見た目どう考えても非合法なロリ先生と見た目胡散臭さ100%の青髪ピアスな似非関西人らと一緒に夏休みの補習を受けていたら、もう完全下校時刻である。
「あー、不幸だ」
夕焼けの日差しを受けた警備ロボットが上条を追い抜いていく。上に乗っていたメイドさんらしきものは隣人の義妹だろうか。
車輪の上にドラム缶を載せたようなそれら(メイドさんではなく警備ロボット)は学園都市の最新技術の一つであり、監視カメラや警報などの基本的な機能を搭載している。
上条の母親などはそのシンプルで差し当たりのないデザインに不満があるようだが、基本的に学園都市の技術はSF小説に出てくるようなハッタリのきいたものより、実用性重視で無駄の無いデザインのものが多い。現に上条の寮などにも配備されている清掃ロボットも、あの警備ロボットと見た目は殆ど変わらない。
車輪の上にドラム缶を載せたようなそれら(メイドさんではなく警備ロボット)は学園都市の最新技術の一つであり、監視カメラや警報などの基本的な機能を搭載している。
上条の母親などはそのシンプルで差し当たりのないデザインに不満があるようだが、基本的に学園都市の技術はSF小説に出てくるようなハッタリのきいたものより、実用性重視で無駄の無いデザインのものが多い。現に上条の寮などにも配備されている清掃ロボットも、あの警備ロボットと見た目は殆ど変わらない。
(犬型とか凝った形してると、正直鬱陶しいんだよなー……)
「あ、いたっ! とうま! ちょっと待つんだよ!」
警備ロボットを視界の端で見送った上条は、そういえば一方通行は結局何で逃げていたんだろうだとかあの電極はなんなんだろうかとか、つまりは今朝のことを考えていた。
追いかければまだ追いつけたハズだ。逃げていたとはいえそんなに急いで移動していたわけでは無かったし、相手は相当悪目立ちする容姿なのだから。
結局、繋がりが欲しかったんだと思う。あの電極が重要なものなのかは分からないが、これを手元に置いておけばいつかまた取りに来るかもしれないと。
あの少年があんな風に笑うから。
どこかに繋がりが残っていないと、そのままどこかへひっそりと消えてしまいそうで。
怖かったんだと、思う。
そして今は痛い、主に頭が。
追いかければまだ追いつけたハズだ。逃げていたとはいえそんなに急いで移動していたわけでは無かったし、相手は相当悪目立ちする容姿なのだから。
結局、繋がりが欲しかったんだと思う。あの電極が重要なものなのかは分からないが、これを手元に置いておけばいつかまた取りに来るかもしれないと。
あの少年があんな風に笑うから。
どこかに繋がりが残っていないと、そのままどこかへひっそりと消えてしまいそうで。
怖かったんだと、思う。
そして今は痛い、主に頭が。
「がっふるるぅぅぅぅぅ!!」
「ぎゃああああ! ちょっと待ていきなりなんなんだ腹ペコシスター!!」
「腹ペコシスターじゃないんだよインデックスなんだよ! まったくとうまはさっきからいくら話しかけても反応しないしいつまで経っても名前で呼んでくれないしー!!」
「だからって噛み付くなぁぁぁぁ!! 頭が痛いし周りからの目線も痛いしー!!」
『上条の頭に食らい付いているのは、昨日上条宅の冷蔵庫を食い散らかした腹ペコシスターだ。上条がたった一度うっかり彼女の服を脱がしてしまったばかりに、その時から上条の部屋を幾度となく訪れては上条を討ち倒して食料を強奪している』
「って台詞が上条さんにはあだだだだだだだ!!」
「何訳分かんない事言ってるのかな!」
「こんな凶暴な彼女なんですが本当はとっても優しいイギリス清教のしゅうぎゃああああ!!」
噛み砕かれた。
初めて会ったときに、彼女は不良に絡まれていた――ように見えた。だから亀を助けた浦島太郎的な展開に持っていこうと思ったのだが、近づいて話を聞くにそれは逆だったらしい。
