とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

3-03

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匿名ユーザー

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(3-11)
ついに『超機動少女カナミン=ダイバージェンス=』ショーが始まった。
あらすじはクラウンパレスの玉座に隠された秘宝『ブルークリスタル』を狙う怪人コック
ローチン(ゴキブリ男)をカナミンがやっつけ改心させるというものだ。
伏線も謎解きもないシナリオライターのやる気の無さをヒシヒシと感じさせる一品である。
そして舞台上では怪人が王女を人質に取り王妃から秘宝『ブルークリスタル』を脅し取ろ
うとしていた。

「うわっはっはーっ!我が名は怪人コックローチン!
 王妃よ!王女を死なせたくなければおとなしく秘宝『ブルークリスタル』を渡せ!」

その時静まりかえった会場に澄んだ少女の声が響き渡る。

「そんなことはさせない!」
「だっ、誰だ!?どこにいる!?」

こういうショーでのお約束通り、怪人は折角の人質(王女)を放り出すと声の主を探して
観客席の小学生に「お前か!?」などと尋問し始めた。
するとまた会場に少女の声が響き渡る。

「へーんしーん!」

そしてスピーカーから流れだす『超機動少女カナミン』のテーマ曲。
すると突然空中にカナミンが現れ、舞台上手に建つ塔の先端にヒラリと舞い降りた。

「超機動少女(マジカルパワード)カナミン!華麗に見参!」

登場したカナミンの決めセリフに観客席の小学生達から大きな声援と拍手が沸き上がる。

「わーっ!」
「きゃーっ!」
「カナミ────ン!」

その小学生達の声援を遮るように怪人の叫び声がこだまする。

「出たな!カナミン。これでも喰らえ!!」

そう叫ぶなり怪人が舞台下手に置かれていたロケットランチャーを肩に担ぐと、ボッシュッ!
という大きな発射音が鳴り響き、ロケット弾(学園都市製高性能ペットボトルロケット)
がカナミンめがけて飛び出した。
対するカナミンも怪人に対抗して次々と魔法を繰り出していく。

「イージスフィールド!」

カナミンの前面に薄紫色に輝く魔法障壁が展開し、飛んできたロケット弾を弾き飛ばす。

「シュプラッシュウィップ!」

マジカルステッキからほとばしる水が鞭となって怪人に襲いかかる。
水の鞭がロケットランチャーに巻き付くとカナミンはマジカルステッキを振るってそれを
怪人から奪い去った。

「クリスタルブリザード!」

カナミンの周りに何本もの氷の槍が出現しマジカルステッキの動きに合わせて怪人めがけ
て矢のように飛んでいく。
飛来する氷の槍を紙一重で避ける怪人。
そして舞台の床に突き刺さる何本もの氷の槍。

「姫神のヤツ、ずいぶんと気合いが入っているなあ」

そんな感想を漏らす上条は現在怪人の着ぐるみの中だったりする。
というのも今舞台で魔法を繰り出しているカナミンが学園都市製の立体映像などではなく
姫神秋沙が操る本物の魔法少女であり繰り出される魔法も全て本物だからだ。
だからこそ敵役は上条でなければならず、魔法が直撃する寸前に右手で魔法を打ち消し、
同時に着ぐるみに付けられた火薬の爆発と照明・音響効果によって舞台のスタッフが戦闘
の雰囲気を作り出す段取りになっていた。

しかし姫神秋沙は上条が思うような『気合いが入っている』状態ではなくどちらかというと
ご機嫌斜めであった。

(なによ。上条君ったら。御坂さん達とだけ楽しそうにはしゃいじゃって。
 私の事なんてどうでも良いんでしょ!)

先ほどの上条争奪戦において御坂姉妹に遅れをとったことを未だ根に持っていた。
確かに今回は自分だけクーラ付きの個室を割り当てられたので優遇されてはいるのだろう。
しかしどんなに快適な部屋だろうが一人っきりで飲む麦茶が美味しいはずがない。
それよりも上条と色々雑談しながら一緒に休憩時間を過ごしたかった。

しかもようやくやって来た絶好のチャンスすら目の前で御坂姉妹にさらわれてしまった。
その時は仕方ないと諦めてはみたものの御坂姉妹の控え室から楽しそうにはしゃいでいる
(?)声が壁を通して聞こえると無性に寂しくなってしまう。
でもこれは上条君のせいじゃないからと自分に言い聞かせカナミンショーが始まる時は笑
顔で「上条君。頑張ろうね」と言ってあげようと心に決め、上条が御坂姉妹の控え室から
出て来るのを廊下でずっと待っていたのだ。

それなのに飛び出てきた上条は「あっ、あの。上条君」と声をかける姫神秋沙に「悪りぃ、
姫神。急いでるから後で!」とだけ言うとさっさと自分の控え室に入ってしまった。
それでも姫神秋沙は上条の着替えが終わるのをギリギリまでドアの前で待っていた。
ただ一言「上条君。頑張ろうね」と言うために。


(3-12)
しかし結局スタッフに急かされた姫神秋沙は上条と顔を合わせることすらできずに舞台へ
向かったのだった。

(もう!上条君がギリギリまで御坂さんの控え室ではしゃいでいたからいけないのよ!)

