[4] Railgun01―土御門舞夏の料理のすすめ『恋のレシピ伝授します』
ふんふふ~んふ~ん♪
そうとしか聞こえないようなご機嫌な鼻歌。
その発生源は常盤台中学女子寮の厨房をせわしなく動いているメイド服に身を包んだ14、15歳くらいの女の子。
少女は別に常盤台中学の生徒というわけではない、その身を包むメイド服が示すとおりの家政婦の卵なのだ。
繚乱家政女学校―、全国から一流のメイドを目指すツワモノ達が集うエリート校。
土御門舞夏はその学校に在学しているメイド見習いの生徒だ。
じゃあなんでここにいるのかと説明すれば実に一言で済ますことができる、つまりは実地研修。
一定の試験を突破したエリートメイド見習いだけが他の学校などあらゆる場所へと出向することが許されているのだ。
この場合は彼女の研修先が名門常盤台中学の女子寮だったわけであるわけで今はお嬢様方の朝食も終わってその後片付けに奔走
している真っ最中。
しかしソレも慣れたもので鼻歌なんか口ずさんじゃったりなんかしている実に余裕だ。
汚れた皿を水を張ったシンクの中へと放り込んで皿の形状ごとに区分けをすると透明な水の中に
きっちりと分別された皿が所狭しと並ぶ。
[なんだか手を繋ぎたくなる洗剤]とマジックで書かれた緑色のプラスチック容器をぎゅー、っと絞って右手に持つ
オレンジと青二色のスポンジへと浸透させると丁度、舞夏の鼻歌が一巡して再びイントロの部分へと突入した。
延々と永久ループの様だ、残像すら残りそうなスピードで水中の皿を掴んでスポンジで一拭き、流し台の上へと積み上げる。
気分が良くなったのか、三巡目ともなると鼻歌はいつの間にか歌詞付きにパワーアップして、ますます舞夏の手の速度が
上がって手元が見えなくなる。
「さぁさ ちょっと 寄ってらっしゃい♪ まいかまてぃっく♪
あんな事件、こんな事件、学校に秘密♪ なんじゃこりゃ♪ びっくらこいた♪
メイドの象徴♪ 奉仕でもいい、迫って欲しいの♪ (Hなのはいけないとおもうぞー)
そうとしか聞こえないようなご機嫌な鼻歌。
その発生源は常盤台中学女子寮の厨房をせわしなく動いているメイド服に身を包んだ14、15歳くらいの女の子。
少女は別に常盤台中学の生徒というわけではない、その身を包むメイド服が示すとおりの家政婦の卵なのだ。
繚乱家政女学校―、全国から一流のメイドを目指すツワモノ達が集うエリート校。
土御門舞夏はその学校に在学しているメイド見習いの生徒だ。
じゃあなんでここにいるのかと説明すれば実に一言で済ますことができる、つまりは実地研修。
一定の試験を突破したエリートメイド見習いだけが他の学校などあらゆる場所へと出向することが許されているのだ。
この場合は彼女の研修先が名門常盤台中学の女子寮だったわけであるわけで今はお嬢様方の朝食も終わってその後片付けに奔走
している真っ最中。
しかしソレも慣れたもので鼻歌なんか口ずさんじゃったりなんかしている実に余裕だ。
汚れた皿を水を張ったシンクの中へと放り込んで皿の形状ごとに区分けをすると透明な水の中に
きっちりと分別された皿が所狭しと並ぶ。
[なんだか手を繋ぎたくなる洗剤]とマジックで書かれた緑色のプラスチック容器をぎゅー、っと絞って右手に持つ
オレンジと青二色のスポンジへと浸透させると丁度、舞夏の鼻歌が一巡して再びイントロの部分へと突入した。
延々と永久ループの様だ、残像すら残りそうなスピードで水中の皿を掴んでスポンジで一拭き、流し台の上へと積み上げる。
気分が良くなったのか、三巡目ともなると鼻歌はいつの間にか歌詞付きにパワーアップして、ますます舞夏の手の速度が
