とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 6-13

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匿名ユーザー

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『Kⅰ-ⅰ』



○月25日


「学園都市」 東京都の西部を丸ごと買い取り、改造して造られた科学と学生の街。

外界とは科学技術が2,30年ほど違う街を統べる学園都市統括理事長であるアレイスターは、何時もの様に窓一つないビルに居て、何時もの様に生命維持装置に逆さまで入っていて、何時もの様に男とも女とも聖人とも罪人とも子供とも大人ともとれるその容姿で、少しばかりの笑みを浮かべていた。
その眼先には少し小さめなモニターが有り、そこには20代後半の、メガネを掛けた科学者らしい男が映っている。

「ふむ……………そうか」
『はい。やはり完全は勿論、初期起動すらままならない状態でして…………』
「かまわんよ………元よりそれが前提だ…………そもそも「アレ」が我々の予想通りの物だったのであれば、失敗だからな。……では次にプラン28896を…………」

アレイスターは微笑む。男とも女とも聖人とも罪人とも子供とも大人ともとれるその容姿で、何時もよりも少しばかり笑みを強くして……………………




Chapter1 『Sleeping Beauty who is covered with garbage』





土曜日


「これで……どうだ!」
彼はぴくりとも動かない
「ちくしょう!だったらこれで……!」
彼はぴくりとも動かない
「くそっ!なんだよ、なんなんだよ!!起きろ、起きろよ、おきてくれぇぇええええええええええー!!」
彼はぴくりとも動かない

………………というやり取りを開始して既に1時間。ガタン!と言う音と共に、上条当麻はとうとうテーブルに突っ伏した。
まるで友人か誰かが死んでしまった時の様なセリフの数々だが、ここは上条当麻が住んでいる寮の部屋だし、今現在この部屋には上条以外の人間はいない。


「なんで起ねぇんだよ!俺のパソコ~~~~~ン!!!」


Personal computer。訳してパソコンは、今や学園都市の外でも生活には欠かせない物となっている。
まして科学の街、学園都市ならば持っていて当然、当たり前。と言うか無いと生きていけない。そう言っても過言では無い。

上条は結構な貧学生(その主な原因は彼では無く、彼と一緒に住んでいる1人の英国シスターによる物である)だが、それでもノートパソコンは持っている。
いや、今となっては「持っていた」の方が正しい。何故ならこのパソコンは二度と起動する事は無いのだから…………

そのパソコンが壊れたのは上条の使い方の悪さによる物では無い。
むしろマニュアルを読み、掃除も欠かさず、たいせつに大切に使ってきた。
(………………まあそれは「物を大切にする」という心から来るものでは無く「これが動かなくなったら新しいパソコンを買わなくてはいけない」→「余計な出費」→「不幸だ~!」に繋がるからなのだが)

では壊れた原因は何か。
………………答えはもう分かっている。というか、これ以外に思いつかない。

「おのれバカシスター!あれほど勝手にいじるなって言っておいたのに!!」

100%間違いなく彼女「インデックス」の仕業だろう。

金色の刺繍を施した真っ白な修道服(通称ティーカップ)を着ている、長い銀髪に緑の瞳をしている英国シスターである彼女は、魔術という理解不能な力を扱う世界で、10万3千冊の魔道書を「完全記憶能力」で記憶している魔道書図書館「禁書目録」だったりする。

故に、魔術というものの知識に関しては間違いなく世界1なのだが、魔術と対立している科学の知識に関しては驚くほど疎いのだ。

そんな英国シスターは今、部屋にいない。
上条が買い出しから帰ってきたその時からいない。

彼女の代わりに上条を出迎えてくれたのは、パソコンからモクモクと立ち昇る煙と、金属が焦げたような匂いだった。

に・げ・た・な・あ・の・や・ろ・う

「ふっふっふ………………ただいまより捕獲作戦を開始します。全力であのバカシスターをひっ捕らえるべし!!」

1時間かけても起動しないパソコンの修理をあきらめた上条は、インデックス捕獲作戦を開始。全力で部屋を飛び出したのだった。



1時間後…………………………


インデックス捕獲作戦は開始僅か1時間で中止になった。
インデックスが発見され、捕獲に成功したのではない。「中止」となったのだ。

上条は今、インデックス捕獲作戦本部(自室)へと帰還していた。

理由は1つ、戦利品も1つ。


何でこんな事をしてしまったのか、何でこんな事になってしまったのか、上条は混乱と葛藤を繰り返しながらも、自分の目の前に横たわっているものを見る。


「どうすっかなぁ………………「これ」」


上条の目の前に横たわっているのは、包帯を全身に巻いた少女の形をした、人では無いものだった。

行間1

学園都市のとあるマンションの1室で今、壮絶なる戦いが繰り広げられていた…………!



