とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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匿名ユーザー

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 昼食を食べ終わり、一方通行は口を開く。
「もう一度聞くけどよ、用事ってのは何なンだよ?」
「お前は今、おかしいと思っている事はあるか?」
「おかしい、ってのは例えば何なンだよ?」
「……周りの人間の年齢、だな」
「ああ、おかしくなってやがるな」
 そうか、と言って土御門は黙り込む。
 なんとなく、一方通行は打ち止めの方に目をやる。
 打ち止めの希望で特大パフェを頼んだらしく、運ばれてきたパフェに打ち止めは目を輝かせていた。
 同じ席には、先程まで土御門と話していたあの『無能力者(レベル0)』と、レベル5の超電磁砲、つまり打ち止めのオリジナルが座っていた。
 『無能力者』と、『超電磁砲』と居る打ち止めは、本当に楽しそうで。
(打ち止めは……本当に、俺の傍に居て良いのか?)
 そう思った。
 そんな事を考えても、仕方が無いのかも知れない。それに、あの時、打ち止めはずっと一緒に居たいと言ってくれた。それでも、考えてしまう。
 あの二人に預けたほうが、打ち止めは幸せなのではないか、と。
 遠くからだって、影からだって、守ることはできる。それならば……
 そう考えていると、土御門は話の続きを始めた。
「お前は、今の世界をどう思う?」
「別に、どォも思わねェよ」
「元に戻したい、とは思わないのか?」
「特に害がある訳でも無ェだろ」
 土御門は、その言葉に少し黙り込む。害が無いのなら沈黙する必要は無い。ということは……
「って事は、何か害があるってことなのかよ?」
「いや、もし害があったとしたら?」
「そりゃァ、元に戻すだろォな。……で、これで用事は終わりだな?」
 ああ、と土御門の返事を聞くと立ち上がり、打ち止めのほうに向かう。
 そのまま通り過ぎてしまえ、そんな心の声が聞こえた気がした。それでも、今はまだ……打ち止めの傍に居たい。
 打ち止め達の机の上には、すでに数個の空になったキングサイズ、とでも形容されそうなパフェの容器が乗せられていて、
「次はこれ!ミサカはミサカの限界に挑むよ!」「これ以上は俺の腹がもたねえよ!それに、御坂もそろそろ財布がやばいんじゃないのか!?」「私はそんな事無いけど」「マジで!?同じ高校生のはずなのに何この経済格差!!」と、コントの様な光景が繰り広げられていた。
「この隙を狙って……追加注文を試みてみたりとか」
 とりあえず、呼び出しボタンを押そうとする打ち止めの手を掴んで阻止する。
「そろそろ帰るぞ」
「何で!?」
「これ以上はどォ考えても財布に迷惑だろォが」
 むー、とむくれる打ち止めは放っておいて、超電磁砲の方を向く。
「……ありがとォな」
 これだけの量、財布に響くだろう。と思って。それ以外にも込めた思いはあったのだが。
 やはり超電磁砲と無能力者は驚いていた。特に気にも留めず、店を出る。
(やっぱり、柄にも無ェことはするモンじゃ無ェな)
 打ち止めと並んで道を歩く。
 一方通行は土御門の言葉を考えていた。様々な可能性を考え、そして、一つの可能性にたどり着いた。
「おい、打ち止め」
「何……ってわぁ!」
 打ち止めを抱え上げ、ビルの上に跳ぶ。いきなりお姫様抱っこされ、打ち止めは顔を赤くする。
 しばらくは打ち止めの傍には居れない。一方通行の家に一人で居させるのは危険だろう。
「黄泉川の家に行くぞ」
 理由が分からないのか、首をかしげる打ち止めを無視して、ベクトルを操作し、風のベクトルも利用しながら、ビルの上を跳ぶ。ほとんど滑空と言った方が近いが。
「ところでさ」
「何だ?」
「ミサカをお姫様抱っこする意味はあるの?」
「………この体勢が一番安定するンだよ」

