「ふう・・・。」
軽くため息をついて辺りを見回しながら、式は琥珀じゃなくて小道を歩いていた。
あれから。
ぶつかった少女が調査対象の1人であることに気づいた式たちは、とりあえず彼女と
なんとか話を続けようとした。
軽くため息をついて辺りを見回しながら、式は琥珀じゃなくて小道を歩いていた。
あれから。
ぶつかった少女が調査対象の1人であることに気づいた式たちは、とりあえず彼女と
なんとか話を続けようとした。
「へえ、アクセサリー集めか。僕たちもちょうど探してたところなんだ。良かったら案内してくれない?」
「えっ?えっと、は、はい・・・。」
一瞬渋った少女の様子を幹也が見落とす訳も無い。
まだ何やら悩んでいる少女をわき目に、式に耳打ちしてくる。
「式。この子、なんか裏があるみたいだ。僕がついて行って聞き出してみるから、君は先に
滞在先の方へ行っててくれない?」
大切な話をするならば3人よりも2人きりの方が断然良い。
黒ずくめだがそれでも「まあ、あんなのもありか」ですませられ、かつ優しげな風貌でおまけに
“探す者”としての才能もある幹也と、皮ジャンに着物という奇天烈スタイルで周囲の目を引きまくり、
美人ゆえに遠い世界の人に見え、能力が破壊専門の“直死の魔眼”という両儀式。
どちらが最適かは言うまでもなかった。
「えっ?えっと、は、はい・・・。」
一瞬渋った少女の様子を幹也が見落とす訳も無い。
まだ何やら悩んでいる少女をわき目に、式に耳打ちしてくる。
「式。この子、なんか裏があるみたいだ。僕がついて行って聞き出してみるから、君は先に
滞在先の方へ行っててくれない?」
大切な話をするならば3人よりも2人きりの方が断然良い。
黒ずくめだがそれでも「まあ、あんなのもありか」ですませられ、かつ優しげな風貌でおまけに
“探す者”としての才能もある幹也と、皮ジャンに着物という奇天烈スタイルで周囲の目を引きまくり、
美人ゆえに遠い世界の人に見え、能力が破壊専門の“直死の魔眼”という両儀式。
どちらが最適かは言うまでもなかった。
「じゃあ、案内してくれるかな。」
「あ、はい。・・・あっちの人は一緒に来ないんですか?」
「ああ、僕たち今日ここに来たばかりでね。下宿の方にも早く顔を出さなきゃいけないんだ。
でも明日から仕事だし、今日中に見つけたいなー・・・と思ってたから、役割分担さ。」
よくもまあ口からそうぺらぺらべらべらと嘘が出てくるなと呆れながら、式は歩いていく2人を見送った。
「あ、はい。・・・あっちの人は一緒に来ないんですか?」
「ああ、僕たち今日ここに来たばかりでね。下宿の方にも早く顔を出さなきゃいけないんだ。
でも明日から仕事だし、今日中に見つけたいなー・・・と思ってたから、役割分担さ。」
よくもまあ口からそうぺらぺらべらべらと嘘が出てくるなと呆れながら、式は歩いていく2人を見送った。
一応見た目は普通の少女に見えたので幹也が1人になるのを許したが、それでもあまり良い気分はしない。
幹也が調べた資料によると、彼女たちは超能力を使うために、投薬や処置によって
脳の回路を拡張しているらしい。
偶々前を歩いてきた少年に目をやる。
極々普通の高校生だった。
自分たちと何も変わらない。
それでも、『違うのだ』。
自分たちとは、決定的に。
と、ふと式は違和感を覚えた。
式の持つ“直死の魔眼”は、物の壊れやすい部分・・・「死の線」を視て、捕らえる魔眼だ。
最初の頃は能力を制御できず、見るもの全てに死の線を視てしまっていたが、今では落ち着き、
自分の意思でスイッチのオンオフができるようになった。
だが、あまり対象を凝視し過ぎると、少しとはいえ視えてしまうのだ。
それが。
『この少年には、それがない』。