上がって手元が見えなくなる。
「さぁさ ちょっと 寄ってらっしゃい♪ まいかまてぃっく♪
あんな事件、こんな事件、学校に秘密♪ なんじゃこりゃ♪ びっくらこいた♪
メイドの象徴♪ 奉仕でもいい、迫って欲しいの♪ (Hなのはいけないとおもうぞー)
見習いメイド ロボに乗ってる♪ ああ、まいかさんを知ってるかい?♪
将来有望 料理絶品♪ みんなが まいかを呼んでるぅ♪
将来有望 料理絶品♪ みんなが まいかを呼んでるぅ♪
もっともっと出番をくれ♪ まいかまてぃっく♪ 10巻も11巻も出番は無いし♪ 待ってました こっからが勝負♪
13巻に期待 さぁいっしょに♪ まいかまてぃっく ラヴー♪」
13巻に期待 さぁいっしょに♪ まいかまてぃっく ラヴー♪」
がちゃん、ざぱー。 洗い終えた食器を何枚も重ねてシンクから引っ張り上げて、ぶんぶんと振り水を切り流し台へ置く。
同じような動作を繰り返して残りの皿も水を切ると水の中には皿がなくなっていた。
ほとんど歌ってる間に高速で終わらしたのである、恐るべし繚乱家政女学校。
今度は白い布を取り出してキュキュと音をさせ皿の水気を取り背後の調理台の上へと置き、手元の見えない速度で白い塔を築き、
最後の一枚を吹き終わった後、土御門舞夏は背後を振り返らずに口を開いた。
「御坂御坂、何か私に用なのかー?」
厨房の入り口の柱に隠れるようにして舞夏の仕事を観察していた美琴がびくッと肩を震わせて驚愕の表情を浮かべた。
「土御門、アンタは後ろに目でもついてんのかしら? よくわかったわね」
心底驚いた、といった感じに美琴。
「御坂の気配はわかりやすいんだぞー、自分で気づいてないかもだけどなー」
大したことないぞー、とメイド服の袖を腕まくりしてシンクの水の中へ手を突っ込んでシンクに溜まった水を抜き舞夏も答える。
(ずっと待っていたくせに素直じゃないなー、御坂らしいけどなー――)そう思っていても口には出さない。
本来お客さんである常盤台中学の生徒の美琴に対してタメ口を聞くのは減点ものなのだが彼女は舞夏がメイド口調で話しかけるのを
嫌っているので彼女の前ではいつも素の言葉で話すことにしている。 舞夏自身も楽だし。
実はお客さん以外にはいっつもこの調子ではあるのだが学校には秘密だ。
水に濡れた手をメイド服のポケットから取り出した青いフェイスタオルで拭きながら調理台の下から背もたれの無い椅子を取り出して
美琴に勧める。
美琴は遠慮する仕草を見せていたがしつこく勧める舞夏に美琴の方が折れて椅子に腰を下ろしたのを満足そうに見て舞夏は
拭き終わった食器を食器棚へと仕舞い込み、いきがけの駄賃とばかりに食器棚からコーヒーカップを二つばかり頂戴すると、
「御坂御坂ー、コーヒーでいいかー?それとも紅茶かー? 今日はいいセイロンが入ってるぞー」
と所在なさげにかしこまる美琴に聞く。
同じような動作を繰り返して残りの皿も水を切ると水の中には皿がなくなっていた。
ほとんど歌ってる間に高速で終わらしたのである、恐るべし繚乱家政女学校。
今度は白い布を取り出してキュキュと音をさせ皿の水気を取り背後の調理台の上へと置き、手元の見えない速度で白い塔を築き、
最後の一枚を吹き終わった後、土御門舞夏は背後を振り返らずに口を開いた。
「御坂御坂、何か私に用なのかー?」
厨房の入り口の柱に隠れるようにして舞夏の仕事を観察していた美琴がびくッと肩を震わせて驚愕の表情を浮かべた。
「土御門、アンタは後ろに目でもついてんのかしら? よくわかったわね」
心底驚いた、といった感じに美琴。