「やだやだやだやだやだ~~~~~~!かう買う飼うー!!この子は絶対離さない!この子の居場所はミサカの腕の中なの!!って、ミサカはミサカはうるうると目を滲ませつつ上目使いの眼差しを送るというスーパーコンボを発動してみたり」

『勇者ミサカは「コンボ!・ロリッ子のお願い」を使った!』

「………………ラストオーダー?何度も言うけれど、そのコンボはその系統の人じゃ無いと一定以上の効果は期待できないわよ?」

『こうかはいまひとつのようだ!』

「ガーン!可愛くてヨウシタンレーでスタイル抜群のミサカが繰り出すこのコンボに耐えられる人がいたなんて!って、ミサカはミサカはショックを受ける」
「…………えーっと、取り合えずツッコミ所が多すぎるから1言に纏めるじゃんよ。………………自重しろじゃん?」

『○ばさん魔人sのツッコミ攻撃!』

「「誰がお○さんじゃぁぁあああああああああああああああああああ!!!」」
「ぴぎゃぁぁあああああああああああ!!?」

『追加攻撃『ツインバイスヘッドクラッシュ!』
勇者ミサカは20001のダメージを受けた!』

「せ、せめてもうちょっとダメージの少ない攻撃にしてほしかった…………………って……ミサカはミサカは最後の力で遺言を残してみる…………」
「はぁ…………とにかく早く返しなさい…………」

芳川はラストオーダーの腕の中にある物を指さす

「その電子脳ペットの猫を」

ロボには見えない猫がにゃーんと鳴いた。


元はと言えばインデックス、彼女が悪いのだ。

彼女が上条の言いつけを守り、パソコンに触ってさえいなければこんな事にはならなかった筈だ。それは間違いない。


…………間違いないのだが、今ここに横たわっている少女に関しての厄介事はそうじゃないよなぁ……小さくそう呟き、上条当麻は溜息をつく。

「…………なんで持ってきちまったんだろ「コレ」」




「どこだぁああ!インデックスゥゥウ!!」

日はもう随分と傾き、完全下校時刻も迫っている夕暮れ近くの学園都市で、今日と言う今日と言う今日は晩飯抜きにしてやるぞこらぁ!!と、インデックスに執行する罰を考えながら街道を勢いよく走る上条。その顔はもう必死そのものだった。

「くっそ、インデックスの奴どこ行きやがった!!つーか出かけた先でまた厄介なことしでかしてねえだろうな!?」
「ねえ上条君?」

と、ここで横合いから急に声が掛かり、勢いよく走っていた上条は前へとスッ転びそうになった。

「んぉわあ!!……って、姫神か…脅かすなよ……」
「勝手に驚いたのはそっち、私は声を掛けただけ」

その勝手に声を掛けてきたのは、上条の同級生でクラスメイトでもある「姫神秋沙」
「吸血殺し」という吸血鬼を殺す力を持っているが、それを使いたくなく、自分では制御不可能な能力なため、普段はケルト十字によってその力を押さえている。
巫女服が似合ったり、料理が結構得意だったりと言う一面も…………

「……………………………………………………」
「ってうおっ!!ど、どうしたんだよ姫神!?汗が目から流れてるんですが上条さんはあなたに何か悪い事をしましたか!?」
「…………名前と説明……」
「は?」
「最近やたらと色んな所で「■■」って呼ばれてるから…………危うく自分の名前を忘れる所だった…………」
「■■って誰だよ!?俺がちゃんと覚えてんだから他の奴らだって覚えてるだろ?」

その言葉に姫神は一瞬眼を見開いた後、少しばかり頬を赤く染めた。
泣いたから顔が腫れたのかな?と、上条は視察する。

「……上条君が……ちゃんと覚えてる………………………?」
「お、おう…………(つーか俺は黒髪長髪日本系でうちの学校の指定服着ているすこし地味な奴なんて姫神以外知らないし……………)」
「…………………………………………………………………そう」
「あ、そういえば姫神!!インデックスの奴見なかったか!?」
「………………………………………………………………………………………………………あ、うん……彼女だったら向こうのジャンク場の近くで…………」
「サンキュ、姫神!イィンデックスゥウウウ!!!」

上条が走りだしたと同時に姫神が言った一言を、上条が聞いている筈は無かった。

「………………1時間前に見かけた…………」


「はあ……はあ……くっそ、インデックスの奴……いったいジャンク場に何の用があるんだ!?」

ジャンク場。正式名を「ジャンクパーツ交換場」

工場に囲まれた空き地の様なその場所は、元々は様の無くなったジャンク品を捨てるゴミ捨て場だったらしいのだが、何時からか、まだ使えるけど飽きた。もしくは、少し古くなってしまったけど一応使える。そんな品を持ちより、そこに置き、気に入った品が有れば持って帰る事が出来る、無人フリーマーケットの様な場所だ。

暗黙のルールとして最低限の美品と性能を兼ね備えていなければならないので、運さえ良ければ最新の家電などを持ち帰る事が出来る事もある、結構有名な場所だったりする。

だが流石にこの時間にここにやってくるような学生はいないらしく、見渡す限りではここにいるのは上条だけだ。

「おいインデックス!!いるなら返事し………………」

声が、止まった。

美品も、ゴミにしか見えない物もあるジャンクパーツの山の中にそれはあった。
どう見てもジャンク品では無い物が。どう考えてもそこにあるのが不自然な物が。

…………ジャンク品の山の中から覗いていたのは………………………………人の、腕。

「っっつ!!??」

先ほどまでの怒りが瞬時に消え去った。
猛スピードでジャンク品の山を掛け上る。その腕が彼女の物かどうかはどうでも良い事だった。ジャンク品の中に人が埋もれている……あれが人形か何かの物でない限り中の人が無事でいる保証は無い。
人形だったらまだ良い、笑い話で済む。何時もの「不幸だ~」の一言で終わる。

