第一幕:[Blank name blank girl]
[1] Imagine Breaker01―とある御嬢のモーニングコール
朝日がカーテンの隙間から零れ、小鳥の囀りが聞こえる。
学園都市の第七学区にあるとある高校の男子寮の一室に
『ぱーぱぱ♪ぱぱっぱ♪ぱーぱぱぱ♪ぱぱぱぱ♪ぱぱ♪ぱーぱぱっぱ♪』
突然静けさで演出されていた場面をぶち破り陽気なリズムの電子音が響き渡る。
学園都市の第七学区にあるとある高校の男子寮の一室に
『ぱーぱぱ♪ぱぱっぱ♪ぱーぱぱぱ♪ぱぱぱぱ♪ぱぱ♪ぱーぱぱっぱ♪』
突然静けさで演出されていた場面をぶち破り陽気なリズムの電子音が響き渡る。
我らが主人公、上条当麻は自分の枕元に無言で裏拳を振り下ろすが「ガン」と言う音がするだけだ。
音は止まらない。
あと手痛い。
完全な自爆なのだがその衝撃と電子音の攻撃で一応上条は目を覚ました。
形容するなら、そうだな、寝起きのハリネズミ? ツンツンと跳ね上がった黒い髪の毛は別にワックスで
固めているわけでは無い。
ただの髪質なのだ。
これらは物語を進行させる上ではさして重要なことではないし、この髪型以外の
上条当麻など想像できないし、資料も無いので以後上条当麻の髪型に関しては言及しないことにする。
寝ぼけた顔で目をゴシゴシとこすり大きなあくびを一つ。
その間にも電子音は自己主張を続ける。
いい加減とって欲しい、そんな空気で満ちていた。
騒がしい電子音の正体は目覚まし時計では無い。
そもそも上条は目覚まし時計はセットしない人間である。
なにせ彼は普段からその不幸な体質を大いに発揮し目覚まし時計の類をセットするとかなりの高確率で
それが機能しないという不幸な事態に見舞われるのだ。
毎日毎日、そんな不確かな物に頼っていては遅刻大魔王の異名を欲しいままにしてしまいクラスメイトの
恐い人にいろいろと苛められてしまう。
具体的には「遅いわよ、上条当麻!!」と言う声と共に一撃必殺の威力を秘めたパンチが飛んでくることになるのだ。
「おお恐い、考えただけでもゾッとするな……」
もしかしたら同じくクラスメイトの姫神秋沙(ひめがみあいさ) ぐらいは彼の味方になってくれるだろうか?
いや、彼女も味方にはなってくれそうにない、彼女の普段の姿から想像するにせいぜいが中立といったところだろうか?
きっとあの独特の口調で「そう。キミはいつもそんな感じ」とか言ってくるのが関の山だろう。
彼女もある事件をキッカケに上条の通う高校へと編入してから問題児クラスの雰囲気に毒されつつあるのかもしれない、取り折り
上条の予想の斜め上を行くような奇抜な行動を取ったりすることも往々にしてある。
それでも以前よりは大分彼女の笑顔が増えたとも思い上条は少し唇の端を持ち上げた。
音は止まらない。
あと手痛い。
完全な自爆なのだがその衝撃と電子音の攻撃で一応上条は目を覚ました。
形容するなら、そうだな、寝起きのハリネズミ? ツンツンと跳ね上がった黒い髪の毛は別にワックスで
固めているわけでは無い。
ただの髪質なのだ。
これらは物語を進行させる上ではさして重要なことではないし、この髪型以外の
上条当麻など想像できないし、資料も無いので以後上条当麻の髪型に関しては言及しないことにする。
寝ぼけた顔で目をゴシゴシとこすり大きなあくびを一つ。
その間にも電子音は自己主張を続ける。
いい加減とって欲しい、そんな空気で満ちていた。
騒がしい電子音の正体は目覚まし時計では無い。
そもそも上条は目覚まし時計はセットしない人間である。
なにせ彼は普段からその不幸な体質を大いに発揮し目覚まし時計の類をセットするとかなりの高確率で
それが機能しないという不幸な事態に見舞われるのだ。
毎日毎日、そんな不確かな物に頼っていては遅刻大魔王の異名を欲しいままにしてしまいクラスメイトの
恐い人にいろいろと苛められてしまう。
具体的には「遅いわよ、上条当麻!!」と言う声と共に一撃必殺の威力を秘めたパンチが飛んでくることになるのだ。
「おお恐い、考えただけでもゾッとするな……」
もしかしたら同じくクラスメイトの姫神秋沙(ひめがみあいさ) ぐらいは彼の味方になってくれるだろうか?
