「皆さん集まりましたね。じゃ、さっさと始めちまいましょーか」
快晴を絵に描いたような爽やか日、イギリス清教女子寮の食堂脇にある広めの庭にはアニェーゼ含む約一五人程の十字教徒たちが集まっていた。
「あ、あの、アニェーゼ」
「? 何です神裂さん」
「私たちはこれから何をするんですか? 「楽しいことしますから付いて来てください」とあなたが言うので、我々はここに集まった訳ですが......」
集められた人には、ルチア、アンジェレネ、カテリナ、神裂などに加え、寝ぼけて判断能力が低下したと思われるシェリーまでもが神裂の隣に突っ立っていた。
そんな普段滅多に見られないメンバーを見渡しながら、アニェーゼは自身有り気な表情で高らかに目的を言い放った。
快晴を絵に描いたような爽やか日、イギリス清教女子寮の食堂脇にある広めの庭にはアニェーゼ含む約一五人程の十字教徒たちが集まっていた。
「あ、あの、アニェーゼ」
「? 何です神裂さん」
「私たちはこれから何をするんですか? 「楽しいことしますから付いて来てください」とあなたが言うので、我々はここに集まった訳ですが......」
集められた人には、ルチア、アンジェレネ、カテリナ、神裂などに加え、寝ぼけて判断能力が低下したと思われるシェリーまでもが神裂の隣に突っ立っていた。
そんな普段滅多に見られないメンバーを見渡しながら、アニェーゼは自身有り気な表情で高らかに目的を言い放った。
「わたしたちはこれから気晴らしにサッカーをします。 というのがザックリした内容ですかね」
「「「は?」」」
アニェーゼの思わぬ言葉に神裂やカテリナなどは呆気を取られて目を丸くした。一方、ルチアは気まずそうに目を逸らし、アンジェレネは期待に目を輝かせている。シェリーは相変わらず眠そうな顔で聞き流していた。というか何も頭に入っていないような感じである。
「ア、アニェーゼ。サッカーとは何故いきなり? というかあなたはこれから聖書配りをしなければならない筈では......」
「それならオルソラに代わって貰ってますから心配要りません。と、いう訳でまずは準備運動から......」
「そ、そういうことでは無くてですね!!」
「(......ちっ。シツコイですね)」
神裂が執拗に食い下がってくるため、アニェーゼは少しムッとした表情でそっぽを向きながら反論した。
「別に問題ありません。ルチアもOKしてくれましたし」
「なっ!? る、ルチア!! それは本当ですか!?」
神裂がルチアのほうに振り向いて大声で聞いたが、またも気まずそうに目を逸らすルチア。神裂の後ろでニタニタするアニェーゼを忌々しそうに睨みながら、ルチアは継ぎ接ぎの声でこう返した。
「べ、別にいいんじゃないですか? い、いくら神に仕えし神聖な者としても、たまには気晴らしが必要かと思ふのでaryru......」
素晴らしく棒読みな上に最後のほうがアヤフヤになってしまったルチアは、顔を真っ赤にして神裂から完全に視線を逸らしてしまった。
唖然とする神裂を見て吹きだしそうになるのを堪えてから、アニェーゼは自身の横の箱に入っていたサッカーボールをゆっくり取り出す。
「「「は?」」」
アニェーゼの思わぬ言葉に神裂やカテリナなどは呆気を取られて目を丸くした。一方、ルチアは気まずそうに目を逸らし、アンジェレネは期待に目を輝かせている。シェリーは相変わらず眠そうな顔で聞き流していた。というか何も頭に入っていないような感じである。
「ア、アニェーゼ。サッカーとは何故いきなり? というかあなたはこれから聖書配りをしなければならない筈では......」
「それならオルソラに代わって貰ってますから心配要りません。と、いう訳でまずは準備運動から......」
「そ、そういうことでは無くてですね!!」
「(......ちっ。シツコイですね)」
神裂が執拗に食い下がってくるため、アニェーゼは少しムッとした表情でそっぽを向きながら反論した。
「別に問題ありません。ルチアもOKしてくれましたし」
「なっ!? る、ルチア!! それは本当ですか!?」
神裂がルチアのほうに振り向いて大声で聞いたが、またも気まずそうに目を逸らすルチア。神裂の後ろでニタニタするアニェーゼを忌々しそうに睨みながら、ルチアは継ぎ接ぎの声でこう返した。
「べ、別にいいんじゃないですか? い、いくら神に仕えし神聖な者としても、たまには気晴らしが必要かと思ふのでaryru......」
