」
その攻撃に、上条は後ろへ倒れこむ。
だが、あまりダメージは蓄積されていない。やはり能力者は、拳で語り合うのは性分ではないのだ。
が、だからと言って、
「ハァ~ァ。いいなぁ、自分ノ手デ人間ヲ思う存分殴るっテのも」
何発もその拳を喰らって、立っていられるわけはない。
聴覚潜りは、手の関節をボキボキと鳴らしながら上条に近づいてくる。
それを見て上条は、
(……なんだ、さっきのは…何が起こった?)
さっきの現象を、何とか理解しようとしていた。
上条の右手のことを考えれば、相手が能力や魔術を使っている、とは考えにくい。
だったら、聴覚潜りはたいそうな身体能力の持ち主、だということだろうか?
が、それも成り立たない。もしそうなら、上条を殴り飛ばした一撃で、上条の意識は吹っ飛んでいるはずだ。
では、一体何が。
そう考えていた上条の前に、聴覚潜りがたどり着く。
「……何やっテんだテメェ? 殺さレて欲しイのか」
聴覚潜りは、そう言って上条へと拳を振り上げる。
それに上条は、
特に考えは浮かびはしなかったのだが、このまま殴られるわけにも行かないので、とりあえずカウンターを放つ。
が、
(これも―――!!)
やはり、上条の右手は、何もない虚空をきった。
そして、その反対側から細い拳が飛んでくる。
仕方がないので、そのダメージをうまく逃がそうと体を整えた上条だが、
その拳が、上条に当たることはなかった。
が、
(これも―――!!)
やはり、上条の右手は、何もない虚空をきった。
そして、その反対側から細い拳が飛んでくる。
仕方がないので、そのダメージをうまく逃がそうと体を整えた上条だが、
その拳が、上条に当たることはなかった。
ガンッ!
と、鈍い音を立てて、視覚潜り(ノイズキラー)の拳は、上条に当たる寸でのところで、何かに弾き返されたからだ。
と、鈍い音を立てて、視覚潜り(ノイズキラー)の拳は、上条に当たる寸でのところで、何かに弾き返されたからだ。
「は?」
それに驚いたのは、むしろ上条のほうだった。もちろん、視覚潜りも怪訝な顔をしているが。
上条自身が、何かした覚えはない。そもそも、その右手のせいで上条は能力も魔術もクソもないのだ。
が、視覚潜りの拳は何かに遮られた。
それについて、上条が深く考え込もうとする。
その時、
それに驚いたのは、むしろ上条のほうだった。もちろん、視覚潜りも怪訝な顔をしているが。
上条自身が、何かした覚えはない。そもそも、その右手のせいで上条は能力も魔術もクソもないのだ。
が、視覚潜りの拳は何かに遮られた。
それについて、上条が深く考え込もうとする。
その時、
「悪いが、お前の相手は俺にさせてもらうぞ」
上条の後方から、声が聞こえた。
反射的に、上条は後ろを振り返る。
そして見たのは、
「削、板……?」
先ほど、わけの分からない視覚潜りの攻撃で倒れていたはずの軍覇が、悠然と立っていた。
それを見た視覚潜りは、上条以上に『わけの分からない』という顔をして、
「ああ? テメェ、何デ立っテいらレる?」
軍覇に、そう聞いた。
だが、軍覇はそれを軽く受け流し、上条に言う。
「コイツは俺がどうにかする。お前はあいつらを連れて進め」
「………」
ベタ過ぎて、もはやどこから突っ込んでいいのか分からなくなってしまっている上条。
だが軍覇は、特に気にすることなく『さっさと行け』と顎でアックアたちを示していた。
(……そういや、アックアの奴も倒れたんだよな……? なんだよ、さっきの攻撃。そして削板は、何でそれで立っていられるんだ……?)
また考え事に没頭しそうになる上条だが、いい加減頭を振ってその思考を止める。
その上条に、視覚潜りは告げた。
「ああ、いいゼテメェハ行って。こいつノことヲサクっと殺しテ、お前ノこトも十分楽しンで殺してやっかラよぉ」
……とんでもないデジャヴを感じるんですが、と上条は背筋を凍らせつつアックアたちの元へ向かう。
どうやら本当に、視覚潜りの相手は削板軍覇―――念動砲弾(アタッククラッシュ)が勤めるようだ。
反射的に、上条は後ろを振り返る。
そして見たのは、
「削、板……?」
先ほど、わけの分からない視覚潜りの攻撃で倒れていたはずの軍覇が、悠然と立っていた。
それを見た視覚潜りは、上条以上に『わけの分からない』という顔をして、
「ああ? テメェ、何デ立っテいらレる?」
軍覇に、そう聞いた。
だが、軍覇はそれを軽く受け流し、上条に言う。
「コイツは俺がどうにかする。お前はあいつらを連れて進め」
「………」
ベタ過ぎて、もはやどこから突っ込んでいいのか分からなくなってしまっている上条。
だが軍覇は、特に気にすることなく『さっさと行け』と顎でアックアたちを示していた。
(……そういや、アックアの奴も倒れたんだよな……? なんだよ、さっきの攻撃。そして削板は、何でそれで立っていられるんだ……?)