いや、彼女も味方にはなってくれそうにない、彼女の普段の姿から想像するにせいぜいが中立といったところだろうか?
きっとあの独特の口調で「そう。キミはいつもそんな感じ」とか言ってくるのが関の山だろう。
彼女もある事件をキッカケに上条の通う高校へと編入してから問題児クラスの雰囲気に毒されつつあるのかもしれない、取り折り
上条の予想の斜め上を行くような奇抜な行動を取ったりすることも往々にしてある。
それでも以前よりは大分彼女の笑顔が増えたとも思い上条は少し唇の端を持ち上げた。
『ぱーぱぱ♪ぱぱぱぱ♪ぱ~ぱぱぱ♪ぱぱぱぱぱぱ♪ぱぱぱぱ♪ぱーぱぱぱ♪』
その軽快なメロディー自体は上条が好きな女性アーティストが歌うナンバーのメロディなのだが、いまは心底わずらわしく感じる。
不思議だ、状況によって曲の印象というものはこうも変化するのか、と眠気を振り払うように自らの体を覆う
あったかい防具を緊急発進によって強制排除した。 様は布団から勢いよく起き上がっただけである。
そのまま布団を足で適当に蹴っ飛ばして部屋の隅にシュートしてコンセントにささった写真立て型の充電器に
セットされ、赤い点滅をする携帯電話を取る。
大きく欠伸をしながら二つ折りの携帯電話をカパンッと開いてボタンを押す。
ピッ!と短い電子音が鳴った。
「はいはい、上条だけど……」
携帯電話を自分の耳に押し当てて上条は相手の返事を待つ・・・3秒経過・・・いまだ無言。
「あれ?」
不審に思った上条が携帯電話を顔の前に持ってくる。 表示された液晶画面には『通話時間 1秒』の文字。
そして”御坂美琴”の4文字。
その軽快なメロディー自体は上条が好きな女性アーティストが歌うナンバーのメロディなのだが、いまは心底わずらわしく感じる。
不思議だ、状況によって曲の印象というものはこうも変化するのか、と眠気を振り払うように自らの体を覆う
あったかい防具を緊急発進によって強制排除した。 様は布団から勢いよく起き上がっただけである。
そのまま布団を足で適当に蹴っ飛ばして部屋の隅にシュートしてコンセントにささった写真立て型の充電器に
セットされ、赤い点滅をする携帯電話を取る。
大きく欠伸をしながら二つ折りの携帯電話をカパンッと開いてボタンを押す。
ピッ!と短い電子音が鳴った。
「はいはい、上条だけど……」
携帯電話を自分の耳に押し当てて上条は相手の返事を待つ・・・3秒経過・・・いまだ無言。
「あれ?」
不審に思った上条が携帯電話を顔の前に持ってくる。 表示された液晶画面には『通話時間 1秒』の文字。
そして”御坂美琴”の4文字。
上条の顔から血の気が引くのと再び大音量の着信音が響くのはまったく同時の事だった。
「もし―」
『切るなぁぁぁぁッ!!このトーヘンボク!!』
今度は着信と同時に通話状態に操作し耳に押し当て上条が「もしもし」とありきたりな電話対応をしようとした
言葉を強引に上書きしつつ携帯電話のスピーカーを揺るがし女の子特有の高い声が飛来した。
その効果音は表現するなら多分「ガァァァッ!」とか「ゴォォォォォッ!」とかの激しい擬音語がもっとも適当だと思う。
上条は耳鳴りを起こしたように携帯電話を持つ手を目いっぱい耳から遠ざけ、
(うわッ、わざとじゃないんだけど、ものすっごい怒ってる)