素晴らしく棒読みな上に最後のほうがアヤフヤになってしまったルチアは、顔を真っ赤にして神裂から完全に視線を逸らしてしまった。
唖然とする神裂を見て吹きだしそうになるのを堪えてから、アニェーゼは自身の横の箱に入っていたサッカーボールをゆっくり取り出す。
「つー訳で今日は”仕事を全部サボっていいので”、皆でサッカーをします。この中で反対の者がいたら手を挙げてください。私が今すぐ説得します」
その言葉に元ローマ正教組(アンジェレネ等一二人)は激しく反応し、絶対手を挙げまいと利き腕をもう片方の手で押さえつけた。
神裂はさらに仰天の表情で口をパクパクさせ、やっと目覚めたシェリーは状況を掴めずに周りをキョロキョロとしていた。
神裂はさらに仰天の表情で口をパクパクさせ、やっと目覚めたシェリーは状況を掴めずに周りをキョロキョロとしていた。
この時点で反対者は二人。元アニェーゼ部隊の少女たちは仕事をサボれるという事で一二人の満場一致を得た。一人だけ、厳密に言えばルチアだけ申し訳無さそうな顔をしていたが。
反対者はというと、神裂とシェリー。神裂の反対理由は上記の通り。シェリーは単に面倒臭いからだそうだ。
反対者はというと、神裂とシェリー。神裂の反対理由は上記の通り。シェリーは単に面倒臭いからだそうだ。
「(さて。そろそろシェリーさんをコッチに引き込みますかね)」
神裂はともかく、アニェーゼにはシェリー・クロムウェルが絶対参加してくれるという自身があった。というか参加せざるをえない秘策があった。
「シェリーさん」
「何よ。私はもう頑張って運動するような年齢じゃないの。球蹴りならガキに混じって勝手に楽しんできな」
「実は今日、サッカーで七対七の試合をやる予定なんですよ」
「だからなんだってのよ。参加しないって言ってんでしょーが」
「で、勝ったほうには賞品がでます」
「しつこいわね。参加しないって何度も......」
「ちなみに賞品というのは、”オルソラの手料理を宗教上のしきたりに関係無く食べまくることが出来る”、という物なんですよね」
「......っ!!?」
神裂はともかく、アニェーゼにはシェリー・クロムウェルが絶対参加してくれるという自身があった。というか参加せざるをえない秘策があった。
「シェリーさん」
「何よ。私はもう頑張って運動するような年齢じゃないの。球蹴りならガキに混じって勝手に楽しんできな」
「実は今日、サッカーで七対七の試合をやる予定なんですよ」
「だからなんだってのよ。参加しないって言ってんでしょーが」
「で、勝ったほうには賞品がでます」
「しつこいわね。参加しないって何度も......」
「ちなみに賞品というのは、”オルソラの手料理を宗教上のしきたりに関係無く食べまくることが出来る”、という物なんですよね」
「......っ!!?」
何かに目覚めたかのように動きを止めるシェリー。アニェーゼはニヤリと笑い、シェリーへ止めの一言を告げた。
「もちろんオルソラの協力は承諾済みです。まぁ、どうしてもと言うなら別に参加しなくてもいいんですけどね。一応、勝てなくとも『参加賞』としてご馳走が待ってますよ。主に夕食辺りに」
「やる」
「もちろんオルソラの協力は承諾済みです。まぁ、どうしてもと言うなら別に参加しなくてもいいんですけどね。一応、勝てなくとも『参加賞』としてご馳走が待ってますよ。主に夕食辺りに」
「やる」
シェリー・クロムウェル収集完了。女子寮の方々は食関係の誘惑に非常に弱い。
「さて......と」
「な、なんです?」
「あとは神裂さん。あなただけですねぇ」
「な、なんと言われようと私は参加しませんから。大体、仕事をサボってまでやることじゃないでしょう、サッカーなんて......」
やはり頑なに参加を拒む神裂に、アニェーゼは諦めたように肩を落して低い声で言った。
「......そうですか。じゃあ”参加しなくて結構です”ので、お仕事頑張ってください」
「え? ああ、あの......」
「じゃあさっさと準備運動しちまいましょうかー」
「「「はーい」」」
神裂を除く全てがアニェーゼの声に呼応するように返事をした。突然の自体にオロオロする神裂を尻目に、アニェーゼ等(シェリー含む)は、寮の庭のど真ん中である程度に輪になってから「イーチニーサーンシー」という機械的な声で準備運動を開始し始める。
