とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-623

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匿名ユーザー

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「ミサカ、巫女と美琴」第3話「宿敵。その名はブラックキャット!」

(3-14)

御坂美琴達がわざわざ芝居じみた登場をしたのには訳がある。
総司令(ラストオーダー)のシミュレーションではキシサクマアの乱入により混乱した観
客が一人でも能力を使用すればそれが連鎖反応を引き起こし、無秩序に使用される能力に
よって多くの負傷者が生じると結論づけられた。
その被害を防ぐためにはキシサクマアの乱入をあたかもシナリオ通りであるかように振る
舞う必要があった。
その甲斐あってラストオーダーの思惑通り物語の急展開にも関わらず観客席の小学生達は
大きな歓声を上げている。
ついでに言えばラストオーダーがその中で一番はしゃいでいるように見えるのだが……
(それはきっと気のせいなの、ってミサカはミサカはさりげなく独り言を言ってみる)

「これ以上の暴挙は『雷光の双子(ジェミニ)』が許しません。
 速やかに武器を降ろさなければこのサブマシンガンが火を噴きますよ
 と『雷光のブルー』は腰だめに構えた銃の引き金を絞りつつ警告を発します」

その棒読みのセリフに呆れたように「ふッ」と鼻から息が漏れるブラックキャット(五和)。
その瞬間、御坂妹はマシンガンを三点バーストでぶっ放した。
火を噴くマシンガンから排出された薬莢がカラ、カラ、カランと床で乾いた音を響かせる。
当然装填されているのは実弾ではなくゴム弾頭の模擬弾であり当たっても死ぬことはない。
だから御坂妹は躊躇無く引き金を引いたのだ。
もっともこんな至近距離から撃たれれば痛い程度では済まないのだがこの際そのことは
考えないことにした。

しかし目標への着弾を確認した御坂妹の顔に困惑の表情が浮かび上がる。
銃撃を受けたハズの五和が何事もなかったかのように舞台に立っていたからだ。
唯一の違いは心臓をガードするように引き上げられた左腕だけだろう。
その左前腕部には直径20cm程の円形楯が装着されている。
火薬量を減らした模擬弾とはいえ高速で飛んできた3発もの銃弾を五和は全て左手の円形
盾で防いでいたのだ。
そんな神懸かり的芸当をやって見せた五和が口を尖らせる。

「あのですね!こちらが返事する前に発砲するなんてちょっと非道いんじゃないですか!?」
「どうせ投降する気はないのでしょう、と『雷光のブルー』は貴女の抗議にしれっと反論してみせます」
「そうですか…………じゃあ、こちらも遠慮しませんよっと!!」

そう言うなり五和はフリウリスピアを御坂姉妹に向けて電光石火のスピードで繰り出す。
とっさに左右に飛び退く御坂姉妹。
スーツによって強化された脚力は4mを越える跳躍を可能にしていた。
御坂美琴は舞台奥へ、そして御坂妹は舞台下手に着地する。

「ではこちらも手加減しません、と『雷光のブルー』は宣言通りにサブマシンガンをフル
 オートに切り替えます」

火線上に一般人がいないこと確認した御坂妹は着地と同時にフルオートでぶっ放す。
しかし五和は銃撃を避けるどころか逆に発砲する御坂妹に向かって大きく踏み込んできた。
そして円形盾を装着した左腕でゴム弾を防ぎつつ、右手一本でフリウリスピアを繰り出す。
その穂先が金切り音を立て御坂妹のマシンガンに食い込むと一気に機関部まで引き裂いた。

その衝撃で装填中の銃弾が暴発し、「バンッ!」という大音響を立て機関部が爆発する。
御坂妹はとっさにサブマシンガンを手放し両腕で顔をガードしつつ後方に跳び退く。
しかし至近距離で爆発した銃から砕けた部品が散弾銃のように御坂妹に襲いかかった。
もし学園都市製スーツを着ていなかったらきっとタダでは済まなかっただろう。

不本意な形でスーツの防弾・防刃・耐爆性能試験の被験者にさせられた御坂妹はお返しと
ばかりに電撃を放つ。
御坂美琴の1%の出力とはいえ1000万ボルトもの電撃が五和に襲いかかる。
しかしその電撃ですら五和はフリウリスピアの一振りで霧散させてしまった。
圧倒的力量差を見せつけた五和は左手を腰に当て右手に持つ槍を垂直に立てるとまるで勝
利宣言のように石突きで床をトンと打ち鳴らした。

「残念ですがその程度のオモチャではこの楯すら砕けませんよ」
「確かに正面きって闘えばこちらの勝機は0.01%以下でしょう、と『雷光のブルー』
 は現状を正確に理解し苦虫をかみつぶしたように呟きます。
 どうやら別の攻撃方法を模索する必要がありそうです」