また考え事に没頭しそうになる上条だが、いい加減頭を振ってその思考を止める。
その上条に、視覚潜りは告げた。
「ああ、いいゼテメェハ行って。こいつノことヲサクっと殺しテ、お前ノこトも十分楽しンで殺してやっかラよぉ」
……とんでもないデジャヴを感じるんですが、と上条は背筋を凍らせつつアックアたちの元へ向かう。
どうやら本当に、視覚潜りの相手は削板軍覇―――念動砲弾(アタッククラッシュ)が勤めるようだ。
12
視覚潰し(ライトメーター)は、その一方通行(アクセラレーター)の華奢な、死が宿った腕を見て、
ニヤリ、と禍々しく笑った。
次の瞬間、
「ッ!?」
珍しく、一方通行が動揺したような表情を浮かべる。
それもそうだろう。
目の前から、いきなり視覚潰しが消え去ったのだから。
(クソッ……これがやつの能力か?)
辺りをすばやく見回す一方通行。
だが、その目に映るのは、やはり同じように辺りを見回している仲間だけだ。
チッ! と一方通行は大きく舌打ちし、大声で叫ぶ。
「全員俺から離れるなァ! 一旦こっちに来いッ!!」
一方通行ならば、相手を確認できなくてもその能力があるため、怪我をすることはないだろう。
だが、他のメンバーは別だ。相手を確認できなければ、やりたいようにやられてしまう。
それは避けようとしたゆえの行動だったのだが、
「ッ!?」
珍しく、一方通行が動揺したような表情を浮かべる。
それもそうだろう。
目の前から、いきなり視覚潰しが消え去ったのだから。
(クソッ……これがやつの能力か?)
辺りをすばやく見回す一方通行。
だが、その目に映るのは、やはり同じように辺りを見回している仲間だけだ。
チッ! と一方通行は大きく舌打ちし、大声で叫ぶ。
「全員俺から離れるなァ! 一旦こっちに来いッ!!」
一方通行ならば、相手を確認できなくてもその能力があるため、怪我をすることはないだろう。
だが、他のメンバーは別だ。相手を確認できなければ、やりたいようにやられてしまう。
それは避けようとしたゆえの行動だったのだが、
パァン!
と、乾いた銃声が響いた。
と、乾いた銃声が響いた。
そして次に聞こえたのは、
「ぐぅっ!?」
鏡子の、うめき声。
一方通行がそちらに目を向けると、ちょうどわき腹あたりを抱えてうずくまっている、鏡子が写った。
そのわき腹は、すでに大量の血で滲んでいる。
(マズ―――ッ、今ここであいつを失うわけにはッ!)
足のベクトルを操作し、一瞬で鏡子の下へとたどり着く一方通行。
だが、その一方通行たちに、声が響いた。
不自然なほど、大きな声が。
「ぐぅっ!?」
鏡子の、うめき声。
一方通行がそちらに目を向けると、ちょうどわき腹あたりを抱えてうずくまっている、鏡子が写った。
そのわき腹は、すでに大量の血で滲んでいる。
(マズ―――ッ、今ここであいつを失うわけにはッ!)
足のベクトルを操作し、一瞬で鏡子の下へとたどり着く一方通行。
だが、その一方通行たちに、声が響いた。
不自然なほど、大きな声が。
「…いいんですか、他の仲間を見捨てたりして?」
それは、視覚潰しのものだ。
だがやはり、彼女の姿は確認できない。
どこにいやがる、と一方通行が周囲に目をめぐらせると、
今度は。
パンパン!
と連続した銃声が、辺り一帯に響く。
だがやはり、彼女の姿は確認できない。
どこにいやがる、と一方通行が周囲に目をめぐらせると、
今度は。
パンパン!