つまり、適当にたむろしていた不良に問答無用で布教した挙げ句に食料を要求していた、と。とんだ亀である。
そこでこれこれ亀や童子たちを困らせるのではありませんと何島太郎だかわからない展開になってしまい、とりあえず上条は『右手』を彼女の肩に置いてなだめようとしたらビリビリィ! なんて分かりやすい音がするでもなくパサリと亀さんの衣服が落ちた。
そこでまあ亀改め全裸シスターの反応としては、突然の出来事に全力で恥ずかしがりながらも全力ですっぽんの如く噛みついてきたわけだ。亀だけに。すっぽんぽんだけに。
その後なんやかんやで上条のシャツだけ羽織らせたりたまたま近かった上条家に招待して服を貸したり冷蔵庫が空にされたり、それからもその時のことを盾に冷蔵庫を荒らされまくったりで今に至る。
初めて会ったときに、彼女は不良に絡まれていた――ように見えた。だから亀を助けた浦島太郎的な展開に持っていこうと思ったのだが、近づいて話を聞くにそれは逆だったらしい。
つまり、適当にたむろしていた不良に問答無用で布教した挙げ句に食料を要求していた、と。とんだ亀である。
そこでこれこれ亀や童子たちを困らせるのではありませんと何島太郎だかわからない展開になってしまい、とりあえず上条は『右手』を彼女の肩に置いてなだめようとしたらビリビリィ! なんて分かりやすい音がするでもなくパサリと亀さんの衣服が落ちた。
そこでまあ亀改め全裸シスターの反応としては、突然の出来事に全力で恥ずかしがりながらも全力ですっぽんの如く噛みついてきたわけだ。亀だけに。すっぽんぽんだけに。
その後なんやかんやで上条のシャツだけ羽織らせたりたまたま近かった上条家に招待して服を貸したり冷蔵庫が空にされたり、それからもその時のことを盾に冷蔵庫を荒らされまくったりで今に至る。
「……ああ、お母さん。痛くて涙が出るよ。頭もだけど心も痛い。あと胃」
「なんで遠い目をしてるのかな」
「ああ不幸だ、こんなのと関わったばっかりに」
「こんなのじゃない! インデックス!」
「うっせえ腹ペコ! そもそも昨日てめえが冷蔵庫のコンセント抜いていきやがったからうちの冷蔵庫の中身全滅だぞ!! アレは一体何がしたかったんだよ嫌がらせか!!」
「お腹が減るから仕方ないんだよ」
「わけわかんねえ言い訳しやがって……!! そもそも不本意だけどあれらはテメェの食料でもあるんじゃねーのかよ!!」
あの時――散々安売りで買い込んでいた上条宅の『冷蔵庫の中身』殆どを、インデックスはその身一つに受け入れた。それは冷蔵庫の中身だけでは無い。食べたら腹を壊しそうな古い野菜を寄せ集めた『野菜炒めのようなもの』に、内臓に深刻なダメージを与えそうなカップ麺各種、シメには夕飯用に買ってきて彼女に食べられないように隠しておいた中国産の『鰻』。
でもまあ、それもどれもインデックスの障害では無い。
それが『食べ物』であれば、インデックスはなんでも食べ尽くしてしまうのだから。
でもまあ、それもどれもインデックスの障害では無い。
それが『食べ物』であれば、インデックスはなんでも食べ尽くしてしまうのだから。
「それはそもそもとうまの経済力のなさが問題かも。冷蔵庫の中身が駄目になったくらいでオーバーな、とうまの貧乏を私に押し付けないで欲しいんだよ!!」
「―ッ!!」上条はギチギチと歯を鳴らして、「言わせておけば好き放題言いやがって…!! 上条さんが貧乏なのは誰のせいだと思ってやがるッ!!」
「……はぁ。じゃあいいよ今日は。でも私に当たっても不幸は治らないよ?」
「な……ッ! ちょっとお前、シスターさんとしてその言い草はどうなんだ! もうすこし真面目に働け!!」
地団駄を踏みながら叫ぶ上条に、インデックスは大げさにため息をついて、
「じゃあ、真面目に食べてもいいの?」
だ……っ、と上条は言葉を詰まらせる。
