とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-190

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匿名ユーザー

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(二日目)13時33分

第七学区。
『学び舎の園』の地下七〇〇〇メートルにある大施設。
核シェルターR-177。
約一〇〇〇〇人程度の人間が生活を送ることが可能な設備を持ち、施設内の人間全てが入るほどの多目的ホールがあった。中央には、巨大スクリーンがあり、地下までの有線を通して、外部の情報を得ることが出来る。
午後には、携帯食料や水が配られ、人々はそのホールに待機していた。
大半は近辺にある生徒であり、『警備員(アンチスキル)』を除けば、大人は非常に少ない。
これほどの大規模な民間人の避難は前代未聞だった。一種の緊張感に駆られ、話題のネタとしては格好のモノであろう。
しかし、
周囲は、凍りつくような静寂が支配していた。
誰一人声を上げていない。
話声も聞こえない。
カラン、と空のスチール缶を蹴った音だけが、ホールに鳴り響いた。
その異様な沈黙の中に、一人の少女が現れる。
黒いマントを羽織った長点上機学園の女子生徒、『超能力者(レベル5)』第三位、『心理掌握(メンタルアウト)』至宝院久蘭。
手すりにつまかり、自力では歩行すらままならない程、視界が揺れていた。
徐々に意識が遠のいていく。
異変を察知した彼女は、いち早くこのシェルターを回った。
厨房で料理を行っている人々も、シェルター内にあるエレベーターを警護している『警備員(アンチスキル)』も、御坂美琴によって一悶着あったエレベーターエリアも、修理の途中で人々は気を失っていた。
次々と人が倒れていく中、至宝院久蘭はその「根源」を突き止めた。
そして、理解する。
(こういうこと、だった、のですね———)
薄れゆく意識の中、彼女の心に輝くのは愛しい人の姿。
(私は——貴方に——すべてを捧げます)
光に手を伸ばした。
ただただ、彼が愛しい。
あの日から、彼女の心は上条当麻が潜むようになった。
彼の心に、至宝院久蘭がいなくとも、彼女の心には彼しかいない。
だからこそ、彼女に身に起っている事を、自ら受け止めた。
(私は、貴方を愛しています————当麻様)
そして、至宝院久蘭の意識は闇に落ちた。

同時刻。
第一八学区。
「これが…本当に能力者同士の戦い?」
「うっわー!すげえ!見てよあれ。樹木が高層ビルの中央に刺さってる!」
「竜巻が大量発生した後に、数発ミサイルをブチ込まれたってほうが納得できるね」
「バターを切るように切り裂かれているビルの光景は、むしろ芸術にすら見えます、とミサカは——」
モノレールに乗りながら、窓から見える『魔神』と『魔王』の戦いの惨状を見て声を上げる少女たちを見て、
ぶちっ。
黒マントを羽織る御坂美琴は、
「何でアンタたちがいるのよ?!てか誰!?」
と叫んだ。
その大声に、
「「「「「ほへ?」」」」」」
車内の床で、コンビニの弁当を食べる少女たちは振り向いた。
四人は黒のスーツを着込んでいるが、四人とも中学生程度の未成年であるため、服装に違和感がある。
その上、機械仕掛けの羽やら、装飾に凝ったデザインの槍やらを所持しているため、その異様さは見てとれる。
「それに風水!アンタは久蘭の傍にいるんじゃなかったの?!」
ビシィ!と指さした先には、メイド服姿の少女がいた。
栗色のフワフワした髪に、子犬のように可愛いクリクリとした瞳、身長一五〇センチ弱にして若干一四歳で九〇センチの驚異的なバストを持つ、久蘭終身専属萌えメイドこと剣多風水がそこに佇んでいた。
「私は、久蘭御姉様に命じられただけです。他意はありません。美琴御姉様」
と、一切感情を出さない表情と口調で、御坂美琴に返答した。
可愛らしい表情であるがゆえに、機械のように喋る剣多風水は、妙な迫力がある。