と連続した銃声が、辺り一帯に響く。
(……これで、残るはあと3人……)
拳銃の残弾を気にしながら、そう考える視覚潰し。
(厄介なあの女は、もうすでに能力は使用できないはず……それ以外の者も、2名戦闘不可に追いやった。このまま、できれば一方通行も妥当したいところ――――)
そう考えていた視覚潰しが、その倒れた2名を確認しようとその頭を回す。
すると、その2名が確認できた。
拳銃の残弾を気にしながら、そう考える視覚潰し。
(厄介なあの女は、もうすでに能力は使用できないはず……それ以外の者も、2名戦闘不可に追いやった。このまま、できれば一方通行も妥当したいところ――――)
そう考えていた視覚潰しが、その倒れた2名を確認しようとその頭を回す。
すると、その2名が確認できた。
全く弾を貫かれたような様子は見せない、ピンピンした二人が。
「なっ!?」
思わず声を上げてしまう視覚潰し。まぁ、聴覚潜り(ノイズキラー)の力があるから問題は発生しないはずだが。
(な、何故あの二人が……)
確かに自分は、あの二人に照準を向け、発砲したはずだ。
それなのに、あの二人は全く傷はついていない。
何故、と考える視覚潰しの目に、
思わず声を上げてしまう視覚潰し。まぁ、聴覚潜り(ノイズキラー)の力があるから問題は発生しないはずだが。
(な、何故あの二人が……)
確かに自分は、あの二人に照準を向け、発砲したはずだ。
それなのに、あの二人は全く傷はついていない。
何故、と考える視覚潰しの目に、
キッ、と此方を睨んでいる、長谷田鏡子―――心理掌握(メンタルアウト)の姿が飛び込んできた。
視覚潰し(ライトメーター)は、『何故彼女が私を「確認」できているのでしょうか?』と呟いたが、やはりあまり小さいことは気にしないらしい。小さいことなのかはそこはかとなく疑問だが。
そして、鏡子のことを無視し、一体何がどうなってあの二人が無事なのかを考えようとする。
が、
そして、鏡子のことを無視し、一体何がどうなってあの二人が無事なのかを考えようとする。
が、
『……アンタの相手は私なのよ、このクッソババァ』
明らかに精神操作(メンタルコントロール)のものではない、まざまざと敵対感を打ち付けてくる声が、視覚潰しの頭に叩き込まれた。
(……そうですか)
そのことについては、早くも理解した視覚潰しが、鏡子のことを真正面から睨みつける。
(心理掌握(メンタルアウト)……そんなに死にたければ、あなたから先に殺して差し上げましょう)
銃をしっかりと鏡子へと向け、視覚潰しは思った。
(……そうですか)
そのことについては、早くも理解した視覚潰しが、鏡子のことを真正面から睨みつける。
(心理掌握(メンタルアウト)……そんなに死にたければ、あなたから先に殺して差し上げましょう)
銃をしっかりと鏡子へと向け、視覚潰しは思った。
「……テメェ」
「何、よ。アンタは大丈夫…なんだから、別にいいでしょう、が」
今起こったことについて一方通行(アクセラレータ)が不満を漏らすと、明らかにまずい状態だと分かる、ぶつ切りの鏡子の声が一方通行に届いた。
もう既に、一方通行の一声で彼の元に、グループB前メンバーが集っていた。かなり困惑はしているが。
そして一番動揺していそうな、天草式の五和が鏡子に向けていった。
「あ、あのっ!? だ、大丈夫なんですか、その傷……どう見ても大丈夫そうではないですけど」
あたふたと魔術の準備をし始める五和。他の天草式メンバーも、彼女の術式を手伝っている。
だがしかし、鏡子はそれを一瞥し、冷たい声を彼女たちにかけただけだった。
「あなたたち…馬鹿? 今、相手は確認できないだけ、で……銃を構えているのよ? 他人を気遣って、いる暇があったら…自分のことを心配しなさいよ」
声こそは強気なものの、表情と血が、鏡子の大事を周囲に伝えている。
だからこそ五和は、その言葉を無視して術式を発動しようとしていたが、
パッァン!
と、またもや短く銃声が響く。
「きゃっ!?」
術式に集中していたせいか、銃声にも慣れているはずの五和が悲鳴を上げた。
だが、
「何、よ。アンタは大丈夫…なんだから、別にいいでしょう、が」
今起こったことについて一方通行(アクセラレータ)が不満を漏らすと、明らかにまずい状態だと分かる、ぶつ切りの鏡子の声が一方通行に届いた。
もう既に、一方通行の一声で彼の元に、グループB前メンバーが集っていた。かなり困惑はしているが。
そして一番動揺していそうな、天草式の五和が鏡子に向けていった。
「あ、あのっ!? だ、大丈夫なんですか、その傷……どう見ても大丈夫そうではないですけど」
あたふたと魔術の準備をし始める五和。他の天草式メンバーも、彼女の術式を手伝っている。
だがしかし、鏡子はそれを一瞥し、冷たい声を彼女たちにかけただけだった。
「あなたたち…馬鹿? 今、相手は確認できないだけ、で……銃を構えているのよ? 他人を気遣って、いる暇があったら…自分のことを心配しなさいよ」
声こそは強気なものの、表情と血が、鏡子の大事を周囲に伝えている。
だからこそ五和は、その言葉を無視して術式を発動しようとしていたが、
パッァン!