ご機嫌斜めの姫神秋沙が打ち合わせでは1本だったハズの氷の槍をつい1ダースも上条に
投げつけたのは仕方のないことかもしれない。

小学生達は現れたカナミンが立体映像ではないことに気付くと一段と大きな歓声を上げた。
まるで『多重能力(デュアルスキル)』のようにカナミンから繰り出される七色の魔法に観
客席の小学生達は目を奪われていた。

当然これらの攻撃と受け身のタイミングは事前にしっかり打ち合わせしていたものである。
とはいえ本番では多少タイミングが狂うことがある。
その場合は上条がアドリブで対応することになっていた。
今も上条は予定と違う『シュプリームフレア』の炎を紙一重で交わしたところだった。
表面上は平静を装っていた怪人(上条)であったが内心はドキドキしていた。

(やっべーっ、今のはホントに当たるかと思った。タイミングが少しズレちまったか!?)

だが攻撃側の姫神秋沙は上条とは少し違うことを考えていた。

(あれっ!また外れた。
 どうして上条君は避けちゃうのかな!?
 心配しないで。上条君。大怪我したって私が付きっきりで介抱してあげる。
 さっきは御坂さん達と一緒だったんだから。
 この後は私と一緒にいてくれても良いでしょ。
 『癒之御使(エンゼルフェザー)』を使えば一瞬で治っちゃうけど今日は使ってあげない。
 その代わり怪我が治るまで私が心を込めて介抱してあげる。
 だ・か・ら。素直にやられなさい!)

上条の気を引くために、最初は打ち合わせより少しだけ威力の高い魔法で上条をちょっと
驚かせてやろうと思っただけの姫神秋沙であった。
しかし繰り出す魔法全てを上条が避けていくため徐々に魔法の威力は強くなり今姫神秋沙
は本来の目的を忘れかけていた。
しかも本番前に上条と話すこともできなかった寂しさが不満へと変わり、とうとう(魔法
を当てれば上条君を付きっきりで介抱できるじゃない)というちょっと過激な結論に辿り
着いてしまっていた。
そんな訳で涙目で(止めてくれ!)と懇願する上条に今度は氷の槍が雨あられと降り注ぐ。

(うひゃあぁぁぁっ!姫神。打ち合わせと違う!止めてぇぇー!)
(ちょこまかと魔法を全部かわしちゃってくれて。上条君ったらもうっ!
 私と二人っきりになるのがそんなに恥ずかしいの?
 それとも大怪我しないようにって手加減しているのがいけないのかな?
 じゃあもっと激しく攻めてあげる!」
(ひっいぃぃ!死ぬっ、死んでしまう!
 こんな魔法が一発でも当たったら上条さんは確実に死んでしまいます)

もはや、完全に当初の目的を忘れている姫神秋沙であった。
『癒之御使(エンゼルフェザー)』のおかげで内気な性格を改善できたのは良いのだが、
その反動で最近ちょっと上条へのアタックが暴走気味になっている。

シナリオ通りなら怪人がカナミンの魔法にやられるハズの予定時刻はとうに過ぎている。
しかし舞台上ではなぜか打ち合わせとは全く関係のない闘いが延々と繰り広げられていた。
もっとも攻撃するカナミンから怪人(上条)が逃げ回っているだけの状態を闘いと呼んで
良いかは別問題である。
カナミンが繰り出す連続魔法攻撃の迫力とそれを紙一重で避け続ける怪人(上条)の攻防
を観客席の小学生達は時間が経つのも忘れ手に汗握り観戦していた。
一方スタッフ達はカナミンの魔法によって舞台装置が次々と焦がされ破壊されていく様子
に頭を抱えながらもうどうにでもなれとばかりに達観するしかなかった。


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とうとうカナミンの連続攻撃を捌ききれなくなった上条がバランスを崩して転んでしまう。
そして右手をついて倒れた上条に『シュプリームフレア』の炎が放たれた。
逃げることも右手で防ぐこともできないタイミングで放たれた一撃に(これはかわせない)
と上条が覚悟した瞬間、上条を護るように舞台に細長い棒が突き刺さり『シュプリームフレア』
の炎を霧散させた。
そして会場内に「おーっほっほっほっ!」という女性の高笑いする声が響き渡った。

