[5]Imagine Breaker03―上条当麻と校長と復活の茶色いポニーテール娘
『―であるから、皆さんにはわが校の生徒であると自覚を持って――』
500人を収納できるぐらいの大きさの上条当麻の通う学校の体育館では既に20分に渡って精神攻撃が続いていた。
その精神攻撃の影響で一人、また一人と貧血でも起こしたかのように生徒が体勢を崩して倒れ。
手慣れた様子で倒れた彼もしくは彼女達を運び出す保健委員の姿がまばらにちらつく。
まぁ、こんなの聞いてたら貧血の一つや二つ起こすよな――、と上条もいい加減うんざりした表情を浮かべながら理不尽な校長の
精神攻撃にただひたすら耐えていた。
いっそ壇上で熱く語り続けるハゲ頭も既に板についてきた校長先生のこの長話が超能力による超音波攻撃の類だったらなぁ、とか
あらぬ考えまで巡らせてしまうのも仕方が無いことだろう。
だが学園都市で能力を開発されているのは生徒の方であり、開発する側に属する校長先生は何の能力も持たない一般人である。
そんなごく普通の空気振動に対して彼の右手に宿るたった一つの力は彼の隣で長話なんて何するものぞとばかりに青髪ピアスの少年の
両耳に堂々と存在する只のコルク栓よりも無力だった。
(ずりぃよ……)
上条が若干どんよりと猫背気味になりつつ他のクラスメイトへと視線を動かせば黒髪も鮮やかな姫神と目が合った。
彼女は相変わらずどこを見てるのか分からないような視線をぼんやりと壇上へ向けていた。
「(姫神、よくこんな長いの平気だな?)」
と彼女の耳に口を寄せて小声で話しかける。
大丈夫、校長先生は話に夢中だし、小萌先生は背が低すぎてここまで見えない――。
彼女は上条に合わせて同じように上条の耳に口を寄せてくるが。
途端上条の耳に「ふぅ」と暖かい息が吹きかけられゾクゾクゾク、と上条の背筋がとかいろいろなところに電気が奔った。
「ゥァ!?」
思わず変な悲鳴まで上げてしまったので上条当麻の隣に立ってた茶髪ポニテの少女がそれに気づいて「にやり」と
怪しい笑みを浮かべていたりする。
(お前復活したのかよッ!?)
そして原因の黒髪少女はそんな上条を見て声を殺してクスクスと笑い顔。
気づけば他のクラスメイトもその様子に気づいたようで「ニヤニヤ」といった視線を注いでいるではないか、中にはあからさまに
「ヌッコロス」と殺気混じりのちょっと鋭い視線も含まれたりする。
多分男子の視線がアレで女子の視線がアレ。
(特に茶髪ポニテ、お前何人目はばからずにお腹抱えて笑ってんだよ、校長も気づけよ!! どう考えても目立つっての!)
壇上の校長先生はといえば長い長いお話のせいか大粒の汗を浮かべ「私が学生の時分には―」とか力説している。
もちろん誰も聞いていない。
500人を収納できるぐらいの大きさの上条当麻の通う学校の体育館では既に20分に渡って精神攻撃が続いていた。
その精神攻撃の影響で一人、また一人と貧血でも起こしたかのように生徒が体勢を崩して倒れ。
手慣れた様子で倒れた彼もしくは彼女達を運び出す保健委員の姿がまばらにちらつく。
まぁ、こんなの聞いてたら貧血の一つや二つ起こすよな――、と上条もいい加減うんざりした表情を浮かべながら理不尽な校長の
精神攻撃にただひたすら耐えていた。
いっそ壇上で熱く語り続けるハゲ頭も既に板についてきた校長先生のこの長話が超能力による超音波攻撃の類だったらなぁ、とか
あらぬ考えまで巡らせてしまうのも仕方が無いことだろう。
だが学園都市で能力を開発されているのは生徒の方であり、開発する側に属する校長先生は何の能力も持たない一般人である。
そんなごく普通の空気振動に対して彼の右手に宿るたった一つの力は彼の隣で長話なんて何するものぞとばかりに青髪ピアスの少年の
両耳に堂々と存在する只のコルク栓よりも無力だった。
(ずりぃよ……)
上条が若干どんよりと猫背気味になりつつ他のクラスメイトへと視線を動かせば黒髪も鮮やかな姫神と目が合った。
彼女は相変わらずどこを見てるのか分からないような視線をぼんやりと壇上へ向けていた。
「(姫神、よくこんな長いの平気だな?)」
と彼女の耳に口を寄せて小声で話しかける。
大丈夫、校長先生は話に夢中だし、小萌先生は背が低すぎてここまで見えない――。
彼女は上条に合わせて同じように上条の耳に口を寄せてくるが。
途端上条の耳に「ふぅ」と暖かい息が吹きかけられゾクゾクゾク、と上条の背筋がとかいろいろなところに電気が奔った。
「ゥァ!?」
思わず変な悲鳴まで上げてしまったので上条当麻の隣に立ってた茶髪ポニテの少女がそれに気づいて「にやり」と
怪しい笑みを浮かべていたりする。
(お前復活したのかよッ!?)