と心中で必死に言い訳を探した。
でもそうそう都合良く言い訳が浮かぶほど上条当麻は要領が良くないし、言い訳をした瞬間に
更にその10倍の文句を用意することなんてのはご立腹のお嬢様にとって朝飯前の事。
『アンタねぇ、散々待たしておいて回線繋ぐと同時に切るってのはあんまりじゃないの、普通の子ならそれだけで泣くわよ』
そんな事を言う電話口に向こうの女の子の姿を想像して上条は「お前は泣きそうに無いけどな」と心中でこっそり呟き、
「わりぃ、寝ぼけてボタン間違えたんだ。 この通り、許せ」
謝罪の言葉を告げて素直に頭を下げる。
電話の向こうには当然その様子は見えない、それでも自然に頭が下がったりするのは日本人故だろうか。
関係ないけど。
「もし―」
『切るなぁぁぁぁッ!!このトーヘンボク!!』
今度は着信と同時に通話状態に操作し耳に押し当て上条が「もしもし」とありきたりな電話対応をしようとした
言葉を強引に上書きしつつ携帯電話のスピーカーを揺るがし女の子特有の高い声が飛来した。
その効果音は表現するなら多分「ガァァァッ!」とか「ゴォォォォォッ!」とかの激しい擬音語がもっとも適当だと思う。
上条は耳鳴りを起こしたように携帯電話を持つ手を目いっぱい耳から遠ざけ、
(うわッ、わざとじゃないんだけど、ものすっごい怒ってる)
と心中で必死に言い訳を探した。
でもそうそう都合良く言い訳が浮かぶほど上条当麻は要領が良くないし、言い訳をした瞬間に
更にその10倍の文句を用意することなんてのはご立腹のお嬢様にとって朝飯前の事。
『アンタねぇ、散々待たしておいて回線繋ぐと同時に切るってのはあんまりじゃないの、普通の子ならそれだけで泣くわよ』
そんな事を言う電話口に向こうの女の子の姿を想像して上条は「お前は泣きそうに無いけどな」と心中でこっそり呟き、
「わりぃ、寝ぼけてボタン間違えたんだ。 この通り、許せ」
謝罪の言葉を告げて素直に頭を下げる。
電話の向こうには当然その様子は見えない、それでも自然に頭が下がったりするのは日本人故だろうか。
関係ないけど。
素直に謝ったのが功を相したのか、
『そ、そうなの、それじゃあ仕方ないわよね、うん、わざとじゃないなら今回は勘弁してあげる』
電話口の相手の声も幾分か柔らかい。
良かった人間、素直が一番だ、本気でそう思った。
『さて、じゃあやり直すから合わせなさい』
完全に命令形である。
ややあって先ほどより更に柔らかい声が受話器から紡がれた、むしろ猫撫で声といったほうがいい。
『おはようございます、御坂美琴のモーニングコールのお時間です、良い目覚めをされましたか?』
……なんだこの違和感――。
電話越しの御坂美琴は上条の脳に記録されているイメージと180度くらい違う口調でそんな事を言っていた。 あんまり違和感がありすぎて新手のスタ○ド使いの攻撃にでも会っているのか思ってしまうぐらいだ。
「お、おはよう、良いかどうかは知らんがとにかく目は覚めたぞ、うん、いろんな意味でな」
口調の端々をひきつらせながら答えてみる。
気が付けば額に汗がびっしょりだ、恐るべし違和感。
『それはそれは、満足していただけたようでこちらとしても感無量です』
まだ続けるのかお嬢様、やり直すって一切合切リセットしてから新たにニューゲーム系ですか?