「御坂の気配はわかりやすいんだぞー、自分で気づいてないかもだけどなー」
大したことないぞー、とメイド服の袖を腕まくりしてシンクの水の中へ手を突っ込んでシンクに溜まった水を抜き舞夏も答える。
(ずっと待っていたくせに素直じゃないなー、御坂らしいけどなー――)そう思っていても口には出さない。
本来お客さんである常盤台中学の生徒の美琴に対してタメ口を聞くのは減点ものなのだが彼女は舞夏がメイド口調で話しかけるのを
嫌っているので彼女の前ではいつも素の言葉で話すことにしている。 舞夏自身も楽だし。
実はお客さん以外にはいっつもこの調子ではあるのだが学校には秘密だ。
水に濡れた手をメイド服のポケットから取り出した青いフェイスタオルで拭きながら調理台の下から背もたれの無い椅子を取り出して
美琴に勧める。
美琴は遠慮する仕草を見せていたがしつこく勧める舞夏に美琴の方が折れて椅子に腰を下ろしたのを満足そうに見て舞夏は
拭き終わった食器を食器棚へと仕舞い込み、いきがけの駄賃とばかりに食器棚からコーヒーカップを二つばかり頂戴すると、
「御坂御坂ー、コーヒーでいいかー?それとも紅茶かー? 今日はいいセイロンが入ってるぞー」
と所在なさげにかしこまる美琴に聞く。
戸棚を探してコーヒー豆を取り出して計量カップで一人分豆をすくい取りコーヒーメーカーのミルへと落としミルのスイッチを押すと
がりがりがり、と言う音がしてコーヒー豆が粉末状へとすり潰され、コーヒー豆独特の香ばしい匂いが厨房に広がる。
「んじゃ、ご馳走になるとするわ、私は紅茶で。 セイロンはあまり好きじゃないから普通にオレンジペコ頂戴、あっ高級なのとか
趣味じゃないしティーパックのでいいわよ」
かしこまっても仕方無いことに気づいたのか美琴の雰囲気は普段通りのものに戻っていた。
「御坂の嗜好は庶民派だなー、まあ楽でいいけどなー」
別の戸棚からオレンジペコのティーパックを取り出して庶民派お嬢様のご希望のオレンジペコを作り美琴の前へ置き自分も
椅子を取り出して舞夏はそんな事を言った。
「で、御坂御坂ー、何か私に用事があるんだろー? 本来メイドに休憩や休日の類は無いけど今なら自主的に休憩中だぞー、
お茶の相手をしてくれるなら、ついでに話を聞いてやらなくも無いぞー」
ズズズズズ、手に持ったコーヒーカップを傾けてブラックのコーヒーを飲み、「はぁ」と深いため息をついて安堵の表情を浮かべる舞夏。
美琴はといえばオレンジペコのカップで口元を隠してなんだかごにょごにょと言いにくそうな様子。
「べ、べつに用事ってわけじゃ……」
キュピーン―。 舞夏の目が怪しく光った。
美琴は素っ気無く答えたがその際に生じた微妙な変化を土御門舞夏は決して見逃さない。
一流のメイドとは優れた洞察眼を持つ者なのだ、本人よりも主人の側に、頭のどこかでメイドの神様が有り難いお言葉を下さった。
がりがりがり、と言う音がしてコーヒー豆が粉末状へとすり潰され、コーヒー豆独特の香ばしい匂いが厨房に広がる。
「んじゃ、ご馳走になるとするわ、私は紅茶で。 セイロンはあまり好きじゃないから普通にオレンジペコ頂戴、あっ高級なのとか
趣味じゃないしティーパックのでいいわよ」
かしこまっても仕方無いことに気づいたのか美琴の雰囲気は普段通りのものに戻っていた。
「御坂の嗜好は庶民派だなー、まあ楽でいいけどなー」
別の戸棚からオレンジペコのティーパックを取り出して庶民派お嬢様のご希望のオレンジペコを作り美琴の前へ置き自分も
椅子を取り出して舞夏はそんな事を言った。
「で、御坂御坂ー、何か私に用事があるんだろー? 本来メイドに休憩や休日の類は無いけど今なら自主的に休憩中だぞー、
