とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

第一章

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第一章 若人達は青春を駆ける He_and_Her_father



 ――タッタッタッタッ――

 正午過ぎの学園都市。その中を颯爽と駆ける少女がいた。

 ――タッタッタッタッ――

 金の、糸よりも細く可憐さを醸し出す軽くウェーブのかかった髪に、サファイアの、大きな透き通るような瞳を持つ少女。

 ――タッタッタッタッ――

 軽い足音からも分かる、その細身の体を持つ少女の名は、サーシャ=クロイツェフ。ロシア人シスター改め、ロシア人中学生。上条さん家の赤シスター。
サーシャは、自身が通っている夕凪中学校の終業式が終わった途端、走り出した。その行き先は、上条当麻(かみじょうとうま)の通っている高校。
今日は12月23日。サーシャは知り合いの言祝栞(ことほぎしおり)から、
「12月24日(クリスマスイヴ)はねー、友達同士が外に遊びに行ったりする日なのですよー。……ていうか、かみやんくんを誘うんだったら23、24日と二日連続で誘うのがいいんじゃないかな?23日は学園都市中の学校が終業式をするから、午後はずっと遊べるし、都合がいいんじゃない?私と一緒に誘ってみよ?」
と言われていていたので、五日前の18日・作戦決行。インデックスも含めた三人でお誘い(という名の、釘打ち機(ハスタラ・ビスタ)を用いた釘拷問)をかけ、四人で23、24日と二日連続で遊ぶことになったのだ。

 ――タッタッタッタッ――

街の中を駆けるサーシャに何人もの人が振り返る。学園都市で、外国人は、結構珍しいようだ。
 実際「留学生」というのも珍しいようで、夕凪中学校でも留学生はサーシャを含めて二人しかいなかった。

 ――タッタッタッタッ――

 今日、遊びに行くのは第六学区にある遊園地。そしてサーシャは遊びに行くのを、とても楽しみにしていた。
 もっともそれは“今まで遊園地に(存在は知っていたものの)行った経験が無かったから”、というよりも“上条と一日中一緒に遊べるから”、という意味合いの方が強かったのだが。
 当然だ、サーシャも一人の女の子なのだから。
まあそれはさておき、サーシャが夕凪中学校に留学生として転入して早一ヶ月。中学校生活に慣れつつはあるが、今まで経験の無かった“学校”。疲れは少しずつ、だけど確実に身体に溜まる。
 ここらで一旦、一息ついてこの二日間だけはハメ外して、思いっ切り遊んで、日々の疲れを癒やすことはとても大切だし、とても必要なことだろう。

 ――タッタッタッタッ――

 さて、学園都市には無数の学業機関があるので学生総数は180万人にも上る。
 すると、当然のことながら一学期終了時、二学期終了時、三学期終了時に学園都市の学生を同時に解放してしまうと、学園都市中が大混雑してしまう。
 なので、中学校は小学校よりも30分、高等学校は中学校よりも30分、終業式の終了時間を遅らせているのだ(それでもやはり少し込むのだが)。

という訳で。上条の通っている高校も夕凪中学校より30分遅れて終わる。
 そのため、サーシャはそれほど急いで上条の通っている高校に向かわなくとも良かったし、急ぐ必要もほとんど無かった。しかし。



(――早く。トーマに会いたい)

サーシャがその薄い胸に秘めるのは、とある感情。
インデックスにも話していない、大切な気持ち。
一端覧祭(いちはならんさい)の初日に確認した、一人の少年への想い。

――だけど。この感情は知られてはいけない、とサーシャは思う。

それは“トーマ”にはもちろん、“それ以外の人達”にも。サーシャは、“この感情”を「知られてしまえば」今までの関係がガラガラと音を立てて崩れてしまうのでは、そんな不安を抱いていたのだった。
サーシャにとって、色々な人達との繋がり“も”絶対に捨てることの出来ない大切な宝物だったからだ。

 ――タッタッタッタッ――

上条の通っている、普通で、平凡で、特徴がない、そしてそのことが特徴となっている高校が遠くに見えてきた。サーシャはだんだんスピードを落とし、近づいていく。

 ――タッタッタッタッ――

――だから。“今”はまだ無理だけど、この想いを「トーマ」に伝えることは出来ないけれど、“いつか”伝えることが出来れば……

サーシャはロシア成教からの指令書を受け取った後に、独り悩んだ末にこう結論を出した。
まだ、この物語をおわらせることはしたくなかったし、何より「めでたしめでたし」以外の終わり方なんて認められなかったから。

 ――タッタッタ……………

上条の通っている高校についた。サーシャは辺りを見渡すが、誰もいない。
 まぁ、当然と言えば当然だろう。上条の通う高校の終業式が終わるまで、まだ15分ほど有るのだから。
 実際、上条と言祝が出てくるとのは25分後ぐらいだろう。終業式の後もHR(ホームルーム)なんかがあるから、と思いつつ、そういえば私は終業式終わった途端に学校を飛び出したんだっけ…………と少し焦り始める少女が一人(汗)。