そして原因の黒髪少女はそんな上条を見て声を殺してクスクスと笑い顔。
気づけば他のクラスメイトもその様子に気づいたようで「ニヤニヤ」といった視線を注いでいるではないか、中にはあからさまに
「ヌッコロス」と殺気混じりのちょっと鋭い視線も含まれたりする。
多分男子の視線がアレで女子の視線がアレ。
(特に茶髪ポニテ、お前何人目はばからずにお腹抱えて笑ってんだよ、校長も気づけよ!! どう考えても目立つっての!)
壇上の校長先生はといえば長い長いお話のせいか大粒の汗を浮かべ「私が学生の時分には―」とか力説している。
もちろん誰も聞いていない。
『長期の休みだからといって、夜更かしや夜遊びに興じることが無いよう一層の勉学への精進を――』
校長のスピーチはさっきから延々と続いているが、果たして何人が耳を貸していることやら。
突然、トントン、と上条の肩が叩かれた。
上条が後ろを振り返ると青髪ピアスの少年が片方だけ耳栓を外して上条の耳元に口を寄せてきた。
(顔近いんだよ、近寄るな、息吹きかけるな、うざいんだよマジで!!)
全力でそれを拒否しようと両手に力を込めるが青髪ピアスの少年は「ならここからでええわ」と切って、
「(なぁなぁ、カミやん、姫神とか吹寄とか随分仲良さそうやねぇ、明日のクリスマスパレードはどっちが本命なんかな?
というかもう誘ったん?)」
とぎりぎり聞き取れるぐらいの小声で言って来た。
クリスマスパレード。
その単語が上条の記憶の引き出しからいくつかの情報を引き出す。
毎年12月24日、25日の両日に行なわれる学園都市の恒例行事。
大覇星祭のナイトパレードだけをもっとパワーアップさせて持ってきたといった感じだろうか。
こちらは大覇星祭の時と違って一般来場客は訪れない。完全に学生達主体の行事だ。
「(誘ってねぇよ、ていうかどうみたら仲良さそうに見えるんだよ」
「(おやぁ、さっき姫神の耳フゥで撃沈寸前だった上条先生は言うことが違いますなー。
この学校に姫神と吹寄のファンがどれだけ居ると思うとるんよカミやん、いまに刺されるで)」
ニヤニヤと品の良くない笑いを浮かべてひそひそと話しかけてくる青髪ピアスの少年。
壇上では校長先生の話はいよいよクライマックスを迎えようとして、身振り手振りが入り、ステージを縦横無尽に駆け回っている。
(いったい何の話なんだ、お、なんか華麗なコサックダンスを披露しだしたぞ、校長あんた一体何を伝えたいのだ?)
