◇◇◇
大覇星祭の実行プログラムと付属の大会中の催し物会場が案内されている学園都市マップを見比べながら上条当麻はつぶやいた。
「通行止めの箇所が多いからさっさと移動しないといけないよな、次の競技場はあっちか」
自分の隣を歩いている金髪の少年に同意を求める
が金髪の少年は道なんてどうでもいいと言った感じで
「にゃー、カミやんは今日もフラグ立てまくりだにゃー、流石は[旗男]の異名を持つだけのことはあるぜぃ」
「なっ!失礼な!この上条当麻、神に誓ってもそのようなこと――――・・・・・」
金髪サングラスの少年は勢いを失われていく当麻の言葉を聞き、しきりにウンウンと頷いてる。
突然「棒倒しの後(ぼそ)」耳元で囁かれた。
―ビクゥ!!―と高速で土御門元春(つちみかどもとはる) の視線から目を逸らし上条当麻の心臓はバックンバックンだった。
(ちょ、こいつもしかして美琴と一緒に居たところ見てやがったのか)
いまや金色の悪魔と化したかつての親友は言葉巧みに上条当麻の精神に言葉のジャブを打ち込んでくる。
「消毒液でトントン♪」とピンセットと脱脂綿で傷を消毒するジェスチャーをする。
「カミやん病やね――僕らが小萌センセーの名誉を守る為に奮闘したあの戦いの後で、カミやんは女の子とラブラブですか」
左側に歩いてた青髪の少年が会話に参加する。
青髪の悪魔も現れたようだ。
(よりによって、一番ばれてはまずーいやつらにバレテマスよ・・・・)
2人の悪魔はは上条の両サイドに立ち、例の治療イベントの再現をやっていた、金髪が上条当麻役で青髪が御坂美琴役らしい
自分の行動や言動を他人に真似されるほど腹が立つことはない、ましてやそれが甘酸っぱい青春の1ページ的な事ならなおさらだ。
上条当麻は自分の右手を見て思う。
この右手[幻想殺し]は、異能の力ならたとえ神様の奇跡だって打ち消せる。
魔術であろうが超能力であろうが形の無い呪いのようなものであろうが例外は無い。
だから―――まずはそのふざけた[妄想]をぶち殺す!!
ガシガシと2人に殴りかかっていくと
「ちょっとカミやん、待つんだぜぃ――俺らは別にからかってるわけじゃないんだぜぃ」
「そうなんよ、親友として友人の恋愛成就を祈ってるベストフレンドなんよ、ボクらは」
「お・ま・え・ら・が言うなーーーーー!!」
右手を大きく振りかぶり、いち早く離脱しつつある土御門を無視し、青髪ピアスの少年目掛けて
必殺の[幻想殺し]を打ち込む―――はずだったが
突然、目の前の視界が高速でブレた。
――――否、持ってかれた。
横合いの歩道から全力で駆け抜けてきた美坂美琴に服の襟首をガシッ!!と掴まれ
「おっしゃーっ! つっかまえたわよ私の勝利条件!わははははー!!トップは渡さないわぁぁぁ!!」
「ちょ、待って・・・苦じィ!ひ、ひと言くらい説明とかあっても・・・・ッ!!首がっ! って美琴、息できないから放せってのぉぉ、いやぁぁぁぁああぁぁ、急旋回はさらに首がしまるぅぅっぅぅ」
キキィ!!とか効果音をさせながら角を曲がり音とあっという間に見えなくなった。
「噂をすればやね、カミやん幸せになるんやよ――南無」
「カミやーん、平穏に過ごすってのは、カミやんには一生無理そうだにゃー」
上条当麻と御坂美琴が消えた方向に2人の親友はそんなことを叫んでみた。
◇◇◇
ボロ雑巾のようになった上条当麻は美琴ととも競技場に入り、先を走っていた女子学生をあっさりと抜き去りゴールテープを切った。
先ほど上条が棒倒しを行ったようなグラウンドとは違い、アスファルトを敷いた陸上競技場に使う公式競技場だった。
客席もスタジアム状になっており、報道用のカメラや警備に当たる人数も多い。
運営委員の高校生がゴールテープを切った美琴に大き目のスポーツタオルを頭からかぶせた。
美琴から少し遅れて2着の女の子もゴールする。
