とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

5話

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匿名ユーザー

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「しっかし驚いたなぁ。こんな所で御坂たちに会うとは思わなかった」
左手で持ったフォークに刺したウィンナーを齧りながら、上条は先程の事を思い出していた。
右手は相変わらず姫神の左手と繋がっている。
テーブルの下での事なので、端から見ても不自然ではあるまい。
四人掛けの席で並んで座っている事を除けば、の話だが。
「分かっていたつもりだったけど」
こちらはラザニアを、なぜか割り箸で口に運びながら姫神が言う。
「君には。女の子の知り合いが多いね」
「……それは誤解ってモノですよ、姫神サン?上条さんは超硬派ゆえに女性の知り合いなんて数えるほどですって」
「君の自己分析には。時に。怒りを覚えそうになるね……」
ポツリと零れた言葉に、
「?何か言ったか?」
「別に。何も」
さらりと追及をかわしてから、姫神は先程から気に掛かっていた事を尋ねて見る。
「ところで。先刻からちらちらとラザニアを見てるようだけど。ひょっとして。食べてみたいとか?」
「ん、そういう訳じゃないけど。なんか妙に引っかかるんだよな、それ」
フォークでラザニアの皿を指し、上条が返答する。
「まぁ、ラザニアは嫌いじゃないけどな」
「……ふぅん。そう」
そう言って姫神は適度に分けたラザニアを箸で掬い、
「はい」
上条の口元へとそれを運んだ。
たっぷり十秒近く口元まで運ばれてきたそれを凝視した後、
「うわあ!?」
思わず仰け反る。
「な、な、何をなさりますか姫神さん!?」
「気になるのなら。食べてみるのが得策かと」
上条の問いに、至極当然、と言った風に答える。
「いや、だけどこれって……」
目前のラザニア、と言うよりそれを乗せている箸から眼を放さずに困惑した声を上げる上条。
(姫神はさっきまでこの箸で食事をしていた訳で、それに乗っかっている物を食べると言う事は必然的に箸ごと口に含むと言う事で、それってつまりは)
人それを『間接キス』と言う。
「えーと、気にならんのか?」
上条の質問に、
「?」
何が、とでも言いたげに姫神は小さく首を傾げる。
わかっているのか、いないのか。
(これってどうすればいいんですか!?教えて神様ティーチミー!!)




美琴達が自分達の席に戻ると、都合良く周りの席が空いていた。
おかげで、労せずに上条たちのテーブルの様子を伺う事が出来るようになっていた。
「何で四人掛けの席で並んで座ってんのよ……」
美琴が搾り出すように呻く。
「しかも見た感じ、まだ手を繋いでいる様にも伺えますわ」
心底面白そうに白井が続ける。
白井としては、上条と姫神が親密な関係でいてくれた方が有難い。
(お姉様につく虫としては危険度最大級のあの殿方がここで脱落してくれるのなら、これほど有難い事はありませんわ)
内心でクックとほくそえむ白井。
横目で美琴の様子を伺えば、かなりピリピリとしている。
これはチャンス、とばかりに白井は更に煽る様な発言をしてみる事にした。
「いえ、もしかしたら今は手を繋いでないのかもしれませんわね」
この言が聞こえたか、美琴が白井の方へと視線を向ける。
「端から見たらあの方の右手はテーブルの下に隠れて見えませんもの。それをいい事に、きっと隣の方の腰の辺りに手を回して後ろから撫で回したり、指を差し込んだり、はたまた前の方からいやんこれ以上は私の口からは言えませんわー」
いや言ってる。かなりぎりぎりな発言です。





白井のこの発言に美琴はカッと目を見開き、再度上条たちの席へと視線をやる。
その視線の先では。
「あらあらまぁまぁ何と言う事でしょう。全く妬けてしまいますわ」
姫神が上条に対して、いわゆる『あーん』の体勢に入っていた。
「ねぇそうは思いません……」
『か、お姉様』と言いかけて、白井はそのまま固まった。
何故なら。己の視線の先には。
「黒子。アンタはここで荷物を見てなさい」
周りの空気を比喩ではなしにびりびりと震わせて立ち上がる超電磁砲の姿が――。




バシン、とテーブルを叩かれて、二人の間に広がっていた謎の桃色時空は瞬く間に霧散した。
助かった、とばかりに上条はテーブルを叩いた人物へと視線を向けると、そこにいたのは。
「おぅおぅニイチャンよぉ。随分と見せ付けてくれるじゃねぇかよ」
いわゆる不良と呼ばれるであろう格好をなさった方々でした。見たところ十人近くはいそうな雰囲気である。
「……えーと」
さて、どうリアクションしたものか、と固まる上条へ、
「知り合い?」
と問いかける姫神。
「んな訳あるか。こんなI,Q80野郎に知り合いはいませんのことよ?」
思わずポロリと零れた上条の言葉に、
「ンだとコラァ!!」
お約束の反応を見せる不良の方々。
しまったー、と心の中で叫ぶ上条だが、その上条の顔を見て不良の中の幾人かが、
「て言うか、テメェの顔どこかで見た事があるような……」
「あっ、こいつ夏休み前に!」
上条の予想とは少し違う反応を見せる。
「あぁーっ、あの時の野郎か、コイツ!」
「ちょうど良いや、あの時の借りもまとめて返してやる」
何やらやる気満々と言った感じでじわりと包囲を狭める、その人垣の後ろから。
「アンタら、邪魔」
と言う声が聞こえたと思った次の瞬間。
バチン、と言う音と共に青白い光が視界を焼いた。
思わず目を閉じ、再び開くと今まで視界の何割かを塞いでいた人垣は既に瓦解しており。
その代わりに、パチパチと火花を散らしながら昏く笑う美琴の姿がそこにあった。
「ふっふっふ……、この間のシスターといい、どうしてアンタは私の目前でそうやって見せ付けてくれるのかしら……?」
「あのー、美琴サン?」
上条が、何故か片言風味で美琴に声を掛ける。
状況だけ見れば助けてもらったような感じだが、まるであの最強に立ち向かう彼女を止めたときのような雰囲気に、思わず呑まれる。
そんな緊迫した空気が流れる中で、空気の読めない人種がここに数名。
「このガキャああ!」
「こいつも仲間か!」
他にもまだいたのか、仲間と思しき学生が数人よって来る。
「うっとおしい!」
美琴が、それらを追い払う様に電撃の槍を放つ。
本来なら止めるなり加勢するなりしたい所だが、と上条は姫神を見て一考し。
「すまないがこの場は任せた、美琴!」
結論を出した。
姫神の体を椅子から押し出して、そのまま手を引いて走り出す。
「ちょっとアンタ、逃げる気!?」
美琴の非難するような声に、
「すまん、今日はちょいと状況が悪いんだ!」
叫び返し、そのまま店を飛び出る。




その光景を見ていた白井が、一言ポツリと洩らす。
「……食い逃げ、ですわね」



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