もしかして自分のキャラ付けをここらで一新しようとでも画策してるのではあるまいか?、上条はそんな邪推をしてみる。
「御坂」
『はい?』
「変な物食べたか?」
ピシ、聞こえるはずの無い電話の向こうの何かにヒビの入る時の心理効果音が聞こえた。
『だぁぁぁッ!! せっかく人が優雅な朝を演出してやろうとしてるのにッ。 その一言で木っ端微塵、一撃粉砕っ!』
「よかった、いつもの御坂に戻った」
よっぽどいままでの状況が堪えたのだろう、上条は心底ホッとして息をついた。
『……アンタにそんな対応力を期待してた私がバカだったのかしら?』
「御坂にはですます調とかどこぞの令嬢みたいな口調は似合わないと思うぞ。
うん、普段の御坂がいいと思う。
っていうかマジでビビッタから勘弁してください」
朝のドッキリは心臓に悪いからな、と上条は美琴に聞こえないようにボソっと呟いた。
『普段の私……そ、そうよねー、私は私だもんね、あ、あははは(そうかー普段の私がいいのかー)』
美琴は乾いた笑いの後にごにょごにょと小声でなにやら言ってるが本当に「ごにょごにょ」としか聞き取れない。
「御坂、質問してもいいか?」
上条が携帯電話を右肩とアゴではさんでキッチンの冷蔵庫の扉を開けながら言う。
『なによ?』
「お前、なんだってこんな朝っぱらから電話を?」
冷蔵庫の中身はミネラルウォーターとぷっちんプリンとコンビニのいなり寿司とかについてくる紅しょうが(パック)だけ。
わびしいにも程がある――。
『なんでって、アンタが昨日会った時、起きれないから起こしてくれーって言ったんじゃないの、感謝の言葉があってもいいわよ?』
「言ったっけ?そんなこと」
とりあえずぷっちんプリンとミネラルウォーターを取り出して足で乱暴に冷蔵庫の扉を閉める。
『言った。 細部は違うけど私はそう解釈した。 だから持ち前の親切スキルを全開にして朝も早くからモーニングコール
なわけよ、アンタ感謝しないとそのうち、とちくるったツインテールとかに刺されるわよ。
あ、別に電話代とかは大丈夫、ノープログレムよ。 良かったわねェ、私とペア登録しておいて。
登録者間での通話、及び通信は無料、さらに料金プラン自体もかなりの割安、こんなおいしい話は無いわよね。
(中略)
そういえば、アンタあの充電器ちゃんと使ってる? 全機種対応してるんだから使わないと邪魔になるわよ、いや飾れって言って
るんじゃないのよ? ただそんな場所の取る物なら使わないといけないんじゃないかーって思ったわけよ。 ねぇ?
ちょっと、ねぇ、聞いてる?』
話し出したら止まらない。 まさにマシンガントーク、この言葉を考えた人に賛辞を贈りたい。
パチパチ。
とりあえず適当に「聞いてる」とだけ返して、ミネラルウォーターのキャップを捻って直接口をつけグビグビと水分を補給する。
「ぷはぁ……はぁ生き返る」
『はっ? 生き返る? てかアンタいまなんか飲んでたでしょ。 人が話してるときはしっかりと相手の目を見て話を聞くものよ。
いや電話じゃ目は見えないけど雰囲気としての話よ。 ッて言ってる側からぷっちーん♪とか言ってプリン食べるなぁぁ』
どうやら上条が呟いた「ぷっちーんぷりん♪」が聞こえてたようだ。
お嬢様の機嫌は10ぐらい下がったと推測する。
『私よりプリンが大事なのかアンタはッ。 どんな男尊女卑よ、まったく……。
大体朝からプリンってどんな食生活してんのよ、栄養失調で倒れるわよアンタ。え、冷蔵庫の中にそれしか入ってなかった?