サーシャは仕方ないし、どうしようもないので、校門に寄りかかって上条と言祝が出てくるのを待つことにする。



                   ◇   ◇



ここで一旦、一端覧祭後の一ヶ月のサーシャの学生生活について話そうか。

サーシャの通う中学校、夕凪は、「五本指」とまではいかないが、「十本指」にはほぼ確実に入る女子中学校だった。
だがそれは、夕凪が別に能力開発に優れているからというわけではない。夕凪はいわゆる「ふつうの勉強」に特化しているのだった。そしてそれは、“異常”の域に達している。
 そのせいか、能力の方も大能力者(レベル4)が二人しかいなく、無能力者(レベル0)・低能力者(レベル1)がほとんどだというのに、学園都市の超大型運動会・大覇星祭では、戦争を思わす知略・戦略の数々で、学校別順位・9位という快挙を成し遂げたのだ。

だが、それでもやはり、能力開発にあまり力を入れていない学校だからだろうか。サーシャの天使憑き(レベル4)は周囲の羨望を集めるのには十分な能力で。
そんな彼女には羨んでくる人間はいても、対等の姿勢で関わってくれる人間はいなかった。

否、一人いた。

ファーラ=テスティーニ。
サーシャと同じく留学生で大能力者らしいが、詳しい能力は不明。ついでに言えば国籍も不明。
インデックスと同じ、銀色の髪と、緑色の瞳を持つ少女。
だが、インデックスとは違い、その銀髪は大体肩辺りまでしかのばしていなく、性格もかなり違った。
はっきり言うと、「適当」なのである。
そこら辺かなーりうるさい夕凪の中でただ一人教師に対する態度と生徒に対する態度を同じにし、常にタメ口口調&語尾を延ばす少女。

ちなみに、サーシャと初めて出逢ったときの第一声は、
「あなたが新入りなのー?同じ留学生である私からアドバイスー、「都合が悪くなってしまったときは言葉がわからない振りをするべし!」だよー」
だったのだが、絶句し、固まってしまうサーシャを前にファーラはそこで思い出したように、
「あぁ、私ねー、ファーラ=テスティーニ」
よろしくね、という少女を前にサーシャは辛うじて、よろしく……、と声を絞り出したのだ。


その後。サーシャはさっきのはかなり衝撃的だったと思いつつ、自分にあてがわれた寮の部屋へと直行した。そこに住むつもりは全くないけど。
そこでまたファーラに遭遇してしまった。やあ、と笑いかけてくるファーラにサーシャが完璧な笑顔を返せたのは奇跡……というよりも伝説級だろう。
しかも、(何者か(アレクセイ)の陰謀によって無駄に日当たりが良すぎる)自分の部屋に入ろうとしたとき、後ろから

「よろしくー、ルームメートさん」

 と言われた時は、上司にコスプレをさせられそうになったときすらも耐えて見せた涙が何故だかこぼれ落ちてしまった。

…………とまあ、壮絶な出逢いを果たした二人である。
 初めこそ(控えめに)嫌がっていたサーシャだったが、ファーラの性格は、要は「すべてに対して適当な性格」、裏を返せば「分け隔てなくみんなと接する性格」なのである。
 今ではその性格に惹かれて、というのもあり、ファーラともうまくやっている。それなりに。
だがやはり、普段から上条の家に押しかけ訪問状態で、ルームメートなのに今まで同じ部屋で寝たことはないのだが。

前述の通り、夕凪は「勉強重視の学校」である。なので、テストなどの回数もハンパない。
たが、サーシャはそもそも「テスト」とは何か、が解らない魔法少女である。

そして、ここでもその活躍したのはファーラである。
ファーラは校内の噂によると、授業中はいびきをかいて爆睡しているくせにテストで毎回校内トップをとっているらしい。
そんなスーパー少女・ファーラは勉強の仕方からテストの受け方など自身の持つテストテクをサーシャに伝授。
その結果。サーシャは昨日あった期末テストにも難なく対応する事が出来たのである。


ちなみに。
最近のファーラの悩みは、サーシャとファーラの部屋に毎日五~七通届く、アレクセイ=クロイツェフからの「調子はどうだ?」手紙の処理についてである。


サーシャは今も上条の家に毎日行って泊まっている。
なので、夕凪では最近入ってきて大能力者のサーシャが絶えず噂になっていたが、サーシャが毎日外泊しているという事実に噂はさらに広がってしまっているようだ。



                   ◇   ◇



上条と言祝が学校から出て来るのを待つことにしたサーシャ。


……待つことにしたのだが。

なかなか二人が出て来ない。

あれから一時間経って、高校から数百人の高校生がサーシャの前を通っていったのに。

なかなか二人が出て来ない。

そして、「ちょっと」のレベルから「かなり」のレベルになってきて、だんだんとサーシャは不安になってきた。

(そうだ!トーマから貰った「けーたいでんわー」を使えば!………………あれ……?通じない?…………えっと……でもっ、シオリなら!………………こっちもダメだ……)


――実際は、サーシャが押したボタンは電話を切るボタンだったのだが。インデックスも携帯電話が使えないところをみると、確実に非は上条に有ると思われる。


電話が通じないこと(実際は、使えていないだけだったが)を確認したサーシャは目の前の高校――約一ヶ月前、一端覧祭のときに入って、それからは再び訪れる事がなかった――へと向かう。
上条と言祝を探すために。





サーシャは気づかない。その高校の屋上から『悪魔』がサーシャを見下ろしていることに。
『悪魔』は呟く。

「早く、急がなくちゃ」

その呟きは、まるでなにかを伝えるように、訴えかけるように、そして、

――助けを求めるように“聞こえた”。





サーシャは、気づかない。
そして、サーシャは高校の中へと消えていった。




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