とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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「……んん……あぁ……」
上条がゆっくりと目を開けると、そこはベッドの上だった。
頭がボーっとして、それでいて頭痛がガンガンするというわけのわからん状態で、思考がはっきりしない。
「(……えーっと、なんだったけ?)」
何か大変な事があったようなと思い出そうとするが、うまく思考が働かず考える事が出来ない。
っていうか、頭を働かそうとしたらガンガンしてきた。
「あ…気が付いた……?」
すぐ隣りから声が聞こえた。
ベッドのすぐ横に美琴が心配そうな顔をして座っていた。
「(……あ? 御坂? ……あれ?)」
そこで思い出した。
美琴の下着、ではなくビリビリが暴発しそうになっていたという事を。
部屋がぶっ飛ぶかもという危機的状況に立たされ、暴発を止めようと絶賛絶不調の身体に鞭入れて、右手を『幻想殺し』を伸ばしベッドを飛び出した、ところまでは覚えているが、そこで記憶は途切れる。
この現状から察するに、なんとか右手が美琴の身体に触れて暴発をキャンセルしてくれたようだ。
命拾いしたと頭はヌボーっとしているが心底安心した。
「えっと……ごめん……!」
「……へっ?」
「さっきはごめん。さっきのあれは……私が…悪かったわ」
「あ、ああ……え、えっと……」
さっきの暴発未遂のことだろうか、美琴が上条に謝罪してくる。
未だ意識がボーっとしている上条が何と答えたらよいものかと悩んでいると、
「それで…さぁ…その……」
美琴が何か言いにくそうに口をモゴモゴしている。
なんだろう、と上条が頭に『?』を浮かべるが、美琴もなかなか口を開かない。
「なんだろう?」と思い、身体がいうことを聞かないので視線だけ何とか動かすと、
「(……はい?)」
上条の右手がしっかりと美琴の手を握っていた。
「はい(ゴホン! グホッ!)!?」
驚きのあまり声を上げてしまったが、タイミングの悪い事に咳をしてしまい咽てしまう。
ついでに、咳でちょっと動いただけで身体の節々などがかなり痛い。
「だ、大丈夫?」
「な…なんとか……わりぃけど、水…貰える……?」
「え、あ、う、うん……」
言われて美琴は水を差し出そうとするが、コップの中は空、水の入った容器も持ってきていない。
というわけで、台所に取りに向かわなければならないのだが、
「……」
「? どうした?」
「……手……」
「へっ?」
「手離してくれないと、取りに行けない……」
手が繋がれたままだった。


「あ、ああ、わりぃ……」
言われて握った手を離そうとするのだが、
「……」
「……」
「……あれ?」
手が離せません。
というか、上条さんの身体がいう事を聞いてくれません。
「あれ!?」
いくら風邪で絶不調とはいえ、ここまで身体がいう事を聞かなくなるような事になるだろうか?
身体が重いとか関節が痛いとかで動きがぎこちなくなることはあるが、全く動かないというのはどういうことだろう?
「……どうしたの?」
いつまでも手を離さない上条に、何故か頬を赤らめている美琴が尋ねる。
「あの……御坂さん、すみませんが少し手伝っていただけますか? 身体が動かないみたいで……」
「……え?」
上条の言葉の意味がよくわかってない美琴にとりあえず身体が動かない事について説明する。
説明が終えると、何故か美琴は気まずそうな顔をし、
「……もしかしたら私のせい……?」
なんて事を口にした。
「えっ?」
「たぶん、さっき私が…その……取り乱した時の電撃が、あんたの身体に当たってこういう事になってるんじゃないかなと……」
最後の方はゴニョゴニョと口を濁すような感じになったが、美琴の考えはそんな感じだ。
たしかにあれだけバチバチしてたのだから、『幻想殺し』で打ち消せないところで少なからず電撃を喰らっていたかも。
それで身体が麻痺してしまっているというのもありえる。
「ご、ごめん! 本当にごめん!」
再度美琴は謝罪する。
右手は上条と繋がっているので、左手のみを立てて謝罪する。
「いや、もういいさ。そんな何度も謝らなくたって……」
「でも…さあ…」
「……それより、俺ってどのくらい気失ってたんだ?」
「えっ、えっと…一〇分くらい…だと思う……」
「そうか……」
たぶん今のこの身体の状態は、風邪による弱体化プラス、火事場の馬鹿力の反動プラス、美琴の電撃が原因なのではないだろうかと上条は考える。
もしそうだと、身体が動くようになるまで結構かかるのではないだろうか?と推測する。
電気ショックなら身体が動かなくなるのではなく、動くようになって欲しかったと、そんなどうでもよさげな事を考えてしまった。
「(……不幸だ)」
と思いながらも、その言葉は口にせず心の中に留めておいた。
これ以上この少女を、泣きそうな顔をしているこの女の子を悲しませるべきではないと思ったから。


なにはともあれ看病再開、と行きたいところだが、その前にやっておかなければならない事がある。
二人の繋がれた手を外さなければならなかった。
しかし、この繋いだ手を外すのに意外と時間を喰うこととなる。