あとは紅しょうが? よくそんなので持つわね……。 もしかして自炊とかしてないの?』
「いや、自炊してるんだけど昨日きっちりと使いきっちまってその上完食したからこの有様だ、おかげさまで学校終わるまで持つかどうか」
今日びの男子高校生が朝にぷっちんプリン1個と水では到底問題がある食生活だ。 カロリー的にも、そして文章的にも。
そしてフラグの神様はそんな上条にある試練を課した、後になって思えばこの時既にフラグは立っていたのかも知れない。
『そ、そうなの、それじゃあ仕方ないわよね、うん、わざとじゃないなら今回は勘弁してあげる』
電話口の相手の声も幾分か柔らかい。
良かった人間、素直が一番だ、本気でそう思った。
『さて、じゃあやり直すから合わせなさい』
完全に命令形である。
ややあって先ほどより更に柔らかい声が受話器から紡がれた、むしろ猫撫で声といったほうがいい。
『おはようございます、御坂美琴のモーニングコールのお時間です、良い目覚めをされましたか?』
……なんだこの違和感――。
電話越しの御坂美琴は上条の脳に記録されているイメージと180度くらい違う口調でそんな事を言っていた。 あんまり違和感がありすぎて新手のスタ○ド使いの攻撃にでも会っているのか思ってしまうぐらいだ。
「お、おはよう、良いかどうかは知らんがとにかく目は覚めたぞ、うん、いろんな意味でな」
口調の端々をひきつらせながら答えてみる。
気が付けば額に汗がびっしょりだ、恐るべし違和感。
『それはそれは、満足していただけたようでこちらとしても感無量です』
まだ続けるのかお嬢様、やり直すって一切合切リセットしてから新たにニューゲーム系ですか?
もしかして自分のキャラ付けをここらで一新しようとでも画策してるのではあるまいか?、上条はそんな邪推をしてみる。
「御坂」
『はい?』
「変な物食べたか?」
ピシ、聞こえるはずの無い電話の向こうの何かにヒビの入る時の心理効果音が聞こえた。
『だぁぁぁッ!! せっかく人が優雅な朝を演出してやろうとしてるのにッ。 その一言で木っ端微塵、一撃粉砕っ!』
「よかった、いつもの御坂に戻った」
よっぽどいままでの状況が堪えたのだろう、上条は心底ホッとして息をついた。
『……アンタにそんな対応力を期待してた私がバカだったのかしら?』
「御坂にはですます調とかどこぞの令嬢みたいな口調は似合わないと思うぞ。
うん、普段の御坂がいいと思う。
っていうかマジでビビッタから勘弁してください」
朝のドッキリは心臓に悪いからな、と上条は美琴に聞こえないようにボソっと呟いた。
『普段の私……そ、そうよねー、私は私だもんね、あ、あははは(そうかー普段の私がいいのかー)』
美琴は乾いた笑いの後にごにょごにょと小声でなにやら言ってるが本当に「ごにょごにょ」としか聞き取れない。
「御坂、質問してもいいか?」
上条が携帯電話を右肩とアゴではさんでキッチンの冷蔵庫の扉を開けながら言う。
『なによ?』
「お前、なんだってこんな朝っぱらから電話を?」
冷蔵庫の中身はミネラルウォーターとぷっちんプリンとコンビニのいなり寿司とかについてくる紅しょうが(パック)だけ。
わびしいにも程がある――。
『なんでって、アンタが昨日会った時、起きれないから起こしてくれーって言ったんじゃないの、感謝の言葉があってもいいわよ?』
「言ったっけ?そんなこと」
とりあえずぷっちんプリンとミネラルウォーターを取り出して足で乱暴に冷蔵庫の扉を閉める。
『言った。 細部は違うけど私はそう解釈した。 だから持ち前の親切スキルを全開にして朝も早くからモーニングコール
なわけよ、アンタ感謝しないとそのうち、とちくるったツインテールとかに刺されるわよ。
あ、別に電話代とかは大丈夫、ノープログレムよ。 良かったわねェ、私とペア登録しておいて。
登録者間での通話、及び通信は無料、さらに料金プラン自体もかなりの割安、こんなおいしい話は無いわよね。
(中略)
そういえば、アンタあの充電器ちゃんと使ってる? 全機種対応してるんだから使わないと邪魔になるわよ、いや飾れって言って
るんじゃないのよ? ただそんな場所の取る物なら使わないといけないんじゃないかーって思ったわけよ。 ねぇ?