と、またもや短く銃声が響く。
「きゃっ!?」
術式に集中していたせいか、銃声にも慣れているはずの五和が悲鳴を上げた。
だが、
五和が瞬発的に予想した、撃たれた本人の悲鳴と、血飛沫は上がらなかった。
……なのだが、
「……何度やりゃァ気が済むンだァ、テメェよォ」
殺気むんむんの、一方通行の声が代わりに聞こえた。
その声に全く動じず、同超能力者(レベル5)の心理掌握がサラッと応えた。
「そりゃ、あんたらがさっさとここから消えるまでよ馬鹿」
その最後の『馬鹿』には、普通女性のみが発する特有の『アレ』というものが全く感じられず、本当にただ単にそう思っている、としか感じさせなかった。本当にどうでもいいことだが。
と、その能力者の頂点に立つ二人組みの会話についていけていない五和が、
「…え、え~と……と、とりあえず状況説明を…」
もはやその術式を完成させることを忘れ、困ったような表情で二人に聞いた。ちなみに牛深と香焼の男二人組みは、その手の話を理解するのは最初から諦めているようだった。
「……何度やりゃァ気が済むンだァ、テメェよォ」
殺気むんむんの、一方通行の声が代わりに聞こえた。
その声に全く動じず、同超能力者(レベル5)の心理掌握がサラッと応えた。
「そりゃ、あんたらがさっさとここから消えるまでよ馬鹿」
その最後の『馬鹿』には、普通女性のみが発する特有の『アレ』というものが全く感じられず、本当にただ単にそう思っている、としか感じさせなかった。本当にどうでもいいことだが。
と、その能力者の頂点に立つ二人組みの会話についていけていない五和が、
「…え、え~と……と、とりあえず状況説明を…」
もはやその術式を完成させることを忘れ、困ったような表情で二人に聞いた。ちなみに牛深と香焼の男二人組みは、その手の話を理解するのは最初から諦めているようだった。
という状況になったのだが。
「無理ね。あんたらに説明している時間はないわ。さっさとここから消えなさい。一方通行(アクセラレータ)にでも聞けばいいでしょ」
思いっきり人任せな発言が、鏡子の口からされた。
それに一方通行は、
「……テメェ」
またその台詞をはいたが、今回はそれ以上言わない。おそらく、さすがに事情を飲み込んだのだろう。
一方通行は、他のメンバーに向かって冷たく言う。
「……さっさと行くぞ。こンな馬鹿女と一緒に心中なンて、お前らだって御免だろォ?」
そう言った一方通行だが、自分ひとりだけでその場を去るという真似はしなかった。
「え、で、でも……」
案の定というか、五和は戸惑っている。
(……チッ。本当に、さっさと消えてくれないとこっちもキツいってのに……)
だいぶ腹のほうは痛みが引いてきたところだが、もしかしたら神経が麻痺し始めたのかもしれない。それに、出血のほうもだいぶ馬鹿にならなくなってきている。
そんな状況下に置かれていた鏡子―――心理掌握(メンタルアウト)だが、
(…いいんですか? お仲間さんを去らせなくて)
「チッ!!」
確かに、そういう感情を受け取った鏡子は、能力使用の準備をする。
そして、
パァン! という音と、
キィン! という音が、ほとんど同じタイミングで響いた。
それに対し、一方通行は、
「無理ね。あんたらに説明している時間はないわ。さっさとここから消えなさい。一方通行(アクセラレータ)にでも聞けばいいでしょ」
思いっきり人任せな発言が、鏡子の口からされた。
それに一方通行は、
「……テメェ」
またその台詞をはいたが、今回はそれ以上言わない。おそらく、さすがに事情を飲み込んだのだろう。
一方通行は、他のメンバーに向かって冷たく言う。
「……さっさと行くぞ。こンな馬鹿女と一緒に心中なンて、お前らだって御免だろォ?」
そう言った一方通行だが、自分ひとりだけでその場を去るという真似はしなかった。
「え、で、でも……」
案の定というか、五和は戸惑っている。
(……チッ。本当に、さっさと消えてくれないとこっちもキツいってのに……)
だいぶ腹のほうは痛みが引いてきたところだが、もしかしたら神経が麻痺し始めたのかもしれない。それに、出血のほうもだいぶ馬鹿にならなくなってきている。
そんな状況下に置かれていた鏡子―――心理掌握(メンタルアウト)だが、
(…いいんですか? お仲間さんを去らせなくて)
「チッ!!」
確かに、そういう感情を受け取った鏡子は、能力使用の準備をする。
そして、
パァン! という音と、
キィン! という音が、ほとんど同じタイミングで響いた。
それに対し、一方通行は、
「……チッ。やっぱし『他の野郎が干渉』してくっと、うまく『反射も使えねェ』な」
髪の毛を掻き毟りながら、そう言った。
「え……?」
五和は、先ほど何が起きたのかを目の当たりにして、その場から動けないでいた。
(……ッ、本当に面倒な女ね……ッ! さっさと行きなさいってば!)