壇上の校長を完璧に無視して更に後方から乱入者があった。
室内なのにサングラスを外さないな、この男……。
もはや説明の必要も無いこの金髪サングラス、土御門。
「(しかしカミやん、実際問題だな姫神と吹寄は異様に競争率が激しいぜい、昨日は二人とも
二桁の男子から誘いがあったみたいだにゃー)」
上条の顔の前に指を突き出して「二桁」と言うところをやたらと強調するグラサン男。
「(結果は推して知るべしなんよ、見事全滅)」
肩を竦めて「駄目だこりゃ」といったジェスチャーをする青髪ピアス。
「(ふぅん、もてるんだなアイツら――)」
興味ねぇやとばかりに適当に返事をする上条。
その時、ガシッと上条の肩へ誰かの手が置かれた。
完全に不意打ちだったので上条の心臓がドッキーン!と大きく跳びあがった。
「(人の話を本人の聞こえる所でするんじゃないわよ、上条当麻。 私が誰に誘われようとそれを断ろうと関係ないでしょ)」
上条の耳元で吹寄の声がした、言葉に少し棘がある。
どうやら強引に場所を変わってもらったみたいだ。
後ろを見れば吹寄の勝気な瞳と本来の彼女の位置で「ゴメンネ」とジェスチャーをする大きなリボンの女子が見えた。
てか顔近いよ、吹寄さん――。
普通ならドキドキする場面だというのに上条当麻の心臓はバクバクしっぱなし。
ロマンス?なにそれ?食べれるといった感じで上条の顔には脂汗がダラダラと流れていたりする。
「(ど、どこから聞いてました、吹寄さんッ)」
「(ど、どこから聞いてたにゃー、吹寄ッ)」
「(ど、どっから聞いてたんよー、吹寄ッ)」
ドッキンドッキンバクバクドッキン、と激しい動悸を伝えてくる心臓の辺りを手で押さえながらクラスの三バカが
声を揃えて(小声)で言う。
死んだ、これは確実に死亡フラグですよね、もうね、俺この戦い終わったら結婚するんだ、あはは、レベルの死亡フラグですよ――。
もしくは戦場で自分の宝物を誰かに預けた後の兵士並。
「(姫神さんの耳ふぅ、ぐらいから聞いてたわよ。 貴様達は終業式ぐらい静かに過ごせないの?)」
「(私も。聞こえた)」
「わたしも聞こえたー!」
「(約一名声でけぇってッ、いやお前だよお前、自分を通り過ぎて更に後ろ見て誰のこと?みたいな顔すんじゃねぇよそこのポニー)」
いつの間にか会話の参加者が増えていき、終業式中だというのに三バカ+3のクリスマスパレードに向けた会議が始まってしまった。
当然校長先生の話は聞いていなかったのは言うまでも無い。
校長のスピーチはさっきから延々と続いているが、果たして何人が耳を貸していることやら。
突然、トントン、と上条の肩が叩かれた。
上条が後ろを振り返ると青髪ピアスの少年が片方だけ耳栓を外して上条の耳元に口を寄せてきた。
(顔近いんだよ、近寄るな、息吹きかけるな、うざいんだよマジで!!)
全力でそれを拒否しようと両手に力を込めるが青髪ピアスの少年は「ならここからでええわ」と切って、
「(なぁなぁ、カミやん、姫神とか吹寄とか随分仲良さそうやねぇ、明日のクリスマスパレードはどっちが本命なんかな?
というかもう誘ったん?)」
とぎりぎり聞き取れるぐらいの小声で言って来た。
クリスマスパレード。
その単語が上条の記憶の引き出しからいくつかの情報を引き出す。
毎年12月24日、25日の両日に行なわれる学園都市の恒例行事。
大覇星祭のナイトパレードだけをもっとパワーアップさせて持ってきたといった感じだろうか。
こちらは大覇星祭の時と違って一般来場客は訪れない。完全に学生達主体の行事だ。
「(誘ってねぇよ、ていうかどうみたら仲良さそうに見えるんだよ」
「(おやぁ、さっき姫神の耳フゥで撃沈寸前だった上条先生は言うことが違いますなー。
この学校に姫神と吹寄のファンがどれだけ居ると思うとるんよカミやん、いまに刺されるで)」
ニヤニヤと品の良くない笑いを浮かべてひそひそと話しかけてくる青髪ピアスの少年。
壇上では校長先生の話はいよいよクライマックスを迎えようとして、身振り手振りが入り、ステージを縦横無尽に駆け回っている。
(いったい何の話なんだ、お、なんか華麗なコサックダンスを披露しだしたぞ、校長あんた一体何を伝えたいのだ?)