ちょっと、ねぇ、聞いてる?』
話し出したら止まらない。 まさにマシンガントーク、この言葉を考えた人に賛辞を贈りたい。
パチパチ。
とりあえず適当に「聞いてる」とだけ返して、ミネラルウォーターのキャップを捻って直接口をつけグビグビと水分を補給する。
「ぷはぁ……はぁ生き返る」
『はっ? 生き返る? てかアンタいまなんか飲んでたでしょ。 人が話してるときはしっかりと相手の目を見て話を聞くものよ。
いや電話じゃ目は見えないけど雰囲気としての話よ。 ッて言ってる側からぷっちーん♪とか言ってプリン食べるなぁぁ』
どうやら上条が呟いた「ぷっちーんぷりん♪」が聞こえてたようだ。
お嬢様の機嫌は10ぐらい下がったと推測する。
『私よりプリンが大事なのかアンタはッ。 どんな男尊女卑よ、まったく……。
大体朝からプリンってどんな食生活してんのよ、栄養失調で倒れるわよアンタ。え、冷蔵庫の中にそれしか入ってなかった?
あとは紅しょうが? よくそんなので持つわね……。 もしかして自炊とかしてないの?』
「いや、自炊してるんだけど昨日きっちりと使いきっちまってその上完食したからこの有様だ、おかげさまで学校終わるまで持つかどうか」
今日びの男子高校生が朝にぷっちんプリン1個と水では到底問題がある食生活だ。 カロリー的にも、そして文章的にも。
そしてフラグの神様はそんな上条にある試練を課した、後になって思えばこの時既にフラグは立っていたのかも知れない。
『学校!? 今日って23日でしょ、とっくに冬休みに入ってるんじゃないわけ? あ、もしかして補習かしら』
「補習じゃねぇし普通に終業式なんだよ今日が。 昼前には帰れるのが救いと言えば救いだがな。 うちの学校ぐらいだぞ多分」
終業式―、この場合は2学期の、と付け加えるべきだが。 学生達にとっては冬休みの前に行なわれる最終試練といった所だろうか。
試練といっても大した試練ではないけど、そう、ただ心底ダルイだけだから。 通信簿の数字の大小で一喜一憂するような人間でも無い。
ただ不幸なことに上条当麻の通う高校では22日で終業している他の学校と違って何故か本日行なうことになっていた。
ちなみに世間一般の人々は天皇誕生日とかいう祝日であり、美琴の通う常盤台中学もだが上条より一日早い冬休みの初日のはずなのだ。
代わりに冬休みの期間が一日増えてるのでトータルでは変わっていないけど、何か損した気分になるのはなんでだろうか。
『ねぇ、その終業式って正確には何時に終わるものなの?』
「は?」
『だ~から、アンタは何時に学校を出て来るの?って聞いてんのよッ」
いきなり何を言い出すんだろう、このお嬢様は、と思いながらも上条当麻の頭では終業式のシミュレーションが行なわれる。
上条当麻の担任である月詠小萌のHRから始まってハゲがまぶしい校長の長い話を聞く終業式。
そして再び教室に戻って小萌せんせーから通信簿とか冬休みの心構えとか補修の通知とかを戴いて解散といってところだろう。
「え~と多分11時半ぐらいかな、遅くても12時には帰り始めると思うぞ、でお前何―」
『別に……。ただなんとなくよ、なんとなく。』
「ヲイ!」
『本当に何も企んでなんか無いってばッ―あ、まず』
携帯電話のスピーカーからは少し遠くから『お姉様、そろそろ時間ですわよ』とか聞こえる。 大方ルームメイトの白井黒子だろう。
(そういえばもう結構長い時間話してるよな、俺ら……)
『そろそろ朝食の時間みたいだから一旦切るけど、アンタ学校終わったら寄り道せずにいつも通りに帰りなさいよ、絶対に」
