とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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「(……なんでこんな事になってるのかな?)」
自ら言い出した事とはいえ、今更ながら少々後悔気味の美琴さん。
先程の失敗を何とか返上しようと思い、行動に出た結果が現在のこの状況。
料理なんてやった事もないのに。
とはいえ、言ってしまったからには何とかしなければならないのだが、美琴は完全に料理に関してはド素人である。
となると、誰かに救援を求めたいところだが、
「……」
最初に思い浮かんだ人物の顔を思い出すや否や、過去の遺恨(それほど古い話ではないが)を思い出し、腸が煮え繰り返る気分になった。
「(……あいつは……ダメね、絶対に! 何言われるかわかったもんじゃないし……)」
この手の事ならまず間違えなく最も頼りになるであろう人物、メイド見習いの少女・土御門舞夏。
しかし、救援を求めようという気には全くならなかった。
彼女の腕は認める、認めるが頼みたくなかった。
先程の件もあるし、絶対にからかわれるに決まっているから。
そうなると、他に頼りになりそうな人物はと携帯のメモリーを漁って探すのだが、他に適任といえるような人物がいない。
そもそも常盤台中学の人間は美琴と同じように料理なんてした事のないような人ばかりだろう。
まあ、多少の例外はあるかもしれないが。
何かないかなと携帯を弄っていると、不意に最も単純かつ簡単な打開策を閃く。
「(……ん? 待てよ……考えてみれば、誰かに聞く必要なんてないのよね。ネットで料理のレシピを検索すればいいじゃないのよ!)」
学園都市という科学の最先端の地にいながら、ネットの事を忘れるほどテンパってたようだ。
早速携帯の操作すると、ネットへ接続し料理レシピの検索を始める。
表示された数ある項目の中から、お粥と味噌汁のレシピを探し出す。
「……結構あるわねぇ。えっと……あったあった」
お目当てのレシピを見つけると、順に目を通す。
最初はお粥のレシピ、まあレシピというほどのものではないが、全く知らないド素人の美琴には結構重要である。
いくつかの記事に目を通してレシピを確認する中、個人的にちょっと目を引かれる項目が。
「……ふーん、炊飯器で簡単に作れるのね……」
炊飯器でお粥が作れるとは知らなかったのでちょっと感心。
美琴的には土鍋でグツグツ煮て作っているイメージがあったので。
火も使わない事から危険もなく、失敗の可能性も低そうなので、お粥は炊飯器で作る事にした。
お粥の作り方を頭の中に叩き込むと、次は味噌汁のレシピだ。
お粥より遥かにレシピの数が多いが、初心者の美琴は基本的な作り方の書かれているものを探し出し目を通す。
「……なるほどなるほど……大体わかったわ……」
記事を読んで基本的な作り方を頭に叩き込む。
なんとなくだが作り方は理解した。
後はそれを実践してうまくできるかどうかだ。

材料の準備も終え、早速初めての料理開始である。
まず鍋に水を入れて火にかけると、その間にお米を研ぐ。
記憶にある米の研ぎ方を真似て、研いでは水を捨て、研いでは水を捨てを繰り返す。
研ぎ汁の濁りがなくなったのを確認すると、米研ぎをやめて指定分量の水と塩を少々入れて炊飯器にかける。
最後にスイッチを押すと、後は炊飯器が勝手にやってくれるので出来上がりを待つだけだ。
続いて味噌汁の方に移る。
タイミングよくいい具合に鍋が沸騰しているので、粉末のダシの素を入れる。
本当だったら煮干などでダシを採るところだが、上条の家にはないようなので粉末のダシの素で代用する。
「えっと……こんなもの…かな?」
少々自信なさげだが、粉末ダシの素が綺麗に溶けたのを確認すると、続いて味噌を投入する。
漉し器を用意すると、中に味噌を少しずつ入れていきダシ汁に溶いていくと、だんだんと味噌汁らしくなっていく。
「おっ、なんかそれっぽくなってきたわね」
初めての料理が上手く出来ている事に喜びを隠せない美琴。
最初の頃の不安なんて何処へ行ってしまったのか。
目分量で投入した味噌を大体溶き終えると、味見するため少し小皿に取る。
「さてと……味はどんな感じかな?」
初料理の初試食、少し緊張気味に小皿に口をつける。
「……味薄……」
初料理の初試食の味の感想はそんな感じだった。
うまくいってると思っていたので、味が全然薄かったのはちょっぴり残念だった。
「えっと、もう少し味噌を足せばいいのかな?」
味の調整のため少し味噌を足し、再び溶いていく。
「♪~ ♪~」
鼻唄混じりに手を動かすその姿は、楽しくて仕方がないという感じだ。
足した味噌を溶き終えると、再び小皿に取り再度味見。
今度はさっきより全然マシになっていた。
しかし、美琴的にはいいと思うのだが、上条的にはどうなのだろうと考えてしまう。
男性は味が濃い物を好むと言うし……。
料理初心者のくせに、細かい事まで考えてしまう。
いや、細かいのは上条に食べさせるからか。
「……こんなもの…かな? ……まあ、あいつ病人だし薄味の方がいいわよね……」
何はともあれ汁はできたので、後は具である。
まあシンプルにネギと油揚げとワカメを入れることにした。
冷蔵庫の中に大した物が入ってなかったというのもあるが、下手な物を入れて失敗するのも嫌なので。
冷蔵庫に入っていたネギや油揚げを、少々危なっかしい包丁捌きで刻み、味噌汁の中に投入する。
残りのワカメも、さっき色々漁った時に乾燥ワカメを発見していたので、それを取り出して放り込んだ。
後は一煮立ちさせて、ついに完成である。
「……よし!」
鍋の中にはちゃんと味噌汁が完成していた。
最後にもう一度味見するのだが、
「うん、美味しい……」
納得のいくものが出来ていた。
後は、お粥の出来上がりを待つだけだが、まだしばらく時間がかかりそうだ。
「……そういえば、あいつ大丈夫かな?」
しばらく料理にかかりきりで上条を一人にしていたので、少し心配になった。
簡単な後片付けを済ませると、様子を見に部屋の方へ戻る事にした。
しかしこの時、美琴は自分が重大なミスを犯している事を知る由もなかった……。

