とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-114

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匿名ユーザー

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『美琴がポニーテールに……』



「なあ、御坂」
「何よ」
「……いやぁ、おまえも女の子だからお洒落とかしたいんだろうけどさ」
「———何が言いたいのよ」
 上条は躊躇いがちに、美琴を見る。
 今の美琴の髪型は———いわゆるポニーテールだった。
「それ、かつら……みたいなやつだろ?」
「せめて『ウィッグ』って言って欲しいわね……」
 インデックスは『短髪!』などと呼んでいるが、美琴の髪は決して短いわけではない。
 彼女の色素の薄い茶色の髪は、肩に届くぐらいの長さがある。
 それがこの日に限って、後頭部で縛り上げた髪型——ポニーテール——だった。
 どうやら、足りない長さと量は付け髪で補っているらしい。
「髪が伸びるの、待てばいいんじゃねぇのか?」
「待てないのよ……」
「何でだよ」
「あんたはこの方が……えっと、そうしたいっていうか、いろいろ事情があるのよ!」
 美琴は顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
『何故、無理矢理ポニーテールにしたのか』
 と、聞かれても答えられない。
 何となく分かっているのだが、やはりよく分からないので答えられなかった。
 美琴の髪型がポニーテールへ変化する、その過程と一挙一動を特等席で見る羽目になった
ルームメイトの白井黒子は、
『またですの!?またあの類人猿は、私のお姉様の心をおおおお!!』
 と、絶叫していたのだが、それはまた別の話である。
 しかし、きっかけは何かと言えば——白井の予想通り——『上条当麻はポニーテール好き』
という話を聞いてしまったからである。

(どう……思うかしら)
 横目で少年の表情を窺う。
 一度だけ首を傾げて、何やら悩む。
 上条は付け髪の付いていない茶色の前髪と、後頭部の束ねられた髪を何度か見比べる。
 やがて、口を開いた。
「勿体無いだろ」
「———勿体無い?」
 思わず美琴は聞き返した。上条が真っ直ぐに目で見ていたので、一瞬だけ胸が高鳴った。
「だってさ、おまえの髪ってすごく綺麗だろ。
 かつ…ウィッグなんて作り物より、ずっと綺麗だよ。
 わざわざ作り物の髪の毛なんかを付けて、自分を飾らなくても良いんじゃねぇのか?
 そんなことまでして、見栄を張ろうとするなんておまえらしくねぇよ」
 上条は一方的に告げた後、はっとして美琴を見た。
「…………」
 そこには無言で俯き、沈黙してしまった美琴がいる。
(や、やべぇ!?つ、ついうっかり、いつもの調子でぺらぺら喋っちまったけど……女の子の
お洒落とかで男が説教みたいにどうこ言うのはまずいよな……)
 気まずくなった上条がとにかく喋ろうと口を開きかけたとき。
 そっか、と美琴が呟いた。
「そうよね。無理してこんなことしなくてもいいわよねー。
 うん。なんかすっきりした。」
 軽く伸びをすると、晴れた表情でウィッグを外す。
 隠れていた自前の茶色の髪が晒される。後頭部の髪が紐で短くまとめて縛られていたが、
それも解く。一瞬だけ、さらさらの髪が空気の中で柔らかく膨らんで、そっと肩にかかった。
 辺りを見渡してゴミ箱を発見。片手に持ったウィッグを『ほいさッ!』と、軽く叩き込む。
 打って変わった様子を見せる、美琴の変化についていけない上条は呆然としている。
「あー。何だ。いいのか?」
「いいのよ。でも、伸ばしてみるのもいいかもしれないわね」
 これぐらいのロングヘアに、と髪を櫛で梳く仕草をする。
 その少女らしい仕草に上条はどきっとする。
 茶色の長い髪をした少女が、柔らかい髪を優しく梳いている姿を幻視した。
 静かに、大事そうに髪を抱いている少女は間違いなく———
 少女の名前を思い浮かべて、上条は慌てて『相手は中学生アイテハチュウガクセイ……』と
念仏のように唱え始めた。
 もし上条の見た幻想のように伸びれば、美琴の髪は腰に届くような長さになるだろう。
 美琴は小さく笑うと少年に問いかける。
「似合う?」

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