とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-400

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匿名ユーザー

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(3-8)
一方の上条と御坂美琴はミサカネットワークにおいて不穏な計画が進行中であることなど
露知らず未だ互いの顔を直視できずにいた。

(落ち着け!落ち着くんだ。上条当麻。
 いくらブラジャーが透けて見えたからっていっても相手(御坂)は中学生だ。
 そう、冷静になれ!
 確かに御坂は美少女だ。それは認めよう。
 だからって発育途上の中学生の胸に高校生がときめくっていうのはマズイ。
 いくら濡れたTシャツが張り付いてあんなにはっきり胸の輪郭が見えたからって……)

冷静になろうとする上条であったが脳裏に御坂美琴の胸の輪郭がフラッシュバックする度
心臓はドックンドックンと激しく脈打ち戻り掛けていた顔の赤みも再び増してしまう。
(だあぁぁっ!)
思わず頭を激しく振り妄想を追い払おうとする上条であった。
(この状況はマズイ。早く別の話題を見つけないと上条さんはどうにかなってしまいます。
 何か別の話題…………そうだ!)

「そう言えば、さっきは観客席に男子中学生とか高校生とかも結構いたよな」
「そっ、そういえばそうだったわね。ハハッ」
「ここのショーってそんなに人気があるのか?」
「さあ?私はテレビってあんまり見ないからよく知らないけど高校生にも結構な数の隠れ
 カナミンファンがいるらしいわよ。
 でも遊園地のショーにまでやって来る物好き(マニア)は少ないと思うんだけど……」

「じゃあ、何でだろう?」
「本日当遊園地にて第3学区の小・中・高校による合同交流会が行われるとの情報があり
 ますので高校生達は小学生の付き添いだと推測します、とミサカはさりげない素振りで
 お姉様と当麻さんの会話に割り込んでみます」

「そうか。今日は暑いから大変だろうな。まあ俺達よりはマシだろうけどさ」
「それならもう一杯スポーツドリンクをあげるからそのカップを持ちなさい!」
「おっ、サンキュー。ゴクゴク…………プファァアー、ふぃぃーっ」
「プファァ、ふぃぃーって、アンタは居酒屋の酔っぱらいサラリーマンか!?」
「てやんでぇ!あたしゃ酔っちゃいませんよ。御坂の旦那も一杯どうです?ヒック!」
「バカッ!もう何でアンタはそんなにノリが良いのよ!」

話題が替わったおかげで上条はようやく御坂美琴にいつもの軽口が言えるようになった。

「悪りぃ。悪りぃ。それだけお前のスポーツドリンクが美味いってことだよ」
「えっ、あっ……………………ありがとう」

上条の褒め言葉に思わず顔を赤らめてしまう御坂美琴であった。
いつものように無自覚に女心をくすぐる上条当麻。本当に罪な男である。

「そうだ、さっきも言ったけど俺だけ飲むのは申し訳ないからお前も飲んでみなよ」

上条は半ば強引に御坂美琴にカップを渡すと御坂美琴から水筒を受け取り、そのカップに
スポーツドリンクを注いでいく。
その様子を何気なく眺めていた御坂美琴はある重大なことに気付いた。

(あれ!?……………………
 このカップってさっきコイツが使ったやつよね。…………
 はっ!ということはこれってラブコメ漫画お約束の『間接キス』イベント!?)

とたんに御坂美琴の心臓は激しく鼓動し始める。
ドキドキと高鳴る鼓動が上条にも聞こえているのではないかと御坂美琴は身体を強張らせた。
しかしスポーツドリンクを注ぐ上条に気付いた様子はなく御坂美琴はホッと胸を撫で下ろした。
ならば気付かれる前にコト(間接キス)を済ませてしまおうと上条が注ぎ終わるのを今か
今かと待っていた。
しかし穴も空かんばかりにカップを見つめる御坂美琴はある重要な見落としに気付いた。
御坂美琴は正面の上条から渡されたカップをそのまま持っていた。
ということは上条が口を付けた部分は必然的に御坂美琴から最も遠い場所になる。

(あっ! しまった。
 でもいまさら唐突にカップを半回転させたりしたら不自然よね、きっと。
 どうしよう?……………………そうだ!
 一旦カップを机に置いてちょっと会話してからさりげなく持ち直せば良いんじゃない。
 ナイスアイデア!さすが美琴さん!)

