とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

第二幕-3

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[12]blank girl02―幕間 洗脳能力(マリオネッテ)と 操り人形(マリオネット)

 様々な研究施設が立ち並ぶ実験区画。外と30年は差があるといわれる程の超技術を作り出す一端を担っている学園都市の屋台骨。
 その性格上普段から出入りする人間は限られている。通常は研究者か警邏で回ってくる警備員(アンチスキル)の二通り。
 例外として実験に協力する能力者の出入りが無いことも無いがそれなら協力する研究機関から発行された偽造不可能なIDパスを
首からぶら下げたりして掲示する必要がある。
 だが30半ば過ぎ、やや恰幅のいい警備員(アンチスキル)の目の前を堂々と通り過ぎる二人を見る限りIDパスの類は見受けられない。
 180センチ前半、黒い髪を額の真ん中で半分に分け、白い学生服を着た少年。
 そのやや後ろに続くのは燃えるような赤い髪をしたショートカットの少女。
 しかも少女の着ている赤いブレザータイプの制服は中年の警備員(アンチスキル)が平時に勤めている中学校の物だ。
 流石に生徒全ての顔と名前を把握しているわけでも無いがそれでも自分の学校の生徒だというのならなおさら放って置けない。
 中年の警備員(アンチスキル)は二人に声をかけた。
「君達、ここは学生の立ち入りは禁止されている。実験の協力者だと言うのなら協力機関から発行されるIDパスを見せてもらえるか?」
 そこで中年の警備員(アンチスキル)は白い学生服の少年の左腕にある緑色の腕章に気づき、更に続けた。
「風紀委員(ジャッジメント)か?たとえ風紀委員(ジャッジメント)でも緊急時以外はこの区画に立ち入る事は出来ない」
 中年の警備員(アンチスキル)はIDを見せろ、と右手を彼らに向けてその行く手を阻む。
 ただ白い学生服の少年は中年の警備員(アンチスキル)よりも背が高いので下から見上げる形になってしまう。
「――」
 少年が小さく何か呟いたが声が小さくてよく聞こえなかった。中年の警備員(アンチスキル)は後ろの少女へと視線を動かし、
「それに後ろの子は風紀委員(ジャッジメント)では無いだろう?」
 と、白い学生服の少年に質問する。背の高い少年の後ろに控えた少女は無言で立ち尽くしていた。
 少年は面倒くさそうに左手をポケットから抜き放ち中年の警備員(アンチスキル)へと向け
「――邪魔だ」
 と短く言い放った。

 ぱちぱちと何かが弾ける様な小さな音がした後に中年の警備員(アンチスキル)が体を痙攣させて膝から崩れ落ちドサリと地面に倒れた。
 口元から涎を垂らし白目を剥いて気絶する警備員(アンチスキル)を一瞥し、
「少し強かったか……中年にはもう少し出力を落とす必要があるな」
 と呟いて、彼――襟草励磁(えりくさ れいじ)は倒れた警備員(アンチスキル)の脇腹を蹴っ飛ばして仰向けにさせ、微かに
上下する胸を確認した。
「死んでないからまぁいい。それにしても風紀委員(ジャッジメント) の腕章をつけているだけで随分と楽に動けるものだ。
流石にどこでも、というわけではないがな」
 白い学制服の左腕につけられた腕章を撫でて襟草は自嘲気味に言葉を紡ぎ嘆息する。本来の持ち主であるオッドアイの少女から奪った物
だが白い学生服の左腕に取り付けられた緑の腕章は思いのほか役に立った。
 学園都市中を歩き回らなければならない襟草にとって風紀委員(ジャッジメント) という隠れ蓑は最適だった。
 少々怪しい場所をうろついていても咎められないし、万が一咎められても襟草の足元に寝転がるこの警備員(アンチスキル)のように
勝手に油断しこちらの射程内まで入って来てくれるのだ。あとは死なない程度に加減して相手の脳に能力を叩き込めばいい。
 使えそうなら駒(ユニット)として洗脳してもいい。とにかく先手さえ打てれば彼の能力で大体片がつく。
「君の出番はまだ無いみたいだ。まぁ”虚数学区”を探ってる以上そのうち直属部隊とやらがお出ましになるだろう」
 襟草は傍らに立つ少女へと話しかけた。返事は無い。ただ虚ろな視線が虚空を見つめるだけだ。
 操り人形――そんな言葉がぴったりくる少女は感情の類を一切表さないでいた。
「『幻想殺し』(イマジンブレイカー)の方は自動暗示(オート)でなんとかなるだろ。さぁ、次に行こうか」
 襟草は左手をポケットに突っ込んだまま足早にその場を去ったが彼に返事を返す相手は誰も居なかった。
                                                    [12月23日―PM13:00] 


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