壇上の校長を完璧に無視して更に後方から乱入者があった。
室内なのにサングラスを外さないな、この男……。
もはや説明の必要も無いこの金髪サングラス、土御門。
「(しかしカミやん、実際問題だな姫神と吹寄は異様に競争率が激しいぜい、昨日は二人とも
二桁の男子から誘いがあったみたいだにゃー)」
上条の顔の前に指を突き出して「二桁」と言うところをやたらと強調するグラサン男。
「(結果は推して知るべしなんよ、見事全滅)」
肩を竦めて「駄目だこりゃ」といったジェスチャーをする青髪ピアス。
「(ふぅん、もてるんだなアイツら――)」
興味ねぇやとばかりに適当に返事をする上条。
その時、ガシッと上条の肩へ誰かの手が置かれた。
完全に不意打ちだったので上条の心臓がドッキーン!と大きく跳びあがった。
「(人の話を本人の聞こえる所でするんじゃないわよ、上条当麻。 私が誰に誘われようとそれを断ろうと関係ないでしょ)」
上条の耳元で吹寄の声がした、言葉に少し棘がある。
どうやら強引に場所を変わってもらったみたいだ。
後ろを見れば吹寄の勝気な瞳と本来の彼女の位置で「ゴメンネ」とジェスチャーをする大きなリボンの女子が見えた。
てか顔近いよ、吹寄さん――。
普通ならドキドキする場面だというのに上条当麻の心臓はバクバクしっぱなし。
ロマンス?なにそれ?食べれるといった感じで上条の顔には脂汗がダラダラと流れていたりする。
「(ど、どこから聞いてました、吹寄さんッ)」
「(ど、どこから聞いてたにゃー、吹寄ッ)」
「(ど、どっから聞いてたんよー、吹寄ッ)」
ドッキンドッキンバクバクドッキン、と激しい動悸を伝えてくる心臓の辺りを手で押さえながらクラスの三バカが
声を揃えて(小声)で言う。
死んだ、これは確実に死亡フラグですよね、もうね、俺この戦い終わったら結婚するんだ、あはは、レベルの死亡フラグですよ――。
もしくは戦場で自分の宝物を誰かに預けた後の兵士並。
「(姫神さんの耳ふぅ、ぐらいから聞いてたわよ。 貴様達は終業式ぐらい静かに過ごせないの?)」
「(私も。聞こえた)」
「わたしも聞こえたー!」
「(約一名声でけぇってッ、いやお前だよお前、自分を通り過ぎて更に後ろ見て誰のこと?みたいな顔すんじゃねぇよそこのポニー)」
いつの間にか会話の参加者が増えていき、終業式中だというのに三バカ+3のクリスマスパレードに向けた会議が始まってしまった。
当然校長先生の話は聞いていなかったのは言うまでも無い。
『冬休み中、各々が目標を持って、そしてただ遊びほうけるといったことの無いように、日々精進の心で――』
壇上の校長先生の話はクライマックスに突入して楽に10分は経過している。
もとから聞く気も無いので後でどうゆう話だったと聞かれても「皇女が出てきて竜を倒して感動的だった」と答える自信がある。
試しに青髪ピアスに聞いてみたら見事に「空から女の子が降ってきてそこが一番印象的だったんよ」と返ってきた。
こいつも同レベルだな、と彼から視線を逸らしても仕方の無いことだろう。
式の半分以上の時間を使う校長の姿は、よく、あんなに話す事があるもんだ――、とおもわず感心してしまう。
『それでは、また新学期に一回り成長した皆さんと会えることを楽しみにしています』
あ、終わった――。
壇上の校長先生の話はクライマックスに突入して楽に10分は経過している。
もとから聞く気も無いので後でどうゆう話だったと聞かれても「皇女が出てきて竜を倒して感動的だった」と答える自信がある。
試しに青髪ピアスに聞いてみたら見事に「空から女の子が降ってきてそこが一番印象的だったんよ」と返ってきた。
こいつも同レベルだな、と彼から視線を逸らしても仕方の無いことだろう。
式の半分以上の時間を使う校長の姿は、よく、あんなに話す事があるもんだ――、とおもわず感心してしまう。
『それでは、また新学期に一回り成長した皆さんと会えることを楽しみにしています』
あ、終わった――。