美琴は言うだけ言って回線を切ってしまった。
「なんなんだ、一体……」
朝食とか言っていたし、ふと壁に掛かった時計を見れば、確かにそんな時間だ。
プリンの容器を壁際のゴミ箱へと投げ入れ、ハンガーに掛かった学生服を手に取り袖を通す。
本当に何も入っていないぺらっぺらな学生鞄を手に取り、玄関に向かう。
爪先をとんとんと地面に打ち付けてスニーカーを履き鉄製のドアを開いて部屋を出た。
「補習じゃねぇし普通に終業式なんだよ今日が。 昼前には帰れるのが救いと言えば救いだがな。 うちの学校ぐらいだぞ多分」
終業式―、この場合は2学期の、と付け加えるべきだが。 学生達にとっては冬休みの前に行なわれる最終試練といった所だろうか。
試練といっても大した試練ではないけど、そう、ただ心底ダルイだけだから。 通信簿の数字の大小で一喜一憂するような人間でも無い。
ただ不幸なことに上条当麻の通う高校では22日で終業している他の学校と違って何故か本日行なうことになっていた。
ちなみに世間一般の人々は天皇誕生日とかいう祝日であり、美琴の通う常盤台中学もだが上条より一日早い冬休みの初日のはずなのだ。
代わりに冬休みの期間が一日増えてるのでトータルでは変わっていないけど、何か損した気分になるのはなんでだろうか。
『ねぇ、その終業式って正確には何時に終わるものなの?』
「は?」
『だ~から、アンタは何時に学校を出て来るの?って聞いてんのよッ」
いきなり何を言い出すんだろう、このお嬢様は、と思いながらも上条当麻の頭では終業式のシミュレーションが行なわれる。
上条当麻の担任である月詠小萌のHRから始まってハゲがまぶしい校長の長い話を聞く終業式。
そして再び教室に戻って小萌せんせーから通信簿とか冬休みの心構えとか補修の通知とかを戴いて解散といってところだろう。
「え~と多分11時半ぐらいかな、遅くても12時には帰り始めると思うぞ、でお前何―」
『別に……。ただなんとなくよ、なんとなく。』
「ヲイ!」
『本当に何も企んでなんか無いってばッ―あ、まず』
携帯電話のスピーカーからは少し遠くから『お姉様、そろそろ時間ですわよ』とか聞こえる。 大方ルームメイトの白井黒子だろう。
(そういえばもう結構長い時間話してるよな、俺ら……)
『そろそろ朝食の時間みたいだから一旦切るけど、アンタ学校終わったら寄り道せずにいつも通りに帰りなさいよ、絶対に」
美琴は言うだけ言って回線を切ってしまった。
「なんなんだ、一体……」
朝食とか言っていたし、ふと壁に掛かった時計を見れば、確かにそんな時間だ。
プリンの容器を壁際のゴミ箱へと投げ入れ、ハンガーに掛かった学生服を手に取り袖を通す。
本当に何も入っていないぺらっぺらな学生鞄を手に取り、玄関に向かう。
爪先をとんとんと地面に打ち付けてスニーカーを履き鉄製のドアを開いて部屋を出た。
12月23日―快晴、気温は少し肌寒い程度。 学生服の下に重ね着をしてるからその辺は大丈夫だ。
大きく息を吸い込んで、
「いい天気だ、こんな日は叫びたくなるな……アー、マジダルイデスヨー!(マジデー、マジデー、マジデー←やまびこ)」
元気一杯にネガティブな叫びを発し上条当麻は歩き出した。
大きく息を吸い込んで、
「いい天気だ、こんな日は叫びたくなるな……アー、マジダルイデスヨー!(マジデー、マジデー、マジデー←やまびこ)」
元気一杯にネガティブな叫びを発し上条当麻は歩き出した。
上条当麻の波乱に満ちた一日が開幕の合図を告げ、その幕が開かれた瞬間だった。
[12月23日―AM7:30]
[12月23日―AM7:30]