 高校生ぐらいの年齢になっていた黄泉川に打ち止めを預け、一方通行は学園都市のデータベースを利用して調べ物をしていた。黄泉川は家に居ないだろうと思っていたのだが、たまたま今日は休みだったらしい。
 打ち止めや黄泉川だけで無く、来る時に往来の人々を見た感じだと、少なくとも学園都市は端から端まで高校生ぐらいの年齢の人だけになっているようである。職業は変わってはいないようだが。
(しかし、黄泉川は高校生のころからあンな体形だったのかよ)
 目的のものを見つけた一方通行は余計な思考を中断する。
「……いくらなんでも、こンなのは、有り得ねェだろォが」
 まずおかしいのは、垣根帝督が健在だ、という事だった。そもそも、一方通行が生きているかも怪しいような状態にしたはずだ。なのに、記録を見る限りでは、垣根帝督は重傷を負ったことすらないらしい。つまり、垣根帝督はそもそも一方通行と戦ったことすら無いという事になる。
 さらに、今までは名前だけは確認できた、『グループ』などといった暗部組織の名前すらも確認できない。
 この2つから、一方通行は一つの仮説を考えた。そして、しばらく時間をかけ、プロテクトを破り、さらにデータベースの奥へと潜っていく。
「……」
 何も言えない。有り得ないと思っていた仮説の、裏付けを取る情報がそこにあった。
 暗部が絡んでいた事件、その全てが起きてすらいない。
(つまり、そもそも暗部自体が存在しねェって事になンのか?)
 一方通行はまさか、とは思いつつもさらに調べていく。
 やはり暗部が絡んでいたであろう非人道的な実験も、存在が無かった。巧妙に消されているのか、と思ったがそもそも消したとしても痕跡ぐらいは残りそうなものであるが、その消した痕跡すらも無い。
 そして、非人道的な実験が無い、それはつまり……
 絶対能力進化計画は行われていない、という事になる。それならば、オリジナルがこちらに敵意を向けない説明がつく。だが、それでは妹達は一人も居ない筈だし、打ち止めも一方通行の家に居る訳が無い。あの計画が無ければ、妹達は全て廃棄されているはずだ。
 そして、あの『無能力者』との接点も無い。
 なのに、『無能力者』の反応はどう考えても初対面に対する反応ではないし、打ち止めは家に居る。確かめてはいないが、打ち止めが居るなら妹達も恐らく存在する。
 ならば、別の計画に利用されているのか。
 そう思って少し調べてみると、簡単に答えは見つかった。どうやら、量産型能力者計画の後、ミサカネットワークを利用して協力機関との情報交換を行う、という計画ができたらしい。別に妹達が非人道的な使い方をされる訳では無さそうだ。
 安全な使い道のようだ。それが分かって、一方通行は安堵した。
(けどよ……何で打ち止めは俺の家にいるンだ?それに、やっぱり『無能力者』との接点も無ェはずなンだが)
 恐らく何らかの理由があるのだろう。だが、今それを気にする必要は特に無いだろう。
 一方通行は帰宅することにした。歩き、屋外に出る。それほど時間はかかっていないと思っていたが、すでに日は暮れていた。
(1つだけ確かな事がある)
 一方通行は天を仰ぐ。そして誓う。
(この世界では、もう誰も泣かなくても良い。なら、どんな事があっても、俺は、この世界を守ってやろォじゃねェか)
 たとえ自分が掴んだ物でないとしても、この幸せを。この『幻想(せかい)』を。絶対に守り抜くと。
 そんな事を考えて空を見上げて佇んでいると、ポケットに入れていた携帯電話が振動した。一方通行に電話を掛けるのは打ち止めか土御門ぐらいしかいないし、番号しか表示されていないので、恐らく土御門だろう。とりあえず通話に出る。
「何だよこンな時間に?」
 土御門からの用件は簡潔で、そしてとても信じられないような内容だった。
「そォか、分かった」 
 通話を切ると、一方通行は風のベクトルを掌握し、目的地に向かうために飛翔した。

 一方通行が、レストランから出たのとほぼ同時刻に、上条当麻は、帰路についていた。
「まさか打ち止めがあんな大食いだとは……よくもまああんなに入るもんだなぁ……」
 上条と御坂と打ち止めで巨大パフェに挑戦していたのだが、上条は最初の1個でダウンしていた。その後も少しは食べたが。
 もしかして、女の子って意外に大食いなのか、と上条は大食いシスターの事を考えながら歩く。
(いや、女の子特有のデザートは別腹ってやつかな?そういえば、いつ土御門と一方通行は知り合ったんだ?どっちも説明してくれなかったしなぁ……)
 二人と会話する時間が少なく、聞くタイミングを逃してしまっていた。だが、別に今度聞けばいいだろう。
(ん?何かおかしいような……)
 違和感を感じて、上条は周りを見回す。だが、人気の無い通りが目に入るだけだった。

