第二話『ねこLOVE』
「はい、好きですとミサカは簡潔に答えます」
・・・・・・・・・・・・・・、ちょっとだけ個性的な口調だな、うん。
それが彼女の第一印象だった。
年齢は14、5歳といったところ。
女子にしては少し高めの背丈にスラリとした体型。
肩まである栗色の髪に整った顔立ち。
そして猫好き。
そんな少女の名前はミサカというらしい。
「そうか、ミサカサンも猫好きなのか。この病院に同好の士がいるというのはうれしい」
「ミサカの正式名称はミサカ10039号ですが、通称はミサカで間違いありません、とミサカは自己紹介をします。ちなみに名前というのは自分から名乗るものだろう、とミサカは頭の隅で控えめに指摘します」
・・・・・・・・・・・・・・・・、結構個性的な口調だな、うん。
10039号というのは何の事だろう?フシギ少女指数が50アップだ。とりあえずその頭の中の控えめな指摘の言うことに従う。
「俺の名前は黒山大助という。見ての通り首を怪我して入院中の高校生です」
立たせておくのも何なので空いている自分の隣へ促した。『女性に立たせておいたまま話し掛けるのは男性として紳士的な配慮に欠けるのではないでしょうか、とミ(ry』みたいなことが予想されたからだ。
「私が同好の士ということはあなたも猫好きということですか、とミサカは断片的な情報から打ち立てた妥当な推理を披露します」
「まあな。入院生活繰り返してるもんだから、あいつ等の飼い主同然になってるよ」
二人していすに腰掛け、猫たちを眺めながら話す。初対面だというのに、自分でも驚くほど自然な会話だった。彼女の様子にも、『100テラ光年早いんだよ出直してきやがれナンパ野郎』というものはない。首に巻かれたギプスが邪魔なので、横目でチラチラとしか見ることが出来ないが。
女の子と一対一で会話しているという状況をやっと認識し始めて、今頃になって胸が躍り出しはじめた。
それが彼女の第一印象だった。
年齢は14、5歳といったところ。
女子にしては少し高めの背丈にスラリとした体型。
肩まである栗色の髪に整った顔立ち。
そして猫好き。
そんな少女の名前はミサカというらしい。
「そうか、ミサカサンも猫好きなのか。この病院に同好の士がいるというのはうれしい」
「ミサカの正式名称はミサカ10039号ですが、通称はミサカで間違いありません、とミサカは自己紹介をします。ちなみに名前というのは自分から名乗るものだろう、とミサカは頭の隅で控えめに指摘します」
・・・・・・・・・・・・・・・・、結構個性的な口調だな、うん。
10039号というのは何の事だろう?フシギ少女指数が50アップだ。とりあえずその頭の中の控えめな指摘の言うことに従う。
「俺の名前は黒山大助という。見ての通り首を怪我して入院中の高校生です」
立たせておくのも何なので空いている自分の隣へ促した。『女性に立たせておいたまま話し掛けるのは男性として紳士的な配慮に欠けるのではないでしょうか、とミ(ry』みたいなことが予想されたからだ。
「私が同好の士ということはあなたも猫好きということですか、とミサカは断片的な情報から打ち立てた妥当な推理を披露します」
「まあな。入院生活繰り返してるもんだから、あいつ等の飼い主同然になってるよ」
二人していすに腰掛け、猫たちを眺めながら話す。初対面だというのに、自分でも驚くほど自然な会話だった。彼女の様子にも、『100テラ光年早いんだよ出直してきやがれナンパ野郎』というものはない。首に巻かれたギプスが邪魔なので、横目でチラチラとしか見ることが出来ないが。
女の子と一対一で会話しているという状況をやっと認識し始めて、今頃になって胸が躍り出しはじめた。
それにしても・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これは異常な事態じゃないだろうか?