「な、なんです?」
「あとは神裂さん。あなただけですねぇ」
「な、なんと言われようと私は参加しませんから。大体、仕事をサボってまでやることじゃないでしょう、サッカーなんて......」
やはり頑なに参加を拒む神裂に、アニェーゼは諦めたように肩を落して低い声で言った。
「......そうですか。じゃあ”参加しなくて結構です”ので、お仕事頑張ってください」
「え? ああ、あの......」
「じゃあさっさと準備運動しちまいましょうかー」
「「「はーい」」」
神裂を除く全てがアニェーゼの声に呼応するように返事をした。突然の自体にオロオロする神裂を尻目に、アニェーゼ等(シェリー含む)は、寮の庭のど真ん中である程度に輪になってから「イーチニーサーンシー」という機械的な声で準備運動を開始し始める。
結果、神裂だけが輪から外れて立ち尽くした状態になる訳で。
「(な、なんですか。あんなにしつこく誘っておいて放置するなんて......て、あれ?)」
ブツブツ言っていた神裂だが、現在の状況を客観的に観察すると面白いことが見えてきた。
「(な、なんですか。あんなにしつこく誘っておいて放置するなんて......て、あれ?)」
ブツブツ言っていた神裂だが、現在の状況を客観的に観察すると面白いことが見えてきた。
......なんか......仲間外れにされてない?
割と楽しそうに準備運動をするシスター達と、それから外れて見ているだけの自分。神裂はどう見てもハブられてしまった切ない女である。
自身の寂しさを再確認した神裂は、一回だけ何とも言えない微妙な感覚を味わってから、
(......別に。寂しくは。ありません、から......)
そう決め付けて、神裂はトボトボ寮の中へと帰っていく。それを見ながら「憂いの背中が尚更切ないですね」とアニェーゼは適当に呟いた。
自身の寂しさを再確認した神裂は、一回だけ何とも言えない微妙な感覚を味わってから、
(......別に。寂しくは。ありません、から......)
そう決め付けて、神裂はトボトボ寮の中へと帰っていく。それを見ながら「憂いの背中が尚更切ないですね」とアニェーゼは適当に呟いた。
「さて。準備運動も済んだ所で、そろそろ本題に入りましょうか。......面倒くさいので、ぶっつけ本番で試合しましょう」
「「「え?」」」
「と、いう訳で半分に分けます。まずは私のチームを......」
「ちょちょちょ、シスター・アニェーゼ!! ストーップ!!」
アンジェレネ(結構やる気)の五月蝿い叫び声が寮の外壁に反響する。いかにも鬱陶しそうな顔でアニェーゼが振り向いてきたので、アンジェレネは負けじと声を張り上げた。
「さ、さすがに準備運動だけじゃ無理がありますよ!! ちょっとだけでも練習したほうが、いやしなくちゃ駄目ですよ!!」
どうやらアンジェレネは本気でオルソラの料理を狙っているようだ。自分は我がままに協力して貰っている身だしなぁとアニェーゼは少し考えたが、やはり、
「やっぱり試合します(基本練習とか面倒臭い)のでチーム分けしますね」
「シスター・アニェーゼ!?」
結構本気でオルソラフルコースを捕る勢いだったアンジェレネの悲痛な声を無視して、アニェーゼは適当に手区切りで人員を半分に分ける。
「「「え?」」」
「と、いう訳で半分に分けます。まずは私のチームを......」
「ちょちょちょ、シスター・アニェーゼ!! ストーップ!!」
アンジェレネ(結構やる気)の五月蝿い叫び声が寮の外壁に反響する。いかにも鬱陶しそうな顔でアニェーゼが振り向いてきたので、アンジェレネは負けじと声を張り上げた。
「さ、さすがに準備運動だけじゃ無理がありますよ!! ちょっとだけでも練習したほうが、いやしなくちゃ駄目ですよ!!」
どうやらアンジェレネは本気でオルソラの料理を狙っているようだ。自分は我がままに協力して貰っている身だしなぁとアニェーゼは少し考えたが、やはり、
「やっぱり試合します(基本練習とか面倒臭い)のでチーム分けしますね」
「シスター・アニェーゼ!?」
結構本気でオルソラフルコースを捕る勢いだったアンジェレネの悲痛な声を無視して、アニェーゼは適当に手区切りで人員を半分に分ける。
「こんなもんですかね」
結果、チームはアニェーゼ組とルチア組に分かれた。
まずアニェーゼの方には、アニェーゼ、シェリー、カテリナ、その他修道女四名。
