とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-272

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匿名ユーザー

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(3−1)
季節外れの暑さに見舞われた秋晴れのある日、とある建物のとある一室に2人の美少女と
平凡そうな1人の男子高校生がテーブルを囲んで座っていた。扇風機がウィンウィンと音
を立てながら回っているものの少しも涼しくならないせいか彼らはイライラしている様子
だった。
そしてついに一人の美少女が大声をあげた。

「なんなのよーっ。この扱いの違いは!」
「仕方ありません、とミサカは諦め口調で呟きます」
「全くなんで私達が扇風機しかない相部屋なのよ。納得できないわ」
「何ブツブツ文句言ってやがる。俺の部屋なんてただの倉庫だぞ。窓一つねぇぞ!
 ここが気に入らねぇなら替わってやるよ」
「遠慮する。あーあ、今頃秋沙はクーラー付きの個室でくつろいでいるのよね。きっと」
「「「 はあぁぁっ 」」」

大きなため息をつく上条、御坂美琴、御坂妹であったがその姿は滑稽でしかない。
上条達は今学園都市にある巨大遊園地クラウンパレスに来ている。
とはいえ上条達は客として来ている訳ではなかった。

上条、御坂美琴、御坂妹はそれぞれライオンの王様、キツネの王妃様、ウサギのお姫様の
着ぐるみを着て特設ステージ裏の控え室にいる。
頭部を外しているとはいえ通気性の悪い着ぐるみを着た3人の額には珠の汗が光っている。
とはいえ上条達はアルバイトとして来ている訳でもなかった。

秘密結社キシサクマアがこの遊園地で行うと予告した犯行を阻止するためである。

「総司令(ラストオーダー)も何考えてんのよ。犯行予告があったんならここを休園にす
 りゃ良いだけの話じゃない。何でわざわざ相手に合わせるのかしら?」
「上位個体は『面白ければ良い』としか思っていないのでしょう、とミサカは上位個体に
 は何を言っても無駄でしょうと思いつつお姉様に相槌を打ってみます」

一週間前、画面に大写しされた男は例のごとく高笑いしたあと次の犯行を予告してきた。

「貴様達!ヒヨコ爆弾を処理したからといっていい気になるんじゃない。あんなものは
 小手調べにすぎないのよな。次の標的は学園都市最大の遊園地クラウンパレスなのよ。
 週末そこで行われるキャラクターショーに乱入してショーを見に来た子供達の夢を破壊
 してやるから覚悟しておくが良い。
 貴様達に我々の行動を止めることなぞ出来んぞ!うわっはっはっは─────っ!」
「「「「 はあぁぁぁぁっ 」」」」

例によってあまりのくだらなさにため息しか出ない上条、御坂美琴、姫神秋沙、御坂妹で
あったが総司令(ラストオーダー)だけはなぜかやる気満々だった。

「秘密戦隊『Railar(レイラ)』の諸君!
 我々は秘密結社シキサクマアの野望を打ち砕かなければならない。
 諸君の健闘を祈る、ってミサカはミサカは張り切って皆を激励してみる」
「総司令(ラストオーダー)!そんなことしなくても犯行予告があったんなら、その日は
 そこを休園にすれば良いだけでしょ。何でわざわざ相手に合わせるのよ!?」

「休園なんてしたらショーを観たいっていう子供達の夢を奪うことになるの。そうなった
 らその日を楽しみにしている子供達がどれほどショックを受けるかお姉様は想像できな
 いの?ってミサカはミサカは真剣な目でお姉様に反論してみる」
「うっ、そう言われればそうだけど………判ったわよ。やりゃぁ良いんでしょ!」
「ありがとう。それじゃお姉様達だけ働かせる訳にはいかないから今回のミッションには
 私も参加するのって、ミサカはミサカは総司令自ら現場に出動することで部下思いの一
 面を見せてみたりして」

「ラストオーダー!ホントは自分がショーを観たいだけじゃないの!?」
「えへっ!そうなの。ホントは遊園地のキャラクターショーって一度見てみたかったの
 ってミサカはミサカはキラキラ目を輝かせてつい本音を打ち明けてみる」
「それなら私達を巻き込まないで自分でお金を払って見に行けばいいでしょ!」
「だって、あの人は全然家には帰ってこないし、黄泉川も芳川も忙しいの一点張りで連れ
 て行ってくれないんだもの、ってミサカはミサカは日頃の不満をぶちまけてみる」
「あんたが普段何しているかは知らないけど、それって公私混同って言うのよ」
「それじゃあ、お姉様も納得してくれたということで本ミッションの説明を始めるのって
 ミサカはミサカは強引に話を進めてみる」
「こら!私は納得してないわよ!」