いや、よく見れば、うっすらと線が浮かび上がってきた。
だが、どうしても。
少年の右手だけは、決して線が浮かび上がらない。
「・・・死の線が・・・見えないっ・・・!?」
ぎょっとして、思わず式はつぶやいていた。
それに気づき、怪訝そうな顔で少年は式を見る。
そして、式の奇怪な格好を見て、うんざりとした顔をした。
「コンビニで買ってきた雑誌が帰り道にゴミ捨て場に放置してあったのを目撃して
欝になっていた上条さんはなんかいきなり電波ゼリフを吐く皮ジャン着物女に
出会いました。・・・・・・不幸だ・・・。」
幹也が調べた資料によると、彼女たちは超能力を使うために、投薬や処置によって
脳の回路を拡張しているらしい。
偶々前を歩いてきた少年に目をやる。
極々普通の高校生だった。
自分たちと何も変わらない。
それでも、『違うのだ』。
自分たちとは、決定的に。
と、ふと式は違和感を覚えた。
式の持つ“直死の魔眼”は、物の壊れやすい部分・・・「死の線」を視て、捕らえる魔眼だ。
最初の頃は能力を制御できず、見るもの全てに死の線を視てしまっていたが、今では落ち着き、
自分の意思でスイッチのオンオフができるようになった。
だが、あまり対象を凝視し過ぎると、少しとはいえ視えてしまうのだ。
それが。
『この少年には、それがない』。
いや、よく見れば、うっすらと線が浮かび上がってきた。
だが、どうしても。
少年の右手だけは、決して線が浮かび上がらない。
「・・・死の線が・・・見えないっ・・・!?」
ぎょっとして、思わず式はつぶやいていた。
それに気づき、怪訝そうな顔で少年は式を見る。
そして、式の奇怪な格好を見て、うんざりとした顔をした。
「コンビニで買ってきた雑誌が帰り道にゴミ捨て場に放置してあったのを目撃して
欝になっていた上条さんはなんかいきなり電波ゼリフを吐く皮ジャン着物女に
出会いました。・・・・・・不幸だ・・・。」
★
幹也と美琴は、2人並んで道を歩いていた。
美琴は一応の自己紹介を終えた後、時折来る幹也の質問(学校は楽しい?とか、そんな
当たり障りのない話題)に愛想笑いを浮かべつつ、自分の知る
適当な秋葉ではなくアクセサリー店へ向かって歩いていく。
外面(そとづら)では笑顔を浮かべているが、その心は穏やかではない。
(ったくもー!よりにもよってこんな時にー!早く行かないと・・・!!)
数週間前に起きた、『残骸 “レムナント”』事件は後輩の白井黒子が巻き込まれたものの、
なんとか防ぐことができた。
だが、第2の『残骸“レムナント”』が発見されたことを知り、慌てて現場へ向かっていたところで、
この青年とぶつかってしまった。
事は一刻を争う。遊んでいられる時間は無い。
「あの、すいません。あたし、」
「君、何を隠してるの?」
用事があって・・・と続けようとしたことろで唐突にかぶせられた声。
絶妙なタイミングで、美琴の言い訳を封じた。
しかし、その彼の顔に、計算高さは感じられない。
疑うような不信の視線でも、刑事や探偵のように鋭い眼光でもなく、優しく、空っぽの容器のように、
ただ相手が真実“お茶”を話して“注いで”くれるのを待つ、黒く澄んだ瞳。
「ごめん。君が本当にアクセサリー集めをしてるように、僕は思えない。話して、くれないかな?
出会ってすぐの相手に何言ってんだって自分でも思うけどさ、君の・・・その、なんだか無理やり
苦しいのを我慢しているような顔を見てたら、放っておけなくてね。」
困ったように青年は苦笑した。
何故だか美琴は、その青年にデジャブのような胸の高鳴りを感じた。
心臓から出た血が、一瞬で耳たぶまで行ったかのような、熱を帯びる感覚。
それを一瞬で振り払い、頭の中で首を振る。
(駄目駄目。一般人を『あんな世界』に巻き込めるわけない!)
