とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-313

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匿名ユーザー

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「あぁ、もう!不幸だぁああああああああーっ!」

学園都市の路地裏に、少年の叫び声が木霊する。

少年の名は上条当麻。
毎日が不幸のバーゲンセールだ。本日も例に漏れず、先程、地面に転がっていた空き缶を蹴り上げてしまい、たまたま怖いお兄さん達の頭に命中してしまったのである。

「待てやクソガキィィ!」
「あの学生…足速すぎだろぉぉぉ!」

後方では、絶え間なく一人また一人と脱落者が増える。それでも追跡するのが数名いる。

「早く諦めてくれ……うわっ!?」

建物と建物の間の、人が二人入れるか入れないかの、細い隙間に、突然上条は引っ張られた。

「誰もごうあ」
「……静かに、ですの」

口元を押さえられ、耳元に囁かれた。どうやら敵では無さそうだ。

「チッ…どこ行きやがった!」
「次に見かけたらぶっ飛ばしてやるぜ!」

上条がいる隙間を、不良達は通り過ぎ、胸をなで下ろす。

「いやー、助かりました……って、白井か」
「…白井か、ってなんですの。まぁ、どう致しまして」

目の前にいるのは、常盤台中学の制服にツインテールの少女、白井黒子。
腕には『風紀委員』の腕章を装着している。

「通報を受けて来てみたら……、本当に貴方は走るのが好きなんですね」
「…うっ……」

はぁ、と溜め息を吐き、呆れたように黒子は続ける。

「ここ一週間ほぼ毎日全て、貴方が不良達に追いかけ回されているのは偶然ですの?それとも狙ってやってるんですの?」
「前者です!…後者は一体どんなマゾだよ!」

どうやら自分と白井は縁があるようだ。助けにくる風紀委員が、いつも白井なのだ。腐れ縁、とでも言うのか。

「貴方、わたくしと共に行動すれば安全になると思いますけど?」

冗談のつもりで言ったのだが、返事がない。
不思議に思って、上条を見てみると、驚きの表情をしていた。

「名案じゃねーか白井!」
「納得するなーっ!ですわ!」
「ぐぇあ!」

渾身の右ストレートが上条の頬に突き刺さった。

~~~~~~~~~

結局、自分達は一緒に行動することになった。

「痛てて……」
「…少し、やりすぎました……。ごめんなさいですわ」

感情の高ぶり(と、その他お姉様関係のこと)で、結構強めに決めてしまった。

「いいって。俺の方こそ、面倒事増やしてすまない」
「えぇ…でも、一般人を守るのが仕事ですもの」

頬をさすりながら謝る上条を、手で止めさせる。

「守る、か……」

どこか遠くを見詰める上条。そんな上条を、黒子は眺めていた。

(…こうして見てみると、この方も苦労なさっているのですわね)

傷付いた拳が、教えてくれるような気がした。

「見つけたぜぇ?あんちゃん」
「たーっぷりとお礼しねぇとなぁ」

背後から、さっきの集団がじわじわと距離を詰めてくる。

「くそっ…見つかっちまったか」
上条が身構える。
だが、それより先に、黒子の凛々しい声が飛んだ。

「『風紀委員』ですの!」
「白井…!」
「言ったでしょう? 一般人を守るのがわたくし達、風紀委員だと」

真っ直ぐの眼差しで、上条に告げる。

「こんなガキ共、まとめてやっちまおうぜ!」
「うらああああ!」
「喰らいなあ!」

怒り心頭の不良達が、上条達目掛けて襲い掛かる。

「白井、背中は任せた」
「此方こそ、頼りにしてますわよ」

迎撃態勢の二人は、互いの死角をカバーしつつ、片っ端から無力化していく。

「…たあっ!」
「ぐぅ!?」
「二つ!」
「三つですわ!」
「なんだこいつら!?」
「強い!?」

一人、また一人と倒していく。

「…!」
「うおらあ!」
「ちぃ…っ!」

上条の頬を掠める拳。
すれ違い様に鳩尾に右フックをかまし、返す刀でもう一人も沈める。

「弱い狗程…よく鳴きますわ!」
「んだと!?」
「こちらですわ!」

わざと挑発的な態度を取り、敵の突進を誘う。
見事に引っかかった馬鹿の背後に空間移動し、両脚蹴りを放つ。

「ざっけんなよぉ!」
「白井!!」
「っ!?」

倒れ込む際に、悪あがきで能力を使う名も無き不良。至近距離では避けられない。直撃コース。

「やるかよ…っ!」
「ひゃっ!?」

黒子を引っ張り、抱きかかえるようにして、空いた片手で追い討ちをかける。

「むぐぉ…」

完全に沈黙する不良達。
なんとか勝ったようだ。

「はぁ……疲れた」
「あ、あの…」
「ん?」
「ありがとう、…ですわ」

上条のとっさの判断により、直撃は免れた。因みに、未だ黒子は上条の腕の中であったりする。

「お、おう…」
「…い、いつまでこうしているんです…?」
「へ…?」

いつまで…?、と質問の意図を検索し、今の自分達の状況を上条は判断した。

「ごっ…ごめん!」
「い、いえ」
「なんならまた殴っても構わないぞ?」
「そんなことしませんわ!」

慌てて、黒子は拒否した。

一息吐き、警備員に連絡する。
「これでわたくしの仕事は終わりですわ」
「お疲れ様」
「ふふ、ありがとうございますわ。…これからどうなさるんですの?」
「そうだな…」

何しようか、上条は大して用事が無い事に気づくと、急に黒子の方を向いた。

「…?」
「白井、これから暇か?」
「え?」

目の前の少年は何を言っているのだろう。
さっきの今で、不意に顔が熱くなる。

「暇なら、ちょっとゲーセンにでも行かないか、と思ったんだが……用事があるなら構わないぞ?」

ああ、そう言えばこういう性格だったか。
わたくしのときめきを返せ、と、また右ストレートを決めそうになったが、それではこの少年が理不尽なことに気付いたので止めておく。

「ええ、行きましょう。上条さん」

たまには、いいかもしれない。黒子は上条の腕を引き、二人は学園都市の人混みに紛れていった。

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