お茶の相手をしてくれるなら、ついでに話を聞いてやらなくも無いぞー」
ズズズズズ、手に持ったコーヒーカップを傾けてブラックのコーヒーを飲み、「はぁ」と深いため息をついて安堵の表情を浮かべる舞夏。
美琴はといえばオレンジペコのカップで口元を隠してなんだかごにょごにょと言いにくそうな様子。
「べ、べつに用事ってわけじゃ……」
キュピーン―。 舞夏の目が怪しく光った。
美琴は素っ気無く答えたがその際に生じた微妙な変化を土御門舞夏は決して見逃さない。
一流のメイドとは優れた洞察眼を持つ者なのだ、本人よりも主人の側に、頭のどこかでメイドの神様が有り難いお言葉を下さった。
分析開始――、何も無い様子を装うにしては頬の紅潮が見られる、視線も泳ぎがち、まるで心ここに在らずといった感じだ。
全体的にソワソワしてしきりに時計を気にしている、恐らく後に予定でもあるのだろう、それも大事な用事。
決まりだ、これは――。
「恋か」
ぽつりと呟く舞夏。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!? なんで私があの馬鹿にそ、その恋なんて」
舞夏の尋問テクニックとは知らずついつい反応してしまう純情乙女一名。
「御坂御坂ー。相手は中学生かー?」
「はっ? なんでアイツが中学生なのよ」
かかった――。
可憐なメイドさんの表情の御坂美琴からの死角半分が怪しく歪み、見るものを不安にさせるような邪悪な笑みが浮かんだ。
もちろん美琴から見える方の半分はキチンと平静を装ったまま、ひたすら器用な特技だが、きっちり半分半分で違う表情を作っている。
「御坂御坂ー。 今日はこれから予定とかあるのかー? もしなければ―」
「よ、予定!? あ、あることはあるわよ、そのチョット特殊なのが一個」
またしても、かかった――。
半分づつ逆ベクトルの笑顔を浮かべ、舞夏は返事を返す。
「そうかー、今日は23日だもんなー。 今日誘っとかないともうチャンスないもんなー」
「あ、そうね、うん……」
(引っ掛けのつもりだったのに随分とベタな反応だなー、まあ御坂は嘘下手だからなー)
舞夏の誘導尋問的な手腕によって、目の前の少女の悩みが恋愛関係な事はすでに明白だ。
随分とおもしろそうな話題を提供してくれる、と舞夏は内心喜んでいた。
もちろん美琴が舞夏に相談を持ちかけてくれた事自体も正直悪い気はしないし、相談にも乗ろうと思う。
御坂美琴はよくも悪くも常盤台中学の中で有名すぎる、誰かに相談しようものならすぐに噂になってしまうだろう。
ルームメイトの白井黒子はちょっぴり百合の気がある、いわゆるお姉様大好き、と言うヤツだ。
精神年齢はおそらく美琴より上なのだろうがいかんせん恋愛ごとに関する相談相手となると舞夏的には心の通信簿に
激しく0点と書かざるを得ない。
いや0点通り越してバッテンだな――。
「御坂も家事とか出来ないといけないなー、ツンデレキャラが料理ベタなのはある意味お約束なんだけど、実際問題アピールできる
ポイントは多ければ多いほどいいと思うぞー、料理、洗濯、あと愛想、掃除も出来ればなお良し」
常盤台中学女子寮の厨房で超能力者(レベル5)様が真剣にメモを取ってこくこく頷いた。
メモもペンもなんだかファンシー系だった、これはきっと彼女の趣味だろう。
「男はなんだかんだ言って手料理という言葉に弱いのだぞー、例えどんなにへたっぴでぐちゃぐちゃだろうとなー。
一生懸命作ればきっとそれなりの結果は期待できるのだぞ、最高の隠し味は愛情って言うだろー?