いや、断言できる。これは異常事態だ。
何しろこの黒山大助十六歳。自慢じゃないが女の子との“お喋り”の方法など知らない。
いや、流石に言葉を交わしたことが無いってわけじゃないけど。小坊の頃なんかはゲラゲラ笑いあったり、口げんかをしたこともあった。でもそれはまだただのガキであったからであり、男女の違いなんか全く意識していないからだった。高校生になってしまった今では暇な休憩時間をお喋りで潰したり、ましてや盛り上がったりする事など皆無だ。義務を伴う会話、というより情報の伝達がたまにある程度。まあ、女子との接点の無い『寂しく冴えない普通の男子学生』というわけだ。
ん?いや、ちょっと待てよ。そういえば俺にも『女の子』の『知り合い』が居た。
風紀機動員としてしばしば活動を共にする同僚のテレポーテーター、
そして活動時にそいつと俺をサポートする敏腕情報補佐員だ。
いやしかし、あいつ等とのやり取りは健全な『男子と女子とのお喋り』と呼べるのでのだろうか。なにしろ頭をめぐらせて浮かんでくる声といえば、
『黒山大助さん!!今日という今日こそは貴方を打ち倒し、第七学区最強の風紀機動員の称号を手にしてみせますわ!!覚悟なさい!!』
『黒山先輩の頭ってハリネズミみたいですねー。これは紅茶の道を極めた私に、今度は花道を学べという神のお告げなのでしょうか~ぬへへへへ~』
・・・・・・・・・・・・・・・・うん、だめだ。これはやっぱり違う気がする。しかしこんなの以外思い出せない。仕方ないか。方や少年漫画がお似合いな熱血と絶大な能力を持った大能力者(レベル4)。方やお嬢様に憧れるあまり変な方向へ突っ走ってる怪奇花瓶少女。少なくとも普通の範疇に入る女の子でないことは確かだった。
いや、断言できる。これは異常事態だ。
何しろこの黒山大助十六歳。自慢じゃないが女の子との“お喋り”の方法など知らない。
いや、流石に言葉を交わしたことが無いってわけじゃないけど。小坊の頃なんかはゲラゲラ笑いあったり、口げんかをしたこともあった。でもそれはまだただのガキであったからであり、男女の違いなんか全く意識していないからだった。高校生になってしまった今では暇な休憩時間をお喋りで潰したり、ましてや盛り上がったりする事など皆無だ。義務を伴う会話、というより情報の伝達がたまにある程度。まあ、女子との接点の無い『寂しく冴えない普通の男子学生』というわけだ。
ん?いや、ちょっと待てよ。そういえば俺にも『女の子』の『知り合い』が居た。
風紀機動員としてしばしば活動を共にする同僚のテレポーテーター、
そして活動時にそいつと俺をサポートする敏腕情報補佐員だ。
いやしかし、あいつ等とのやり取りは健全な『男子と女子とのお喋り』と呼べるのでのだろうか。なにしろ頭をめぐらせて浮かんでくる声といえば、
『黒山大助さん!!今日という今日こそは貴方を打ち倒し、第七学区最強の風紀機動員の称号を手にしてみせますわ!!覚悟なさい!!』
『黒山先輩の頭ってハリネズミみたいですねー。これは紅茶の道を極めた私に、今度は花道を学べという神のお告げなのでしょうか~ぬへへへへ~』
・・・・・・・・・・・・・・・・うん、だめだ。これはやっぱり違う気がする。しかしこんなの以外思い出せない。仕方ないか。方や少年漫画がお似合いな熱血と絶大な能力を持った大能力者(レベル4)。方やお嬢様に憧れるあまり変な方向へ突っ走ってる怪奇花瓶少女。少なくとも普通の範疇に入る女の子でないことは確かだった。
だが。
今は違う。
今となりに居るのは、(ちょっとだけ)個性的な口調だけど入院中のか弱い女の子だ。
そしてこの場所には俺の頼もしい味方がいる。
そう。
猫達だ!
隣の少女は、俺の豊富な猫トークに耳を傾けながらも猫のほうばかりに視線が向かっている。猫にすっかり心を奪われているようだ。
こいつ・・・・・・・・・・・できる!!
そんな彼女を見て愛猫家の血が騒いだ。
今こそ、俺の使命を果たす時!!
今は違う。
今となりに居るのは、(ちょっとだけ)個性的な口調だけど入院中のか弱い女の子だ。
そしてこの場所には俺の頼もしい味方がいる。
そう。
猫達だ!
隣の少女は、俺の豊富な猫トークに耳を傾けながらも猫のほうばかりに視線が向かっている。猫にすっかり心を奪われているようだ。
こいつ・・・・・・・・・・・できる!!
そんな彼女を見て愛猫家の血が騒いだ。
今こそ、俺の使命を果たす時!!
―――あなたは何故猫の温かさを伝えるのですか?
―――・・・・・・・・そこに、猫好きが居るからさ・・・・・・・・!
―――・・・・・・・・そこに、猫好きが居るからさ・・・・・・・・!