 今は昼で、しかもここは大通りなのに。

「……ッ!」
 周りを見回す。だが、特に何も――
 そこまで考えた所で、不意に思考が中断された。いや、上条の後頭部に、衝撃が与えられた事で思考が断ち切られた。
 地面に叩きつけられる。そこで、思い出したように激痛が襲ってきた。
「……ッ、ううう……」
 あまりの痛みに声も出ない。
 空気を裂く音がする。直感で、左に転がる。視界の端で、上条の頭を割ろうとした装飾の付いた金属棍棒(メイス)が、空を切り、そのまま地面を砕く。砕かれたコンクリートが体に当たる。が、それほどのダメージにはならない。
 頭を押さえながら起き上がる。上条の目の前には、数人の修道服を着た男女がいた。
「……魔術師か」
 もちろん相手が答えるはずも無い。が、魔術師で間違い無いだろう。無言で他の魔術師達も各々の武器を抜く。
 上条もそれに対応して拳を構える。魔術師相手なので、右手を前に出す。
 どこから、どう来る?そう思っていると、右からジリジリと空気を焼く気配が飛んできた。魔術で形作られた、と思われる火の玉だった。
 上条は右手を振り、破砕音と共に火の玉をかき消し、そのまま奥、魔術師に走り込む。
「ッ!?」
 どうやら上条の右手の事は知らなかったらしい。魔術師は剣を振り上げようとしたが、すでに上条は間合いに入っていた。
「おおおおおッ!」
 咆哮しながら、踏み込みの勢いを加え全力の右拳を振り上げるようにみぞおちに叩き込む。わずかに魔術師は浮き、声を上げる事無く地面に倒れた。
 今までの経験から、魔術師は魔術で身体能力を多少なりとも補助しているということは分かっていた。だから、右手で殴ってみたのだが、意外と効果があるらしい。
 たった一撃で倒された。その事実を認識して、魔術師達の空気が変わった。隊列を変え、同時に魔術の準備に入る。
 わざわざ待つ必要は無い。上条は迷い無く足を踏み出し、駆ける。
 先程よりも巨大な火の玉が飛んできた。原理は分からないが、恐らく数人で同時に放ったのだろう。それでも、上条の『幻想殺し』の前には意味が無い。右手を叩き付け、火の玉をかき消す。火の玉の中に金属片がいくつか入っていたが、尖ってはいないし、勢いも無いためダメージは無い。
 視界は開けた。そのまま上条は走る。直後。

 上条の体が、電撃に貫かれた。

「……がッ!?」
 何が起こったのか。勢いを失い、倒れながら上条は原因を探す。服に、先程の金属片が引っかかっていた。そして地面にいくつかの金属片が落ちていた。
 簡単な事だった。金属片を避雷針代わりにした。そして、魔術師が金属片を投げ、それを中継地点代わりにして右手に当てないように電撃を迂回させた、それだけだった。
(たった一回で見抜いたってのか……やばい、体が……)
 電撃で体が痺れている。起き上がろうとしても、起き上がれない。
 上条が動けないことを確認すると、魔術師達は一歩、一歩と近付いてくる。上条には、その足音が死刑執行人のようにも思えた。
(どうする、どうすれば……!)
 だが、考えても何も起きない。その間に、メイスを持った魔術師が間合いに入っていた。
 メイスが、断頭台の刃のように振り上げられた。そして、振り下ろされる、事は無く。
 爆裂が魔術師達を薙ぎ払った。
「まったく、僕が来なかったらどうするつもりだったんだ?」
 2mを越す人影。煙草をくわえたまま、器用に喋っているステイルだった。
「ステイル!」
「意外に脆い……もう気絶しているみたいだな」
 ステイルは爪先で軽く、倒れている魔術師達をつつく。反応は無かった。
 やっと痺れが取れた。上条は立ち上がる。
「なあ、こいつらどこの所属なんだ?」
「見た感じ、ローマ正教かな」
「何でローマ正教が俺を?」
 今のローマ正教に上条を襲う理由は無いはずだが……
「……その話は後でする」
 なぜかわずかに沈黙があった。
「とりあえず、一旦君の家に行くとしよう。あの子も待っているしね」
 ステイルは歩き始める。上条も、その後を追った。

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