まぁ常盤台中学の家庭科はいきなり懐石料理とか満干全席とかだからなー。
家庭的さをアピールするにはちょっとかけ離れてるなー」
こくこく、お嬢様が激しく同意といったように首を縦に振った。
ほろ苦い液体を喉に流し込んで舞夏は言葉を続ける。
「私もうちの兄貴の所に料理作りにいったりしててなー。 まあ兄貴と同じ学校の高校生なんだけどな。
たまにその隣の住人にもおすそ分けしてたりするんだが、それはもう気持ちよくなるぐらいにパクパクと食べてくれるなー、
それこそ、うちの兄貴と料理の取り合いになったりしてて見てる分にも飽きないなー」
お嬢様は本気と書いてマジと読むぐらいの真剣さでファンシーなメモ帳に文字を奔らせる。
かりかりかりかり、厨房にペンを走らせる音だけが響く。
舞夏が冗談で「ここテストにでるぞー」って言うと美琴はスカートのポケットからピンク色のマーカーを取り出して
「きゅー」っとマーキングする。
素直だ……。
実は彼女の兄貴とご飯争奪戦を繰り広げる少年というのが実は御坂美琴の想い人だったりもするのだが舞夏が知るわけも無い。
全体的にソワソワしてしきりに時計を気にしている、恐らく後に予定でもあるのだろう、それも大事な用事。
決まりだ、これは――。
「恋か」
ぽつりと呟く舞夏。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!? なんで私があの馬鹿にそ、その恋なんて」
舞夏の尋問テクニックとは知らずついつい反応してしまう純情乙女一名。
「御坂御坂ー。相手は中学生かー?」
「はっ? なんでアイツが中学生なのよ」
かかった――。
可憐なメイドさんの表情の御坂美琴からの死角半分が怪しく歪み、見るものを不安にさせるような邪悪な笑みが浮かんだ。
もちろん美琴から見える方の半分はキチンと平静を装ったまま、ひたすら器用な特技だが、きっちり半分半分で違う表情を作っている。
「御坂御坂ー。 今日はこれから予定とかあるのかー? もしなければ―」
「よ、予定!? あ、あることはあるわよ、そのチョット特殊なのが一個」
またしても、かかった――。
半分づつ逆ベクトルの笑顔を浮かべ、舞夏は返事を返す。
「そうかー、今日は23日だもんなー。 今日誘っとかないともうチャンスないもんなー」
「あ、そうね、うん……」
(引っ掛けのつもりだったのに随分とベタな反応だなー、まあ御坂は嘘下手だからなー)
舞夏の誘導尋問的な手腕によって、目の前の少女の悩みが恋愛関係な事はすでに明白だ。
随分とおもしろそうな話題を提供してくれる、と舞夏は内心喜んでいた。
もちろん美琴が舞夏に相談を持ちかけてくれた事自体も正直悪い気はしないし、相談にも乗ろうと思う。
御坂美琴はよくも悪くも常盤台中学の中で有名すぎる、誰かに相談しようものならすぐに噂になってしまうだろう。
ルームメイトの白井黒子はちょっぴり百合の気がある、いわゆるお姉様大好き、と言うヤツだ。
精神年齢はおそらく美琴より上なのだろうがいかんせん恋愛ごとに関する相談相手となると舞夏的には心の通信簿に
激しく0点と書かざるを得ない。
いや0点通り越してバッテンだな――。
「御坂も家事とか出来ないといけないなー、ツンデレキャラが料理ベタなのはある意味お約束なんだけど、実際問題アピールできる
ポイントは多ければ多いほどいいと思うぞー、料理、洗濯、あと愛想、掃除も出来ればなお良し」
常盤台中学女子寮の厨房で超能力者(レベル5)様が真剣にメモを取ってこくこく頷いた。
メモもペンもなんだかファンシー系だった、これはきっと彼女の趣味だろう。
「男はなんだかんだ言って手料理という言葉に弱いのだぞー、例えどんなにへたっぴでぐちゃぐちゃだろうとなー。
一生懸命作ればきっとそれなりの結果は期待できるのだぞ、最高の隠し味は愛情って言うだろー?
