とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-352

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匿名ユーザー

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インデックス、と今も呼ばれる少女が居る。
本名などもう覚えていないし、今ではこの名前の方が馴染み深い。
だから、調べれば判るかもしれない本名も、調べようとは思わなかった。
と言うより、今現在、彼女の頭は別のことで悩んでいた。
「…困った…、調子に乗って買いすぎちゃったかも」
いっぱいに詰まった買い物袋が二つ三つ。
一年前は家事など縁も所縁も無かった彼女だが、今ではその料理の腕は折り紙付きである。
が、家主がレベル6になって莫大な奨学金をもらえる様になった今でも、長年(現在進行中)染み付いた不幸体質から来る倹約姿勢は健在で。
そんな環境で教育された十万三千冊の魔道書を記憶する家事手伝いは、特売の戦利品のビニール袋4袋を前に腕組みをしていた。
「…困った。困ったよー」
言いながら、袋から一本のキュウリを取り出す。
「人が困ったって言ってるんだよ、ステイル!」
投げ放たれたキュウリは芸術的なブーメラン曲線を描いて裏路地への角に飛び込み、
「ぐは!?」
ぱこん、という音と共に男の悲鳴を上げさせた。
「な、何をするんだ、君は」
「そーいうステイルこそ、そんなところで何してたのか説明して欲しいかも」
「いや、単に通りがかっただけなのだけれどね」
目立たない位置から彼女の護衛をしている(つもりの)ステイルは、白々しく言う。
「うん、年頃の女の子を物陰からじっと見つめてタイミングよく現れるのは、通りがかるとは言わないかも」
「む。しかしだね、君の立場は一年前以上に微妙な――」
「世間一般では、ステイルみたいなのをストーカーって言うんだと思う」
「んな!? え、英国紳士としてそんな男の風上にも置けない真似はしない! 断じてしないぞ!?」
大慌てで誤解を解こうとするステイル。が、インデックスは半眼で彼を見上げると、
「英国紳士っていうのは、禁煙地帯でタバコを吸うの?」
「うぐっ」
「タバコさえ無かったら、インデックスさんも鬼じゃないから、ストーカーの話は水に流してあげるよ」
ステイルは咥えているタバコを意識して、手に取る。
まだ火をつけたばかり。十分吸える。何より、学園都市ではタバコが買える店が少なすぎる。
「…くっ」
「さあ、選ぶと良いよ。ここでタバコを捨てて英国紳士の看板を守るか、タバコを捨てずにストーカーだって私に追い返されるか!」
心なしかインデックスは楽しそうである。
「ああもう、仕方がない!」
「あ、ポイ捨ては禁止だよ。携帯灰皿は?」
「~~~~!!」
最近妙にこんな調子だ。そんな都合のいいものは持っていないステイルは、念入りにタバコの火を踏み消すと、わざわざ拾い上げて近くのゴミ箱に放り込んだ。
「ヨロシイ」
「全く、いつから君はそんなに喫煙に厳しくなったんだ」
「タバコの煙はよくないんだよ。食べ物だって臭いが付いて美味しくなくなるし」
「ニコチンとタールのない世界は地獄と言うんだ」
「ステイル、ステイル、そーいうのを、『負け惜しみ』って言うんだよ。とーまやみことちゃんも言ってた」
「……あいつらめ」
舌打ちするステイル。
「さ、荷物持って帰るの手伝って」
「何で僕が。しかもそれを食べるのは奴だろう」
「む、そういうこと言うなら、お礼にご馳走してあげようと思ってたけど、キャンセルになるかも」
「さぁ、行こうじゃないか。どこまで運べばいいんだい?」
インデックスの手料理という誘惑にあっさりと敗れ去った不良神父は、さっさと買い物袋を取り上げる。
「で、察するに今日の当番は君なのかい?」
「そーだよ。献立は決めてないから、特別にステイルが食べたいものを作ってあげるよ。何がいい?」
「そうだね。何でも良いが、あいつが嫌いなものをフルコースにしてくれると有難い」
「またそういうこと言う」
長身の神父と銀髪の少女は、不釣合いなバランスの中、のんびり歩いて帰っていく。

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