「もう少し……もう少しだけ、時が満ちるのを待てば良い………」
立て掛けた古い時計は午後七時を回り、この十月十五日に本格的な夜がやって来ようとしている。
そんな僅かに月明かりの差し込むデスクルームに一人の女が佇んでいた。
女の手には朱色のワイン。月光に照らされる黄金髪とその大人びた風貌には、むしろ似合いすぎると言っても良いぐらいその女は部屋の景色に溶け込んでいた。
(『素材』は回収した。しかし、あの小娘共は殺しておいた方が良かっただろうか? ……いや、無闇に殺せば警察や王室派が動く恐れが有る。東洋人の方には勢い余って自己紹介しちゃったけど、何も解って無いようだったし問題は無いか……)
女のすぐ隣には数時間前に『譲り受けた』ウサギのヌイグルミ。可愛い顔の口元から人のの髪らしき物が垂れ下がっているシュールな人形である。
(にしても、あの東洋人の小娘が魔術師だなんて報告は無かったけど、まさか高速でぶん殴ってくるとは思わなかった……でも、なんかあの術式違和感有ったわね。いや、むしろあれは魔術と言うより、もっと別の……?)
立て掛けた古い時計は午後七時を回り、この十月十五日に本格的な夜がやって来ようとしている。
そんな僅かに月明かりの差し込むデスクルームに一人の女が佇んでいた。
女の手には朱色のワイン。月光に照らされる黄金髪とその大人びた風貌には、むしろ似合いすぎると言っても良いぐらいその女は部屋の景色に溶け込んでいた。
(『素材』は回収した。しかし、あの小娘共は殺しておいた方が良かっただろうか? ……いや、無闇に殺せば警察や王室派が動く恐れが有る。東洋人の方には勢い余って自己紹介しちゃったけど、何も解って無いようだったし問題は無いか……)
女のすぐ隣には数時間前に『譲り受けた』ウサギのヌイグルミ。可愛い顔の口元から人のの髪らしき物が垂れ下がっているシュールな人形である。
(にしても、あの東洋人の小娘が魔術師だなんて報告は無かったけど、まさか高速でぶん殴ってくるとは思わなかった……でも、なんかあの術式違和感有ったわね。いや、むしろあれは魔術と言うより、もっと別の……?)
その時、後ろ手にある戸入り口からコンコンと言うノック音が聞こえた。鍵は入っていない、と言うとノックした男はゆっくり部屋へと足を踏み入れる。
「……アークライト室長。報告が、有ります」
「だから、ここでは『室長』じゃなくて『支部長』だって言ってるでしょ。北欧の馬鹿共と一緒にしないでくれる? 折角、目の届かない英国へ新しく支部を立ち上げたのに……」
クリスタル=アークライトは手中のワインを一気に飲み干し、部下の男へ本題の説明を促した。男は、はいと一回返事をしてから丁寧な口調で報告へ入る。
「実は、『儀式場』として的確な「場所」の候補が幾つか挙がりました。我々下っ端共では決める権利が御座いませんので、アークライト『支部長』に決定をお願いしようと……」
そう言って部下の男が差し出したのは数枚の資料。一枚一枚違う写真と違う文章が載せれられていたその紙をクリスタルは眉を寄せつつ慎重に窺う。
「随分早かったわね、ご苦労さん……で、候補に挙がったのが『大英図書館』『聖ジョージ大聖堂』『聖ジェームズパーク』『ハイドパーク中央広場』って訳ね……とりあえず最初の二つは除外だ。大英図書館は論外として、聖ジョージ大聖堂には『最大司教』も居るし、あんな所では『人払い』も通用しない」
「では、いかが致しましょう?」
「『聖ジェームズパーク』はイベントに加えて、散歩客、観光客、警察、魔術師まで色々な奴らがぞろぞろ居る場所だし、『人払い』も魔術的な策敵レーダーで感知されたらお終いだ」
「……と、言う事はハイドパークになさるので? あの場所はバッキンガム宮殿に隣接していますから、大規模な術式の発動には不向きかと思われますが」
「いいや。問題無い」
クリスタルは新たなワインの栓を引き抜きながら、弁解を一蹴した。
