とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

3話

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匿名ユーザー

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通学路から一本外れた路地。
とある空きテナントの前で、上条当麻は項垂れていた。
「う、うだー」
その空きテナントにはシャッターが下りており、『短い間でしたがご愛顧ありがとうございました』と言う張り紙が張られていた。
「要するに。当てが外れた。と」
そんな上条の隣で、姫神は言わずもがなの意見を述べる。二人とも未だに『お手て繋いで』状態だ。
はっきり言って、端から見ればカップルである。
「……右手使わなくても食べられる食事法なんて、手掴みしか思いつかねーから、ここに来たのに」
「知っても仕方のないことだけど。ここは何のお店だったの?」
「パン屋」
端的に返ってきた答えに、姫神は眉根を寄せる。と同時に、一つ納得もした。
上条当麻にとって今の状況と言うのは、別に気取ったりしなければならない状態と言う訳ではないようだ。
そこまで考えて、知らず浮かれていた自分に気付く。
「?どうした姫神。急に頭を振ったりなんかして」
「なんでもない」
少し自重しよう。今のこの状態は緊急措置。彼はなんとも思ってない。
「ところで。当てが外れた所で。次の候補とかは決まっているの?」
「あー、いや、これといって」
まいったなぁ、とばかりに頭を掻く上条。
「なら。あそこのファミレスで良いのでは?」
と言って姫神は、右手の角にある看板を指差す。その看板自体はそんなに珍しいものではない。学園都市内だけでも複数の店舗を出している良くあるファミレスの看板だ。
「どう?」
首を傾げて、問う。その問に上条は、
「……なぜか、あそこには行ってはいけないという警告文が脳内に流れてるんだけど」
と、訳のわからない事を言い出す。
「?もしかして。問題を起こした事があって。入りづらいとか」
「いや、それはうちの近所のファミレスだし」
否定しないのか。
「しかも俺が起こした問題じゃないし……」
聞かれもしてない事まで答えている。
「なら。何も問題はないのでは?」
その姫神の言葉を否定する材料は、上条にはない。
「うーん、まぁ探すのも面倒だし、そこでいいか?」
「私は。別に」
これで目的地は決まった。



ちなみに看板には『右折5km』とある。
上条はまだ気付いていない。




「初志貫徹って大事だよな」
「大袈裟だね。君」
夏は過ぎたと言っても、まだ9月も始まったばかり。昼下がりの日差しは、やはり鋭い。
途中でへこたれそうになりながらも(上条が、であるが)、二人は目的のファミレスに辿り着いた。
外から見た限りでは、結構混んでいるように見受けられる。
「こりゃ、待つかもな」
「大丈夫かも。ほら。誰も待ってない」
と言って姫神が指差したのは、レジ前にある待合スペース。確かに誰もいない。これなら待つことになっても然程時間は掛かるまい。
「いらっしゃいませー。二名様で御座いますかー?」
入ってきた学生カップルに笑顔で応対するウェイトレス。この程度で目くじらを立てていては客商売は成り立たない。
「こちらへどうぞー」
二人が案内されたのは、窓際の四人がけのテーブルだった。
普通に向かい合って座ろうとした上条の右手を、姫神は引いた。
「君。この手をテーブルの上に出して座るの?」
言われて、その映像を思い浮かべる。



――向かい合って座る二人。テーブルの上に出された二人の手は、固く結ばれている。



頭を振って、その映像を散らす。
「分かった。隣り合って座ろう」
それはそれで意味深な映像なのだが。
まぁ背に腹は代えられないだろう。




「ご注文はお決まりですか?」
先程のウェイトレスが注文を取りにきた。一瞬顔が引きつったように見えたのは、多分気のせいだ。
「BLTサンドとコーヒー。あとウィンナー盛り合わせ」
「ゴーヤとエスカルゴの地獄ラザニア。あと。ドリンクバー」
姫神の頼んだ注文に既視感を覚える。
まぁ気のせいだろう。
何せ、上条当麻は記憶喪失なのだから。




ウェイトレスが下がった後、すく、と姫神が立ち上がった。
「?どした、姫神」
「ドリンクバー。取りに行かないと」
言われて、上条は、
「あぁそうか、って」
立ち上がりかけて、難色を示す。この混雑した店内を二人揃って歩くのは、どこか気恥ずかしいものがある。
「大丈夫。堂々としてれば誰も気にもとめない」
言外に、さぁ早く早くと急かす姫神。こう言われれば、上条としても従わざるを得ない。ここでごねたら、まるで。
(まるで俺だけが意識してるみたいだしな)
「分かったよ。それだったら俺もドリンクバーにしておけば良かったな」
「どのみち。コーヒーのおかわりはセルフサービス」
「……それもそうだ」
二人して席を立ち、ドリンクバーへ。
そこで。
「お?」
「あらあらあら」
「あーっ!」
「?」
どこかで見た顔二つと遭遇した。

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