「……なんでこんなにガッチリ握ってるのよ!?」
「……なんでだろうな」
深い意味はないはずだ。
美琴の暴発止めるのに必死で、『とにかくどこでもいいから触れろ!』な感じで、美琴の手を取って離すまいとした結果だろうか、おもいっきり握ってます。
もう、「これでもかー!」っていうくらいにガッチリと。
握った手は上条には外せないようなので、動けぬ上条に変わって美琴が上条の指を一本一本丁寧に外していって離すしかなかった。
「……面倒ね」
などとぼやいてはいるが、なんだかんだ言って美琴はちゃんとやってくれている。
上条は気付いていないが、愚痴を言っているのは照れ隠しだ。
美琴としては、もうちょっとこうしてたいな、という気持ちがあったりするのだが、実際問題そうもいかない。
ちなみに、上条が気を失ってた時からこうだったわけだが、その時は外そうという気は全く無かった。
上条が目を覚まして自分から離そうとするまでこのままでいいや、と半ば嬉しそうにそんなことを勝手に決めていたりしてたわけで……。
現在予想に反してこんな事になってしまって、ちょっぴり過去の自分に後悔したり。
そんなわけで、顔を赤く染めながらプルプルと震えつつ手を動かしている。
手を握っている事、じーっと見られている事がかなり恥ずかしい。
「(そんな集中してする事ってわけでもないんだけどな……)」
美琴の顔が赤い事やプルプル震えて作業に手間取っている理由について、とんだ見当違いな事を思っている上条さん。
この超鈍感さはどうよ?
病人だから仕方ないのか?
まあ、絶不調でなくとも上条さんは気付かなそうだが……。
「……ちょっと、その…ジロジロ……見ないでよ…」
じーっと見られている事に耐えられなくなったのか、美琴が恥ずかしそうな視線を向けて呟いた。
「あ、ああ…わりぃ……」
言われた上条は素直に視線を逸らす。
少し逸らせばよかったのだが、上条はおもいっきり反対方向にまで視線を逸らした。
美琴としても、別にそこまでしなくてもいいのに、と思ったがあえて口にはしなかった。
で、当の上条さんはというと、今の美琴の表情がなんかドストライクに可愛らしかったみたいで、恥ずかしさのあまり視線をおもいっきり逸らしたのだった。
おもいきりが良過ぎたためか、首筋辺りが激しく痛かったが、余計な心配させまいと我慢した。
それからどの位経った頃だろうか、なんとか分離完了、ようやく二人の手は解放される。
「……なんか思ったより時間かかったな」
「し、仕方ないでしょう。結構ガッチリギッチリ握ってたんだから。大体、手を握ったのはあんたでしょうが!」
「……そうだな」
……ちなみに、美琴が少し名残惜しそうな気持ちを胸に抱いていたのは秘密だ。


なにはともあれ今度こそ看病再開である。
上条が水を所望していたので、美琴はまず水を取りに台所へ向かう。
「はい、水……って、あんたそのままじゃ飲めないんだったわねぇ…」
お盆の上にコップと水の入った容器を乗せて戻ってきた美琴は、思い出したかのように言った。
「あー、そういえばそうだった……」
自力で起き上がる事も出来なければ、手もろくに動かせない上条さん。
単なる風邪のはずなのだが、何故か重病人状態である。
少し水を飲むだけでも一苦労だ。
「……ストローある?」
「あー……たぶん台所の引き出しに何本かあったと思う……」
「…後で探してくる。先に飲みたいでしょ?」
「ああ、わりぃなぁ……」
美琴は気にしないでと笑顔で答えると、横になっている上条をゆっくりと支え起こす。
「……きつくない?」
「ああ、大丈夫だ……」
返事を聞くと、今度は上条の前に水の入ったコップを持って来て、コップの淵に上条の口をつける。
「…はい、……いいかな?」
「……ああ」
ゆっくりとコップを傾け、上条の口にこぼさないようゆっくりと水を流す。
「ゴク…ゴク……もう少し……」
「わかった」
言われて美琴は少しコップを傾ける。
「ゴク…ゴク…ゴク! プハァー……いいぞ、サンキュー」
上条はコップに注がれた水は全部飲み干した。
コップが空になったのを確認すると、コップを上条の口から離しテーブルのお盆の上に置く。
そして上条を手伝ってゆっくりと慎重に寝かせる。
「ふぅー……ああ、ありがと……」
「どういたしまして。じゃあ、ちょっと私向こうで探してくるから、何かあったら呼んで」
そう言って美琴は再び台所の方へ向かおうとしたが、ふと何か思い出したかのように足を止める。
「そういえばさあ、あんたの家、体温計ないの?」
「体温計?」
「そ。あんたが寝てる間に熱を測ろうって思ってたんだけど、救急箱の中には入ってなかったからさ……」
「んー、もしかしたら、机の上のペン立ての中に紛れてるかも……」
上条の言葉に従って、机の上のペン立てを調べてみると、細長いプラスチックのケースに入った体温計が混じっていた。
「おー、あったあった、これこれ。こんなところに混じってたか。んじゃ、これで熱を……」
上条に体温計を渡そうとしたが、彼は現在全く動けません。
つまり、美琴が上条の脇に挟んでやらなければならない。
「はぁー、熱測るからじっとしてなさいよ」
美琴は近付いて屈み込むと、動けない上条の服の襟口を引っ張って広げて中を覗き込み確認すると、体温計を脇の辺りに持っていく。
上条さん的には、美琴さんの今の体勢にとってもドキドキです。
顔が少し近いというのもあるが、それ以上に上条のブカブカのトレーナーを着た美琴は、動くと肩と鎖骨の辺りを露出させるのだが、今の体勢だとそれプラス服の中が見えてます。
チラチラと胸の辺りが見えてもう大変です。
目のやり場にとても困ります。
「(う~……早く終わってください……)」
そんな上条の願いが通じたのか、
「これで……よし!」
美琴がようやく退いてくれた。
ほっと胸を撫で下ろす上条さんだが、ちょっぴり残念な気も……。
「じゃあ私台所の方で探してるから、熱測り終わったら教えて」
美琴は立ち上がると、台所の方へと向かって行った。