文句を言う御坂美琴を無視して総司令(ラストオーダー)の説明は続き、犯行が予告され
たこの日上条達はつつがなく遊園地クラウンパレスに送り込まれたのだった。

(3−2)
「いくら任務とはいえこんな着ぐるみ着せられたんじゃテンション下がっちゃうわね」
「学園都市とはいえ着ぐるみにまで先端技術が活用される段階には至っていないのですね
 とミサカは遠回しに暑いと愚痴ってみます」
「秘密結社キシサクマアの犯行を防ぐためだからって何で私達が着ぐるみの中に入らない
 といけないのかしら?」
「不測の事態に備えて出演者の安全を確保するためだそうです、とミサカは上位個体が口
 にした取って付けた理由を反芻してみます」
「じゃあ、観客の安全はどうすんのよ?」
「それは総司令が身体を張って警戒するから大丈夫だそうです、とミサカは上位個体を全
 く信用していない口調で報告します」
「それでラストオーダーは観客席の最前列に座っていたのね」
「違うな!あれはただ単にショーを楽しみたいだけだ。左手にジュースを持って膝の上の
 ポップコーンを右手でバクバク食ってちゃ周囲の警戒なんてできる訳ないだろ!」
「「「 はあぁぁぁぁぁぁっ 」」」

またまた3人からは長いため息が漏れた。

「本当になんで秋沙だけがクーラー付きの個室なのよ。もう!」
「仕方ありません。なんと言っても本日のショーは『超機動少女カナミン=ダイバージェ
 ンス=』ショーなのですから、とミサカは同じ文句を繰り返すお姉様にウンザリしなが
 ら同じ返事を返してみます」
「それは分かってるけど……だからってなんで私達には扇風機一台なのよ!」
「それも仕方がないことです。私達着ぐるみ隊は所詮カナミンショーが始まるまでの前座
 に過ぎませんから、とミサカはお姉様にもういい加減にして下さいって感じで呟きます」

ドンヨリとした空気が満たす上条達の控え室に遊園地のスタッフの声が響いた。

「着ぐるみ隊の皆さん。そろそろ出番で〜す!」
「「「はあぁ──い」」」

やる気の無さを醸し出す気の抜けた返事をした3人は渋々重い腰を上げた。
20分後。

「うだあぁあぁぁーっ!」

ステージ裏に戻ってきた上条は着ぐるみの頭部を外すなり絶叫した。
クラウンパレスのイメージキャラクター達によるショーが終わったステージは次のカナミ
ンショーに備えて舞台転換中であり今はスピーカーから流れる軽快な音楽が特設ステージ
を満たしている。

「なに騒いでんのよ!あんたは。鬱陶しい!」
「暑いんですよ。見て下さい。滝のように流れ落ちるこの汗!季節は秋だって言うのに何
 で今日はこんなに暑いんですか?上条さんへの嫌がらせですか?」
「先日の台風がもたらしたフェーン現象のために本日関東地方では最高気温が30℃を突
 破することが予告されています、とミサカは淡々と報告します」
「言っとくけど、私達だって暑いのよ」

「何言ってんだ!お前達なんかイスに座って手を振っていただけだろ!俺なんて会場中を
 走り回されたんだぞ。なんで王様がバク転までしなきゃなんねぇんだよ!」
「しょうがないでしょ!そう言うキャラ設定なんだから」
「もう上条さんはボロボロです。これがあと2ステージもあるだぞ。
 やってられるかあぁあぁぁぁぁっ!」
「男でしょ!諦めなさい」

廊下で上条達が騒いでいると『姫神秋沙様控え室』と書かれたドアが開き姫神秋沙が顔を
覗かせた。

「お疲れ様。上条君」

「どうして私達には労いの言葉が無いのかしら?」
「そこはかとなく感じる悪意は気のせいでしょうか?とミサカも遠回しにお姉様と同意見
 ですと呟いてみます」

御坂美琴と御坂妹の会話は無視して姫神秋沙は話を続けた。

「暑かったでしょ。上条君。
 どう?次の出番まで私の控え室で涼んでいく?クーラー効いているわよ」
「クッ、クーラー!?俺もそっちに入って良いのか?姫神」
「もちろん。それに冷たい麦茶もある」
「麦茶まであるのか?ごくっ……。姫神様!!この上条はあなた様の下僕です。
 是非とも姫神様のお部屋にぐあげはぁひゃあぁぁぁー!」

「あっ、ゴメン!手が滑ったわ」
「ゴォラーッ!御坂。どう手が滑ったら缶ジュースの中身が着ぐるみの背中に流れ込んで
 くるんだよ!?」
「不幸な偶然が重なっただけよ。アンタにはよくあることでしょ」
「あのなぁ!」
「だから謝ってるでしょ。お詫びに身体を拭いてあげるから私達の控え室にいらっしゃい」
「でも、俺はこれから姫神の……」
「いいから来なさい!!」
「ちょっと待て。イテッ!耳を引っ張るな。わっ!御坂妹まで、きゃあ──────」

あっけにとられた姫神秋沙が我に返ったのは上条の悲鳴を断ち切るように御坂達の控え室
のドアがバタン!と豪快に音を立てて閉じられた後だった。

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