インデックスは口を軽く開いて、もう一度閉じる。ただそれだけの動作で、上条当麻の毛穴という毛穴からダラダラと嫌な汗が流れ出す。働く=食べるなのかこのシスターはと思っても、ただ一歩後退することすらできずにその場で硬直する。
インデックスの食べた『質量』がどこへいったのか分からない上条としては、冷や汗一つ流さずに自宅の食料殆どを消し去ったインデックスはまさに『未知の恐怖』そのものだ。
無理もない、インデックスは上条当麻宅の『食べ物』を二時間以上食べ続けて、ただ一つのゲップで済ませた女なのだ。『コレが本気を出したらどれだけ食べるんだろう?』と思うのも自然だ。
ぷひゅう、とインデックスは吹き出して上条から視線を外す。
拘束を解かれたように、上条は数歩よろめく。
インデックスは口を軽く開いて、もう一度閉じる。ただそれだけの動作で、上条当麻の毛穴という毛穴からダラダラと嫌な汗が流れ出す。働く=食べるなのかこのシスターはと思っても、ただ一歩後退することすらできずにその場で硬直する。
インデックスの食べた『質量』がどこへいったのか分からない上条としては、冷や汗一つ流さずに自宅の食料殆どを消し去ったインデックスはまさに『未知の恐怖』そのものだ。
無理もない、インデックスは上条当麻宅の『食べ物』を二時間以上食べ続けて、ただ一つのゲップで済ませた女なのだ。『コレが本気を出したらどれだけ食べるんだろう?』と思うのも自然だ。
ぷひゅう、とインデックスは吹き出して上条から視線を外す。
拘束を解かれたように、上条は数歩よろめく。
「ああ……なんか、不幸だ」
こんなシスターさんにここまでビビらされたのがショックな上条だった。「ウチの家計は火の車だし、今朝はレベル5の一位に今は腹ペコシスターときたもんだ」
「レベル5の一位って誰? どんな人?」
「……、」少し考えた上条は、「……えっと、どんなヤツなんだろうか?」
終始様子を見るようにびくびくしていた上条としては、どんな人間かと言われても怖かったくらいの感想しかない。
(……にしても、レベル5の第一位、か)
上条は少し思い出す。あの白いレベル5がいた時はそこまで考えが及ばなかったが、少し時間を置いて考えてみればレベル0の上条からは随分縁遠い世界の住民だ。
一方通行が居たときはなんでそう感じなかったのだろうだと思う。
彼にそう思わせるだけの『何か』が無かったとでも言うのだろうか?
(……にしても、レベル5の第一位、か)
上条は少し思い出す。あの白いレベル5がいた時はそこまで考えが及ばなかったが、少し時間を置いて考えてみればレベル0の上条からは随分縁遠い世界の住民だ。
一方通行が居たときはなんでそう感じなかったのだろうだと思う。
彼にそう思わせるだけの『何か』が無かったとでも言うのだろうか?
「……てか、今更何思い出してるんだか」
居候先に帰るインデックス (彼女は上条のクラスメイトでもある姫神という少女の寮に寄生している)を見送りながら、上条は一人ごちる。
一方通行との縁はあの時切れた。この広い世の中で何の因果も無く『偶々』再び出会うようなことはまず無い。レベル5がどうこうとか考えることには、最早何の益も無いのだ。
それは正しいハズなのに、忘れようとは思えなかった。
部屋のポツンと取り残された、何に使うのかも分からない電極。
唯一切れなかった『繋がり』が、上条の心の端に引っかかってモヤモヤする。
何故そんなことが引っかかっているのか、上条は自分のことなのに分からなかった。
一方通行との縁はあの時切れた。この広い世の中で何の因果も無く『偶々』再び出会うようなことはまず無い。レベル5がどうこうとか考えることには、最早何の益も無いのだ。
それは正しいハズなのに、忘れようとは思えなかった。
部屋のポツンと取り残された、何に使うのかも分からない電極。
唯一切れなかった『繋がり』が、上条の心の端に引っかかってモヤモヤする。
何故そんなことが引っかかっているのか、上条は自分のことなのに分からなかった。
神様すら殺せる男のくせに。