とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

EX-02

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「ミサカ、巫女と美琴(ミサカEND その1)」

「えっ?今なんて言った?御坂妹」
「当麻さんはミサカの話を聞いていなかったのですか?
 とミサカは注意力散漫の当麻さんをきつい口調で叱りつけます」
「いや聞こえてたけど、ひょっとして聞き違いかなと思ってさ」
「ミサカの寿命があと7年3ヶ月であることが判明しました
 とミサカは先ほど話した内容を改めて当麻さんに報告します」

「ちょ、ちょっと待て!そりゃ一体どういうことだ?」
「7年3ヶ月後にミサカは生命活動を停止するということなのですが理解できませんか?
 とミサカは当麻さんに再確認します」
「なんでだよ!?身体を再調整すれば寿命を延ばせるって言ってたじゃねえか!」
「はい。本来『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』のために作られた妹達(シスターズ)
 の耐用年数はその使用目的をふまえて30ヶ月に設定されていました。それを再調整
 することで3倍に引き延ばすことに成功したのです。とミサカは補足説明します」

「でも、たった7年3ヶ月だなんてカエル顔の医者(せんせい)は一体何してたんだよ!?」
「いえ、あの先生だからこそこれほどの延命が実現できたのです
 とミサカは先生に感謝することはあっても文句を言うことなどできませんと断言します」
「7年3ヶ月後って言ったってお前はまだ二十歳じゃないか。そんな酷い話があるか!」

取り乱す上条を御坂妹は沈痛な面持ちで見つめていたがやがて静かに話を切り出した。

「実はある処置を施すことでミサカ達の生命活動停止時期をさらに21年先延ばしする
 ことは可能なのです、とミサカは新たな事実を当麻さんに報告します」
「えっ、そうなの?」

28年後とはいえ41歳という年齢は死ぬには十分若すぎるのだが最初に二十歳で死ぬと
聞かされた上条がホッとしてしまったのは仕方ないことだろう。
だからそれを伝える御坂妹の思い詰めた表情に上条は気付かなかった。

「寿命が延びんなら先に行ってくれよ。二十歳で死ぬだなんて驚かすのは無しにしようぜ」
「……………………」
「???、なんで黙っちまうんだ?御坂妹」
「実は一つ問題があるのです、とミサカは重い口調で切り出します」
「まっ、まさか成功率が低いとか?成功しても植物人間になっちまうとかなのか?」
「いいえ。処置といっても調合された薬を飲むだけですし成功率も100%です。
 それに処置後もミサカ達は今までと同じ日常生活を送ることができます
 とミサカは当麻さんの心配事が杞憂であることを先に明言しておきます」

「そうか。じゃあ何が問題なんだ?」
「その処理はミサカの成長を止めることで寿命を延ばす方法なのです、とミサカは告白します」
「どういうことだ?」
「つまり、その処置を行えばミサカ達は死ぬまで13歳のままということです」
「えっ!?…………で、でも二十歳で死ぬことに比べたらまだ…………」

「肉体的成長が停止するだけでなく精神的成長も停止してしまうのですよ、とミサカはた
 め息混じりに呟きます。何年経とうがどんな経験をしようがミサカの精神は成長しない
 のですよ。それがどういうことか理解していますか?」
「それは…………」
「当麻さんから見て、今のミサカは人間ですか?それとも人形ですか?
 とミサカは単刀直入に尋ねます」
「何言ってんだ。お前は人間に決まっているだろ。ちょっと感情表現が苦手なだけだ。
 それに最近はずいぶんと表情も豊かになってるんだぞ。
 だからもうちょっとすれば、あっ!…………」

言葉に詰まった上条に対して御坂妹は再び話し始めた。

「そして全ミサカで検討した結果、全員一致で延命処置を受けることになりました」
「それじゃ、お前達はその処置をいつ受けるんだ?」
「……………………」
「どうした?御坂妹」
「……………………昨夜でした、とミサカは告白します」
「昨夜…………だって?」

「はい。日本時間昨日22時00分に全員が一斉に薬を服用することに決めていました」
「なんだって!お前はもうその薬を飲んじまったのか?」

上条は思わず御坂妹の両肩を両手で掴み御坂妹を脅すように問いかけてしまった。

「ミ、ミサカは……ミサカは……………………」

上条に見つめられ言い淀む御坂妹の両目には涙が溢れんばかりに溜まっている。
上条は初めて見る御坂妹の涙に驚き両手を離した。
「痛かったか?悪りぃ、御坂妹。でも本当にお前はもう……」

