Chapter2『The manual which grows up』
一日目・日曜日
1
午前8時
「ふわぁぁぁああああーあ…………何でだろ」
台所で上条は大あくびをしながら考える。
只今朝食の準備真っ最中の上条は、ボーッ、とした頭で考える。
只今朝食の準備真っ最中の上条は、ボーッ、とした頭で考える。
だが起きている体に対し頭は寝ているので思考は止まっている訳なのだが、寝ボケていてその事じたいに気づいてない。
その為、本日の朝食のメインメニューは「フレンチトースト」……の筈だったのだが、何故か「卵かけごはん」になってしまっていた。
(経緯は以下の通り)
(経緯は以下の通り)
「んあー……眠い……」
(卵をパカパカ、ミルクをコポコポ、砂糖をドバドバ)
「ね…………ね……む………」
(菜箸でカチャカチャカチャカチャカチャ……∞)
(卵をパカパカ、ミルクをコポコポ、砂糖をドバドバ)
「ね…………ね……む………」
(菜箸でカチャカチャカチャカチャカチャ……∞)
(ここで記憶と時間が飛ぶ)
「(はっ!)俺はなにを……?」
(ふと手元を見る)
「あ、そーか……朝飯の準備…………卵がほぐしてあるって事は、ふつーに飯にかけて食うんだよな……昨日インデックスが小萌先生の家に泊まったから、ご飯だいぶ余ってたもんな…………」
(再びカチャカチャ)
(ふと手元を見る)
「あ、そーか……朝飯の準備…………卵がほぐしてあるって事は、ふつーに飯にかけて食うんだよな……昨日インデックスが小萌先生の家に泊まったから、ご飯だいぶ余ってたもんな…………」
(再びカチャカチャ)
普通は気づくだろ!と、誰もが言うかもしれないが、上条は不幸体質だ。
1「寝ボケている」
2上条は1の理由により「食パン・フライパン・油・食器を戸棚から出していない」
3同じく1の理由により「色と量が変化する牛乳を少なめに入れてしまった。そして、牛乳に比例するように、味が変化する砂糖を多めに入れてしまった」
2上条は1の理由により「食パン・フライパン・油・食器を戸棚から出していない」
3同じく1の理由により「色と量が変化する牛乳を少なめに入れてしまった。そして、牛乳に比例するように、味が変化する砂糖を多めに入れてしまった」
そして上条はそんな事など気づきもせず、眠気と戦いながら必死に思考をして繰り返している。
「はぁ……」
彼の視線の先にはベッドが。正確にはベッドでスヤスヤと眠る、上条の新しいパソコン。と言うよりは居候の「きぃ」がいた。
彼の視線の先にはベッドが。正確にはベッドでスヤスヤと眠る、上条の新しいパソコン。と言うよりは居候の「きぃ」がいた。
ふんわりと空気を包み込んだ様な、フワフワかつサラサラの金髪。もっちりとしながらも、すべすべな肌。しなやかな、でも遠くから見ただけで優しいオーラを感じる事が出来る体。
静かな寝息を立てて眠るきぃの姿は、絵にすれば間違いなく21世紀最高の作品と言われるようになるだろう。だが、上条の思考はそんな事に回されてはいない。
昨日の夜。午前0時
久々にベッドで寝れるぞいやっほーい!!
と、浮かれながらベッドに飛び乗る上条。そこに真似するようにきぃが横から思いっきり飛びついて来たのだ。まさにダイビングするような形で。
と、浮かれながらベッドに飛び乗る上条。そこに真似するようにきぃが横から思いっきり飛びついて来たのだ。まさにダイビングするような形で。
それだけならまだ良い。一回「そげふ!!」しただけだ。むしろ不幸体質である上条はこの程度慣れている、問題は次だった。
…………離れない。
タコの吸盤の如くピタリ!と張り付くように肌と肌を密着させたまま離れてくれない。
と、言うか絡まってくる。
と、言うか絡まってくる。
勿論言葉では言い表せないほど慌てた上条は、すぐさまきぃを引っぺがし、必死に説明&説教……を、している最中に、きぃは再び抱きついてきた。(どうやらじゃれあい感覚らしい)
説教→抱きつき→説教……
これをえいえんと繰り返し、とうとう上条は何時もの場所(風呂場)で寝る事になってしまったのだ。
説教→抱きつき→説教……
これをえいえんと繰り返し、とうとう上条は何時もの場所(風呂場)で寝る事になってしまったのだ。
昨日の就寝時間は午前3時過ぎ。
「懐いてくれてるってのは悪い気しねーけど、やっぱ何とかしなきゃな…………つーか俺、人型パソコンの事なんて殆ど何も知らないし」
「……き、きーぃぃい…………?」
「お、起きたかーきぃー。朝だぞー」
「き!きーぃ!!」
「うぉおおおお!?まてマテ待て!抱きつくの禁止!ここで抱きつかれたらせっかく作った朝飯がめちゃめちゃに~!」
「……き、きーぃぃい…………?」
「お、起きたかーきぃー。朝だぞー」
「き!きーぃ!!」
「うぉおおおお!?まてマテ待て!抱きつくの禁止!ここで抱きつかれたらせっかく作った朝飯がめちゃめちゃに~!」
?