他の選手は大分遅れているらしく全員到着するまでは競技トラック中の芝生で待機してくれと伝えられた。
(なんだ・・・この場違いオーラは・・・運営委員もやたらとテキパキしてオリンピックのトレーナーみたいだし)
運営委員の高校生の一人が上条をジロジロと見てきた。
テクテクと歩いてきて上条に小声で話しかけてきた。
「・・・・(上条当麻、貴様よっぽど女の子に縁があるようね!)」
「・・・・(はぅ、どっかで聞いた事のある声に上条さんは怯え隠せません、ガクブル)
運営委員の顔を見ると間違いなく吹寄制理だった、日差し避けに青いサンバイザーを付けて、上条のものと同じ体操服に短パン、その上に[大覇星祭実行委員]
と書かれたパーカーを羽織った吹寄制理は上条のセリフに、ピク!っと一瞬動きを止めたが仕事中だからと言って上条から離れていった。
と書かれたパーカーを羽織った吹寄制理は上条のセリフに、ピク!っと一瞬動きを止めたが仕事中だからと言って上条から離れていった。
背後で美琴が軽く不機嫌そうだったのだが上条にはまったく見えてない。
吹寄から開放された上条はここまで上条を連れてきた美琴の方に振り返って
「美琴。優しい優しい上条さんは見ての通り汗だく+ふくらはぎ辺りがパンパンになるまで走らされたわけですが、ルールには第三者の了承を得てつれてくるように、とあるようだが
目の錯覚ですか?」
目の錯覚ですか?」
「あーあー、錯覚錯覚、っつか事後承諾は駄目とは一言もかいてないじゃない。」
「だぅ・・・」
「疲れきった感じで座り込もうとしない。ったく、だらしないわね。」
美琴は自分の被っていたスポーツタオルを上条の頭に被せると
「ほら、じっとしてなさいよ、暴れない、じっとする!!」
わしゃわしゃわしゃー、と上条の顔や首筋の汗を乱暴に拭っていく。
上条も最初は、うわ、いきなりなにすんだ、みたいに手をばたつかせていたが、美琴の強引な力加減に負けて黙って身を任せることにした。
「はい、これでいいでしょ、汗もすっきり。」
そして手に持ったストローつきのスポーツドリンクに口をつけ、喉を鳴らして飲み始めた。
「じーーーーー」
「な、なにっ?あんまりジロジロ見ないでよ、この」
上条の視線は美琴の右手にあるドリンクに集中していた。
美琴はドリンクを手渡そうとして、一瞬止まり少し考えて吹寄に目配せをした、続いてドリンクのボトルを軽く左右に振る。
競技記録をクリップボードに書き込んでいた吹寄は美琴とドリンクを交互に見て、両手を使って×の字を表現した。
1人1本と規則で決まってるらしい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
美琴はしばらくそのまま固まっていたが数秒ほどすると上条の方に向き直り、
「はい、これでも飲んでなさいよ、喉渇いてるんでしょう!ほら!!」
「ちょ!!刺さる!!目に刺さる!!」
ぐいいいいいい!!っと上条の顔にドリンクのボトルを押し付けてきた、ストローの角度が丁度上条の目に刺さりそうになってるが彼女は見ていない。
顔を真っ赤にした美琴は上条から離れて表彰台に向かって歩いていった、個人競技では3位までは表彰してもらえるのだ。
その様子を見ていた吹寄がチッ!っと思いっきり軽蔑の意を込めた舌打ちを鳴らしたが、他の選手の世話もあるらしくその準備に向かっていった。
当然表彰されるのは美琴だけで、上条はこの競技の選手ではなく美琴に借りられた物としての扱いなので表彰なんてされるわけ無い。
美琴の競技が終了すれば用済みなので出口に向かうだけなのだが
ふと美琴の借り物がなんだったのか気になって近くに居た吹寄に聞いてみた。
「なぁー、アイツの借り物ってなんだったんだ?」
吹寄はムッとした表情で自分のパーカーのポケットを漁りくしゃくしゃになった紙切れを上条に渡して去っていった。
(なっ・・・・)