さすがにこれ以上は無理がある、と悟った鏡子は、五和に対しそう『強く念じた』。
すると、
突然五和は、ペタリと座り込んでいたその身体を起こし、無表情でその場を立ち去ろうとする。
さすがにそれには驚いた牛深たちが、五和に声をかける。
「ちょ……五和!?」
「ど、どうしたんすか、五和さん?」
そう言い、やはり鏡子にも多少なりの引け目を感じているのか、彼女のほうをチラチラ見ながらも五和を追いかける男二人。
それを見た一方通行が、
「……いいンだな?」
確認をとるかのように、鏡子にそう言った。
対し鏡子は、あっさりとこう言っただけ。
「何が?」
……、と黙り込んだ一方通行は、やはり他のメンバーと同じく、その場を立ち去る。
死ぬンじゃねェぞ、と一言残して。
「……死ぬはずが、ないじゃない」
それに鏡子は、少しの笑みを浮かべ、
「あんたらがいなくなれば……こっちは好き勝手にやらせてもらうわよ」
今は姿を確認できていない、視覚潰し(ライトメーター)に対して、そう言った。
「え……?」
五和は、先ほど何が起きたのかを目の当たりにして、その場から動けないでいた。
(……ッ、本当に面倒な女ね……ッ! さっさと行きなさいってば!)
さすがにこれ以上は無理がある、と悟った鏡子は、五和に対しそう『強く念じた』。
すると、
突然五和は、ペタリと座り込んでいたその身体を起こし、無表情でその場を立ち去ろうとする。
さすがにそれには驚いた牛深たちが、五和に声をかける。
「ちょ……五和!?」
「ど、どうしたんすか、五和さん?」
そう言い、やはり鏡子にも多少なりの引け目を感じているのか、彼女のほうをチラチラ見ながらも五和を追いかける男二人。
それを見た一方通行が、
「……いいンだな?」
確認をとるかのように、鏡子にそう言った。
対し鏡子は、あっさりとこう言っただけ。
「何が?」
……、と黙り込んだ一方通行は、やはり他のメンバーと同じく、その場を立ち去る。
死ぬンじゃねェぞ、と一言残して。
「……死ぬはずが、ないじゃない」
それに鏡子は、少しの笑みを浮かべ、
「あんたらがいなくなれば……こっちは好き勝手にやらせてもらうわよ」
今は姿を確認できていない、視覚潰し(ライトメーター)に対して、そう言った。
「だから、何があったんですか、って言ってるじゃないですか」
「だから、ンなこたァどォだっていいだろ、つってンだろォが」
全然どうでもよくありません、とまだ食いついてくる五和を見て、ため息をつく一方通行(アクセラレータ)。
「だから、ンなこたァどォだっていいだろ、つってンだろォが」
全然どうでもよくありません、とまだ食いついてくる五和を見て、ため息をつく一方通行(アクセラレータ)。
場所は、鏡子から離れて100m程度の場所。
状況は、今まで夢遊病者のように歩いていた五和が、突然目覚めたかのように意識を取り戻した、という感じ。
「……?」
五和は、その歩いていた足を止め、寝ぼけたような目で前を見つめる。
それを見た牛深が、ホッとしたように五和に言った。
「おっ、五和、気付いたか?」
「…牛深、さん……?」
やはりまだ寝ぼけているような顔を、牛深に向ける五和。
「あれ……? 私、いつの間にここまで?」
「え……? 五和、覚えてないんすか?」
少し表情が引き締まった五和が言った言葉に、香焼が驚きを表した。
「覚えてない、というか……意識を失っていた、みたいな?」
首をかしげながらそう言う五和。
「いや、みたいな? と言われても……」
自分の頭を乱雑に牛深は掻く。
「…え~と、二人は何がどうなってるのか、分かってないんですか?」
おそらく牛深たちに聞いてきた五和の問いに、香焼が『そうっすね』と簡潔に応えた。
少し行動を止めていた五和だが、
牛深たちに向けていた首を、ぐるんと前に回して言った。
「あなたは、何か分からないんですか?」
「お前らに教える義理もねェよ」
一方通行にかけられた五和の声を、あっさりと一蹴する一方通行。
「ッてことは、何が起こったのか分かってるんですね?」
「だからなンだ」
五和の問いを、一方通行は後ろを振り返りもせずに返す。