「バッキンガム宮殿は『それ自体』は強固な、それこそ国家規模の防御術式を張り巡らしてあるが、『その周り』は以外にそうでも無い。一般の魔術に比べれば強大かも知れないが、いつも様に『穴』を見つけて入り込めばこっちの物だ。宮殿の連中は強力な防御結界を張ってある事で多少だが気が緩んでいるから、さっさと忍び込んで『人払い』の改良式を発動してしまえば、忽ち誰も居なくなる。そうすれば安全に簡単に『あの術式』を発動できるって訳よ」
すらすらと原稿を読むように流説したクリスタルを見た部下の男は、一度だけ頷く。
「……なるほど。それでは発動時刻はいかがなさいましょう?」
「午前二時四三分三十六秒。ジャストに『発動』させろ。そうすれば『あの術式』は理論上成功するはずだ。いや……成功する」
「解りました。では、他の者に伝えて発動の準備に取り掛かります」
それだけ言うと、部下の男は静かに戸を閉めた。
「……アークライト室長。報告が、有ります」
「だから、ここでは『室長』じゃなくて『支部長』だって言ってるでしょ。北欧の馬鹿共と一緒にしないでくれる? 折角、目の届かない英国へ新しく支部を立ち上げたのに……」
クリスタル=アークライトは手中のワインを一気に飲み干し、部下の男へ本題の説明を促した。男は、はいと一回返事をしてから丁寧な口調で報告へ入る。
「実は、『儀式場』として的確な「場所」の候補が幾つか挙がりました。我々下っ端共では決める権利が御座いませんので、アークライト『支部長』に決定をお願いしようと……」
そう言って部下の男が差し出したのは数枚の資料。一枚一枚違う写真と違う文章が載せれられていたその紙をクリスタルは眉を寄せつつ慎重に窺う。
「随分早かったわね、ご苦労さん……で、候補に挙がったのが『大英図書館』『聖ジョージ大聖堂』『聖ジェームズパーク』『ハイドパーク中央広場』って訳ね……とりあえず最初の二つは除外だ。大英図書館は論外として、聖ジョージ大聖堂には『最大司教』も居るし、あんな所では『人払い』も通用しない」
「では、いかが致しましょう?」
「『聖ジェームズパーク』はイベントに加えて、散歩客、観光客、警察、魔術師まで色々な奴らがぞろぞろ居る場所だし、『人払い』も魔術的な策敵レーダーで感知されたらお終いだ」
「……と、言う事はハイドパークになさるので? あの場所はバッキンガム宮殿に隣接していますから、大規模な術式の発動には不向きかと思われますが」
「いいや。問題無い」
クリスタルは新たなワインの栓を引き抜きながら、弁解を一蹴した。
「バッキンガム宮殿は『それ自体』は強固な、それこそ国家規模の防御術式を張り巡らしてあるが、『その周り』は以外にそうでも無い。一般の魔術に比べれば強大かも知れないが、いつも様に『穴』を見つけて入り込めばこっちの物だ。宮殿の連中は強力な防御結界を張ってある事で多少だが気が緩んでいるから、さっさと忍び込んで『人払い』の改良式を発動してしまえば、忽ち誰も居なくなる。そうすれば安全に簡単に『あの術式』を発動できるって訳よ」
すらすらと原稿を読むように流説したクリスタルを見た部下の男は、一度だけ頷く。
「……なるほど。それでは発動時刻はいかがなさいましょう?」
「午前二時四三分三十六秒。ジャストに『発動』させろ。そうすれば『あの術式』は理論上成功するはずだ。いや……成功する」
「解りました。では、他の者に伝えて発動の準備に取り掛かります」
それだけ言うと、部下の男は静かに戸を閉めた。
再び一人になった女は窓外の月を見つめて誰にも聞こえない声で呟いた。
「(三百年も待った……成功させないで、何が残る?)」
「(三百年も待った……成功させないで、何が残る?)」
『『禁竜召式(パラディンノート)』については引き続き調べを続けます。……くれぐれも無茶を為さらぬように』
「分かってますよ。少なくとも『同じ失敗』は繰り返しませんから」
そう言うとアニェーゼは携帯電話の電源を切って、修道服の物入れへ入れた。
一瞬何かを考えて、やがて少女は立ち上がった。
「さて。とっとと二五〇人かき集めて仕事に入るとしますかね」