「なんともない?……っておわ!」
激突1メートル手前できぃはピタッ!と止まっている。
その誇らしげな表情は「昨日言われた事はちゃんと覚えました!」と自慢げに語っているようだった。
激突1メートル手前できぃはピタッ!と止まっている。
その誇らしげな表情は「昨日言われた事はちゃんと覚えました!」と自慢げに語っているようだった。
「よ、よく覚えたな。えらいぞ、きぃ。」
「きぃー!」
「だが抱きつくのはダメです!」
「きー……」
「きぃー!」
「だが抱きつくのはダメです!」
「きー……」
心底残念そうな表情をしたきぃはトボトボとキッチンを出ていった。……やはり今後の事を色々考えていかないとだめだ。
上条はレンジで温めた昨日の残りご飯と、例のアレ、醤油、インスタントのみそ汁、そして箸をガラステーブルの上へと持っていく。きぃは上条のマネをしているのか、向かい側にちょこんと座った。
「朝飯済ませて暫くしたらどっか専門の店にでも行って、きぃの状態を含めて色々詳しく聞くかー。そんじゃ、いただきまーす!!」
ご飯の上に、一見すると卵を混ぜただけに見える物をかけ、更にその上から醤油を垂らし、一気に…………
食べた。
吹いた。
いや、これは味がどうこうの問題では無い。
米に吸い取られる牛乳の味と臭み。
そしてトローリ濃厚卵に残る、溶けない砂糖のザラザラ感。
最後にそれらすべてを引き立たせる名脇役の醤油…………
そしてトローリ濃厚卵に残る、溶けない砂糖のザラザラ感。
最後にそれらすべてを引き立たせる名脇役の醤油…………
うまいわけが無い。
「ゲホゲホッ!ま、まずい!!なんだこりゃあ!?お、俺はいったい何を食ったんだ!!?」
上条の場合「卵かけご飯を食べる」と思っているから効果は倍増だ、圧倒的に味が違い過ぎる。
勢い良く吹いた物体TGは、上条自身は勿論、向かいに座っていたきぃにまでけっこうな量が掛かっていて、金色の髪や白いワンピースが見るも無残な事になってしまっていた。
「きぃー?(ペロペロ)」
「わ、悪りいきぃ!いま雑巾とタオル……って、自分に掛かった謎の物体TG食ってる!!つーかパソコンて食事できんの!?」
「きーーーぃ!」
「わ、悪りいきぃ!いま雑巾とタオル……って、自分に掛かった謎の物体TG食ってる!!つーかパソコンて食事できんの!?」
「きーーーぃ!」
これが原因で壊れたりしねーだろうなー!!?そう心配する上条をよそに、きぃは黙々と自分に掛かった物体を処理してゆく。
それも満面の笑みで、むしろこれが好物だと言わんばかりに。
それも満面の笑みで、むしろこれが好物だと言わんばかりに。
「きぃー!」
「だ、大丈夫みたいだな、うん。流石は学園都市が誇る超最新鋭技術……(だが何故だろう。この料理(?)が好きなのは、数ある人型パソコンの中でもきぃだけだと思うのは……)」
「だ、大丈夫みたいだな、うん。流石は学園都市が誇る超最新鋭技術……(だが何故だろう。この料理(?)が好きなのは、数ある人型パソコンの中でもきぃだけだと思うのは……)」
きぃはアッサリと自分に掛かった物体の殆どを食べ終え、今度は向かい側にいる上条の方に四つん這いになって向かってきた。その目的は間違いなく
「きぃー!」
「ちょっ!?待て!俺に付いたのまで舐めようとすんな!!」
「きーーぃ!!」
「ちょっ!?待て!俺に付いたのまで舐めようとすんな!!」
「きーーぃ!!」
ここで上条は1つのミスをした。
きぃを止めたければ「抱きつくな!!」と指示すれば良かったのだ。「舐めるな!」をきぃはまだ教わっていない。
きぃを止めたければ「抱きつくな!!」と指示すれば良かったのだ。「舐めるな!」をきぃはまだ教わっていない。
「待てってきぃ!ちょ!?四つん這いになって俺の腰に手を回しながら舐めんな!!誰かにこんなとこ見られたら」
「やっほー!上条当麻ー!!ベランダからグッモーニーン!って、朝の挨拶をしにきたぞ~!!」
「やっほー!上条当麻ー!!ベランダからグッモーニーン!って、朝の挨拶をしにきたぞ~!!」
…………………………あ。