クラスごとに分かれて教室に戻る途中土御門が上条の肩に手を廻してよっかかってきた。
「カミやん、帰りのHR終わったら帰れるぜい、今日は予定とかあるのかにゃー?」
予定――。
上条の脳裏に一人の少女の顔が浮かぶ。
(そういえば朝になんか美琴が言ってた気が……寄り道せずに帰れとかなんとか。
怒らせるとアイツ恐いからなぁ――、断っておくか?一応、[超電磁砲](レールガン)とか撃たれたらたまらんし)
学園都市に7人しかいない災害級の能力者の必殺技を喰らって「たまらんし」で済むのも多分彼ぐらいである。
ほら、彼は自覚無いですから、自分がどれだけ特異な存在かの自覚が。
ここはスルーでお願いします。
「ワリィ、一応寄り道は無しの方向で―」
というわけで上条は友情と命を天秤に掛け後者を選択した。
「カミやん、さてはコレかにゃ?」
断ろうとした上条の声を遮って小指を立てた左手を上条の顔の前にちらつかせる土御門。
「ちっ、違ぇよッ」
「んじゃこれやね」
と青髪ピアスは親指を立てる。
「それきっと違う。きっとコレ……」
姫神、それはなんだ?フォークボールのサインか?――。
「はんッ、これでしょこれ」
お前もか吹寄……ああ、あったなぁそれ、確かグーとチョキとパーが一体化されてて無敵とか言うんだろ、それ――。
「これしかないっしょッ!」
どっから沸いた越川ァ!!もうなんだか面白い顔されても伝える言葉がねぇよ!――。
いろいろと突っ込みたかったが纏めてみた。
「それ全部違うから」
と力なく呟く上条の言葉は
「さぁ、カミやん楽しい尋問の時間やねぇ、捕虜の扱いは条約に則ってやるから安心していいんよ」
「カミやんには自由に息を吸う権利、自由に欠伸をする権利、自由に背中を掻く権利の三つがあるんだにゃー、他は無い」
二人の捕縛者の声に遮られてしまい。
「弁護士を呼んでくれ……でなけりゃ黙秘権を行使します」
と土御門と青髪ピアスに完全に捕獲されクラスの三バカ(合体)となった上条は深い深い溜息をつくのだった。
[12月23日―AM10:00]
「カミやん、帰りのHR終わったら帰れるぜい、今日は予定とかあるのかにゃー?」
予定――。
上条の脳裏に一人の少女の顔が浮かぶ。
(そういえば朝になんか美琴が言ってた気が……寄り道せずに帰れとかなんとか。
怒らせるとアイツ恐いからなぁ――、断っておくか?一応、[超電磁砲](レールガン)とか撃たれたらたまらんし)
学園都市に7人しかいない災害級の能力者の必殺技を喰らって「たまらんし」で済むのも多分彼ぐらいである。
ほら、彼は自覚無いですから、自分がどれだけ特異な存在かの自覚が。
ここはスルーでお願いします。
「ワリィ、一応寄り道は無しの方向で―」
というわけで上条は友情と命を天秤に掛け後者を選択した。
「カミやん、さてはコレかにゃ?」
断ろうとした上条の声を遮って小指を立てた左手を上条の顔の前にちらつかせる土御門。
「ちっ、違ぇよッ」
「んじゃこれやね」
と青髪ピアスは親指を立てる。
「それきっと違う。きっとコレ……」
姫神、それはなんだ?フォークボールのサインか?――。
「はんッ、これでしょこれ」
お前もか吹寄……ああ、あったなぁそれ、確かグーとチョキとパーが一体化されてて無敵とか言うんだろ、それ――。
「これしかないっしょッ!」
どっから沸いた越川ァ!!もうなんだか面白い顔されても伝える言葉がねぇよ!――。
いろいろと突っ込みたかったが纏めてみた。
「それ全部違うから」
と力なく呟く上条の言葉は
「さぁ、カミやん楽しい尋問の時間やねぇ、捕虜の扱いは条約に則ってやるから安心していいんよ」
「カミやんには自由に息を吸う権利、自由に欠伸をする権利、自由に背中を掻く権利の三つがあるんだにゃー、他は無い」
二人の捕縛者の声に遮られてしまい。
「弁護士を呼んでくれ……でなけりゃ黙秘権を行使します」
と土御門と青髪ピアスに完全に捕獲されクラスの三バカ(合体)となった上条は深い深い溜息をつくのだった。
[12月23日―AM10:00]