『とある境界の直死の魔眼(3)』
そして、依頼主のコネにより「研究所所員」という形で正面ゲートを突破して、今に至る。
回想を終了し、横でまだ続いている式の言葉を聞き流しつつ、これからどうしようか・・・と考えていた幹也は、
前を走ってきた少女にぶつかった。
「おっと。」
ぶつかってよろめきながらも、自分よりも大きくよろめいた少女の方を支える。
「あ・・・、すいません。」
体勢を立て直した少女は、軽く頭を下げた。
ああ、いえ、と答えた幹也は、ふと少女の着ている制服に気づいた。
プリッツスカートに半そでのブラウスと袖なしセーター。
調査対象であるLV5を2人も抱える超名門女子校・常盤台中学の制服だった。
何とか情報を引き出せないかと思い、とりあえず話しかけてみた。
「どうしたの?そんなに急いで。」
「え?えっと・・・。」
少女は答えに詰まったように黙り込んだ。
不思議そうに少女の顔を見た幹也は、その時気づいた。
回想を終了し、横でまだ続いている式の言葉を聞き流しつつ、これからどうしようか・・・と考えていた幹也は、
前を走ってきた少女にぶつかった。
「おっと。」
ぶつかってよろめきながらも、自分よりも大きくよろめいた少女の方を支える。
「あ・・・、すいません。」
体勢を立て直した少女は、軽く頭を下げた。
ああ、いえ、と答えた幹也は、ふと少女の着ている制服に気づいた。
プリッツスカートに半そでのブラウスと袖なしセーター。
調査対象であるLV5を2人も抱える超名門女子校・常盤台中学の制服だった。
何とか情報を引き出せないかと思い、とりあえず話しかけてみた。
「どうしたの?そんなに急いで。」
「え?えっと・・・。」
少女は答えに詰まったように黙り込んだ。
不思議そうに少女の顔を見た幹也は、その時気づいた。
少女が『LV5を2人も抱える学校の生徒』なんてものじゃなく、正真正銘の『LV5』だったということに。
「えっと・・・その、ちょっとアクセサリーを集めに。」
少女、御坂美琴は、愛想笑いとともに答えた。
少女、御坂美琴は、愛想笑いとともに答えた。
★
そこは、科学が生んだバベルの塔。
入り口も出口もなく、ただ、1人の『人間』が永遠に住まい続ける、墓標のような遠坂じゃなかった塔。
そこに住まう『人間』は、決して破れない硬質のビーカーの中に、逆さで佇み続ける。
男のように女のように、大人のように子どものように、聖人のように囚人のように。
『人間』アレイスター=クロウリーは、ビーカーの前に立つ人間に向かって笑った。
「私の命通りに動いてくれたか、土御門。」
対するアロハシャツの青年、土御門元春は、無感情な顔でうなずいた。
「お前の言った通り、教会の中のタカ派を動かして蒼崎橙子にLV5の能力の調査を依頼させた。お前の想定通り、
両儀式と他1名が研究所所員を装い侵入してきた。」
正面ゲートで撮られた、黒髪の少女と青年の写真を見せる。
アレイスターは、満足そうな笑みを浮かべた。
両者口を開かず、場に沈黙が訪れる。
「・・・アレイスター、お前は何を考えている?」
沈黙を破ったのは土御門だった。
「“幻想殺し”に“吸血殺し”、お次は“直死の魔眼”か。おまけにこちらの能力者の情報を
与えるような真似をして・・・いつからお前は敵に塩を送るような人間になった?」
アレイスターは、変わらずビーカーに浮いて笑みを浮かべていた。
その笑みが、より深まる。
「『手順』のためならば、私は敵に塩も送る。どの道塩は、単なる材料の1つに過ぎない。賢者の石ならばいざ知らず、
塩があるからと言って、錬金術師が真理に至れるわけではない。塩や硫黄や水銀、それ単体に意味は無い。正しい知識があってこそ、
それらは初めて意味を為す。所詮は、そういうことだ。『手順』を省略できるのならば、
塩などいくら撒いたところで痛くはない。」
「・・・・・・・・。」
黙る土御門を前にアレイスターは詠うように、
「空想は具現化する。幻想は殺される。全ての死を視る少女は果たして、幻想殺しに何を視るのだろうか、ね。」
入り口も出口もなく、ただ、1人の『人間』が永遠に住まい続ける、墓標のような遠坂じゃなかった塔。
そこに住まう『人間』は、決して破れない硬質のビーカーの中に、逆さで佇み続ける。
男のように女のように、大人のように子どものように、聖人のように囚人のように。
『人間』アレイスター=クロウリーは、ビーカーの前に立つ人間に向かって笑った。
「私の命通りに動いてくれたか、土御門。」
対するアロハシャツの青年、土御門元春は、無感情な顔でうなずいた。
「お前の言った通り、教会の中のタカ派を動かして蒼崎橙子にLV5の能力の調査を依頼させた。お前の想定通り、
両儀式と他1名が研究所所員を装い侵入してきた。」
正面ゲートで撮られた、黒髪の少女と青年の写真を見せる。
アレイスターは、満足そうな笑みを浮かべた。
両者口を開かず、場に沈黙が訪れる。
「・・・アレイスター、お前は何を考えている?」
沈黙を破ったのは土御門だった。
「“幻想殺し”に“吸血殺し”、お次は“直死の魔眼”か。おまけにこちらの能力者の情報を
与えるような真似をして・・・いつからお前は敵に塩を送るような人間になった?」
アレイスターは、変わらずビーカーに浮いて笑みを浮かべていた。
その笑みが、より深まる。
「『手順』のためならば、私は敵に塩も送る。どの道塩は、単なる材料の1つに過ぎない。賢者の石ならばいざ知らず、
塩があるからと言って、錬金術師が真理に至れるわけではない。塩や硫黄や水銀、それ単体に意味は無い。正しい知識があってこそ、
それらは初めて意味を為す。所詮は、そういうことだ。『手順』を省略できるのならば、
塩などいくら撒いたところで痛くはない。」
「・・・・・・・・。」
黙る土御門を前にアレイスターは詠うように、
「空想は具現化する。幻想は殺される。全ての死を視る少女は果たして、幻想殺しに何を視るのだろうか、ね。」