御坂美琴は手に持ったカップをさりげなく机の上に置くために上条に話しかけた。

(3-9)
「そうだ!これの作り方だけど次の金曜日に私がアンタの下宿に行って教えてあげる」
「えーっ?金曜日!?」
「なによーっ!そんな顔して。なんか予定でも入ってんの?」
「いや、別に予定はないけどさ……」

「じゃあ、良いじゃない。次は土曜日で学校は休みなんだし丁度良いでしょ」
「なにが丁度良いんだよ!」
「えっ、イヤね!そんな意味じゃなくて…………ほら!アンタだって女の子が下宿に来る
 んだからそれまでに色々片付けなきゃなんないことがあるんじゃないの?」
「バカ野郎!俺の部屋に御坂に見られて恥ずかしいもんなんてねえよ!」

そう言いつつ上条はインデックスをどうしようかと思考をフル回転していた。
そして結局(ここは小萌先生に頼んでインデックスを泊めてもらうしかない)という妹
達(シスターズ)の推測通りの結論に達していた。

一方、御坂美琴は目の前で上条が何か考え事を始めた今がチャンスとばかりにカップにそ
っと手を伸ばす。
しかしあるハズの場所にカップはなく伸ばしたその手はむなしく宙を切っていた。
御坂美琴が(なんで?)っと周囲を見回すとなぜかカップは御坂妹が持っていた。

「お姉様が飲まないのならこのスポーツドリンクはミサカが頂きましょう、とミサカは
 お姉様に反論の隙を与えず一気に飲み干します」

そう言って御坂妹は上条が口を付けた側に口を付けてスポーツドリンクを飲み干した。
予期せぬ展開に御坂美琴は一瞬言葉を失ってしまった。

「な”っ!
 なんてことすんのよ!アンタはああぁぁぁ!」
「はっ?何のことでしょう?
 お姉様。食べ物を粗末にするともったいないお化けが出るのですよ
 とミサカはお化けという非科学的事象を引用してミサカの正当性を主張します」
「誰も飲まないなんて言わなかったでしょ!」
「「……………………」」

二人とも無言ではあったが(お姉様の魂胆などお見通しです)と挑発するミサカ妹の視線
と(あとで憶えてなさい)と凄む御坂美琴の視線が見えない火花を散らせていた。
しかしこの緊張感溢れる状況にあっても上条は朴念仁らしくピント外れのことを言ってし
まう。それがどれだけ御坂美琴を追い詰めることになるのかも知らずに。

「おいおい、ちょっと待て!たかがスポーツドリンク一杯で姉妹ゲンカしなくても」
「うっさい!アンタは黙ってて!」
「そんなに怒るなって!御坂妹だってノドが渇いてたんだと思うぞ。
 御坂妹、どうだ美味かったろ?」
「美味しいです!特にこのカップで飲むと美味しさが倍増します、とミサカは余韻を楽し
 むようかのような表情で絶賛します」

「じゃあ、御坂にちゃんと礼を言わないとな」
「ご馳走様でした。当麻さん!とミサカは頬を赤らめながら当麻さんにお礼を述べます」
「いや、だから俺じゃなくて御坂に礼を言えって!」
「ご馳走様でした。当麻さん!と言っているのに当麻さんはまだ気付かないのですね、と
 ミサカはやはりこの人は筋金入りの朴念仁なのですねと嘆息しつつ呟きます。
 間接キスですよ間接キス、と鈍感な当麻さんにも判るよう単刀直入に説明します」
「へっ?」

上条は一瞬何を言われたのかが判らなかった。
(カンセツキス?官設奇数?関節鱚?間接キス…………キスううぅぅぅ!?)
頭の中で四回繰り返しようやく事態を飲み込んだ上条は顔を一気に赤らめた。

「ばっ、バカ野郎!年上をからかうんじゃない!ははっ、
 御坂妹のヤツ、おかしなこと言ってるよな。なあ御坂…………って、御坂?」

その時御坂美琴は少し俯いたまま両膝に置いた手をぎゅっと固く握りしめていた。
上条に声をかけられて御坂美琴は紅潮した顔を上げた。
その口元はギュッと結ばれており少し涙を浮かべた目は訴えるように上条を見つめている。
何かを思い詰めたような御坂美琴の様子に上条も心配になった。

