とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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匿名ユーザー

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<13:19 PM>


 空は当たり前のように曇り、雨が辺りに降り注いでいた。
 まるで誰かの涙を肩代わりしているように、それの勢いは止まらず少女の身体を容赦なく打つ。
「………、」
 沈黙。いや、ただの沈黙ではない。バヂバヂ、と定期的に流れる電流をBGMにして少女は沈黙を保っていた。
 不意に。
 空を見上げていた少女が頭に付けていた暗視ゴーグルを装着して、横を見た。
 そこには、何にも変わり映えのしなかった場面に一つの変化が現れていた。
「ひっさしぶり、妹」
 トン、と革靴をわざとらしく鳴らして一人の少女が足を地に着ける。
 その少女は、暗視ゴーグルをつけた少女と、瓜二つの姿をしていた。
 茶色く肩まで切りそろえた髪に、とある中学のブレザー。あえて違いを見つけるならば、片方がゴーグルをつけているかいないかほどの違いしかわからない。
 唐突に目の前に現れた少女に何の驚きもみせずに、ゴーグルをつけた少女は唇を動かす。
「遅かったのですね、とミサカは尋ね人に対し小さな不平を述べます」
「ちょっとね。こっちもやりたいことがあるっつーのよ」
 二人は双子、と言われれば簡単に納得できる状況。
 しかし、二人の間に仲良しというような雰囲気はない。
 少しの会話の合間にギスギスとした空気がのどに妙な圧迫感を与えた。
「正体を隠すつもりはもうないようですね、とミサカは確認を取ります。同時に、だったらもうお姉さまのような喋り方をする必要はないのでは、と素朴な疑問をぶつけます」
「そりゃアンタたちはネットワークがあるからさ。今までの固体の時の襲撃でこっちの正体もバレバレでしょうが。騙し討ちってのは相手を騙していることを前提として仕掛けるもんなんだから、最初から手札見せたままかけたハッタリに何の意味があるってのよ。ちなみに、御坂美琴のままの喋り方なのは単純な演算方法をトレースして少しでも演算能力を上げるため。『暗闇の五月計画』から発想のヒントをもらって試してみてるんだけど、口調だけ真似てもあまり意味はないわね。やっぱり、何かの技術には犠牲が必要なのかしら」
 でもま、続けるだけ続けてるってわけよ、と少女がつまらなそうに呟いた。
「で? アンタは、私が幻想殺し(イマジンブレイカー)と戦ってる時からずっとこっちに電波飛ばしてるけど、何の用? 狙われてるのをわかってて居場所を教えるのはミステイクを超えてただのバカよ」
「いえ、ただミサカの居場所が分からずにイライラして他のものに八つ当たりしているアナタを見ていられなくなりまして、とミサカは皮肉を混ぜながら心情を伝えます」
 やれやれ、といった風に暗視ゴーグルをつけた少女がわざとらしく肩をすくめる。
 その姿を嘲笑するように、もう一人の少女が笑い声を上げた。
「随分と口がうまくなったわね。私が誰かを傷つけるのが嫌だっただけでしょうが。実際、効率的に考えるなら私をここにおびき寄せる際に一方通行(アクセラレータ)を傍に居させるのがセオリーでしょう。アイツが近くにおらず、アンタ一人だけって状況がすでに思考の入り込んでない突発的な行動っつーことを示してるじゃない」
「……、」
 がちゃり、と物騒な音がした。ゴーグルをつけた少女がサブマシンガンを構えた音だった。
 何の迷いもなく銃口を少女へと向け、引き金に指をかける。

「へぇ。少しは抵抗する気があるんだ」
「ミサカの勝利条件はアナタに勝つことでなく、一方通行(アクセラレータ)が戻ってくるまで時間を稼ぐことにあります、とミサカは自分の行動を口に出して覚悟を決めます。もうこれ以上、ミサカは足手まといになるわけにはいきません」
「ふぅん……まぁいいんだけどさ」
 そして、少女は重心を下に落とし、いつでも駆け出せるような体勢で戦闘の口火を切った。


「アンタの攻撃が”なぜか”私に届いちゃったら、どうなるかなんてわかってるわよね?」


 ゴーグルをつけた少女の表情が強張った。それをチャンスととってか、少女が行動を開始する。
 ボンッ!! と少女の足元が大量の高圧電流によって爆発した。
 その勢いにのり少女の身体が飛翔する。低空を滑空するツバメのように。
 ゴーグルの少女は引き金を引こうとするが、どうしたって引けやしなかった。
 あまりにも低い可能性。だが、その可能性があることがゴーグルの少女の行動を制限してしまう。
 代わりに、ゴーグルの少女は横っ飛びに跳ねる。それは回避後のことをまったく考えていないがむしゃらなものだった。その数瞬後、少女の身体が回避前の場所を通過する。
 ”ゴーグルの少女の足を握りながら”。
 グンッ!! と視界が回転した。
 平衡感覚を失い、どこが上でどこが下かさえわからなくなるくらいの回転の後、ゴーグルの少女は地面に勢いよく叩きつけられた。
「が、はッ……!?」
「攻撃どころか、威嚇射撃までしないなんて……優しいわね。姉思いの妹を持って、御坂美琴も幸せだと思うわよ」
 けどさ、と少女は凶悪な笑みを浮かべて。
「そこまでの優しさは付け入る隙になるってことをアンタ達は学んだほうがいいわよ」
「―――ッ!」
 ただでさえ天秤が傾いていた戦闘がさらに傾き、この戦闘は再開された。
 どちらが勝利するかなど火を見るより明らかだった。

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