その一方通行の肩を五和は掴み、無理矢理こちらに向かせて言った。
「何があったか、教えて下さい」
「アア? ンだその人様に物を頼む態度はァ?」
傍から見れば、まるでキスの一歩手前のような状況だが、二人ともまったくそんなことは意識していない。
五和は一方通行の肩から手を離したが、顔はまるでガン見するように一方通行に近づけてさらに言った。
「お願いですから、教えて下さい」
「……舐めてンのか、テメェ」
なぜか、半分ケンカのような状況になりつつある二人の会話。
牛深たちには、そのどちらも止めることは出来ない。ただ顔を青くして見守っているだけだ。彼らも一応一方通行の立場は理解している。
そして、まだそんな馬鹿げた問答を続けていた一方通行たちだが、
不意に一方通行が空を見上げ、そして、
状況は、今まで夢遊病者のように歩いていた五和が、突然目覚めたかのように意識を取り戻した、という感じ。
「……?」
五和は、その歩いていた足を止め、寝ぼけたような目で前を見つめる。
それを見た牛深が、ホッとしたように五和に言った。
「おっ、五和、気付いたか?」
「…牛深、さん……?」
やはりまだ寝ぼけているような顔を、牛深に向ける五和。
「あれ……? 私、いつの間にここまで?」
「え……? 五和、覚えてないんすか?」
少し表情が引き締まった五和が言った言葉に、香焼が驚きを表した。
「覚えてない、というか……意識を失っていた、みたいな?」
首をかしげながらそう言う五和。
「いや、みたいな? と言われても……」
自分の頭を乱雑に牛深は掻く。
「…え~と、二人は何がどうなってるのか、分かってないんですか?」
おそらく牛深たちに聞いてきた五和の問いに、香焼が『そうっすね』と簡潔に応えた。
少し行動を止めていた五和だが、
牛深たちに向けていた首を、ぐるんと前に回して言った。
「あなたは、何か分からないんですか?」
「お前らに教える義理もねェよ」
一方通行にかけられた五和の声を、あっさりと一蹴する一方通行。
「ッてことは、何が起こったのか分かってるんですね?」
「だからなンだ」
五和の問いを、一方通行は後ろを振り返りもせずに返す。
その一方通行の肩を五和は掴み、無理矢理こちらに向かせて言った。
「何があったか、教えて下さい」
「アア? ンだその人様に物を頼む態度はァ?」
傍から見れば、まるでキスの一歩手前のような状況だが、二人ともまったくそんなことは意識していない。
五和は一方通行の肩から手を離したが、顔はまるでガン見するように一方通行に近づけてさらに言った。
「お願いですから、教えて下さい」
「……舐めてンのか、テメェ」
なぜか、半分ケンカのような状況になりつつある二人の会話。
牛深たちには、そのどちらも止めることは出来ない。ただ顔を青くして見守っているだけだ。彼らも一応一方通行の立場は理解している。
そして、まだそんな馬鹿げた問答を続けていた一方通行たちだが、
不意に一方通行が空を見上げ、そして、
「……ああ、このあたりなら大丈夫そうだな」
面倒くさそうにその長い髪を掻き、そう言った。
(やっと……効果圏外に出たか)
一方通行の反応がなくなったのを感じ取り、そう思う鏡子。
(てか、あいつらなんで歩くだけなのにこんなに時間かかってんのよ……)
周囲をくまなく見回しながらも、鏡子はそんなことを考える。
そして、
パッァン!
と、もはや何度目になるかも数えたくなくなるような銃声が響いた。
それは、完璧に鏡子の死角から放たれたものだった。それに、鏡子は銃声を聞いてから回避行動を行えるようなスーパーウーマンでもない。
だが、
それは鏡子の身体スレスレを通り、アスファルトに当たっただけで沈黙する。
その銃口は、しっかりと鏡子の頭蓋骨を狙っていたはずなのに。
(……よし、大体銃口をずらすのには慣れてきた)
だが、鏡子はそれに驚きを見せることはなく、ただ確認を取るかのようにその弾痕を見つめただけであった。
一方通行の反応がなくなったのを感じ取り、そう思う鏡子。
(てか、あいつらなんで歩くだけなのにこんなに時間かかってんのよ……)
周囲をくまなく見回しながらも、鏡子はそんなことを考える。
そして、
パッァン!
