「あぁ、もう!不幸だぁああああああああーっ!」
学園都市の路地裏に、少年の叫び声が木霊する。
少年の名は上条当麻。
毎日が不幸のバーゲンセールだ。本日も例に漏れず、先程、地面に転がっていた空き缶を蹴り上げてしまい、たまたま怖いお兄さん達の頭に命中してしまったのである。
毎日が不幸のバーゲンセールだ。本日も例に漏れず、先程、地面に転がっていた空き缶を蹴り上げてしまい、たまたま怖いお兄さん達の頭に命中してしまったのである。
「待てやクソガキィィ!」
「あの学生…足速すぎだろぉぉぉ!」
「あの学生…足速すぎだろぉぉぉ!」
後方では、絶え間なく一人また一人と脱落者が増える。それでも追跡するのが数名いる。
「早く諦めてくれ……うわっ!?」
建物と建物の間の、人が二人入れるか入れないかの、細い隙間に、突然上条は引っ張られた。
「誰もごうあ」
「……静かに、ですの」
「……静かに、ですの」
口元を押さえられ、耳元に囁かれた。どうやら敵では無さそうだ。
「チッ…どこ行きやがった!」
「次に見かけたらぶっ飛ばしてやるぜ!」
「次に見かけたらぶっ飛ばしてやるぜ!」
上条がいる隙間を、不良達は通り過ぎ、胸をなで下ろす。
「いやー、助かりました……って、白井か」
「…白井か、ってなんですの。まぁ、どう致しまして」
「…白井か、ってなんですの。まぁ、どう致しまして」
目の前にいるのは、常盤台中学の制服にツインテールの少女、白井黒子。
腕には『風紀委員』の腕章を装着している。
腕には『風紀委員』の腕章を装着している。
「通報を受けて来てみたら……、本当に貴方は走るのが好きなんですね」
「…うっ……」
「…うっ……」
はぁ、と溜め息を吐き、呆れたように黒子は続ける。
「ここ一週間ほぼ毎日全て、貴方が不良達に追いかけ回されているのは偶然ですの?それとも狙ってやってるんですの?」
「前者です!…後者は一体どんなマゾだよ!」
「前者です!…後者は一体どんなマゾだよ!」
どうやら自分と白井は縁があるようだ。助けにくる風紀委員が、いつも白井なのだ。腐れ縁、とでも言うのか。
「貴方、わたくしと共に行動すれば安全になると思いますけど?」
冗談のつもりで言ったのだが、返事がない。
不思議に思って、上条を見てみると、驚きの表情をしていた。
不思議に思って、上条を見てみると、驚きの表情をしていた。
「名案じゃねーか白井!」
「納得するなーっ!ですわ!」
「ぐぇあ!」
「納得するなーっ!ですわ!」
「ぐぇあ!」
渾身の右ストレートが上条の頬に突き刺さった。
~~~~~~~~~
結局、自分達は一緒に行動することになった。
「痛てて……」
「…少し、やりすぎました……。ごめんなさいですわ」
「…少し、やりすぎました……。ごめんなさいですわ」
感情の高ぶり(と、その他お姉様関係のこと)で、結構強めに決めてしまった。
「いいって。俺の方こそ、面倒事増やしてすまない」
「えぇ…でも、一般人を守るのが仕事ですもの」
「えぇ…でも、一般人を守るのが仕事ですもの」
頬をさすりながら謝る上条を、手で止めさせる。
「守る、か……」
どこか遠くを見詰める上条。そんな上条を、黒子は眺めていた。
(…こうして見てみると、この方も苦労なさっているのですわね)
傷付いた拳が、教えてくれるような気がした。
「見つけたぜぇ?あんちゃん」
「たーっぷりとお礼しねぇとなぁ」
「たーっぷりとお礼しねぇとなぁ」
背後から、さっきの集団がじわじわと距離を詰めてくる。
「くそっ…見つかっちまったか」
上条が身構える。
だが、それより先に、黒子の凛々しい声が飛んだ。
上条が身構える。
だが、それより先に、黒子の凛々しい声が飛んだ。
「『風紀委員』ですの!」
「白井…!」
「言ったでしょう? 一般人を守るのがわたくし達、風紀委員だと」