紙切れには[第一競技を行った高等学生]と書いてあった。
(お、俺以外にも条件一致するやつらなんて10万人以上いるんじゃ・・・なんで俺・・確かに美琴は棒倒しの後に手当てしてくれたから
棒倒しを見ていたってことなんだけど・・)
棒倒しを見ていたってことなんだけど・・)
ズーンと今になって疲労が圧し掛かり上条当麻はトボトボっと美琴に渡されたスポーツタオルとドリンクを持ったまま競技場を後にした。
◇◇◇
競技場から土御門と青髪ピアスと離れた場所は結構な距離があった。
なので上条はバスで移動することにした。
学園都市のバスのほとんどは無人の自立走行バスである。
上条がバス停の横に取り付けられた停車ボタンをポチっと押すと、エンジン音のしない電気主力のバスが滑るようにやってきた。
いくら学園都市で無人操縦の技術が進んでいるといっても自動車の無人操縦はもっとも難しく、
大覇星祭のような交通制限がかけられた期間しか運用できないみたいだが。
上条は自動で開いたバスのドアをくぐり車内を見渡す、一般の車両は来場を禁止されてるので車内は結構混雑していた。
運転席には誰も居らず、ハンドルやアクセルなどのペダルがひとりでに動いている、なんとも不思議な光景だ。
しばらく客席で外を眺めていると上条の座席のランプが点滅した、どうやら目的地に着いたらしい。
バスを降りてトコトコと歩いていると、街の雑音に混じってあちらこちらから競技の放送が聞こえてくる。
競技場のスピーカー、ビルや飛行船に設置された大画面モニターなどなど。
『えー先ほどの男子障害物走――』
『今後一時間に開催される競技と会場はご覧の――』
『四校合同の借り物競争でしたが期待通り―――』
『今後一時間に開催される競技と会場はご覧の――』
『四校合同の借り物競争でしたが期待通り―――』
「・・・(耳がおかしくなりそうだ)」
と呟いて、美琴からもらったスポーツドリンクをチューチューと飲みながら次の競技場に向かった。
なにせ一旦競技が始まると途中参加はできないのだ、遅刻なんてしようものならクラス全員から袋叩きにあってしまう。
急ごうと思い足を速めたが、
その足は不意に止まる。
見知った顔が見えたからだ。
赤い髪に耳のピアス、両手の指輪に、口にはタバコ、左目の下にバーコードの刺青の神父―――ステイル=マグヌス
イギリス清教の『必要悪の協会』に所属する、本物の魔術師
(ステイルだと・・・休暇か?でもあいつが科学サイドのイベントである大覇星祭に興味があるとは思えないんだけど)
とりあえず知り合いは知り合いだ、出会ったら挨拶ぐらいはしておかないと、と思い上条は近づいていく。
「―――だから・・・・そうだね。―――考えられる事だろう?」
「――なんだと――それは――か?」
(ん?誰かと話してる?)
金髪に青いサングラス、クラスメートであり隣人でありステイルと同じ『必要悪の協会』のメンバー、そして学園都市のスパイ
土御門元春、すこし前まで自分と一緒に歩いていた少年だ。
「ああ、そりゃ・・そうだ―――。確かに・・・・連中にとっては、今ほどの―――チャンス・・・他に無い」
上条は自分の背筋にゾクゾクという嫌な悪寒を感じた。
なんだか嫌な予感がする。
2人とも遠目には穏やかそうな顔で話している。
笑っているようにも見える、でも少しも楽しそうではない、何かが足りない笑み。
道行く人達が浮かべる笑みとは方向の違う笑み。
上条はそれを振り払うように、更に近づこうとしたところでステイル=マグヌスは静かに告げた。
「だから、潜り込んだ魔術師を僕達だけでなんとかしないといけない訳だ。」
いつの間にか上条当麻の平穏で楽しい世界は
殺意と欲望の交錯する戦場へと切り替わっていた。
◇◇◇
どうしたものだろう
目の前にいる少女は完全に我を忘れているようだ。
あれを教えたのは失敗だったのか?