『雷光のブルー』こと御坂妹が下手へ退場すると舞台は一瞬の静寂に包まれる。
しかし、バチン、という破裂音がその静寂を引き裂いた。


(3-15)

こちらを向きなさい、と恫喝する凶悪な音色に応えて五和は静かに破裂音の主に正対する。
そこには『雷光のレッド』こと御坂美琴の姿があった。
バチン、と再び御坂美琴の前髪から青白い火花が散るとビリビリと大気が震えだした。

「そんな戯言は私の超電磁砲(レールガン)を受けてきってから言いなさい!」

五和を睨み付ける御坂美琴の体内電圧は臨界を迎えていた。
押さえきれない電流が青白い電気の蛇となって御坂美琴の身体にまとわりつき、凶暴な音
色を立てながら獲物に牙を剥く時を今か今かと待ち構えている。
しかし臨戦態勢に入った学園都市第3位の超能力者(レベル5)を前にしても五和は不敵
な笑みを崩さない。

「ええ、受けてあげますって言いたいところなんですけど。
 貴女はレールガンを撃つことなんてできませんよ。きっと。ふふっ」
「どういうこと?」
「だって、もし私がレールガンを避けちゃったらどうなります?
 私の後ろは観客席ですよ。それでも撃ちますか?」
「くっ!…………」

確かにこんな状況でレールガンを撃つほど御坂美琴は馬鹿ではない。
先ほど控え室で暴発しかけたことは当人の名誉のため魔が差したということにしておく。
ビリビリと大気を振るわせていた凶暴な青白い蛇達が御坂美琴の身体に身を沈め始める。
しかしそれは降参を意味するものではない。

「でもね。私の攻撃はレールガンだけじゃないのよ!!」

そう叫んだ御坂美琴の身体から青白い電気の蛇たちが一気に溢れ出すと10億ボルトの雷
撃の槍となって舞台中央に立つ五和に襲いかかる。
その瞬間舞台には激しい爆音が鳴り響き、舞い上がる爆煙が視界を防いだ。

強烈な閃光と爆音に思わず目を閉じ耳を塞いでしまった観客達が恐る恐る目を開けた時、
薄まりつつある爆煙の中に全く無傷の五和が立っていた。
あり得ない状況に驚く御坂美琴は五和の50cm前方の舞台に不自然に刺さった一本の
鉛筆にも気付かない。
御坂美琴から再び雷撃の槍が放たれるが、五和を貫くハズの雷撃の槍は途中で方向をねじ
曲げるとその鉛筆に吸い込まれていった。

「なっ!?」
「避雷針、って思ってくれたら良いですよ。
 ただ魔術(オカルト)サイドのものは科学サイドのとはちょっと違いますよ。
 この鉛筆がある限り貴女の雷撃の槍は決して私には届きません」

科学的に考えれば地面に刺さった僅か10cmの鉛筆が避雷針になる訳がない。
そもそも只の鉛筆が床に深々と突き刺さっていること自体が不自然なのだ。
御坂美琴には信じ難いことだったが、相手が『魔術』と言った以上、原理は分からないが
そういう機能を果たす装置であると考えるしかない。
もし『ヒヨコ爆弾』事件において姫神秋沙から魔術の話を聞いていなければ、御坂美琴は
きっと何が起こったのかも判らない内に五和に叩き伏せられていただろう。

「わざわざご丁寧にタネ明かしまでしてくれちゃって……とことん私を舐めてるのね?」
「まさか。舐めていないからこんな事するんですよ。
 超電磁砲の雷撃をまともに喰らって無事でいられると思うほど自惚れていませんから」
「その口調が余裕綽々なのよ!だったらこれでどう?」

御坂美琴が地面に向けて降ろした右手の指を開くと地面に向けて何本もの稲妻が走る。
すると御坂美琴を中心にして黒い霧が渦を巻きながら集まってきた。
そして黒い渦が稲妻に逆らって舞い上がると長さ1mほどの黒剣を形づくる。

「砂鉄の剣(これ)でアンタのチャンバラごっこに付き合ってあげるわ」

余裕の笑みを浮かべる御坂美琴であったが内心は冷や汗ものだった。

(ふぅーッ、なんとか剣の形になったけど…………
 特設会場(ここ)は舗装されているから砂鉄が集まらない。
 もし秋沙が魔法でそこら中を破壊してくれてなかったら砂鉄のナイフしかできなかったわ。
 でも砂鉄の剣(これ)ができたからにはあんな古くさい槍なんかに負けるもんですか!)