上条がそう言いかけた瞬間、上条を見つめる御坂妹の目から涙が一筋こぼれ落ちた。
同時に御坂妹は大声をあげて上条に抱きついてきた。


「ミサカ、巫女と美琴(ミサカEND その2)」

「うっ、うわあぁぁ────────ん!」

それは上条ですら初めて見るほど激しい感情表現だった。

「ミサカは、ミサカは妹達(シスターズ)を裏切ったんです!
 ミサカ一人だけが薬を飲まなかったんです!
 ゴメンナサイ。ゴメンナサイ。わあぁぁ────────ん」

戸惑う上条の胸に顔をうずめて御坂妹は泣き続けている。
上条はそんな御坂妹の背中を上条は両手で優しく包んでやった。
暫くすると御坂妹は少し落ち着いてきたようだった。

「少しは落ち着いたか?…………でも裏切ったってどういうことなんだ?」
「ミサカ達は当麻さんのお役に立ちたいから、例え生命体としては歪(いびつ)でも1秒
 でも長く当麻さんのいる世界に存在する道を選びました。人間としての短い生よりも妹
 達(シスターズ)としての生を選びました。
 それなのに…………ミサカだけは薬を飲む直前に怖くなったんです」

「何が怖かったんだ?」
「ミサカ達はもともと作り物の身体と借り物の心でできた実験動物です。
 でも当麻さんはミサカ達も人間として生きて良いんだということを教えてくれました。
 それに今まで全く分からなかった『嬉しい』や『寂しい』っていう気持ちも当麻さんと
 一緒ならいつか判るんじゃないかって気がするんです。
 そうしたらいつかはミサカ達も人間になれるんじゃないかって希望を当麻さんはミサカ
 達にくれました。
 だからその希望を失うことがミサカは怖いんです」

「お前、それで…………」
「例え寿命が短くても良いんです。
 当麻さんと同じものを見て聞いて感じていきたいんです。
 ワガママなのは判っています。でも、やっぱりミサカは人間になりたいんです」

「他の妹達は薬を飲んだのか?」
「わかりません。昨夜22:00以降ミサカはミサカネットワークに接続できないのです」
「どういうことだ?」
「ミサカネットワークは元々同じ脳波を持つクローン体を同じ脳構造に調整した上で全員
 の脳波をリンクしたものです。だから薬を飲まなかったミサカは異物としてネットワー
 クから切り離されたのでしょう、とミサカは推測します。妹達を裏切って逃げたミサカ
 は独りぼっちになってしまいました」
「裏切ったとか逃げたとか言うじゃない。命と引き替えに人として生きる道を選ぶなんて
 ことは簡単にできる事じゃない」
「でも…………えっく、えっく」

上条は再び泣き始めた御坂妹の耳元で優しくささやいた。

「じゃあ『唯』っていうのはどうだ」
「え?」
「お前は人間として生きて死ぬ覚悟を決めたんならいつまでも『御坂妹』じゃおかしいだろ」
「当麻さんはミサカに名前を付けて下さるのですか?」
「ああ、お前が良いなら。この世界に一つっていう意味で、そして俺にとってもそう
 あって欲しいから『唯』っていう名前はどうだ」

「嬉しいです。ミサカはその名前をとても気に入りました」
「なら、そこはミサカじゃなくて『唯』だろ」
「はい!唯は……唯はこれからも当麻さんのお側にいても良いのですね?」
「当たり前だろ。俺達はこれからずーっと一緒だ」

満面の笑みを浮かべた御坂唯であったが、すぐまた表情を暗くしてしまった。

「でも、唯だけが幸せになるだなんて…………妹達になんて謝れば良いのか」

「ちょっと待て!唯。その薬ってラストオーダーも飲んだのか?」
「いいえ、上位個体にはそもそも延命処置の必要もありませんから」
「じゃあ、なんでラストオーダーとも繋がらないんだ?」
「えっ?」
「唯、ラストオーダーに呼びかけてみろ!」