ビルの壁に設置された大画面を見ながら初春は嘆息した。
『四校合同の借り物競争ではやはりというか期待を裏切らないというか、常盤台中学の圧勝でした。
トップの選手は後半のものすごい追い上げで―――』
トップの選手は後半のものすごい追い上げで―――』
大画面のモニターにどこかの競技場が映る。
選手の顔はカメラに写され、名前も公表される、ちなみに全国放送だ。
これに映れば一躍有名人とか思いそうだが別にそんなことはない。
出場する選手は1万人を超え、競技自体もオリンピックのような競技ではないのだ、あくまでも運動会の延長、その場だけ盛り上がりその場が過ぎれば普通に戻るのが
正しいギャラリーのあり方だ。
でも目の前に少女にはそんな事は関係無いらしく。
『一位の御坂美琴選手はゴールしたあとも体勢を崩すことなく余力のある様子を見せてくれました。』
ガバァとスポーツ車椅子から身を乗り出し大画面モニターを見て
「お姉様、嗚呼お姉様、お姉様(五七五)!!やはり勝利こそお姉様に相応しい、その勇姿を生はおろか録画もしてない黒子を許してくださいまし。」
キラキラキラキラァっと白井の瞳が輝きまくり、スポーツ車椅子を押しながら初春飾利はやれやれっと肩をすくめた。
『一緒に走っていた協力者さんを労わる場面もあり、好印象でしたね。お嬢様の嗜みといったところでしょうか』
一緒に走って?労う?と白井の頭に?が飛び交う。
画面が切り替わり、映像が流れたおそらく録画だろう、ゴールしたあとの御坂美琴とその協力者が映っている。
ん?っと初春が車椅子の少女をみれば、病人であるはずのツインテールの少女は真っ黒で邪悪な炎のようなオーラをかもし出していた。
「ヒッ!!なんですか白井さん、そのドス黒いオーラは、なにをそんなに怒ってるんですか!!???」
「ムキィィィィィィィィ!!殺す!!生きて帰れると思うなですよ。メッタメッタノギッタンギッタンにしてやりますわ!!それにしてもお姉様まであんなに頬を染めたりして!!キィィィ悔しい!!」
「御坂嬢だって、女の子なんですからあんなの当たり前でしょう!?」
ナンダト!?と白井がものすごい形相で初春を見てきたので黙ってしまう。
(汗拭いてあげて、飲みかけのドリンクをあげたぐらいにしか見えない・・・あとでなんか真っ赤になってるのは間接キスのことを意識してるからなんだろうけど)
初春飾利はいまだにブツブツいってる白井黒子の乗るスポーツ車椅子を再び押し始めた。
◇◇◇
総合借り人競争、この競技は大覇星祭の見ものになっている競技のひとつだ。
先ほど美琴が参加していた四学園合同の借り物競争をよりグレードアップした競技であり、その借り物の要求も先のソレを凌駕する。
各学園ごとに10名代表選手を選抜し、各学園の代表が一斉にスタートし第7、8、9学区の各所に設けられたチェックポイントを通過し順位を競う。
そんな競技だ。
「わたしこの競技はじめて。でもやってみる」
額に真っ白なハチマキを占めた黒髪の少女が独特のイントネーションで話しかけてくる。
「大丈夫だよ姫神、普通に人を探して一緒に競技してもらえばいいっていう一般入場客参加のほのぼの競技じゃんかー」
すると
「つまり。運に左右される。」
姫神秋沙―は自分の髪の毛をいじりながら言う。
『では総合借り人競争を始めますので選手の方は入場してください』
運営委員が拡声器を使用して呼びかけゲートには1万人程の学生が集まった。
中学生、高校生、男子に女子、オレンジに青、赤の体操服、ジャージ姿の学生も見られる。
上条の学校だけでも全校から10人でてるのだ、学園都市の全学園から10人づつでればこれぐらいにはなるだろう。
これだけ人数がいるとスタート直後の混雑が心配だが・・・と思って回りを観察していると
ツンツン
上条の肩を叩く感触がある。
叩かれた方に振り返ると・・・・誰も居ない
ツンツン・・・今度は逆方向だ
上条が全力でガバァっと叩かれた方に振り返ると・・・誰も居ない
ツンツンツンツン・・・・・またきた・・・今度こそ右だ
「見切った!!右・・・と見せかけて左・・・を囮にしてやっぱり右だ!!」
シュババババ
上条は左へ右へと首を振り、一層のスピードを乗せて振り向いた。
ズビシ!!