御坂美琴を含める少女たちは、モノレールの先頭車両に乗っていた。
席には、御坂と同じ顔をした少女たちがズラリと座っているので、八人の彼女たちは操縦席の前にある壁に寄り掛かっていた。
『妹達(シスターズ)』。
頭にはゴーグルを付け、膝にはアサルトライフルが置いてある。頭上の荷物置き場には、黒い長方形の箱が規則正しく置かれていた。
このモノレールに乗っている人数は二〇〇人程度で、他の『妹達(シスターズ)』は、五〇〇台に及ぶトラックで、とある『荷物』と共に移動している。
車内の先頭に、シスターズと異なる少女たちはいた。
黒マントを羽織った御坂美琴。
他のシスターズの管理者であり、美琴と瓜二つの唯一のロングヘアーを持つ『第能力者(レベル4)』ミサカ一〇〇三二号。
髑髏の帽子を被り、カジュアルな私服を着込んでいるミサカ『〇〇〇〇〇号(フルチューニング)』。
能力は『体内電気(インサイドエレクトロ)』であり、体内の電気信号を操ることで常人を逸した身体能力を有するが、電気の出力自体は静電気以下の電力しかなく、体外に電気を放出できないため、判定は『無能力者(レベル0)』。
至宝院久蘭の忠実な僕にして、久蘭派閥の二代目当主。兼お世話係の剣多風水。
ちなみに、白井黒子は意識が戻りかけたところを、ミサカ一〇〇三二号によるクロロフォルムで再び眠らされ、ミサカ一〇〇三三号の隣に座っていることをここに明記する。
ミサカ一〇〇三二号は、『お姉様(オリジナル)』に『あるもの』を手渡した。
 『あるもの』を見つめながら、御坂美琴は自嘲気味に呟いた。
「…まさか、私が『これ』を使うハメになるなんて、夢にも思わなかったわ。一体何の因果かしら?」
「ですが、これしか方法がありません、とミサカは冷静に判断しました…」
「まあね。あのバカを叩きのめすためには、私は『これ』に頼るしか無いのよね…風水、貴女からも至宝院お姉様に伝えてくれる?『感謝します』って…」
「…了解しました」
目を閉じたまま、メイド服姿の少女は呟いた。
 お姉様…と、寝言で呟く白井黒子は無視された。
レッサーは、御坂美琴を上から下まで見回すと、唐突に口を開いた。
「でもさー。当麻様が選んだ女だって聞いてたから、絶世の美女かと思ったら…」
「中の中ですね」
「なっ!?」
簡潔かつ辛辣な言葉が、美琴の心を抉った。
「当麻様の好みが分からないな。私的にはランシスの方が可愛いと思うけど」
「フロリスなんて、2回当麻様に抱きしめられたのにね。しかも、どっちも水ぬれで」
「やっぱり、温泉の抱きつきイベントの時、食い下がらないで襲っておくべきだったなぁ…ねぇ…ベイロープ」
「そうねー…全員ヌードで迫ったら、私たち今頃、当麻様に仕えるメス犬ペッ…」
四人の少女、『新たなる光』のメンバー、ドロシー、ランシス、フロリス、ベイロープが口を揃えて言葉を吐く。