その熱い思いに応えるかのように一匹の猫がこちらへ歩み寄ってきた。猫たちの中でも一番俺になついている、トラ模様の特徴的な奴だ。少女の視線もそちらに向く。近づいてきたので“猫触りたいオーラ”(不可視のオーラ。愛猫家にだけ観測が可能)が更に強まる。
でかしたぞ、寅之助。
『別にアンタを助けようと思ってるんじゃないんだからね!ご飯の恩もあるし、仕方なく(ry』みたいなことを言いながらに足元へ擦り寄ってきた寅之助を抱き上げて、撫で回してやる。『そこーーー!そこ良いーーー!もっと撫でてーーー!』と完全に無防備になったところですでに我慢の限界のような少女へと向けた。
この手にかかれば、どんな猫でも、初対面のどんな人間であろうと“猫猫空間”(猫と愛猫家が展開する一種の亜空間)を作り出す―――
そう、信じていた。
その、はずだった。
でかしたぞ、寅之助。
『別にアンタを助けようと思ってるんじゃないんだからね!ご飯の恩もあるし、仕方なく(ry』みたいなことを言いながらに足元へ擦り寄ってきた寅之助を抱き上げて、撫で回してやる。『そこーーー!そこ良いーーー!もっと撫でてーーー!』と完全に無防備になったところですでに我慢の限界のような少女へと向けた。
この手にかかれば、どんな猫でも、初対面のどんな人間であろうと“猫猫空間”(猫と愛猫家が展開する一種の亜空間)を作り出す―――
そう、信じていた。
その、はずだった。
少女の瞳から、感情が消え去った。
猫がおびえきった表情で逃げてく。
その姿を、しかし少女は追おうともせず、
ただ、暗い虚無を瞳に包むだけだった。
猫がおびえきった表情で逃げてく。
その姿を、しかし少女は追おうともせず、
ただ、暗い虚無を瞳に包むだけだった。
少女の瞳は、感情を戻していないまま。
2分ほど経っても、俺はまだ現状を理解できなかった。
・・・・・・・・・・・・・なんで?
何故、あの寅之助が、脇目も振らずに逃げ出した?
「ミサカの能力の弊害なのです、とミサカは告白します」
元気を取り戻したのか、やっと、しかし寂しさの感情を瞳に宿らせてから、少女は言った。事務的な言葉の数も少なめだった。
「電撃使いはその能力ゆえに常時微弱な電磁波を発生させるのです、とミサカは解説を行います」
その先は、俺にも分かった。人間には感知できなくても、感覚が鋭敏な小動物はそれに怯えてしまうのだろう。
そして彼女は、大好きな猫に、猫好きだからこそ、触れることが出来ないのだろう。
――――何てこった。
俺は、思わず笑い出してしまった。
――――今まで一度も信じたことの無い神様に会ってみたくなった。
少女はそんな俺を訝しげに見てきた。
――――そしてその面に向かって、言ってやりたかった。
その、まだ寂しさの残る瞳を見つめ返す。
2分ほど経っても、俺はまだ現状を理解できなかった。
・・・・・・・・・・・・・なんで?
何故、あの寅之助が、脇目も振らずに逃げ出した?
「ミサカの能力の弊害なのです、とミサカは告白します」
元気を取り戻したのか、やっと、しかし寂しさの感情を瞳に宿らせてから、少女は言った。事務的な言葉の数も少なめだった。
「電撃使いはその能力ゆえに常時微弱な電磁波を発生させるのです、とミサカは解説を行います」
その先は、俺にも分かった。人間には感知できなくても、感覚が鋭敏な小動物はそれに怯えてしまうのだろう。
そして彼女は、大好きな猫に、猫好きだからこそ、触れることが出来ないのだろう。
――――何てこった。
俺は、思わず笑い出してしまった。
――――今まで一度も信じたことの無い神様に会ってみたくなった。
少女はそんな俺を訝しげに見てきた。
――――そしてその面に向かって、言ってやりたかった。
その、まだ寂しさの残る瞳を見つめ返す。
――――そう、神様に向かって、こう言ってやるんだ。
ThanksThankyouVeryMuch!!!!!!!!!
あーりがとーーーーーーーーーーう!!!!!!!!!!!!!!
ThanksThankyouVeryMuch!!!!!!!!!
あーりがとーーーーーーーーーーう!!!!!!!!!!!!!!
そして言う。
「それ、訓練すれば克服できるぞ」
え?と、少女の動きが止まる。
「それ、訓練すれば克服できるぞ」
え?と、少女の動きが止まる。
俺の使命は、猫好きに、猫の、この素晴らしい温かさを伝えることだ。
目の前の少女に、
俺の手によって、
俺だけが、その使命を果たすことが出来る。
その瞳の寂しさを消し去ることが出来る。
目の前の少女に、
俺の手によって、
俺だけが、その使命を果たすことが出来る。
その瞳の寂しさを消し去ることが出来る。
―――その瞳に、絶えない喜びを灯らせてやる。
そんな素敵な事をやってやろうと思った。
自分になら出来ると、そう信じていた。
少女が瞳に包む暗い虚無の、その本当の理由も知らずに。
自分になら出来ると、そう信じていた。
少女が瞳に包む暗い虚無の、その本当の理由も知らずに。