「ぎゃああああああ!めがぁぁ!!わたしのめがぁぁぁ!!ぁぁぁぁ」
姫神秋沙の水平チョキが上条の目に炸裂した。
「油断大敵。実はそんなに効いてないはず。」
「ヒメ・・・なにゆえこのようなことを?」
涙目になりながら上条は姫神秋沙に抗議した。
抗議された少女は、顎でクイっとある一角を示し
「あの子達。私が前に居た学校の子。」
紺色のジャージを来た少女が10人ほど見えた。
「あぁ?姫神が前にいたところって霧ヶ丘女学院(きりがおかじょがくいん) ?」
少女は頷き上条の目を覗き込んで
「そう。あそこの生徒はイレギュラーな能力を使う人間が多いから気をつけて。」
気をつけてと言われても、上条は無能力者[レベル0]、警戒したところでどうしようもできないのが現実なのだが。
上条にできることといえば、とにかくできるだけ簡単なカードが手に入りますようにと神様にお願いするしかなかった。
◇◇◇
炎天下の第七学区で少女は呻く
「うかつ。これは想定外だった。」
「同じく、俺も想定外だった。」
おなじようにぐったりしつつ上条当麻も呻く
上条は少女に1枚の紙切れを突きつける。
「これはこれは。苦労しそうな条件。」
あくまでも淡々と喋る姫神秋沙
「あ゛~なんだこの条件!!書いたやつでてこーい!!」
上条がヤケクソ気味に炎天下の太陽に向かって叫ぶ
「太陽の紫外線。発ガン性あり。」
いつの間にか建物の影に入り涼を取る黒髪少女が物騒なことをいう。
上条の持つ紙切れの真ん中には油性のマジックでかでかと
『ツインテールのお嬢様』
と書いてあった。まじで
「ツインテールって時点で学園都市の50%は対象外!しかもお嬢様って時点で来場客からの条件一致率大幅DOUN!!」
日陰で体力を回復していた姫神は自分の持っている紙切れを上条に再度突き出し。
その紙には
『妹』と書かれていた。
(うはぁ・・・・なんだこの悪意の感じられる偏りは)
「こまった。わたしは一人っ子」
本当に困ってるかどうかが伺えない表情で呟く
「まいった、これはどこ探せばいいのかわからん。」
疲れた感じで自販機にもたれ掛かり、うーんと唸る上条。
「でもこの競技は高得点。小萌を馬鹿にした連中に一泡吹かせないと・・・フフフフフフ」
びくぅ・・・
(いきなり怖い笑い方しないでホシイ、上条さんの心臓はデリケートなんです。)
とにかく探してみる!!っていいながら姫神秋沙は『妹』を借りる為、第七学区をタタタタタタと警戒に走っていった。
上条当麻はそのとき別の事を考えていた、この競技の前に2人の魔術師と話していたことだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなこと見過ごせるわけないよな!!