もちろん、彼女たちが、所属する『神上派閥』のリーダーである上条当麻に、どのような感情を抱いているかは、先ほどの発言で明白である。
追いうちのように、御坂美琴と瓜二つの容姿をした少女が、
「今のお姉さまの立場を的確に表現した言葉です、とミサカは一言付け加えます」
「いやっ!付け加えちゃダメだろ!」
ビシィ!とミサカ一〇〇三二号の危険発言に、右手でミサカ『〇〇〇〇〇号(フルチューニング)』は突っ込みを入れた。制服姿の御坂シリーズと異なり、一人だけカジュアルな私服を着込んだミサカ『〇〇〇〇〇号(フルチューニング)』はとても目立つ。
常盤台の制服は着ておらず、ジーンズにブラックとイエローのバスケットシューズ。男が舌を出している絵の入ったプリントシャツ。半袖の紺のジャケットに三日月型のシルバーネックレスを身につけている。
もっとも、一際異様に見えるメイドこと剣多風水は、初めから除いている。
彼女は、目と口を閉ざしたまま、壁に寄り掛かることも無く、人形のように直立していた。
コソコソと、フロリスはミサカに話かけ、
「ねぇ…もしかして貴方のクローンって、当麻様の日替わりペッ…」
「それ以上の発言は良俗違反となるのでコメントを控えてください、とミサカは公的意見を述べつつ、実はそれこそが我々『妹達(シスターズ)』の悲願であると一言付け加えます」
「だから!付け加えちゃダメだろ!」
「…ゼロ。貴女も当麻様の女になることは本望でしょう?」
「…あ…いや、それは、そうなんだけど…ひぃ!」
バチバチィ!と頭上で電気をならす御坂美琴を見て、ゼロはおし黙った。
「ちょっと!『新たなる光』のやつら!アンタたちも神上派閥のメンバーでしょ?!」
「…同時に貴女のライバルでもあります、はい」
下目で睨みつけるフロリスに、うっ…と声を潜める御坂美琴。
「そうよ。私が上条当麻の恋人よ!何か不満?」
『不満タラタラDEATHよ!』
四人の声が一斉にハモった。
あまりの迫力に御坂美琴も気圧され、ドロシーが口をモゴモゴして喋り始めた。
「なぁーにが、『俺の恋人を守ってくれ』ですか!この命令を受けた時のショックときたら…くぅー!!当麻様の命令だから、従っているんですよ!し・か・た・な・く・ね!もしも貴女が私たちの足を引っ張るようなことをすれば、普通に殺しますから!」
と、堂々と殺人予告をつげられた。
「なぁっ!?」
冷たい目でベイロープは、
「そうゆうことよん♪ミス・ミサカ。上条当麻を狙っている女性は、星の数だけいると想いなさい」
「ベイロープ?あんた…くやしくないの?こんな●ャップが当麻様の恋人だなんて…」
「確かに、内心穏やかじゃないわ。むしろ、この場で殺してやりたいくらい♪」
「っ!?」
ランシスをなだめるベイロープも笑顔で、殺意をむき出しにする。
御坂美琴は黒マントを揺らせ、体勢を身構える。
ベイロープの碧眼が、当麻の恋人を射抜く。
「でもね。当麻様が愛するだけのモノを、貴女は持っているんでしょう?チカラもかなり凄そうだし…それくらいは分かってるでしょう?みんな」
彼女の言葉に、『新たなる光』のメンバーはうつむいた。
そうして、彼女たちは思考を冷静にし、御坂に対する敵意が徐々に薄れていく。

その姿を見て、ああ…と、御坂美琴は思う。

彼女たちも、本気で上条当麻を愛しているのだ、と。
このような事はいつものことなので御坂は慣れ切っていた。だからこそ、彼女たちの立場を考えることは避けた。そうしてしまうと、いくら精神力が強かろうと押しつぶされてしまいそうで。
(…当麻、この事はきっちりと「払って」もらうわよ)
と、心の中で思いながら。
瞳にくやし涙を浮かべるフロリスは、もう一度、御坂を睨みつけると、
「そこのメイドの子!貴女もオンナならわかるでしょ!好きな男に対するこの気持ちが—」
その言葉に、剣多風水はゆっくり目を開け、


「私には理解できません。私は真性のレズビアンなので」


空気が凍りついた。
会話を無視していた『妹達(シスターズ)』さえ、ザザザッ!と一斉に彼女の方向に視線を傾けた。
「…彼女の爆弾発言には突っ込まないのですか?とミサカはミサカ『〇〇〇〇〇号(フルチューニング)』に問いかけます」
「いやっ!内容がヘヴィすぎて突っ込めねえから!」
ビシィ!と即座に、ゼロはミサカ一〇〇三二号につっこみを入れた。

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