「分かってますよ。少なくとも『同じ失敗』は繰り返しませんから」
そう言うとアニェーゼは携帯電話の電源を切って、修道服の物入れへ入れた。
一瞬何かを考えて、やがて少女は立ち上がった。
「さて。とっとと二五〇人かき集めて仕事に入るとしますかね」
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十月十五日午後七時四五分。食堂。
「揃いましたね?」
食堂のど真ん中、一人だけイスの上に立っているアニェーゼは、周りを囲む二五〇人以上修道女を見わたした。
その多大なる人の中の一人、ルチアは俯き加減にアニェーゼ=サンクティスへ叫び気味に言葉を掛けた。
「いつ間にか立ち直っていたのですね、シスター・アニェーゼ。『いつもの通り』で安心しました」
「何を戯言を言いますか。私は一回も凹んだりしてねえってんです」
相も変わらず事柄を真向否定する少女にルチアは笑って首を振る。それに合わせて周りの何人かのシスターがクスクスと笑っているような気がした。
アニェーゼは下着が完全に見えてしまうほどに(イスの上に立っているので、すでに丸見えでは有るが)足を開いて、二五〇人に全員に聞こえる音量で声を張り上げる。
「部隊長として『お願い』します!! 私とキヌハタを襲いやがった野郎の討伐に協力してください。嫌だと思う奴は出て行ってくれて構いません。異教徒のキヌハタを『本当に嫌う』者も同様です。ですが……」
アニェーゼは小さな体では想像が着かない程の迫力ある豪声で、それこそ寮の外まで聞こえてもおかしく無い声で、『仲間にお願い』した。
「揃いましたね?」
食堂のど真ん中、一人だけイスの上に立っているアニェーゼは、周りを囲む二五〇人以上修道女を見わたした。
その多大なる人の中の一人、ルチアは俯き加減にアニェーゼ=サンクティスへ叫び気味に言葉を掛けた。
「いつ間にか立ち直っていたのですね、シスター・アニェーゼ。『いつもの通り』で安心しました」
「何を戯言を言いますか。私は一回も凹んだりしてねえってんです」
相も変わらず事柄を真向否定する少女にルチアは笑って首を振る。それに合わせて周りの何人かのシスターがクスクスと笑っているような気がした。
アニェーゼは下着が完全に見えてしまうほどに(イスの上に立っているので、すでに丸見えでは有るが)足を開いて、二五〇人に全員に聞こえる音量で声を張り上げる。
「部隊長として『お願い』します!! 私とキヌハタを襲いやがった野郎の討伐に協力してください。嫌だと思う奴は出て行ってくれて構いません。異教徒のキヌハタを『本当に嫌う』者も同様です。ですが……」
アニェーゼは小さな体では想像が着かない程の迫力ある豪声で、それこそ寮の外まで聞こえてもおかしく無い声で、『仲間にお願い』した。
「『隣人は愛すべき友』……聖書の教えを憶えている奴は全員付いてきてください!!!!」
修道女達は何も言わずに武器を取った。何かを言わなければ賛否を決められ無いような小さな人間は、アニェーゼ部隊には存在しない。
修道女達は何も言わずに武器を取った。何かを言わなければ賛否を決められ無いような小さな人間は、アニェーゼ部隊には存在しない。
(私は……なんだかんだ言って、キヌハタが嫌いじゃあ無かったんですね)
結局、アニェーゼが嫌っていたのは『異教徒』では無く、『異教の神』だったのではないか。いや、それすらも嘘なのかも知れない。
実際、信じていたローマ正教に裏切られ、大嫌いだと思っていた異教徒の少年にアニェーゼ=サンクティスは助けられた。それも改心と言う形で。
アニェーゼは女子寮に入ってから、一度だけ考えた事がある。何故自分は十字教に身を寄せているのか。
歩道で泥まみれになっているのを助けてくれたから? だとしたら他の宗教に助けられていれば、その教徒として一生を過ごし、前と同じようにその神に身を寄せていただろう。同じように異教徒を軽蔑の目で見ていたのだろう。
ならば、アニェーゼは結局どこでも良かったのではないか?
