しばらくして、食堂につく。
壁に、『今勉強すれば合格して幸せに\今勉強しなければ不合格で不幸になる』の文字。
ここにいる人達の会話は他人を蹴落として蔑み笑うようなものだけ。
科学宗教。その一言で済ませられる光景が目の前にあって。
ぐっと押し黙る。
……そして、当麻が大声を出して、そして。
壁に、『今勉強すれば合格して幸せに\今勉強しなければ不合格で不幸になる』の文字。
ここにいる人達の会話は他人を蹴落として蔑み笑うようなものだけ。
科学宗教。その一言で済ませられる光景が目の前にあって。
ぐっと押し黙る。
……そして、当麻が大声を出して、そして。
八〇人程度いた生徒達が全員こちらを振り返った。
最初、当麻は大声を出したからだと思った。
だからインデックスの発した言葉がよく分からなかった。
だからインデックスの発した言葉がよく分からなかった。
「まずいんだよ……」
「第一チェックポイント通過ってところか」
「第一チェックポイント通過ってところか」
「え、はえ?」
当麻を見てステイルは呆れたように、
「裏にいる僕たちを表にいる人間が見れる訳ないだろう」
と言った。
当麻を見てステイルは呆れたように、
「裏にいる僕たちを表にいる人間が見れる訳ないだろう」
と言った。
「そら、君の出番だ最強の盾!」
「……え?」
「……え?」
そして生徒が訳のわからない言葉を喋りはじめ。
まず一つの青白い球体が三人の横を通り過ぎた。
それだけだったら火傷で済む程度のものだろう。
まず一つの青白い球体が三人の横を通り過ぎた。
それだけだったら火傷で済む程度のものだろう。
けれど、目の前いっぱいに青白い球体が……——!
「う、わ……いちいち相手にしてられっかこんなもん!」
インデックスを引っ張って、魔術師の脇を走り抜けた。
当麻が盾になるとばかり思っていたステイルが慌てておって来る。
インデックスを引っ張って、魔術師の脇を走り抜けた。
当麻が盾になるとばかり思っていたステイルが慌てておって来る。
「な……おい逃げるな!何のための盾だ、その手ならドラゴンブレスだって防げるのに、
盾も使わず無防備な背を向けるなんて気がふれてるのか君はーっ!」
「何だそれ!人を盾にしといて……!あんなもん、右手だけで対処できるわけないだろ!」
たった一つの手であれだけの量の球体は相手にはできないのだ。
盾も使わず無防備な背を向けるなんて気がふれてるのか君はーっ!」
「何だそれ!人を盾にしといて……!あんなもん、右手だけで対処できるわけないだろ!」
たった一つの手であれだけの量の球体は相手にはできないのだ。
「ちっ……グレゴリオの聖歌隊を作り出すとは……少し相手を見くびっていたかもしれない」
「ぐれごりお?」
聞いた事もない。頭に残っている知識を思い出してもそのような言語は存在しない。
「ぐれごりお?」
聞いた事もない。頭に残っている知識を思い出してもそのような言語は存在しない。
「元はローマの最終兵器で、三三三三人の修道士を聖堂に集め、その祈りを集める大魔術なんだよ」
疑問に答えたのはインデックス。それを引き継ぎ、ステイルがいう。
「確か生徒の数は二〇〇〇人ほど、か。この国の言葉でいえば、『塵も積もれば山となる』だな全く」
疑問に答えたのはインデックス。それを引き継ぎ、ステイルがいう。
「確か生徒の数は二〇〇〇人ほど、か。この国の言葉でいえば、『塵も積もれば山となる』だな全く」
それを聞いて、当麻は愕然とした。
「に、二〇〇〇人相手に逃げ回っても捕まるだろ!」
「そうとも限らないんだよ……。『核』を壊せばグレゴリオの聖歌隊は止まる。それを探せばいいんだよ!」
「そうとも限らないんだよ……。『核』を壊せばグレゴリオの聖歌隊は止まる。それを探せばいいんだよ!」
走ってるうちに階段前につく。