ルチアの方には、ルチア、アンジェレネ、その他修道女五名、という形になった。
結果、チームはアニェーゼ組とルチア組に分かれた。
まずアニェーゼの方には、アニェーゼ、シェリー、カテリナ、その他修道女四名。
ルチアの方には、ルチア、アンジェレネ、その他修道女五名、という形になった。
「シスター・ルチア!! 絶対勝ちましょうね!!」
「え、ええ。まぁやるからには......」
無駄にやる気なアンジェレネは始まる前からハイテンション。遊園地に行く前の子供みたいにハシャいでいる。
アニェーゼはそんな五月蝿い光景を見ながら、相手のチームと自分のチームを見比べた。自チームでは大あくびをしているシェリーや、案外楽しみにしているのか、ソワソワと落ち着かないカテリナが目につく。
それを確認したアニェーゼは心の中で静かに思った。
「え、ええ。まぁやるからには......」
無駄にやる気なアンジェレネは始まる前からハイテンション。遊園地に行く前の子供みたいにハシャいでいる。
アニェーゼはそんな五月蝿い光景を見ながら、相手のチームと自分のチームを見比べた。自チームでは大あくびをしているシェリーや、案外楽しみにしているのか、ソワソワと落ち着かないカテリナが目につく。
それを確認したアニェーゼは心の中で静かに思った。
(......これは勝ちましたね)
この勝手な決め付けには一応根拠があったんです、と後に彼女から聞かされた者が居るという。
「さ、とっとと始めちまいましょーか」
建設時の都合上、ちょうど長方形の形になっていた寮庭はサッカーをするには最適な場所である。。
アニェーゼは適当に庭の両辺付近に4m程の線を引いて、「この線上を通過したボールのみゴールと見なします」とルールを決め付け、試合準備は万端。(センターラインその他もしっかり引きました)
建設時の都合上、ちょうど長方形の形になっていた寮庭はサッカーをするには最適な場所である。。
アニェーゼは適当に庭の両辺付近に4m程の線を引いて、「この線上を通過したボールのみゴールと見なします」とルールを決め付け、試合準備は万端。(センターラインその他もしっかり引きました)
「とりあえずポジションを決めます。ルチアチームもどの人がどの役をするか、しっかり決めておいて下さいね」
無茶な注文を押し付けると、アニェーゼはポジション分けに入った。
(ポジションは適当で大丈夫でしょうね)
有言実行。ほぼくじ引き感覚でアニェーゼ等のポジションが決定した。
まずGPにシェリー。DFにアニェーゼ、その他修道女三名。FWにカテリナと修道女一名。
そしてルチアチームのほうは、
無茶な注文を押し付けると、アニェーゼはポジション分けに入った。
(ポジションは適当で大丈夫でしょうね)
有言実行。ほぼくじ引き感覚でアニェーゼ等のポジションが決定した。
まずGPにシェリー。DFにアニェーゼ、その他修道女三名。FWにカテリナと修道女一名。
そしてルチアチームのほうは、
「シスター・アニェーゼ!! ルチアチーム決定しました!!」
「アンジェレネ、随分早いですね。で、どのような配置で?」
「はい!! 全員で力を合わせて攻撃重視の戦法を取りたいと思います!!」
「......はぁ?」
まさかの全員攻撃だった。しかもそんな馬鹿みたいな作戦をアンジェレネがドヤ顔で語ってくるのだから救い様が無い。
いちいちツッコむのも面倒なので、アニェーゼチームは「はぁ。良い戦法ですね」と軽く流すことにした。
これは勝ったも同然じゃないか? と傍らのシェリーもそんなことを考えていたのか、オルソラの料理を食べるイメージトレーニングを始めていた。正直、横で見ていて痛かった。
「アンジェレネ、随分早いですね。で、どのような配置で?」
「はい!! 全員で力を合わせて攻撃重視の戦法を取りたいと思います!!」
「......はぁ?」
まさかの全員攻撃だった。しかもそんな馬鹿みたいな作戦をアンジェレネがドヤ顔で語ってくるのだから救い様が無い。
いちいちツッコむのも面倒なので、アニェーゼチームは「はぁ。良い戦法ですね」と軽く流すことにした。
これは勝ったも同然じゃないか? と傍らのシェリーもそんなことを考えていたのか、オルソラの料理を食べるイメージトレーニングを始めていた。正直、横で見ていて痛かった。
そんなこんなで欲望渦巻く半端なサッカーが始まる。