(情けねえ話ですよ。『十字教だから』じゃなくて『たまたま十字教だから』なんて)
結局、アニェーゼが嫌っていたのは『異教徒』では無く、『異教の神』だったのではないか。いや、それすらも嘘なのかも知れない。
実際、信じていたローマ正教に裏切られ、大嫌いだと思っていた異教徒の少年にアニェーゼ=サンクティスは助けられた。それも改心と言う形で。
アニェーゼは女子寮に入ってから、一度だけ考えた事がある。何故自分は十字教に身を寄せているのか。
歩道で泥まみれになっているのを助けてくれたから? だとしたら他の宗教に助けられていれば、その教徒として一生を過ごし、前と同じようにその神に身を寄せていただろう。同じように異教徒を軽蔑の目で見ていたのだろう。
ならば、アニェーゼは結局どこでも良かったのではないか?
(情けねえ話ですよ。『十字教だから』じゃなくて『たまたま十字教だから』なんて)
小さな頃は親が神父の身としては珍しく無宗教で生活してきて、幼い頃に父を無くしたアニェーゼは、ローマ正教に拾われた。以来、神のためと『自分を偽りながら』数年を過ごしてきた。アニェーゼはどんなに尽くしていても神が見返りをくれる事など有り得ないと今でも思っている。だが、それでも神に仕える修道女として身を捧げているのには理由があった。
アニェーゼは心の奥底で、本当に見えないぐらいの奥底で、教祖を裏切れば『また同じような事が起きる』と思い込んでいただけだった。
(要するに怖かっただけなんですね。他の『友達』が傷付いていくのが)
神は居ると思う。だが、呼べばすぐ来てくれるような便利な存在では無い。むしろ、自分の努力の結果を「神のおかげ」だとか聞く方がイライラするし、結局、信仰される側の神は信仰する側の人間には大したお返しはしてくれない。
それでも、
(知った事かってんです。お返しが貰えないなら、貰わなくても済むように死に者狂いで努力すりゃあ良いだけですから)
迷っていた少女は終わらない目的へ向けて一歩踏み出す事にした。
何故オルソラの一件では気づけなかったのか、と心底悔いてから、気づかせてくれた少女へとお礼を言う事を心に誓って。
(要するに怖かっただけなんですね。他の『友達』が傷付いていくのが)
神は居ると思う。だが、呼べばすぐ来てくれるような便利な存在では無い。むしろ、自分の努力の結果を「神のおかげ」だとか聞く方がイライラするし、結局、信仰される側の神は信仰する側の人間には大したお返しはしてくれない。
それでも、
(知った事かってんです。お返しが貰えないなら、貰わなくても済むように死に者狂いで努力すりゃあ良いだけですから)
迷っていた少女は終わらない目的へ向けて一歩踏み出す事にした。
何故オルソラの一件では気づけなかったのか、と心底悔いてから、気づかせてくれた少女へとお礼を言う事を心に誓って。
「……素晴らしい演説でしたね。超感動してしまいました」
収束を終えたアニェーゼが食堂から出た直後に掛けられたのはそんな言葉だった。
「キヌハタ、居たんですか? シスター達の話だとあんまり暴れるんで部屋に閉じ込められていたそうですが」
「あんな細い縄で大能力者を縛り付けられたら、スキルアウトも苦労しませんよ」
もう隠す気は無いのか、と不思議な気分になるアニェーゼは、この少女について一つ気になる事を聞いてみた。
「キヌハタは、今、私が食堂で叫んでいた事、聞いていたんですよね?」
「ええ。超ドア越しですが、耳には入ってました」
「念のため聞きますが……キヌハタは、『クソ野郎討伐作戦』に参加しますか? この作戦は元々私達(シスター部隊)の基本職ですから、貴女が手伝う理由は……」