と、もはや何度目になるかも数えたくなくなるような銃声が響いた。
それは、完璧に鏡子の死角から放たれたものだった。それに、鏡子は銃声を聞いてから回避行動を行えるようなスーパーウーマンでもない。
だが、
それは鏡子の身体スレスレを通り、アスファルトに当たっただけで沈黙する。
その銃口は、しっかりと鏡子の頭蓋骨を狙っていたはずなのに。
(……よし、大体銃口をずらすのには慣れてきた)
だが、鏡子はそれに驚きを見せることはなく、ただ確認を取るかのようにその弾痕を見つめただけであった。
それくらいのことは、心理掌握(メンタルアウト)にとっては驚くべきことでもないから。
(あの女……)
視覚潰し(ライトメーター)は、少し焦ってはいるが限界ではない、という表情をしている鏡子を睨みつける。
(……心理掌握《メンタルアウト》の持ち主。心理や精神に関しては無敵の能力)
垣根聖督にインプットされた情報を、頭の中で整理していく。
(おそらく、先ほどの銃弾をかわしていたのは……その能力のせいですか)
視覚潰しはそう考える。
おそらく鏡子は、その能力で視覚潰しの頭脳に干渉していた。
そして、視覚潰しの銃口を、無理矢理鏡子ではなく一方通行(アクセラレータ)に向けていたのだろう。
その行為自体は、心理掌握では成し得ないことだ。
だがしかし、『思わせる』ことは、その能力を使用すれば可能。
つまり、
視覚潰し(ライトメーター)は、少し焦ってはいるが限界ではない、という表情をしている鏡子を睨みつける。
(……心理掌握《メンタルアウト》の持ち主。心理や精神に関しては無敵の能力)
垣根聖督にインプットされた情報を、頭の中で整理していく。
(おそらく、先ほどの銃弾をかわしていたのは……その能力のせいですか)
視覚潰しはそう考える。
おそらく鏡子は、その能力で視覚潰しの頭脳に干渉していた。
そして、視覚潰しの銃口を、無理矢理鏡子ではなく一方通行(アクセラレータ)に向けていたのだろう。
その行為自体は、心理掌握では成し得ないことだ。
だがしかし、『思わせる』ことは、その能力を使用すれば可能。
つまり、
(……私はその銃口を心理掌握に『向けていたと思わされていた』というわけですわね)
脳に能力を滑り込ませ、視覚や心理を左右されたのだろう。
それにより、視覚潰しは鏡子に銃口を向けていたつもりになっていたが、実際のところその銃口は、あの一方通行に向けていたのだ。
そのまま引き金を引けば、その銃口は戸惑いなく一方通行に突き刺さる。
だが、もちろん一方通行はその能力により、傷一つつかない。
といっても、流石にデフォルトだけではそれを正確に『反射』することはできなかったのだろう。相手が確認できない状況で、突然わけの分からないタイミングで攻撃されれば、それをどこかに跳ね飛ばすだけで精一杯のはずだ。
それによって視覚潰しも傷はつかなかったが、代わりに一方通行たちも傷一つつかなかった。
その銃口を牛深たちに向けていたときも、同じようなことをされてかわされたのだろう。
(……やってくれるじゃないですか、なかなかに……ッ!!)
そんなことは、やはり並大抵のことではない。
しかも鏡子は、それを実行する前に一度、視覚潰しに腹を打ち抜かれているのだ。
その痛みも、その能力を使ってある程度削減してあっただろうが、その精神状態であそこまでする鏡子は、やはり『化け物』と表現するのが正しいことだろう。
(といっても……そいつと相対している私が言えた義理じゃ、ないですかね)
視覚潰しは、ペタリと地面に座り込んでいる心理掌握を見て、ニヤリと笑う。
そして、
『……さて、心理掌握さん……邪魔者もいなくなったところですし、「本気の」殺し合いと行きましょうか』
その視覚潰しの声を、鏡子の脳に直接叩き込ませるように、彼女は言った。
それにより、視覚潰しは鏡子に銃口を向けていたつもりになっていたが、実際のところその銃口は、あの一方通行に向けていたのだ。
そのまま引き金を引けば、その銃口は戸惑いなく一方通行に突き刺さる。
だが、もちろん一方通行はその能力により、傷一つつかない。
といっても、流石にデフォルトだけではそれを正確に『反射』することはできなかったのだろう。相手が確認できない状況で、突然わけの分からないタイミングで攻撃されれば、それをどこかに跳ね飛ばすだけで精一杯のはずだ。
それによって視覚潰しも傷はつかなかったが、代わりに一方通行たちも傷一つつかなかった。
その銃口を牛深たちに向けていたときも、同じようなことをされてかわされたのだろう。
(……やってくれるじゃないですか、なかなかに……ッ!!)