パシィ!!と両手を打って自分の顔にパシンと平手を打ち気合を充電した上条は
勢いよく走り出した。
正確には走り出そうとした。
◇◇◇
上条当麻と姫神秋沙が参加する競技が始まる前の出来事―――
『いまの学園都市は一般来場客を招く為に警備が甘くしてるだろう?』
『その隙をついて敵の魔術師が侵入してるってわけだぜい』
『でも何の為にだ? 破壊工作でもしにきたのか!?』
『あわてるな上条当麻、相手の目的はそうじゃない、魔術サイドの人間が科学サイドの本拠地であるこの街で大暴れするのはあちらにとっても好ましいものではないだろう。』
『あん?どういう意味だ?』
『そっちは後で答えるとして、カミやん、まずは主題から話そう、敵の魔術師達が科学サイドの本拠地であるこの学園都市で何をしているか?だぜぃ』
『魔術師、達?ひとりじゃないのか?』
『そう、現在確認されてるだけでも2人、ローマ正教のリドヴィア=ロレンツェッティ 。
そして走いつが雇ったイギリス生まれの運び屋であるオリアナ=トムソン。両方女だ。
さらにその取引相手である人物が最低一人はいるはずなんだけど、これははっきりとしてないね』
そして走いつが雇ったイギリス生まれの運び屋であるオリアナ=トムソン。両方女だ。
さらにその取引相手である人物が最低一人はいるはずなんだけど、これははっきりとしてないね』
『運び屋に取引、一体ここで何をやろうってんだ?』
『そのまんまさ、カミやん、ヤツらはこの街で、教会に伝わる霊装の受け渡しを行おうとしている訳ですたい』
『何でこんな場所で・・・・・。『外』でいくらでも渡せるだろうに?』
『そうだにゃー。だからこそ、って答えておこうか。学園都市の警備員や風紀委員は、オカルト側の魔術師を無闇に迎撃・捕縛してはならない。そして同時に、
オカルト側の十字軍や必要悪の教会も、無闇に科学側の学園都市へ踏み込んではならない。 ほら、どちらの勢力も手が出しにくいばしょなんだぜぃ、ここは』
オカルト側の十字軍や必要悪の教会も、無闇に科学側の学園都市へ踏み込んではならない。 ほら、どちらの勢力も手が出しにくいばしょなんだぜぃ、ここは』
『大覇星祭期間中でなければ、警備体制の関係で、リドヴィア達の行動もかなり制限されていただろうにね。 しかし今だけは、半端に警備を緩めなくてはならないから、
その機に乗じて大胆に動くこともえきるという話だよ』
その機に乗じて大胆に動くこともえきるという話だよ』
『だったらそこに居るステイルみたいなに、こっそり必要悪の教会の味方をたくさん潜り込ませれて捕まえればいいんじゃねーの?』
『僕は[君の知り合いだから、個人的に遊びに来た]て名目で来てるんだ。君と面識のないほかの魔術師は呼べないね。[イギリス清教という団体として]やって
きたことになれば、それに乗じて今の事態を傍観している、それ以外の魔術組織も[では我々も]と要請してくる。彼らは学園都市に友好的なわけでは無い、本来
正反対の位置に属する街を守ろうなんて考えるものか』
きたことになれば、それに乗じて今の事態を傍観している、それ以外の魔術組織も[では我々も]と要請してくる。彼らは学園都市に友好的なわけでは無い、本来
正反対の位置に属する街を守ろうなんて考えるものか』
『当然学園都市側はその要請を突っぱねてもいいけど、全部の組織を突っぱねてれば現在微妙なパワーバランスで成り立ってる科学と魔術の両陣営の全面戦争にまで発展
しかねないんだにゃー、ま、あちらを立てれば、こちらが立たずって状況に追い込まれてしまう訳ですよ。そんな感じでリドヴィアやオリアナ達の問題はデリケートなんだよ、カミやん。
ただでさえ厄介な状況下で、さらに余計な連中を呼び込んだら学園都市は間違いなく混乱の渦にのまれちまう。そういった事態を抑える為に動けるのは[学園都市にやってきた知り合いの魔術師]だけ
と思わせておくんだよ。学園都市の人間と接点のある魔術師なんて、ほんの一握りだ。どおうしても少数精鋭の攻め方になっちまうのは仕方がないぜい』
しかねないんだにゃー、ま、あちらを立てれば、こちらが立たずって状況に追い込まれてしまう訳ですよ。そんな感じでリドヴィアやオリアナ達の問題はデリケートなんだよ、カミやん。