上条はその棒に見覚えがある。
見間違いであって欲しかったがどう見てもそれは海軍用船上槍(フリウリスピア)である。
謎の秘密結社がキシサクマアでフリウリスピアとくれば笑い声の主は一人しかいない。
上条は一瞬躊躇ったものの意を決して声の方へ顔を向ける。
するとそこには上条の予想通りの女性が立っていた。
だがその姿は上条の予想を遥かに越えるものだった。

黒革製のボンデージ風コスチュームに身を包む女性は鼻から上を黒い猫耳の付きマスクで
隠していたがその顔は五和以外の何者でもない。
そして五和のボディーラインを隠すものはビキニ程度しかなく、その小さなブラは五和の
特大オレンジ並の豊満な胸をこれでもかと強調している。
さらに背中とお尻に付いた悪魔のような小さな羽と尻尾のオブジェがエロさを醸し出す。
小悪魔エロキャットの衝撃に上条は口をただパクパクさせることしかできなかった。

一方、それまでは低学年向けキャラクターショーにいやいや付き合わされている感じのあ
った男子高校生&中学生であったが、突然現れたちょっとエロッちい悪の女幹部に彼らの
テンション降下曲線は反転急上昇する。
「ハァッ!」という掛け声と共にその女幹部が舞台に飛び降りてきた時には会場内から
「「「おっおおぉぉぉぉーっ!」」」という野郎どもの野太い歓声が沸き上がったほどだ。

女幹部は舞台に刺さった海軍用船上槍(フリウリスピア)を引き抜くと穂先をカナミンに向けた。

「私の名はブラックキャット!学園都市に制裁を与えるためにやって来た。
 覚悟しなさい。カナミン!そして我が槍のサビとなりなさい!」

上条はこのエロっちい人物が五和であることを否定する材料がもはや一つも無くなったと
悟ると思わずため息を漏らしてしまう。

「ハァーッ、おっ、お前だけはまともだと信じていたのに………………」

上条のつぶやきが聞こえたのか、女幹部(五和)は一瞬身体をビクッと震わせる。
そして小刻みに震えだした手でフリウリスピアを強く握り直すと消え入りそうな声で言葉
を吐き出す。

「私だって…………好きでこんな格好してる訳じゃありません」
「五和…………」
「いいんです。もう。どうせ私はこんな汚れ役がお似合いなんです。ふふっ
 うふっ、うふふふっ、ハハッ、はーっはっはっ──────っ!

とうとう大切な何かを吹っ切ってしまった悪の女幹部(五和)は大声で戦闘開始を告げた。

「えぇぇ───い。こうなったら矢でも鉄砲でも持ってきなさい!
 誰だろうが私がギッタンギッタンに叩きのめしてあげます。さあ掛かってらっしゃい!」
「ええ!そうしてあげる!」

大見得を切る女幹部に応えたのはカナミンではなく舞台奥の王座に座るキツネの王妃だった。
その右手が激しく放電したかと思うと斜め上方に目映い閃光が突き抜けた。
そして一瞬遅れて耳をつんざく爆音と衝撃波が舞台上を駆け抜ける。
突然の衝撃波にバランスを崩し掛けた女幹部であったがとっさに床にフリウリスピア突き刺して何とか凌いだ。
閃光が秋晴れの空に吸い込まれると静寂の戻った舞台上にキツネの王妃とウサギのお姫様
の声が響き渡る。

「ふふふっ、いつまでこんな着ぐるみの中で待機してなきゃいけないのかとムシャクシャ
 していたんだけど、これでもう思いっきり暴れても良いのよね」
「クラウンパレスの王妃と王女というのは世を忍ぶ仮の姿、その正体は学園都市の平和を
 守る『雷光の双子(ジェミニ)』!学園都市の平和を乱すつもりなら私達が許しません
 と『雷光の双子(ジェミニ)』は貴女に最後通告します」
「「とうっ!」」

掛け声と共に着ぐるみから二人の少女が飛び出した。
少女達はレオタード風ボディスーツとヘッドギアとバイザーを合わせたようなヘルメットを身に着けていた。
身体のラインが浮かび上がるレオタード風ボディスーツに沸き上がる客席の男子高校生&中学生。
しかも目元をバイザーで隠しているものの一目で美少女と分かる顔立ちに観客席はさらに
ヒートアップしていった。


