嘘予告『とある二人の切札遊戯(アクセラレーション)』
状況は絶望的だった。
自軍の陣地は無残にも焼け爛れ、石ころ一つ残っていない。屈強な兵士達も、神秘の魔術師達も、魔具も罠も全て白き龍の一撃で消し飛んでしまった。
“彼”は絶望に霞む目で、せめてもの抵抗をと正面を睨んだ。
そこには白く、白く、どこまでも白い軍団がいた。
己の剣に魔力を付加させる聖騎士が。
奇襲を得意とする獣人が。
輝く翼をもつ天使が。
あらゆる防護を無にする武僧が。
そして、神々しさと荒々しさを兼ね備えた白き龍が。
理不尽なまでの暴力で吹き飛ばされておきながら、なお薄れることのない畏敬の念。
『光の正道』を名乗る最強の軍団。
“彼”はようやく理解する。
それらは持久戦に持ち込めばとか、入念に対策を用意しておけばとか、そのような浅知恵でどうにかなる相手ではなかったのだ。
それらに勝つには、理不尽を上回る不条理を以って戦うか、運を天に任せるかのどちらかしかない。
後者は自分には絶望的である。
ならば、もし次があるのなら、この身に許される最大限の不条理を掲げて立ち向かおう。
白き龍が高く首を持ち上げ、最後の攻撃を放とうとしているのを見届けながら、“上条当麻”は自身の敗北を受け入れた――
「《裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)》でとうまにダイレクトアタック! ジャッジメント・ブレス!!」
「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!」
「これで今日の晩御飯もおすしーで決定だね!」
これで十五連敗(一日三食五日分)。
潔くサイフポイントを支払って食事を用意すればいいのか、それともデッキを強化するためにつぎ込む、いやいやそれでまた負けたらいっそう悲惨なことに……
というか、俺はなんでこんなことをやってるんでせう?
◇ ◇ ◇
「“決闘王国(デュエリスト・キングダム)”?」
「そう。それが今学園都市を……いや、世界を覆っている魔術の名前だ」
いつかのように狂った世界。
ただ今回は、“結果は何も変わっていない”。
そこに至るまでの“過程”がまるっきり変化してしまっている。
つまる所。
“ありとあらゆる物事をカードゲームで解決する世界になってしまったのだ”。
「来なさい、《双頭の雷龍》!」
「触るとだだじゃァすまねェぞ! 罠発動、《カウンターマシンガンパンチ》!」
「炎の真髄をみせてやろう。《真炎の爆発》……!」
繰り広げられる決闘(デュエル)。
舞い踊るカード。
火花散る読み合い。
「《マインド・オン・エア》を召喚。あなたの手札は以後公開情報となります、とミサカは得意げに告げます」
「いつまで待っても通販で注文したあのカードは届かない……なら、“これ”で満足するしかない!」
「見とくれ! これがボクの嫁デッキや!」
学園都市は決闘都市(デュエル・シティ)と化した。
勝ち残るのは強者のみ。
生き残るのは勝者のみ。
「第一の宣言ですが、《ピケル》と《クラン》はその業績を讃えられ、王女へと位を高めます」
「《身剣一体》。傭兵崩れには過ぎた力(カード)である」
「ここが正念場です……! 《究極・背水の陣》発動!」
「こっちのほうがわたしにはあってるかな。《王立魔法図書館》の効果で一枚ドローするよ」
そして現れるカードの精霊。
“決闘者の王国”を止める方法はただ一つ。
『幻想殺し』が全ての決闘者の頂点に立つこと。
「って無理だろそれ! 俺の引き運のなさは知ってるだろ!?」
『それをカバーするのが構築力と応用力だ。なに、軽く一万戦ほどすれば嫌でも身につく』
「スパルタっ!?」
右手にカードの剣を取り、左手にディスクの盾を持て。
数多のカード、数多の決闘者。それらの運命がデッキという場所で交差する時、物語は始まる。
とある魔術の禁書目録・異伝
『とある二人の切札遊戯(アクセラレーション)』
永遠に公開未定!