「御坂さん?」
はっと我に返り、美琴は幹也の方へ顔を向ける。
「なんでもないんです。」と言葉を紡ごうとする。
ただの青年が、自分たちのような『怪物』の世界へ足を踏み出さないために。
彼の平穏を、踏みにじらないために。
『あの世界』は、興味本位や安い同情で入って行って良い世界ではない。
「なんでも――――」
『どかねえよ。』
そこで、
唐突に、
美琴は、デジャブの正体に気づいた。
美琴は一応の自己紹介を終えた後、時折来る幹也の質問(学校は楽しい?とか、そんな
当たり障りのない話題)に愛想笑いを浮かべつつ、自分の知る
適当な秋葉ではなくアクセサリー店へ向かって歩いていく。
外面(そとづら)では笑顔を浮かべているが、その心は穏やかではない。
(ったくもー!よりにもよってこんな時にー!早く行かないと・・・!!)
数週間前に起きた、『残骸 “レムナント”』事件は後輩の白井黒子が巻き込まれたものの、
なんとか防ぐことができた。
だが、第2の『残骸“レムナント”』が発見されたことを知り、慌てて現場へ向かっていたところで、
この青年とぶつかってしまった。
事は一刻を争う。遊んでいられる時間は無い。
「あの、すいません。あたし、」
「君、何を隠してるの?」
用事があって・・・と続けようとしたことろで唐突にかぶせられた声。
絶妙なタイミングで、美琴の言い訳を封じた。
しかし、その彼の顔に、計算高さは感じられない。
疑うような不信の視線でも、刑事や探偵のように鋭い眼光でもなく、優しく、空っぽの容器のように、
ただ相手が真実“お茶”を話して“注いで”くれるのを待つ、黒く澄んだ瞳。
「ごめん。君が本当にアクセサリー集めをしてるように、僕は思えない。話して、くれないかな?
出会ってすぐの相手に何言ってんだって自分でも思うけどさ、君の・・・その、なんだか無理やり
苦しいのを我慢しているような顔を見てたら、放っておけなくてね。」
困ったように青年は苦笑した。
何故だか美琴は、その青年にデジャブのような胸の高鳴りを感じた。
心臓から出た血が、一瞬で耳たぶまで行ったかのような、熱を帯びる感覚。
それを一瞬で振り払い、頭の中で首を振る。
(駄目駄目。一般人を『あんな世界』に巻き込めるわけない!)
「御坂さん?」
はっと我に返り、美琴は幹也の方へ顔を向ける。
「なんでもないんです。」と言葉を紡ごうとする。
ただの青年が、自分たちのような『怪物』の世界へ足を踏み出さないために。
彼の平穏を、踏みにじらないために。
『あの世界』は、興味本位や安い同情で入って行って良い世界ではない。
「なんでも――――」
『どかねえよ。』
そこで、
唐突に、
美琴は、デジャブの正体に気づいた。
かつて誰にも聞こえないように『たすけて』とつぶやいた少女を助けた少年。
自身の正義を押し付けるような真似もせず、正面から少女に向かっていき、少女を信頼して、
まっすぐに向かってきた少年。
青年と少年は、同じだった。
美琴と別れたフリをしてあとをつけるでもなく、青年は正面から美琴に向かった。
良かったら、君の悩みを教えてくれないか、と。
それは、あの少年の在り方と同じだった。
この青年ならばきっと、自分の告白を受けても、何の迷いもせずに一歩を踏み出してくれる。
受ける印象が全く違う2人の間に、美琴は同一のものを感じ取った。
「っ、 ―――――ないんです。」
それでも、美琴は言葉を続けた。
この青年ならばきっと、自分の告白を受けても、何の迷いもせずに一歩を踏み出して『しまう』。
もう、来て欲しくなかった。
少年よりも優しく、少年よりも儚そうな、この青年には。
いや、本当はあの少年やあの後輩にも、来て欲しくはない。
嬉しいけれど、来て欲しくはない。
傲慢だ。
自分1人では解決できないくせに、それでも誰かの助けを拒む。
だから、妥協した。
嫌だったけど妥協した。
あの少年とあの後輩は。