ベッドで横なっている上条からは美琴の様子は見えないが、「あれー?」とか「ここでもない」とか言っている美琴の声と、ガチャガチャといろいろ漁っている音を聞いていた。
美琴の働きぶりに上条は感心する。
どこかのわがままぐーたれ純白シスターとは大違いだなと思った。
昨日も体調不良で少し横になっていたにもかかわらず、叩き起こされては食事を作らされ、その上ほとんど一人で作った食事を食べ尽くすという暴挙。(しかも作ってる最中も、まだかまだかとうるさかったり……)
あまつさえ、後片付けを手伝わず冷たい水仕事を押し付け、体調不良の上条を差し置いてベッドでぬくぬくと寝る始末。
ここまで言うと相当酷い奴に思えるが、一応心配はしてくれていた。
が、できれば家事を手伝うなり、ベッドを譲るくらいして欲しいと心底思った。
まあ、多少上条が強がったせいもあるかもしれないが、それでもねぇ……。
しかし、手伝ってもらっていたら、逆に仕事の量が増えていたかもしれない可能性もあるので、ある意味これでよかったのだろうか?
ちなみに、居候の不在については、美琴が風呂に入っている間に土御門から電話があった。
なんでも小萌先生のところに泊まるそうだと、舞夏から伝言するよう頼まれたそうだ。
今の上条の頭で居候の存在を誤魔化す方法を考えろといわれても不可能なので、悩みの種が無くなったのは救いだ。


「あったあった、あったわよ、ストロー」
回想に浸っていると、そんな声を上げながら美琴が台所から戻ってきた。
どうやら目的のブツは発見できたようで、手にはストローが握られている。
コップにストローを放り込むと、ベッドの側に腰を下ろす。
「で、熱は?」
言われて、そういえば熱を測っていたという事を思い出す。
ヌボーっと回想に浸っていたので、体温計の電子音が鳴ったかどうか気が付かなかった。
「あー……どうだろう? ボーってしてたから気付かなかった……」
「そう、ちょっといい?」
美琴は屈み込むと、再びまた襟口を引っ張って中を覗き込む。
またあの危ない体勢だ。
やばいです、またチラチラ見えてます……。
上条さんは見ないよう見ないよう、懸命に視線を逸らします。
「……あれ? 体温計が見当たんないんだけど? どこいっちゃったのかしら?」
体温計が見当たらないようで、美琴が更に身を乗り出して覗き込む。
「そうなのか?」と、ちらりと視線を美琴の方に向けると……、
「!?」
……見てはならないものが見えてしまいました。
美琴の胸の先端がチラリと……。
そのあまりの衝撃に『ビクッ!』と身体が反応してしまい、身体に激しい痛みが走る。
「ぐぶっ!? ―――っ! がぁっ……!」
「ど、どうしたの? 私なんか変なとこ触った?」
突然上条の身体が『ビクッ!』とした事に驚くと同時に、もしかしたら自分が何かしたのではないかと心配する。
「い、いや……な、なんでもないです、なんでも。……っていうか、すいません……」
何があったかなんて言える筈もなく、上条はただ謝るしかないのだが、美琴には何の事かわからない。
いや、こればかりはわからないほうがいい事だろう。
事実を知った美琴はどんな反応をするだろうか?
想像する事も恐ろしい。
美琴は余計な心配をかけたことに謝っていると思い、特に追求はしてこなかった。
再び体温計探しを再開する。
上条は体温計が見つかるまで、固く瞳を閉じて視線もずっと壁の方に向けていた。
その後、見つかった体温計は当然きちんと熱を測れていたはずもなく、測り直す事になるのだが……、
「あれ? なんか表示がおかしくない?」
故障してしまったようで、結局熱は測れなかった。




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