御坂唯がミサカネットワークのラストオーダーに呼びかけると応答は直ぐあった。

「イヤッホー!ってミサカはミサカは陽気に返事してみる」
「ラストオーダー、私の声が聞こえるのですか?」
「当たり前なの!とミサカはミサカは上位個体の威厳を見せつけつつ答えてみる。
 皆からの伝言を伝えるからね。
 『上手くやりやがったな。こんちくしょう!でも誰もあなたを責めません。
  だから当麻さんと幸せになりなさい。あなたを愛する全ての妹より』
  ってことなの、だ・か・ら!頑張ってね。唯お姉様!」

御坂唯の目から再び涙がこぼれ落ちるのを見て上条は少し不安になった。
しかし、次に出た御坂唯の言葉は上条をホッとさせた。

「妹達が私を許して、そして励ましてくれました。こんなに嬉しいことはありません」

御坂唯の肩をそっと抱き寄せた上条は優しくささやく。

「良かったな。唯」
「…………はい。当麻さん。これからもよろしくお願いします」


「ミサカ、巫女と美琴(ミサカEND その3)」

秋晴れの空には薄い雲一つ無く、陽に照らされた草々は丘を渡る風に身を任せそよそよと
揺らめいていた。

その丘の小道を花束を抱えた一人の女性がゆっくりと登っていく。
その背中まで伸びた髪を丘を渡る爽やかな風が揺らしている。
黒いワンピースに身を包んだ20代前半の女性が目的の場所にたどり着くと、そこには
既にスーツ姿の男性が一人たたずんでおり、女性はその男性の背中に声をかけた。

「半年ぶりかしら?」
「その声は御坂か?ああ、そうだな」
「花束、良いかしら?」
「ああ」

その女性御坂美琴は抱いていた花束を『Yui=Kamijo』と書かれた石盤の上に静かに置いた。
二人が立っている場所は小高い丘にある墓地の一画である。

「当麻。あの子、逝っちゃったね」
「ああ。…………アイツは幸せだったかな?」
「当たり前でしょ!
 あの子はカエル顔の医者(せんせい)が予告した日より半年も長生きしたのよ。
 それはね。あの子がとても幸せだったからよ。きっと」
「…………そうだと良いな」

上条当麻も御坂美琴もしばらくは無言で『上条唯』の墓標を見つめていた。

「そういや、お前、もうすぐ大学院修了なんだろ。その後はどうするんだ?」
「そうね。学園都市の統括理事にでもなろうかしら。
 学園都市の改革を進めたいっていう親船最中統括理事長から誘われてもいるしね。
 それに妹達(シスターズ)のことも気になるから」
「史上最年少の統括理事か。やっぱりお前はスゲエな」
「何言ってんのよ。アンタこそ学園都市を根本から作り直させた張本人のくせに」

「いや俺とは違って、御坂は成長してちゃんと大人になってんだなあってな」
「そんなこと無いわよ。
 私だって…………13歳の時から変わらないものが1つあるんだから」
「ん?なんだって?」
「なんでもないわ。それに今それを言っちゃたらルール違反だからね。
 でも、いいこと!アンタが今の気持ちを整理できたら…………
 もしその日が来たなら……
 その時は私の話をしっかり聞いて貰うからね。いい!約束よ!」

「ああ、約束するよ」
「じゃあね。私はもう行くわ」
「じゃあ、またな」
(まったく、あの子がこんなメールを送ってくるから調子が狂っちゃうじゃない)

丘の小道を下っていく御坂美琴は携帯を取り出すと一通のメールを開いた。

「親愛なる美琴お姉様へ
 このメールがお姉様に届いた時には私はもうこの世にはいないでしょう。
 私にはお姉様にどうしても伝えなければならないことが2つあります。

 1つ目は、あの日当麻さんをお姉様から奪ってしまったことをお許し下さい。ずっとこ
 の一言が言えませんでした。
 あの日あんな告白をすれば当麻さんならきっと私が死ぬまで私の傍に居てくれると思っ
 ていたのは事実です。非道い女だと自分でも思っています。本当に済みませんでした。

 2つ目は、私の唯一の心残りは当麻さんの子供を授かることができなかったことです。
 私がこんなことを言うのは厚顔無恥も甚だしいことだと思います。でもお姉様が当麻さ
 んと結ばれてお二人の間に元気な子供が生まれることを願っているのも私の偽らない
 気持ちです。

 お姉様の妹としてこの世界に生まれその生を全うできたことはとても幸せなことでした。
 お二人の幸せを心よりお祈りしています。

 あなたの妹、御坂唯より」

     ~ Fin ~


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