けれど、コレくらいの『ワガママ』は許させて欲しい。
『アイツ』に似ているこの青年の日常を守るくらいのワガママは。
「そう・・・。」
青年は、美琴の考えが全てわかっているかのように悲しく笑い、しかしなおもしつこく
たずねるようなことはしなかった。
「・・・ああ、そう言えば用事があったんだ。ごめん、折角案内してもらってたのになんだけど、
僕、すぐ行かないと。」
まるでアクセサリー探しが美琴の悩みを聞くための口実であったかのように(事実そうなのだろう)、
幹也はそう言って、ポンと美琴の肩に手を置いた。
そしてくるりと、歩いてきた方向へ振り返る。
と、思い出したように振り返り、もう一度謝った。
「ごめんね。」
役に立てなくて。
「・・・いえ・・・。」
美琴の言葉に苦笑すると、幹也は帰り道を歩き去って行った。
「・・・・・・。」
その姿をしばらく見つめていた美琴だったが、やがて意を決したように顔を引き締めると、
幹也に背を向け、走り出した。
『自分の世界』へ。
自身の正義を押し付けるような真似もせず、正面から少女に向かっていき、少女を信頼して、
まっすぐに向かってきた少年。
青年と少年は、同じだった。
美琴と別れたフリをしてあとをつけるでもなく、青年は正面から美琴に向かった。
良かったら、君の悩みを教えてくれないか、と。
それは、あの少年の在り方と同じだった。
この青年ならばきっと、自分の告白を受けても、何の迷いもせずに一歩を踏み出してくれる。
受ける印象が全く違う2人の間に、美琴は同一のものを感じ取った。
「っ、 ―――――ないんです。」
それでも、美琴は言葉を続けた。
この青年ならばきっと、自分の告白を受けても、何の迷いもせずに一歩を踏み出して『しまう』。
もう、来て欲しくなかった。
少年よりも優しく、少年よりも儚そうな、この青年には。
いや、本当はあの少年やあの後輩にも、来て欲しくはない。
嬉しいけれど、来て欲しくはない。
傲慢だ。
自分1人では解決できないくせに、それでも誰かの助けを拒む。
だから、妥協した。
嫌だったけど妥協した。
あの少年とあの後輩は。
けれど、コレくらいの『ワガママ』は許させて欲しい。
『アイツ』に似ているこの青年の日常を守るくらいのワガママは。
「そう・・・。」
青年は、美琴の考えが全てわかっているかのように悲しく笑い、しかしなおもしつこく
たずねるようなことはしなかった。
「・・・ああ、そう言えば用事があったんだ。ごめん、折角案内してもらってたのになんだけど、
僕、すぐ行かないと。」
まるでアクセサリー探しが美琴の悩みを聞くための口実であったかのように(事実そうなのだろう)、
幹也はそう言って、ポンと美琴の肩に手を置いた。
そしてくるりと、歩いてきた方向へ振り返る。
と、思い出したように振り返り、もう一度謝った。
「ごめんね。」
役に立てなくて。
「・・・いえ・・・。」
美琴の言葉に苦笑すると、幹也は帰り道を歩き去って行った。
「・・・・・・。」
その姿をしばらく見つめていた美琴だったが、やがて意を決したように顔を引き締めると、
幹也に背を向け、走り出した。
『自分の世界』へ。
「・・・・・・・・さ、て。」
美琴が走り出したことを確認した幹也は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
ごそっ、とポケットからなにやら黒い長方形の物体を取り出す。
トランシーバーほどのサイズで、中央には円形のモニターがつき、小さな光点が1つ点滅している。
美琴が走り出したことを確認した幹也は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
ごそっ、とポケットからなにやら黒い長方形の物体を取り出す。
トランシーバーほどのサイズで、中央には円形のモニターがつき、小さな光点が1つ点滅している。