「どうした、御坂?」
「わっ、わっ、わたしはねぇぇぇぇ!」

御坂美琴はそう叫ぶなり御坂妹からカップを奪い取って手酌でスポーツドリンクを注ぎ出す。
(一体何事なんだ?)と戸惑う上条の前で、それを一気飲みすると今度は上条を睨み付け
手に持ったカップを半回転させてから上条に差し出した。

「えーっと、これは?」
「受け取りなさい!」
「はあ?」
「なによ!アンタは美琴さんの酌が受けられないっていうの!」

上条に強引に押しつけたカップにスポーツドリンクを注ぐとまたしても上条を睨み付けた。

(3-10)
上条は御坂美琴が何か思い詰めていることは判っていたがその理由に見当がつかなかった。

(えっーと、この状況ってこれを飲めってコトだよな。
 でもこのまま口を付けたら今度は御坂と間接キスになるんじゃねえのか?
 御坂妹といい御坂のヤツといい、一体どうしちまったんだ?
 まさか、これって何かのトラップってことじゃないよな?
 本当にこのまま飲んじまって良いのか?
 どうする?上条当麻)

さりげなくカップを回そうものなら御坂美琴の突き刺すような視線が上条を牽制する。
(飲みなさい!)と凄む御坂美琴の迫力にとうとう(ええい、もうどうにでもなれ!)と
上条はそのスポーツドリンクを一気飲みしてしまった。

すると御坂美琴は上条が飲み終えたカップを奪い取りまたしても半回転させると自分で注
いだスポーツドリンクを一気に飲み干し上条を睨み付けた。

「どう?これで判った?」
「えっ?どうって……………………良い飲みっぷりだね…………とか?」

その瞬間御坂美琴から10億ボルトの雷撃の槍が放たれた。
とっさに上条がそれを右手で打ち消せたのは骨の髄までしみこんだ条件反射のおかげだろう。

「おっ、おまえなあ。今のは普通死ぬぞ!」
「ア、ア、ア、アンタってヤツはあぁぁぁ!」

顔を真っ赤にした御坂美琴は握りしめた右拳をワナワナと震わせている。
御坂妹の挑発にとことん追い詰められた挙げ句、一生(13年)分の勇気を振り絞って告
白したつもりが「良い飲みっぷりだね」では御坂美琴も浮かばれない。
とはいえ余りに回りくどい上にほとんど相手を脅迫している先ほどのやりとりを告白と呼
べるのかどうかは意見が分かれるところであろう。
とことん恋愛に不器用なツンデレガール御坂美琴であった。

「や、やめろ!御坂。
 こんな狭い部屋で超電磁砲(レールガン)なんてぶっ放そうとするんじゃない」
「うるさい!アンタなんかいっぺん死んじゃいなさい!」

必死の告白を気付いてもらえなかった恥ずかしさで御坂美琴は今自分がいる場所を忘れていた。
万一上条が超電磁砲(レールガン)を受け損なった場合、観客で溢れる特設会場にどんな
被害がでるかわからない。
普段であれば御坂美琴がこんな場所で超電磁砲を使うことなど絶対にあり得ない。
だが今は必死になだめようとする上条の目の前で御坂美琴の右手は急速に放電量を増し続
け、もはや超電磁砲の暴発は避けられないように思われた。
しかし超電磁砲の暴発は遊園地スタッフのちょっと間の抜けた館内放送によって回避された。

「もうすぐ『カナミンショー』開演の時間で~す。出演者の皆さんはスタンバイして下さ~い」

その間の抜けた呼びかけに緊張の糸を切られた御坂美琴の放電は急速に収束していった。
上条もここぞとばかりにたたみ掛ける。

「ほっ、ほら!もうすぐ出番だって!御坂も御坂妹もそろそろ準備しなきゃ!」
「聞こえてるわよ!
 あーっ、もう!わかったわよ!
 でもね。この件は後でキッチリ話をつけるから覚悟してなさい!」
「ああ。わかった。わかったから。なっ!」
「じゃあ、私達は着替えるからアンタも早く着替えてらっしゃい!」

こうして遊園地クラウンパレス史上に残る怒濤の『カナミンショー』の幕が切って落とされた。

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