(3-16)

切り札である超電磁砲(レールガン)と雷撃の槍を封じられた上、性能を著しく制限され
た砂鉄の剣で4m以上の長さを持つフリウリスピアと対峙しなければなくなった御坂美琴
は敵戦闘力の分析を行う。

単純な武器として比較するならば、刺突・斬撃・打撃を駆使できる強力な白兵戦用武器で
ある槍と遠い間合いで斬り合えば剣に勝ち目はない。
接近戦になれば槍はその長さが仇となるが、逆に言えば懐に飛び込まない限り剣が槍に
勝つのはできないということだ。

ただし彼女たちが持つ武器はともに普通の武器ではない。
御坂美琴が能力で造り上げた砂鉄の剣、五和が魔術的補強を施したフリウリスピアの優劣
は常識では計れない。

御坂美琴は砂鉄の剣に絶対の自信を持っている。槍の穂先だろうが簡単にぶった切ると。
ただその自信ゆえに闘い方の自由度を自ら狭めてしまった。
たとえ突き出された三つ又の穂先を砂鉄の剣で受け止めても一つの穂先を一瞬で切り落と
してしまうなら残りの穂先が勢いを落とすことなく自分に突き刺さってしまう。
そのことを心配する余り、刺突を体捌きでかわして槍の柄を断ち切る、もしくは相手の懐
に潜り込に相手に斬りつけるという選択肢しか残らなかった。
どちらにしても体捌きのみで槍の刺突をかいくぐる必要があった。

確かに御坂妹を軽くあしらった技量は決して侮ることはできない。
無駄と思えるほど長い槍をわざわざ持っている以上は懐に飛び込まれないための対策も
当然練っているハズだ。

それでも御坂美琴には自信があった。
なんと言っても今着用しているのは学園都市製のバトルスーツである。
そのパワーアシスト機能は筋肉へ伝達される筋電信号に反応しタイムラグなく通常の5倍
の力を引き出してくれる。
そして生みだされる瞬発力は相手を惑わすほどのダッシュや方向転換を可能にしている。
相手の予想を越える素早い動きで刺突をかわして懐に飛び込むつもりであったし、いざと
なればスーツの防弾・防刃・耐爆性能に頼った強引な突進も試みるつもりだった。

一方、相手はビキニアーマーも真っ青な、どう見ても防御力の低そうなボンテージ風
ファッションに身を包んでいる。
というよりは、露出狂と言った方が手っ取り早いだろう。
ほとんど素肌を晒しており、僅かに素肌を隠す素材ですら革製にしか見えない。

(なんなのよ、あの格好!
 そりゃ動きやすいかもしれないけど、どう考えても防御力0(ゼロ)よね)

防具に関しては私の完勝よね、と余裕の御坂美琴はつい余計なモノまで分析してしまった。

(ぐッ!トップ88cm、Dカップ…………)

バストサイズに関しては御坂美琴の完敗であった。

(巨乳(それ)を私に見せつけるためにわざわざそんな露出度の高い格好をしたってこと?
 …………いい気になるんじゃないわよ。この巨乳女がァァあああああ!
 こうなったらAカップの意地にかけてアンタを叩きのめしてやる!!)

闘志が燃え上がった御坂美琴は五和に最後通告を突きつける。

「おとなしく降参するなら許してあげるけど、その気はないのよね。
 でもね。この砂鉄の剣って一種の超音波ブレードなの。
 高速で振動する砂鉄は鋼鉄だって一瞬でぶった切るわ。
 あなたの槍なんて触れただけで真っ二つよ。それでも良いなら掛かってきなさい!」

投降を促す御坂美琴に対して五和もニッコリと微笑み返す。

「それはご親切にありがとうございます。では遠慮無く!」

ゆっくりと傾き始めたフリウリスピアの穂先が御坂美琴に向いた瞬間、五和は電光石火の刺突を繰り出した。

五和が繰り出した雷光のような刺突を身体を捻って辛うじて避けた御坂美琴であったが、
予想を超えた刺突の速さにバランスを崩してしまう。

(くッ、速っ!ひとまず体勢を整えないと)

御坂美琴は体勢を立て直すためいったん後方に大きく跳び退く。
御坂美琴がスーツの力を借りて跳躍した距離は4mもあった。
しかし五和は生身とは思えないスピードで一気にその間合いを詰めると、着地の瞬間を狙って再び刺突を繰り出す。
体勢を立て直す隙もなく御坂美琴は着地と同時の左サイドステップで辛くも槍の穂先をかわす。


(3-17)

それでも五和は追撃の手を弛めない。
五和は突き出した槍の柄を脇で挟むとそこを支点として右手一本で槍を水平に払い御坂美
琴の横っ面に穂先を叩き込む。
紙一重で身体を沈めた御坂美琴の頭の直ぐ上をフリウリスピアの穂先がうなりを立てて通過する。

(なっ、なんなのよ。コイツ。スーツを着た私の動きに付いてくるなんて…………
 本当に人間!?まさかサイボーグじゃないでしょうね?)