終わり。
状況は絶望的だった。
自軍の陣地は無残にも焼け爛れ、石ころ一つ残っていない。屈強な兵士達も、神秘の魔術師達も、魔具も罠も全て白き龍の一撃で消し飛んでしまった。
“彼”は絶望に霞む目で、せめてもの抵抗をと正面を睨んだ。
そこには白く、白く、どこまでも白い軍団がいた。
己の剣に魔力を付加させる聖騎士が。
奇襲を得意とする獣人が。
輝く翼をもつ天使が。
あらゆる防護を無にする武僧が。
そして、神々しさと荒々しさを兼ね備えた白き龍が。
理不尽なまでの暴力で吹き飛ばされておきながら、なお薄れることのない畏敬の念。
『光の正道』を名乗る最強の軍団。
“彼”はようやく理解する。
それらは持久戦に持ち込めばとか、入念に対策を用意しておけばとか、そのような浅知恵でどうにかなる相手ではなかったのだ。
それらに勝つには、理不尽を上回る不条理を以って戦うか、運を天に任せるかのどちらかしかない。
後者は自分には絶望的である。
ならば、もし次があるのなら、この身に許される最大限の不条理を掲げて立ち向かおう。
白き龍が高く首を持ち上げ、最後の攻撃を放とうとしているのを見届けながら、“上条当麻”は自身の敗北を受け入れた――
「《裁きの龍(ジャッジメント・ドラグーン)》でとうまにダイレクトアタック! ジャッジメント・ブレス!!」
「ぎゃああぁぁぁぁぁ!!」
「これで今日の晩御飯もおすしーで決定だね!」
これで十五連敗(一日三食五日分)。
潔くサイフポイントを支払って食事を用意すればいいのか、それともデッキを強化するためにつぎ込む、いやいやそれでまた負けたらいっそう悲惨なことに……
というか、俺はなんでこんなことをやってるんでせう?
◇ ◇ ◇
「“決闘王国(デュエリスト・キングダム)”?」
「そう。それが今学園都市を……いや、世界を覆っている魔術の名前だ」
いつかのように狂った世界。
ただ今回は、“結果は何も変わっていない”。
そこに至るまでの“過程”がまるっきり変化してしまっている。
つまる所。
“ありとあらゆる物事をカードゲームで解決する世界になってしまったのだ”。
「来なさい、《双頭の雷龍》!」
「触るとだだじゃァすまねェぞ! 罠発動、《カウンターマシンガンパンチ》!」
「炎の真髄をみせてやろう。《真炎の爆発》……!」
繰り広げられる決闘(デュエル)。
舞い踊るカード。
火花散る読み合い。
「《マインド・オン・エア》を召喚。あなたの手札は以後公開情報となります、とミサカは得意げに告げます」
「いつまで待っても通販で注文したあのカードは届かない……なら、“これ”で満足するしかない!」
「見とくれ! これがボクの嫁デッキや!」
学園都市は決闘都市(デュエル・シティ)と化した。
勝ち残るのは強者のみ。
生き残るのは勝者のみ。
「第一の宣言ですが、《ピケル》と《クラン》はその業績を讃えられ、王女へと位を高めます」
「《身剣一体》。傭兵崩れには過ぎた力(カード)である」
「ここが正念場です……! 《究極・背水の陣》発動!」
「こっちのほうがわたしにはあってるかな。《王立魔法図書館》の効果で一枚ドローするよ」
そして現れるカードの精霊。
“決闘者の王国”を止める方法はただ一つ。
『幻想殺し』が全ての決闘者の頂点に立つこと。
「って無理だろそれ! 俺の引き運のなさは知ってるだろ!?」
『それをカバーするのが構築力と応用力だ。なに、軽く一万戦ほどすれば嫌でも身につく』
「スパルタっ!?」
右手にカードの剣を取り、左手にディスクの盾を持て。
数多のカード、数多の決闘者。それらの運命がデッキという場所で交差する時、物語は始まる。
とある魔術の禁書目録・異伝
『とある二人の切札遊戯(アクセラレーション)』
永遠に公開未定!
終わり。