「白井…!」
「言ったでしょう? 一般人を守るのがわたくし達、風紀委員だと」
真っ直ぐの眼差しで、上条に告げる。
「こんなガキ共、まとめてやっちまおうぜ!」
「うらああああ!」
「喰らいなあ!」
「うらああああ!」
「喰らいなあ!」
怒り心頭の不良達が、上条達目掛けて襲い掛かる。
「白井、背中は任せた」
「此方こそ、頼りにしてますわよ」
「此方こそ、頼りにしてますわよ」
迎撃態勢の二人は、互いの死角をカバーしつつ、片っ端から無力化していく。
「…たあっ!」
「ぐぅ!?」
「二つ!」
「三つですわ!」
「なんだこいつら!?」
「強い!?」
「ぐぅ!?」
「二つ!」
「三つですわ!」
「なんだこいつら!?」
「強い!?」
一人、また一人と倒していく。
「…!」
「うおらあ!」
「ちぃ…っ!」
「うおらあ!」
「ちぃ…っ!」
上条の頬を掠める拳。
すれ違い様に鳩尾に右フックをかまし、返す刀でもう一人も沈める。
すれ違い様に鳩尾に右フックをかまし、返す刀でもう一人も沈める。
「弱い狗程…よく鳴きますわ!」
「んだと!?」
「こちらですわ!」
「んだと!?」
「こちらですわ!」
わざと挑発的な態度を取り、敵の突進を誘う。
見事に引っかかった馬鹿の背後に空間移動し、両脚蹴りを放つ。
見事に引っかかった馬鹿の背後に空間移動し、両脚蹴りを放つ。
「ざっけんなよぉ!」
「白井!!」
「っ!?」
「白井!!」
「っ!?」
倒れ込む際に、悪あがきで能力を使う名も無き不良。至近距離では避けられない。直撃コース。
「やるかよ…っ!」
「ひゃっ!?」
「ひゃっ!?」
黒子を引っ張り、抱きかかえるようにして、空いた片手で追い討ちをかける。
「むぐぉ…」
完全に沈黙する不良達。
なんとか勝ったようだ。
なんとか勝ったようだ。
「はぁ……疲れた」
「あ、あの…」
「ん?」
「ありがとう、…ですわ」
「あ、あの…」
「ん?」
「ありがとう、…ですわ」
上条のとっさの判断により、直撃は免れた。因みに、未だ黒子は上条の腕の中であったりする。
「お、おう…」
「…い、いつまでこうしているんです…?」
「へ…?」
「…い、いつまでこうしているんです…?」
「へ…?」
いつまで…?、と質問の意図を検索し、今の自分達の状況を上条は判断した。
「ごっ…ごめん!」
「い、いえ」
「なんならまた殴っても構わないぞ?」
「そんなことしませんわ!」
「い、いえ」
「なんならまた殴っても構わないぞ?」
「そんなことしませんわ!」
慌てて、黒子は拒否した。
一息吐き、警備員に連絡する。
「これでわたくしの仕事は終わりですわ」
「お疲れ様」
「ふふ、ありがとうございますわ。…これからどうなさるんですの?」
「そうだな…」
「これでわたくしの仕事は終わりですわ」
「お疲れ様」
「ふふ、ありがとうございますわ。…これからどうなさるんですの?」
「そうだな…」
何しようか、上条は大して用事が無い事に気づくと、急に黒子の方を向いた。
「…?」
「白井、これから暇か?」
「え?」
「白井、これから暇か?」
「え?」
目の前の少年は何を言っているのだろう。
さっきの今で、不意に顔が熱くなる。
さっきの今で、不意に顔が熱くなる。
「暇なら、ちょっとゲーセンにでも行かないか、と思ったんだが……用事があるなら構わないぞ?」
ああ、そう言えばこういう性格だったか。
わたくしのときめきを返せ、と、また右ストレートを決めそうになったが、それではこの少年が理不尽なことに気付いたので止めておく。
わたくしのときめきを返せ、と、また右ストレートを決めそうになったが、それではこの少年が理不尽なことに気付いたので止めておく。
「ええ、行きましょう。上条さん」
たまには、いいかもしれない。黒子は上条の腕を引き、二人は学園都市の人混みに紛れていった。