それは先ほど幹也が美琴の肩に手を置いた際につけた、発信機の位置を示していた。
「・・・・・・・。」
幹也はそれを黙って見つめる。
確かに美琴の思ったとおり、幹也はあの少年のように積極的に誰かを助けようとする人間で、
あの少年よりも優しく、あの少年よりも儚げな印象を受ける人間だ。
それは正しい。
だが、彼女は気づいていなかった。
幹也はあの少年よりも年上だった。
大人に近かった。
上条は正面から行って跳ね返されても、それでも正面から信頼して突き進む人間だった。
だが、幹也は跳ね返されれば、手段を変えて、少し汚い手段でも、次善を取る。
己のエゴのためではなく、あの少女のために。
それは裏切りであり自己の価値観の押し付けである。
だが。
「『それが何だって言うんだ。』」
今は行動を別にしている、両儀式を、想う。
半分とはいえ、一度は自分が壊した少女。
カラっぽになって、ボロボロになって、心を磨り減らした少女。
たとえどんな理由があろうとも、あんなことを繰り返して良いわけがない。
ただ、少女が学園最強のLV5であることくらいしか、彼女のことは知らない。
もしかしたら笑ってしまうくらい大したことの無い理由で、尾行してきたことを笑われるかもしれない。
あるいは、本当に重要なことだったとしても、幹也にできるようなことは何も無く、
ただの足手まといになるかもしれない。
それでも。
たとえそれでも、1%でも「少女が幹也の身を案じて誤魔化した」なんて可能性が残っている限り、
幹也は止まらない、止まれない。
ここで、「そんなわけないか」と言い訳をして逃げたなら、自分はこれから両儀式に、一体どうやって
向き合えというか。
否。
「式に顔向けできない」とか、そんなのも言い訳だ。
自分が助けたいと想うから、助ける。
結局は、それだけの話。
たとえ少女が幹也の助けを望んでいなくとも。
幹也はそれを黙って見つめる。
確かに美琴の思ったとおり、幹也はあの少年のように積極的に誰かを助けようとする人間で、
あの少年よりも優しく、あの少年よりも儚げな印象を受ける人間だ。
それは正しい。
だが、彼女は気づいていなかった。
幹也はあの少年よりも年上だった。
大人に近かった。
上条は正面から行って跳ね返されても、それでも正面から信頼して突き進む人間だった。
だが、幹也は跳ね返されれば、手段を変えて、少し汚い手段でも、次善を取る。
己のエゴのためではなく、あの少女のために。
それは裏切りであり自己の価値観の押し付けである。
だが。
「『それが何だって言うんだ。』」
今は行動を別にしている、両儀式を、想う。
半分とはいえ、一度は自分が壊した少女。
カラっぽになって、ボロボロになって、心を磨り減らした少女。
たとえどんな理由があろうとも、あんなことを繰り返して良いわけがない。
ただ、少女が学園最強のLV5であることくらいしか、彼女のことは知らない。
もしかしたら笑ってしまうくらい大したことの無い理由で、尾行してきたことを笑われるかもしれない。
あるいは、本当に重要なことだったとしても、幹也にできるようなことは何も無く、
ただの足手まといになるかもしれない。
それでも。
たとえそれでも、1%でも「少女が幹也の身を案じて誤魔化した」なんて可能性が残っている限り、
幹也は止まらない、止まれない。
ここで、「そんなわけないか」と言い訳をして逃げたなら、自分はこれから両儀式に、一体どうやって
向き合えというか。
否。
「式に顔向けできない」とか、そんなのも言い訳だ。
自分が助けたいと想うから、助ける。
結局は、それだけの話。
たとえ少女が幹也の助けを望んでいなくとも。
幹也は少女を助けたかった。
そして、彼は点滅する光点を追って、歩き出す。
奇しくもその姿は、『レディオノイズ』計画を知った当麻が美琴を探し始めた時の背中に似ていた。
奇しくもその姿は、『レディオノイズ』計画を知った当麻が美琴を探し始めた時の背中に似ていた。