そんなことは、やはり並大抵のことではない。
しかも鏡子は、それを実行する前に一度、視覚潰しに腹を打ち抜かれているのだ。
その痛みも、その能力を使ってある程度削減してあっただろうが、その精神状態であそこまでする鏡子は、やはり『化け物』と表現するのが正しいことだろう。
(といっても……そいつと相対している私が言えた義理じゃ、ないですかね)
視覚潰しは、ペタリと地面に座り込んでいる心理掌握を見て、ニヤリと笑う。
そして、
『……さて、心理掌握さん……邪魔者もいなくなったところですし、「本気の」殺し合いと行きましょうか』
その視覚潰しの声を、鏡子の脳に直接叩き込ませるように、彼女は言った。
13
最初に感じたのは、途方もない絶望。
次に感じたのは、それによって生み出された恐怖。
そして、最後に感じたのは、身体を駆け巡るような開放感。
次に感じたのは、それによって生み出された恐怖。
そして、最後に感じたのは、身体を駆け巡るような開放感。
触覚壊し(センサーブレイク)は、その能力が完備されたのを、それで知った。
だが、それと同時、不自然なことも分かった。
(……なんで)
触覚壊しは、焦点の合わない目で遠くを見つめ、
(……なんで、私は生きている……?)
そう思った。
あの、途方もない絶望を与えた攻撃。
あんなものは、触覚壊しではどうしようもなかった。仲間の力が働いていても、同様のことが言える。
そして、あれがそのまま直撃していれば、柔らかい生肉など、ズタズタに切り裂いていたことだろう。
だが、
触覚壊しには、傷一つついていなかった。
(おかしい)
冷静に、それを受け止める触覚壊し。
(あの攻撃が馬鹿げているとか、今はそんなことどうでもいい。問題は、何で私が生きていられるのか、ということ)
少なくとも、あの女が手加減したわけではないだろう、と考える触覚壊し。死なない程度には手加減したかもしれないが、傷一つつけないのでは、そもそも攻撃の意味がない。
それに、あの攻撃だったら、本人の意思が度であれ、確実に触覚壊しを殺していただろう。それを全力で防ごうとしたところで、触覚壊しはおろか、本人でもそれは免れられないはずだ。
だったら、何故、と辺りを見回す触覚壊し。
そして分かったのは、あの攻撃が防がれていたのは、ある一点を中心とした円状の範囲内だけ、ということ。
その範囲に入らなかったアスファルトは、跡形もなく切り裂かれている。
(一体、何が――――――)
そう考える触覚壊しの耳に、
(……なんで)
触覚壊しは、焦点の合わない目で遠くを見つめ、
(……なんで、私は生きている……?)
そう思った。
あの、途方もない絶望を与えた攻撃。
あんなものは、触覚壊しではどうしようもなかった。仲間の力が働いていても、同様のことが言える。
そして、あれがそのまま直撃していれば、柔らかい生肉など、ズタズタに切り裂いていたことだろう。
だが、
触覚壊しには、傷一つついていなかった。
(おかしい)
冷静に、それを受け止める触覚壊し。
(あの攻撃が馬鹿げているとか、今はそんなことどうでもいい。問題は、何で私が生きていられるのか、ということ)
少なくとも、あの女が手加減したわけではないだろう、と考える触覚壊し。死なない程度には手加減したかもしれないが、傷一つつけないのでは、そもそも攻撃の意味がない。
それに、あの攻撃だったら、本人の意思が度であれ、確実に触覚壊しを殺していただろう。それを全力で防ごうとしたところで、触覚壊しはおろか、本人でもそれは免れられないはずだ。
だったら、何故、と辺りを見回す触覚壊し。
そして分かったのは、あの攻撃が防がれていたのは、ある一点を中心とした円状の範囲内だけ、ということ。
その範囲に入らなかったアスファルトは、跡形もなく切り裂かれている。
(一体、何が――――――)
そう考える触覚壊しの耳に、
「……ああ? ンだテメェ」
男の声が入り込んだ。
とっさに身構える触覚壊し。
そしてその声の主を確認しようとした触覚壊しだが、
確認しようとするまでもなかった。
『それ』は、目の前にいたから。
とっさに身構える触覚壊し。
そしてその声の主を確認しようとした触覚壊しだが、
確認しようとするまでもなかった。
『それ』は、目の前にいたから。
「……いきなり、分けのわからねぇ攻撃されたと思ったら……今度はなんだよ。あー、さっきの攻撃は、お前目掛けて打たれたのか」
ゆっくりと、『それ』は立ち上がる。
と同時、『それ』から生えている、白い翼も持ち上がる。
その翼は、本体が普通の人間程度しかないのにもかかわらず、片方だけで10mもあるように思われた。
そして、
と同時、『それ』から生えている、白い翼も持ち上がる。
その翼は、本体が普通の人間程度しかないのにもかかわらず、片方だけで10mもあるように思われた。
そして、
「んじゃ、感謝するんだな、運良くこの俺がここにいたことを。一生、『学園都市第2位様……』って言っててもバチは当たらないぜ」
その『少年』はそう言って、
突如、消え去った。
突如、消え去った。