「超参加します」
即答だった。アニェーゼは思わず身を引く。
「そこまで言うなら……何か戦える『力』を持っているんですよね?」
「もちろんです。詳しくは言えませんが、超学園都市の人間なんですよこう見えて。超能力だってしっかり持ってますから」
……超能力。魔術とは違う異能の力。アニェーゼは学園都市の能力開発について僅かにしか知らない。それも『どんな異能の力も問答無用で打ち消す』と言うイレギュラーな方向でしか。
収束を終えたアニェーゼが食堂から出た直後に掛けられたのはそんな言葉だった。
「キヌハタ、居たんですか? シスター達の話だとあんまり暴れるんで部屋に閉じ込められていたそうですが」
「あんな細い縄で大能力者を縛り付けられたら、スキルアウトも苦労しませんよ」
もう隠す気は無いのか、と不思議な気分になるアニェーゼは、この少女について一つ気になる事を聞いてみた。
「キヌハタは、今、私が食堂で叫んでいた事、聞いていたんですよね?」
「ええ。超ドア越しですが、耳には入ってました」
「念のため聞きますが……キヌハタは、『クソ野郎討伐作戦』に参加しますか? この作戦は元々私達(シスター部隊)の基本職ですから、貴女が手伝う理由は……」
「超参加します」
即答だった。アニェーゼは思わず身を引く。
「そこまで言うなら……何か戦える『力』を持っているんですよね?」
「もちろんです。詳しくは言えませんが、超学園都市の人間なんですよこう見えて。超能力だってしっかり持ってますから」
……超能力。魔術とは違う異能の力。アニェーゼは学園都市の能力開発について僅かにしか知らない。それも『どんな異能の力も問答無用で打ち消す』と言うイレギュラーな方向でしか。
そんな事は知らない絹旗は学園都市では見せた事が無い緩みと笑顔が混じったような顔で言葉を発した。
「貴方方が、魔術マジュツまじゅつって五月蝿かったんですけど、どうやら『魔法』なんて超ファンタジーな物は有るみたいですね。まだ完全には信じられませんけど」
「? 何故、そう思うんです? 魔術は確かに有りますけど、私だって認識には時間が掛かりましたよ」
「いや、認識というよりは、シスター達は超『それっぽい事』して私を捕獲して部屋に縛り付けたんですから。超信じざるを得ないと言うか……あれはどう見ても『能力』じゃ無かったですし……」
キヌハタを捕まえるために魔術まで使ったのかよ、とそのシスター達への処罰を決定したアニェーゼ。幾ら異能の力を持っていようが、それが魔術を行使する理由には繋がらない。
「貴方方が、魔術マジュツまじゅつって五月蝿かったんですけど、どうやら『魔法』なんて超ファンタジーな物は有るみたいですね。まだ完全には信じられませんけど」
「? 何故、そう思うんです? 魔術は確かに有りますけど、私だって認識には時間が掛かりましたよ」
「いや、認識というよりは、シスター達は超『それっぽい事』して私を捕獲して部屋に縛り付けたんですから。超信じざるを得ないと言うか……あれはどう見ても『能力』じゃ無かったですし……」
キヌハタを捕まえるために魔術まで使ったのかよ、とそのシスター達への処罰を決定したアニェーゼ。幾ら異能の力を持っていようが、それが魔術を行使する理由には繋がらない。
頭を一回掻いてから、アニェーゼは本題の方へとトンボ返りする。
「とにかく。この『仕事』は、敵未知数、詳細未決定、生存保障無しのギャンブル作戦です。死の覚悟が出来ているのなら付いて来ても構いませんが、心の準備が出来ない場合は付いて来ない事をお勧めします。どうしますか?」