まぁ常盤台中学の家庭科はいきなり懐石料理とか満干全席とかだからなー。
家庭的さをアピールするにはちょっとかけ離れてるなー」
こくこく、お嬢様が激しく同意といったように首を縦に振った。
ほろ苦い液体を喉に流し込んで舞夏は言葉を続ける。
「私もうちの兄貴の所に料理作りにいったりしててなー。 まあ兄貴と同じ学校の高校生なんだけどな。
たまにその隣の住人にもおすそ分けしてたりするんだが、それはもう気持ちよくなるぐらいにパクパクと食べてくれるなー、
それこそ、うちの兄貴と料理の取り合いになったりしてて見てる分にも飽きないなー」
お嬢様は本気と書いてマジと読むぐらいの真剣さでファンシーなメモ帳に文字を奔らせる。
かりかりかりかり、厨房にペンを走らせる音だけが響く。
舞夏が冗談で「ここテストにでるぞー」って言うと美琴はスカートのポケットからピンク色のマーカーを取り出して
「きゅー」っとマーキングする。
素直だ……。
実は彼女の兄貴とご飯争奪戦を繰り広げる少年というのが実は御坂美琴の想い人だったりもするのだが舞夏が知るわけも無い。
「御坂御坂ー、得意な料理とかあったっけー」
舞夏の質問に美琴は少し戸惑いながら、「チーズフォンデュ……一応母親直伝」と小声で言ってきた。
「あははは、それはさすがに準備が大掛かりすぎるなー、寸胴鍋が必要だし、チーズが大量にいるなー」
舞夏のダメ出しに弱弱しく頷く美琴。
しょんぼりと肩が落ちている美琴を見て、言い過ぎたかも知れないと
「あ、ごめんよー御坂、そんなつもりじゃなかったんだけどなー、お詫びに舞夏式レシピの一つ、極上海老ピラフを伝授してやるぞー」
舞夏がすかさず入れるフォローに
「ま、まじで!? 是非教えて!」
舞夏の質問に美琴は少し戸惑いながら、「チーズフォンデュ……一応母親直伝」と小声で言ってきた。
「あははは、それはさすがに準備が大掛かりすぎるなー、寸胴鍋が必要だし、チーズが大量にいるなー」
舞夏のダメ出しに弱弱しく頷く美琴。
しょんぼりと肩が落ちている美琴を見て、言い過ぎたかも知れないと
「あ、ごめんよー御坂、そんなつもりじゃなかったんだけどなー、お詫びに舞夏式レシピの一つ、極上海老ピラフを伝授してやるぞー」
舞夏がすかさず入れるフォローに
「ま、まじで!? 是非教えて!」
詰め寄るように顔を近づけて瞳を輝かせる美琴に気圧され逆に舞夏の方ががビックリしてしまった。
(ほんの冗談のつもりだったんだけどなー)
「う、え、予想外の反応でびっくりだぞー、まあいいけど、まずお米を洗ってだな――」
「う、え、予想外の反応でびっくりだぞー、まあいいけど、まずお米を洗ってだな――」
5分後―。
門外不出のレシピをファンシーなメモ帳にしっかりと記録しオレンジペコの紅茶を飲み干し美琴は
「ありがとう、これでなんとかなりそうな気がしてきたわ」
と言って席を立った。
慌てて舞夏が「御坂ー、相談事あったんじゃないのかー?」と呼び止めたが彼女は、
「うん、もう解決した」と言って元気よく手を振って消えていった。
(なんだったんだ、一体)
その背中を見守っていた舞夏は突然現れた人物に後ろから声が掛けられた。
門外不出のレシピをファンシーなメモ帳にしっかりと記録しオレンジペコの紅茶を飲み干し美琴は
「ありがとう、これでなんとかなりそうな気がしてきたわ」
と言って席を立った。
慌てて舞夏が「御坂ー、相談事あったんじゃないのかー?」と呼び止めたが彼女は、
「うん、もう解決した」と言って元気よく手を振って消えていった。
(なんだったんだ、一体)
その背中を見守っていた舞夏は突然現れた人物に後ろから声が掛けられた。