だけど…………本当に誰かが埋もれているんだとしたら………………

「おい大丈夫か!しっかりしろ!!…………くそっ!!」

大声で呼びかけても反応が無い所を見ると、もしかするとヤバいかもしれない。
上条は必死に周りにあるジャンク品を勢い良く崩し始めた。5~6個も退かすと、埋もれていた物の全貌が見えてくる。

少女だった。

薄く白みがかった金色の長髪で美肌。顔立ちも良く、彼女が来ている少し薄めの白いワンピースがそれらすべてを引き立ている。

まぎれもない美少女。だが……息をしていない。

「お、おい!!しっかり…………あれ?」

と、ここである物が上条の視界に入る。
それは少女から生えている、大きな機械の耳の様なもの。その大きな耳の様な物からは数本のコードが少しばかり飛び出ていて、それが、彼女が人では無いと上条に認識させる決め手になった。

「これ………………パソコンか?……………………あ~……驚いた。猟奇殺人事件かなんかに巻き込まれんのかと思ったじゃねえか………」

精神的にも肉体的にもドッと疲れ、上条はへなへなとその場に座り込んだ。

人型パソコンの話は上条も聞いた事がある。
学園都市内でも何十台と無い超最新鋭の技術を駆使した人の形をしているパソコンで、一度電源を入れたら次に落せるのは破棄時のみ。今使われているのは殆ど試作品、若しくはマニアが買い取って使っている物ばかりだという。

「しっかしこのパソコン、まだ造られてあんま経ってないんじゃないのか?傷ついてる様子もないし…………」

と、ここで上条はある事に気がついてしまう。

ジャンク場には「まだ使える物」を持ってくるのが暗黙のルールだ。
例えばパソコンなら「使える」のがルールで、それ以外の物は持ち込んではいけない。(故に先程壊れた上条のノートパソコンは持ち込む事が出来ない)

と、言う事はだ…………

「…………もしかして、まだ動くのか?」

そこまで考えて、いやいやそれは無いだろ。と、上条は首を横に振る。

いくら某先生T・Kが、ここで学園都市最先端技術を利用した最新冷蔵庫と掃除機を拾った伝説があるとはいえ、ここまで貴重な物をわざわざこんな所に放置すると言う事はあり得ないと思う。

「いやでもここでお宝級の品を拾った人もいるって話だし……………まさかそんな……でも…………」


「……なんで持ってきちまったんだろ」

そう。さんざん葛藤を繰り返したあげく、その人型パソコンをジャンクパーツの山の中から引きずり出し、持って帰って来てしまったのだ。

「上条さんはエンジニアでもなければパソコンマニアでもないって!つーかさっきから起動スイッチが見つかんないから壊れてるのかどうかも分からないんですがどうしましょう!?」

スイッチらしきところはみんな押してみた。
1番目立つ大きな機会の耳から、足の指の先まで全部押してみたのだが、全く反応が無い。
…………いや、正確に言えば押していない部分が2か所ほどあるにはあるが…………流石に躊躇われた。

いくらなんでもそれは…………でも…………か、可能性が無いわけじゃ……………………

ハッ!と、上条は想像した幻想を振り払うように首をぶんぶんと振り、顔の熱をおとす。

「いやいや、絶対それ以外の場所にあるはず!あきらめませんよ!!」

再び、その機械的な耳さえなければ誰がどう見ても可憐な少女の肌に、上条はそっと触れてみた。わずかに空気を含んだ、柔らかくもサラサラの金髪がふわりと上条の肌に当たり、少しこそばゆい感覚を覚える。

と、それがきっかけになったのか、上条の意味記憶からあるキーワードが導き出されてきた。

「口の中」と言うキーワードが。

「…………もしかして…………」

上条当麻は記憶喪失だ。
故に7月某日以前の記憶が無い…………だからなぜ急にこんなワードが頭の中に導き出されたのか、なぜ以前にもこんな事があったかのように体が動くのか、以前このパソコンのいる場所に横たわっていた人は誰だったのか、そもそもそんな事があったのか事体思い出せない。

パソコンの唇に手を掛け、その口をゆっくりと開く。
喉に近い場所をよーく見ると、そこに小さなボタンの様な物が付いていた。

「あった………………!」

口に右手を入れ、押し込むように奥へと進む。
口内もパソコンには思えない……本物の肉の様に柔らかかった。

(……す、すげえな、こんなとこまで人間そのものじゃねーか)

そんな感想を抱きながら、奥へ奥へと右手を入れて行く。


そして……………………………



カチリ!



その音と共に、パソコンを、上条の視界を、部屋を、光が包み込んだ。

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