その言葉を聞いた絹旗は、学園都市での日常を少しだけ思い返してから返事を返す。
「……私の『普通』は死ぬ覚悟ぐらい超出来てないと一歩も動けないような『普通』ですから。仲間の数が多い分、こっちの方がまだマシです」
その言葉にどんな意味が含まれているのかアニェーゼには解らなかったが、深入りをして地雷を踏むような馬鹿な事をする彼女では無い。
「……分かりました。では、部隊長としてキヌハタを正式に作戦に招待します」
「光栄ですね。お土産一つの為にこんなに超人数が集まるなんて」
「とにかく。この『仕事』は、敵未知数、詳細未決定、生存保障無しのギャンブル作戦です。死の覚悟が出来ているのなら付いて来ても構いませんが、心の準備が出来ない場合は付いて来ない事をお勧めします。どうしますか?」
その言葉を聞いた絹旗は、学園都市での日常を少しだけ思い返してから返事を返す。
「……私の『普通』は死ぬ覚悟ぐらい超出来てないと一歩も動けないような『普通』ですから。仲間の数が多い分、こっちの方がまだマシです」
その言葉にどんな意味が含まれているのかアニェーゼには解らなかったが、深入りをして地雷を踏むような馬鹿な事をする彼女では無い。
「……分かりました。では、部隊長としてキヌハタを正式に作戦に招待します」
「光栄ですね。お土産一つの為にこんなに超人数が集まるなんて」
どうやら、そのお土産が危険らしいのですがね、という言葉を呑気に言うアニェーゼと、それを見て笑う絹旗はどうみても仲の良い友達にしか見えなかった。
そんな二人を陰から眺める数人のシスター達が居た。
「(おお!? ついにキヌハタ、アニェーゼの友好条約が結ばれたか!?)」
「(いやあ、やっぱり事件の一つや二つ無いと、仲良しにはなれませんからねえ)」
「(その意味では『対十字教黒魔術』万歳ってとこ? これから戦いに行く相手に何だけど)」
「(まあ、二人が仲良くなったって事でOKでしょ?)」
「「「「(だね!!)」」」」
あっはっはっはと割と豪快に笑っているシスター達は、突如真後ろから強力な殺気を感じた。
ギギギ、と軋んだドアのような音を立てて、シスター達が振り返ればそこには、
「……貴女達は一体何をやっているのですか?(怒)」
「こ、これはこれはシスター・ルチアサマ(汗)。ごきげんよぶぐうっ!!」
振り返ったシスターの一人が言葉を言い切る前にその体がゲンコツ一つで吹っ飛んだ。
「……貴女達は戦いに行く直前だと言うのに、何を呑気に覗き見などとヤラシイ事をしているのですか?」
「い、いやあ、ちょっと二人の友情の進行状況を確認しようと……」
「そのためだけに覗きなどと言うふしだらな行為を行ったと言うなら、少しばかりお仕置きが必要ですね」
「え!? ちょ、ま、って!! ほ、ほら戦いに行く前だから怪我とかしたら大変じゃぎゃぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!!!!?」
何人かの悲鳴と共に夜の女子寮に割と痛そうな音が響いていく。
「(おお!? ついにキヌハタ、アニェーゼの友好条約が結ばれたか!?)」
「(いやあ、やっぱり事件の一つや二つ無いと、仲良しにはなれませんからねえ)」
「(その意味では『対十字教黒魔術』万歳ってとこ? これから戦いに行く相手に何だけど)」
「(まあ、二人が仲良くなったって事でOKでしょ?)」
「「「「(だね!!)」」」」
あっはっはっはと割と豪快に笑っているシスター達は、突如真後ろから強力な殺気を感じた。
ギギギ、と軋んだドアのような音を立てて、シスター達が振り返ればそこには、
「……貴女達は一体何をやっているのですか?(怒)」