「あ、寝てた?」
「……いや、随分寝たからあんまり眠くないというか寝れねぇ。……もうできたのか?」
「味噌汁はできたわよ。お粥はもうちょっと待って」

ぐぅきゅるるるるぅ……!

再び上条の腹の虫が鳴く。
「……よく鳴るわねぇ……」
「……すんません」
あまりの頻度にさすがの美琴も半ば呆れてきた。
あんまり鳴るので、上条の食事情が心配になってきた。
「今日ちゃんと食べなかったの?」
「食べてなくはないんだが……あんま食べれなかったんだよな……」
本日の食事情は散々だったなぁ、と嫌な今日の出来事を思い出してしまった。
朝はインデックスが……、昼は青髪ピアスと土御門が……。
あまり思い出したくない過去だ。
「えっと……じゃあ果物でも食べる? なんかリンゴとミカンがいっぱいあったみたいだったけど?」
台所にリンゴとミカンのそれぞれ入ったダンボールが置かれていた事を思い出す。
「ああ、あれな……昨日家の両親から大量に送られて来てたんだ……そういえば、俺まだ食ってなかったな……」
昨日は調子が悪くてさっさと寝たので食べなかった事を思い出した。
「そうなの? じゃあ、それ食べる?」
「……そうするか」
「んじゃ、何個か取ってくるわね」
そう言って美琴は台所へ向かい、しばらくするといくつかのリンゴとミカンを持って戻って来た。
「おまたせ」
持ってきたリンゴとミカンをテーブルの上に置きベッドの横に腰を下ろすと、リンゴを一つ手に取り反対の手に包丁を持って皮を剥こうとするのだが……。
「……え-っと、御坂さん?」
「……なに?」
「その持ち方じゃ危ないぞ……」
なんだか非常に危ない手つきで包丁を握ってるようですけど。
包丁はそういう風に持ってはいけません、という持ち方をして、ついでに手がプルプルと震えてます。
料理を無事に作ったようだったので特に気にも留めていなかったのだが、今のこの様子を見てリンゴの皮剥きさせる事にひたすら不安を覚える事となった。
ただでさえ体調が優れないというのに、妙な心労を負わされる事になろうとは。
「うっ……わ、わかってるわよ……! ちょ、ちょっと黙ってて……!」
「ぬぉ!? 包丁をこっちに向けるな! あ、危ないだろうがー!」
「は、話しかけないでよ……! これからリンゴの皮剥くんだから……!」
妙にテンパった美琴が叫んだその時、

スポッ!

「「……あっ!?」」

手にしていた包丁がスッポ抜け、

ザクッ!