御坂美琴は五和の攻撃を何とか紙一重でかわしているがこのままではジリ貧なのは間違いない。
どうやって反撃しようかと考えたとき一瞬の隙が生まれてしまった。
気付いたときにはフリウリスピアの三つ又の穂先が御坂美琴の視界に飛び込んでいた。
御坂美琴は思わず砂鉄の剣を眼前にかざしフリウリスピアを受け止める。
「ガキッ!キィィィィィィィィッ!」と特設会場内に金属が擦れ合う甲高い音が鳴り響く。
そして高速で振動する砂鉄の剣とぶつかり合うフリウリスピアの穂先が盛大に火花を散らす。

(えっ!?)その時御坂美琴は驚いた顔をしていたに違いない。
御坂美琴は古くさい槍の穂先なんて砂鉄の剣で簡単にぶった切れると思っていた。
だからこそ槍の穂先をわざわざ体捌きだけで避けていたのに現実には槍の穂先は砂鉄の剣
と打ち合ってもビクともしなかった。

(なんなのよ。砂鉄の剣と打ち合ってもびくともしないなんて…………
 一体どんな合金使ってんのよ!?それとも硬質多層膜コーディング?
 とにかくこの距離は完全に槍の間合いだわ。
 どうにかして懐に飛び込まないと私の切っ先はコイツに届かない。
 コイツがこの槍を引き戻す時がチャンス!タイミングを合わせて跳び込んでやる)

激しく鍔迫り合いしながら美琴は五和が槍を引く予兆を読み取っていた。
そして五和の右肩の筋肉がピクリと動いた瞬間、御坂美琴は引き戻される槍に合わせ一気に五和の懐に飛び込む。

その時御坂美琴の目には後ろを振り返る五和の背中が映ったのだが、とっさのことに御坂
美琴はそれが何を意味するのかが判らなかった。
それでも右から迫る殺気が身体を貫くと御坂美琴は歯を食いしばり前進を踏みとどまる。
そして急激な方向転換に悲鳴を上げる脚の筋肉を強引に動かしスーツの力も借りて後方へ跳躍する。

同時に御坂美琴の胸元僅か数mm先を横薙ぎに払われた穂先が「ビュッ!」と風切り音を立てて通り過ぎる。
五和は御坂美琴が飛び込んでくることを予測し、引き戻した槍の勢いに身体の捻りを加えて槍の中央を脇に挟んだまま身体ごと一回転したのだ。
もしそのまま飛び込んでいたら御坂美琴は槍の穂先に胴を薙ぎ払われていただろう。

(痛うぅっ!あっぶなかっ…………げっ!)

しかし御坂美琴には脚の痛みを気にするどころか冷や汗をかく隙も与えられなかった。
御坂美琴の目の前で槍の穂先が回転の勢いを殺さずに左上方に跳ね上がると五和の頭上で
弧を描くように大きく旋回する。
遠心力を使ってさらに加速した穂先が右斜め上から御坂美琴に袈裟懸けに叩きつけられる。

白い光の尾を引いて流れる槍の穂先を御坂美琴は右前方に肩から倒れ込むように一回転してかわした。

(いつまでもいい気になってんじゃないわよ!)

今度は御坂美琴が攻撃に移る。
御坂美琴は回転した勢いで素早く上体を起こすと膝立ちのまま五和の足首を狙って砂鉄の
剣を横一閃に振り抜く。

「ちっ!」っと舌打ちした五和は御坂美琴の斬撃を2mも跳び上がってかわす。
そして上空から御坂美琴に全体重を掛けた一撃を叩き込む。
御坂美琴は上空から襲いかかる一撃をとっさにもう一度身体を側転させてかわす。

紙一重でかわしたフリウリスピアの穂先は「グァシィィッ!」と音を立てまるでバターに
熱いバターナイフを突き刺すようにコンクリートの床に深々と突き刺さった。

「もらったあぁぁぁぁ!」

御坂美琴は回転した勢いも使って舞台に突き刺さったフリウリスピアの柄に砂鉄の剣を叩き込む。

しかしフリウリスピアの柄は「ガキィィィィッ!」と悲鳴のような金切り音をあげたもの
の砂鉄の剣の一撃を受け止めた。

(えっ!?一体なんなの?この槍!柄もただの木じゃないってこと?)

着地した五和がフリウリスピアを引き抜くと、呆然としてしまった御坂美琴の一瞬の隙を
狙って穂先を螺旋のように回転させて砂鉄の剣を跳ね上げる。
(あっ!)と御坂美琴が我に返った時、その胴はガラ空きになっていた。
その無防備な胴にフリウリスピアの穂先が叩き込まれる。

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