「こ、これはこれはシスター・ルチアサマ(汗)。ごきげんよぶぐうっ!!」
振り返ったシスターの一人が言葉を言い切る前にその体がゲンコツ一つで吹っ飛んだ。
「……貴女達は戦いに行く直前だと言うのに、何を呑気に覗き見などとヤラシイ事をしているのですか?」
「い、いやあ、ちょっと二人の友情の進行状況を確認しようと……」
「そのためだけに覗きなどと言うふしだらな行為を行ったと言うなら、少しばかりお仕置きが必要ですね」
「え!? ちょ、ま、って!! ほ、ほら戦いに行く前だから怪我とかしたら大変じゃぎゃぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!!!!?」
何人かの悲鳴と共に夜の女子寮に割と痛そうな音が響いていく。
=========================================================================
所変わって大英図書館。
「……っ!!?」
オルソラ=アクィナスな絶句していた。
彼女は現在、アークライト家の家宝と言われる『禁竜召式』について追加調べを実行していた所だったのだが、「そう言えばアークライト家が王家直属になった際の『功績』とは何の事でございましょうか?」という素朴な疑問に基づき、アークライト家の先祖を当たっていった訳だが……、
(まさか……その過程でこのような記述に巡り合うとは……。わたくしも運が良いのか悪いのか判断が着かないのでございます……)
アークライト家の先祖となる『その人物』は、オルソラは愚か、魔術を知る者、知らない者までもが一度は名前を聞いたことがある。そんな『人物』を見つけてしまったのだ。
(これが、この記述が本当だとすると『禁竜召式(パラディンノート)』は……)
「……っ!!?」
オルソラ=アクィナスな絶句していた。
彼女は現在、アークライト家の家宝と言われる『禁竜召式』について追加調べを実行していた所だったのだが、「そう言えばアークライト家が王家直属になった際の『功績』とは何の事でございましょうか?」という素朴な疑問に基づき、アークライト家の先祖を当たっていった訳だが……、
(まさか……その過程でこのような記述に巡り合うとは……。わたくしも運が良いのか悪いのか判断が着かないのでございます……)
アークライト家の先祖となる『その人物』は、オルソラは愚か、魔術を知る者、知らない者までもが一度は名前を聞いたことがある。そんな『人物』を見つけてしまったのだ。
(これが、この記述が本当だとすると『禁竜召式(パラディンノート)』は……)
オルソラは考えてみた。禁竜召式。……そういえば『召式』と言うのは、『召喚術式』を略した言葉として使用できる気がする、と思いついてから、
(……禁竜……!!? これは、不味いのではございませんか!!!?)
最悪の解に辿り着いてしまったオルソラは急いで『シスター・アニェーゼ』の名で登録されている番号へと電話を掛けた。
(早く、でてくだ、さい。シスター・アニェーゼ!!!)
コールが六回、七回と続いていく。そして相手が出ないまま八回、九回と虚しく鳴り続ける。
(……禁竜……!!? これは、不味いのではございませんか!!!?)
最悪の解に辿り着いてしまったオルソラは急いで『シスター・アニェーゼ』の名で登録されている番号へと電話を掛けた。
(早く、でてくだ、さい。シスター・アニェーゼ!!!)
コールが六回、七回と続いていく。そして相手が出ないまま八回、九回と虚しく鳴り続ける。
(これは、このままでは貴女達に勝ち目など無いので御座いますよ……!!!!)