上条の顔面ギリギリ真横に突き刺さった。
二人の顔から一瞬にして血の気が引く。
「あ、あ、あ、危ないだろうがー! 殺す気(ゴホンゴホン)……んがっ!?」
危うく包丁の錆になりかけたことに絶叫するが、咽と咳と大声ととにかくいろんな条件が重なって、痛みでのた打ち回るはめになるのだった。
「ふ、不幸…だ……(げほっ! ぐはっ!)」

シャリ……シャリ……

あんな事があったにもかかわらず、美琴はリンゴの皮剥きをやっていた。
美琴曰く、
「べ、別にあれは皮剥きに失敗したわけじゃないんだからいいでしょ!」
との事だった。
まあたしかに皮剥き自体を失敗したわけではないのだが、実際今美琴のやっている事は、皮を剥いているというよりも、皮を削っているという表現の方が正しいような。

スル……

「あ……」
やはり手つきが相当危なっかしいです。
今のところ指を切ったりはしていないが、この様子だといつ切ってもおかしくありません。
下手なりにも一生懸命やってくれているので、いろいろとアドバイス(口出し)したいところだが、下手に声をかけるとまた先程のような事が起こりかねないので口を挟めません。
そんなわけで、上条さんは黙って美琴がリンゴの皮を剥いている様を見ているしかありません。
見ないという手もあるのだが、声や音は聞こえるのでそれだけの方がかえって逆に恐ろしかったりした。

「む、剥けたわよ……!」
どのくらいかかった事だろうか、ようやくリンゴの皮を剥き終えたのだが、リンゴが妙に小ぢんまりとしていた。
皮と一緒に身の方も大分切ってしまったようで、当初ソフトボールくらいの大きさのあったリンゴから残ったのは、ほんのわずかな微々たる量だった。
まあ、結局指とか切らずに済んだんだから良しとすべきか?
まあ、余計な事は口に出さないでおこう。
というか言う気力もない。
上条当麻は高熱にうなされていた病人であって、そんな病人の目の前で、ドキドキハラハラの危険行為(包丁捌き)を見せようものなら、ただでさえ優れない気分が最悪なモノとなるわけで……。
「な、なによ……?」
「……いや、なんでもないけど……とりあえず、ありがとよ。……んじゃ、わりぃけどそれ口の中に放り込んでくれるか?」
と言うと、上条は口をあーんと開ける。
「……はい?」
言われて美琴はキョトンする。
美琴の妙な反応に上条は、「ん? 俺なんか変な事言ったか?」という顔をしている。
「いや、だからそのリンゴ口の中に放り込んでくれよ。俺動けないんだからさ……」
「あ……」
今になって思い出したが上条は動けない。
という事は、つまり、
「(えっ!? 私が食べさせなきゃいけないの!?)」
今更その事実に気付いた。

『はい、あーん♪』
『あーん……あむっ』
『美味しい?』
『ああ、美味しいよ』
『じゃあ、もう一回……はい、あーん♪』
『あーん……』


「……」
「…どうした、御坂?」
「……はっ!?」
上条に呼ばれて我に返る。
少々妄想の世界に飛んでいたようだ、えらく恥ずかしい妄想の世界に。
上条が不思議そうな顔をして美琴の顔を覗き込んでいた。
今顔を見られると正直困る。
つい今しがたまで見ていた妄想を思い出してしまうから。
「(//////)」
これからするのか?
今妄想していた事を、この上条当麻と本当に?
想像しただけで顔が赤くなるのがわかる。
「なんだ? やっぱ、どっか調子悪いのか…?」
「……な、なんでもないわよ……そ、それより…ほら…これ……リンゴ! リンゴ食べるんでしょ! ほ、ほら、く、口開けなさいよ!」
と言ってテンパり気味の美琴は、妙に力の入った様子でリンゴを持ち構え、少々強引にというか無理やり上条の口にリンゴを押し込もうとする。
「ちょ、ちょっとま…んぐっ……もがっ……!」
押し付けられた上条はたまったモンじゃないが、動けない上条には逃げる事もロクな抵抗する事も出来ない。
一応病人なんですけど……。
結局、テンパってしまっている美琴には上条の訴えは届かず、そのまま口の中にねじ込まれるはめになるのであった。(まあ、美琴がリンゴの皮剥きに失敗しているので量そのものは微々たる物なのだが)
そんなわけで、美琴の思い描いていた恥ずかしい妄想とは似て非なる形でリンゴを食べさせる事になってしまった。
美琴が落ち着いたのは、剥いたリンゴを全て上条の口の中にねじ込んだ後だった。
「はぁー……」
無理やりねじ込まれた上条さんは、ようやく解放されて安堵の息を付く。
「(うぅぅ……し、失敗した……)」
いろんな意味で凹み気味の美琴さん。

ぐぅきゅるるるるぅ……!

そんな二人の間に再び鳴り響く上条の腹の虫の声。
「……」
「……」
「…えっと……」
「……御坂、ミカンくれ……」
美琴が何か言う前に、上条はミカンを要求した。
「え? あ、ああ、うん……」
上条に頼まれて素直に頷きミカンを手に取る。
なんとなく、美琴がまたリンゴに手を出しそうな気がしたので先んじてそれを制した。
また目の前で危なっかしい包丁捌きを見せられるのは勘弁して欲しかった。

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