(3-14)
御坂美琴達がわざわざ芝居じみた登場をしたのには訳がある。
総司令(ラストオーダー)のシミュレーションではキシサクマアの乱入により混乱した観
客が一人でも能力を使用すればそれが連鎖反応を引き起こし、無秩序に使用される能力に
よって多くの負傷者が生じるだろうと結論づけられた。
その被害を防ぐためにはキシサクマアの乱入をあたかもシナリオ通りであるかように振る
舞う必要があった。
その甲斐あってラストオーダーの思惑通り物語の急展開にも関わらず観客席の小学生達は
大きな歓声を上げている。
ついでに言えばラストオーダーがその中で一番はしゃいでいるように見えるのだが……
(それはきっと気のせいなの、ってミサカはミサカはさりげなく独り言を呟いてみる)

「これ以上の暴挙は『雷光の双子(ジェミニ)』が許しません。
 速やかに武器を降ろさなければこのサブマシンガンが火を噴きますよ
 と『雷光のブルー』は腰だめに構えた銃の引き金を絞りつつ警告を発します」

その棒読みのセリフに呆れたように「ふッ」と鼻から息が漏れるブラックキャット(五和)。
その瞬間、御坂妹はマシンガンを三点バーストでぶっ放した。
火を噴くマシンガンから排出された薬莢がカラ、カラ、カランと床で乾いた音を響かせる。
当然装填されているのは実弾ではなくゴム弾頭の模擬弾であり当たっても死ぬことはない。
だから御坂妹は躊躇無く引き金を引いたのだ。
もっともこんな至近距離から撃たれれば痛い程度では済まないのだがこの際そのことは
考えないことにした。

しかし目標への着弾を確認した御坂妹の顔に困惑の表情が浮かび上がる。
銃撃を受けたハズの五和が何事もなかったかのように舞台に立っていたからだ。
唯一の違いは心臓をガードするように引き上げられた左腕だけだろう。
その左前腕部には直径20cm程の円形楯が装着されている。
火薬量を減らした模擬弾とはいえ高速で飛んできた3発もの銃弾を五和は全て左手の円形
盾で防いでいたのだ。
そんな神懸かり的芸当をやって見せた五和が口を尖らせる。

「あのですね!こちらが返事する前に発砲するなんてちょっと非道いんじゃないですか!?」
「どうせ投降する気はないのでしょう、と『雷光のブルー』は貴女の抗議にしれっと反論してみせます」
「そうですか…………じゃあ、こちらも遠慮しませんよっと!!」

そう言うなり五和はフリウリスピアを御坂姉妹に向けて電光石火のスピードで繰り出す。
とっさに左右に飛び退く御坂姉妹。
スーツによって強化された脚力は4mを越える跳躍を可能にしていた。
御坂美琴は舞台奥へ、そして御坂妹は舞台下手に着地する。

「ではこちらも手加減しません
 と『雷光のブルー』は宣言通りにサブマシンガンをフルオートに切り替えます」

火線上に一般人がいないこと確認した御坂妹は着地と同時にフルオートでぶっ放す。
しかし五和は銃撃を避けるどころか逆に発砲する御坂妹に向かって大きく踏み込んできた。
そして円形盾を装着した左腕でゴム弾を防ぎつつ、右手一本でフリウリスピアを繰り出す。
その穂先が金切り音を立て御坂妹のマシンガンに食い込むと一気に機関部まで引き裂いていく。

その衝撃で装填中の銃弾が暴発し、「バンッ!」という大音響を響かせ機関部が爆発する。
御坂妹はとっさにサブマシンガンを手放し両腕で顔をガードしつつ後方に跳び退くものの
至近距離で爆発した銃は砕けた部品を周囲に撒き散らし、御坂妹は散弾と化した部品を
全身に浴びてしまった。
もし学園都市製スーツを着ていなかったらきっとタダでは済まなかっただろう。

不本意な形でスーツの防弾・防刃・耐爆性能試験の被験者にさせられた御坂妹はお返しと
ばかりに電撃を放つ。
御坂美琴の1%の出力とはいえ1000万ボルトもの電撃が五和を襲う。
しかしその電撃ですら五和はフリウリスピアの一振りで霧散させてしまった。
圧倒的力量差を見せつけた五和は左手を腰に当て右手に持つ槍を垂直に立てるとまるで
勝利宣言のように石突きで床をトンと打ち鳴らした。

「残念ですがその程度のオモチャではこの楯すら砕けませんよ」
「確かに正面きって闘えばこちらの勝機は0.01%以下でしょう
 と『雷光のブルー』は彼我の戦力差を正確に理解し苦虫をかみつぶしたような顔で呟きます。
 どうやら別の攻撃方法を模索する必要がありそうです」

『雷光のブルー』こと御坂妹が下手へ退場すると舞台は一瞬の静寂に包まれる。
しかし「バチン!」という破裂音がその静寂を引き裂いた。

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