ただでさえ厄介な状況下で、さらに余計な連中を呼び込んだら学園都市は間違いなく混乱の渦にのまれちまう。そういった事態を抑える為に動けるのは[学園都市にやってきた知り合いの魔術師]だけ
と思わせておくんだよ。学園都市の人間と接点のある魔術師なんて、ほんの一握りだ。どおうしても少数精鋭の攻め方になっちまうのは仕方がないぜい』
『??? じゃあ神裂は来てるのか?あいつ確か聖人とかいうメチャメチャ強い人間なんだろ、人は多いほうがいいんじゃねーの?』
『神裂は使えない。今回は特にね。何しろ取引されてる霊装が霊装だ』
『あん?どういう事だよ』
『カミやん、その霊装の名前は[刺突杭剣](スタブソード)っていうらしいんだぜぃ。そういつの効果はな―――』
『―――あらゆる聖人を、一撃で即死させるモノらしいんだよ』
◇◇◇
姫神秋沙は困っていた。
彼女が持っている紙切れに書いてある指定条件を満たす相手が一向に見つからないからだ。
黒髪の少女はうだるような炎天下の空の下汗だくになりながら走り回っていた。
「正直これはツライ。範囲が広すぎる」
誰にはとはなしに呟きながら道行く人達を観察する。そしてはぁっと溜息をついた。
「見ただけで[妹]と判別できるなら苦労はしない。どうしたものか」
いっそのこと彼女の担任のちびっこを連れて行って強引に[妹]だと言い張ってやろうかと考えていたらドン!っと彼女の膝裏に衝撃が走った。
カックン
「う、うわ、わわわ」予想外の方向からの膝カックン攻撃を受けて体勢が崩れるが、両手をわたわたと振りながら体勢を立て直すしてから振り返り
膝かっくんの犯人を捜した。
背後には誰もいない。
「学園都市の七不思議。でもいまは怪談の季節ではない」
ツンツン
自分のふくらはぎの辺りを突っついてくる感触がある。
不審に思って視線をググっと下に下げると、茶色いさらさらヘアが見えた。
見た感じ10歳前後の女の子で手にはわたあめのの袋をもっていた。
少女に視線を合わせるために自分はしゃがみこむ体勢になり、目の前に来た少女を観察する。
「そんなに見つめちゃいやん、ミサカはミサカは照れながら朝見たドラマの真似をしてみる」
じーーーーーーーーーーーー、無言で少女の目を覗き込む
「あれ?反応がなかったりミサカはミサカはもっと暴れてみたり」
そういうとちびっこは姫神の背中やら頬やらを激しく突っつきだした。
「やめなさい。迷子なの?」
自分のほっぺたを激しくつっつく小さな指をガシっと捕まえて極力怖がらせないようにたずねてみた。
「えっと、あちこち走り回ってたら、あの人とはぐれてしまったんだけど、ミサカはミサカはあなたのぷにぷにのほっぺたをつっつくのをやめなかったり」
つんつん、ぷにぷに 捕まえた手とは逆の手を使って姫神のほっぺたをつっつく。
黒髪の少女はいまだにぷにぷにされる自分のほっぺたを無視し「名前は?。どこから来たの?」とさらに尋ねた。
「ミサカはミサカ20001号、個体ネームは[打ち止め]ていうかも、ミサカはミサカはあなたに自己紹介してみたりする」
にまん、いち?・・・・らすとおーだー?・・・珍しい名前?いやそもそも名前なのかもわからない。
とにかくわかるのは目の前の彼女が保護者とはぐれているという事実だけははっきりとしている。
「思考完了。さあいこうか?」
「あれ?ミサカはミサカはなんだかテキパキと小脇に抱えられていつもより視線が高くなったことに感動を覚えたりしてみる」
茶髪の少女[打ち止め]を自分の小脇に抱えると姫神秋沙は少女に告げた。
「私は姫神秋沙。いまからアナタは私の[妹]」
「[妹]?確かにミサカは[妹]だけどとミサカはミサカは新事実を告げてみたりする」
「そう。それは好都合」
視線を上に戻し、途中で分かれた少年の事を思い浮かべたが、どうせあの少年ならどうにかするんだろうとか思って数秒で頭を切り替えた。
脇に抱えられてはしゃいでいる少女を見て、まあ、これなら[妹]でも通るだろう。競技が終わったら一緒に探してあげるなり迷子センターに預けて放送でも流してもらえばいい。
一息ついた後に姫神秋沙は軽快に走り出した。
「わっわっ、これは新感覚なのかも、とミサカはミサカは新たな喜びを発見してみたり」
◇◇◇
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