とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 9-541

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ryuichi

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 苦痛を超え、少年が最期に得た物は、小さな少女の平穏だった。
 影を切り払ったその笑顔は、少年の世界を変えた。
 涙を流し、少年は、子供のころからあったもの、大人達の闇が覆い被して
しまった「もの」、母親達が守り通そうとした『もの』を思い出す。

 天空から舞い降りる破壊の聖光。
 最も大切な何かを取り戻した少年を突き動かすのは、慈愛と怒りだった。
 俺も、ずっと一緒にいたかった。
 邪悪から召喚された漆黒は、過去を脱却し、希望から誕生した純白と化す。
 一人の少女との別れは、世界を救う翼となるだろう。

 苦難に耐え、少年が最期に選んだ道は、過去の繋がりへの帰還だった。
 無量の殺意を打ち消した悲哀は、壊れた少女の世界を取り戻した。
 贖罪のために進軍し、少年は、闇の残骸すら、余裕を含んで嘲笑する。
 融解するしがらみは、電子の一閃によって、未来を切り開く。

 来訪者が解禁した残酷な現実。
 煉獄に勝る絶望に浸った少年の背を押したのは、一人の少女の悲憤だった。
 後悔はしていない。だから、良いんだ。
 義理の返還は、悪意の勝利を覆し、夢に至るために悪魔の仮面を被らせる。
 一人の少女に対する裏切りは、世界を救う炎となるだろう。

 激闘の果てに、少年が最期に殺した幻想は、一人の革命家の驕りだった。
 力を拒んだその右腕は、確かに世界の歪みを正した。
 轟音が鳴り響き、少年は、最も大切だった少女すら玩具にした憎き敵を砕く。
 それでも、少年の信念には何の澱みも無かった。

 崩壊する星海に浮かぶ孤島の崖。
 巨悪を撃破した少年を塞き止めたのは、二人の少女の声だった。
 まだ、やるべき事がある。
 世界と人々を守るため、その右腕を突き動かし、真実を伝え、約束を紡ぐ。
 二人の少女との別れは、世界を救う切札となるはずだった。

 天使の嘆きが、全てを狂わせる。
 押し寄せる濁流。巨岩が轟かす衝撃。
 幻想を殺す腕。数多の光を取り戻した一つの命。
 握りしめた拳と、懐かしい追憶と共に、


 少年は、今一度、果てる。


 杭と成りし少女は、呪縛を解いた鍵を探す。
 全てを知った戦士達は、ただただ、少女の純粋な呪詛の言葉を、心に刻んだ。

 雷を纏いし少女は、愛の鍵穴を埋める者を求めた。
 白く、か細い手は、運命にさえ阻まれなければ、届く筈だった。
 黄金が混ざった青海の狭間。機能を失った喉笛。
 同一の顔を秘めた妹。数少ない一生の共有。
 救われた世界と引き換えに、少年の未来と引き換えに、


 少女は、今一度、絶える。

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