「土御門、そろそろ昼食の仕込みに入るぞ」
ハスキーな女性の声。
「うはぁ、源蔵さん見てたのかー、全然気づかなかったぞー」
舞夏の背後にいつの間にか白いコックのような服装をした20台前半ぐらいの女性が立っていた。
彼女は通称:源蔵さん。
常盤台中学女子寮の食事を一手に引き受ける三ツ星レストランのシェフも真っ青な腕前の名料理人だ。
気風のいい江戸っ子気質の彼女はことあるごとに「源蔵じいちゃんは言っていた……」と亡くなったお爺さんの言葉を引用する癖がある。
なので源蔵さんだ。
彼女もそのニックネームを気に入っていて、本名の長ったらしい名前で呼ぶと逆にテフロン加工されたフライパン
で殴られるという噂すらあるぐらいだ。
だから誰も名前で呼ばない。
しかも舞夏の研修は彼女の監督下で行なわれる事になっている、機嫌は損ねないほうがいいのだ。
「あたいにもアレぐらいの時はあったもんさ、若さっていいねぇ。 源蔵じいちゃんは言っていたよ……。
『恋は当たって砕け』ってね。 どう思う?土御門」
「豪快な爺さんだなぁとしか思えないぞー」
舞夏の答えに源蔵さんは「あたいもそう思うよ、はははは」と大口開けて笑い飛ばし舞夏の背中をバンバンと叩いた。
隠れた美琴の気配はすぐわかってもこの人に関しては声を掛けれらるまで全く気づかなかった。
恐るべし、源蔵さん――。
「昼食はどうせ外食の連中がほとんどだから、軽く食べれるやつにしようか、海老ピラフとか」
戦慄する舞夏を他所にそう言うと彼女は大型の冷蔵庫を開けて食材を探し始めた。
(がんばるんだぞー、友人としてその恋の成功を……祈る)
偶然にも常盤台中学女子寮の昼食とかぶってしまったレシピを伝授した友人の恋の安否を祈りながら舞夏も仕事を再開するのだった。
テフロン加工したフライパンは痛いのだ。
[12月23日―AM9:00]
ハスキーな女性の声。
「うはぁ、源蔵さん見てたのかー、全然気づかなかったぞー」
舞夏の背後にいつの間にか白いコックのような服装をした20台前半ぐらいの女性が立っていた。
彼女は通称:源蔵さん。
常盤台中学女子寮の食事を一手に引き受ける三ツ星レストランのシェフも真っ青な腕前の名料理人だ。
気風のいい江戸っ子気質の彼女はことあるごとに「源蔵じいちゃんは言っていた……」と亡くなったお爺さんの言葉を引用する癖がある。
なので源蔵さんだ。
彼女もそのニックネームを気に入っていて、本名の長ったらしい名前で呼ぶと逆にテフロン加工されたフライパン
で殴られるという噂すらあるぐらいだ。
だから誰も名前で呼ばない。
しかも舞夏の研修は彼女の監督下で行なわれる事になっている、機嫌は損ねないほうがいいのだ。
「あたいにもアレぐらいの時はあったもんさ、若さっていいねぇ。 源蔵じいちゃんは言っていたよ……。
『恋は当たって砕け』ってね。 どう思う?土御門」
「豪快な爺さんだなぁとしか思えないぞー」
舞夏の答えに源蔵さんは「あたいもそう思うよ、はははは」と大口開けて笑い飛ばし舞夏の背中をバンバンと叩いた。
隠れた美琴の気配はすぐわかってもこの人に関しては声を掛けれらるまで全く気づかなかった。
恐るべし、源蔵さん――。
「昼食はどうせ外食の連中がほとんどだから、軽く食べれるやつにしようか、海老ピラフとか」
戦慄する舞夏を他所にそう言うと彼女は大型の冷蔵庫を開けて食材を探し始めた。
(がんばるんだぞー、友人としてその恋の成功を……祈る)
偶然にも常盤台中学女子寮の昼食とかぶってしまったレシピを伝授した友人の恋の安否を祈りながら舞夏も仕事を再開するのだった。
テフロン加工したフライパンは痛いのだ。
[12月23日―AM9:00]