「階段——行くよ」
「階段——行くよ」
階段をのぼろうとした瞬間。階下に向かい当麻は転んだ。
いつもの『不幸』ではない。ステイルが足を引っ掛けて転ばせたのだ。
勢いよく階段を転がり、半ば朦朧とした頭を無理やり持ち上げて上を見る。
ステイルが、わずかに笑みを浮かべているのが見えた
いつもの『不幸』ではない。ステイルが足を引っ掛けて転ばせたのだ。
勢いよく階段を転がり、半ば朦朧とした頭を無理やり持ち上げて上を見る。
ステイルが、わずかに笑みを浮かべているのが見えた
インデックスが何かを叫びこちらへ来ようとするが、
ステイルが何かを囁き、迷った眼でこっちを見ると、ステイルに引っ張っていかれた。
ステイルが何かを囁き、迷った眼でこっちを見ると、ステイルに引っ張っていかれた。
「ちっくしょ……っ!後で覚えてろイカレ神父……!」
何でなのかは当麻にも分かる。当麻の右手だ。
ステイルは魔術を使わない限り、相手に感知されることはない。
だが、当麻の手は発信機のようにここに存在する魔術をふき取っていく。
何でなのかは当麻にも分かる。当麻の右手だ。
ステイルは魔術を使わない限り、相手に感知されることはない。
だが、当麻の手は発信機のようにここに存在する魔術をふき取っていく。
だからと言って、納得は出来ない。まあ、禁書目録を危ない目にあわすのは嫌だが……。
せめて前もっていっておけよ、と思う。
それとも「前の」上条当麻は前もって言われたら相手を殴るような人間だったのだろうか?
とりあえず、後で一発殴ろうと心に決めた。
せめて前もっていっておけよ、と思う。
それとも「前の」上条当麻は前もって言われたら相手を殴るような人間だったのだろうか?
とりあえず、後で一発殴ろうと心に決めた。
さてんなことを考えてる暇は実はなくて。
目の前に光の球体が迫っていた。さも当然と言わんばかりに当麻に狙いを定め。
目の前に光の球体が迫っていた。さも当然と言わんばかりに当麻に狙いを定め。
「げっ……!」
後ろに、眼鏡をかけたお下げの少女。
「罪を罰するは炎。炎を司るは煉獄。煉獄は罪人を焼くために作られし、神が認める唯一の暴力——」
その言葉の意味も知らないであろう少女は、無理やり喋らされていた。
ここの要塞を作った魔術師によって。
彼女が言葉を紡ぐたびに、額にある青白い球体が大きくなってゆく。
後ろに、眼鏡をかけたお下げの少女。
「罪を罰するは炎。炎を司るは煉獄。煉獄は罪人を焼くために作られし、神が認める唯一の暴力——」
その言葉の意味も知らないであろう少女は、無理やり喋らされていた。
ここの要塞を作った魔術師によって。
彼女が言葉を紡ぐたびに、額にある青白い球体が大きくなってゆく。
逃げなけらばならないが、同時に何とかできないのかと思う。
(……あれ……?何か……)
上条当麻の記憶に何かが引っ掛かった。
記憶を失う前の知識。上条当麻の残骸。それに何かが。
当麻がそれを思い出す前に。
(……あれ……?何か……)
上条当麻の記憶に何かが引っ掛かった。
記憶を失う前の知識。上条当麻の残骸。それに何かが。
当麻がそれを思い出す前に。
眼鏡の少女はばじっと音をたて、頬の皮が吹っ飛んだ。
「なっ……まさかっ!?」
少女の体の皮が、言葉を紡ぐたびに小さく破裂していく。
しかし無表情な瞳でまだ唱え続けていた。
「やめろ……っ!」
「肯、て——は認識。に——ん、し————」
そう、これだ。
少女の体の皮が、言葉を紡ぐたびに小さく破裂していく。
しかし無表情な瞳でまだ唱え続けていた。
「やめろ……っ!」
「肯、て——は認識。に——ん、し————」
そう、これだ。
超能力者に魔術は使えない。
昔、インデックスが言った事。当麻はそれを知らないが、今の状況だけはどうにかしなければ。
少女がどんどん傷つき、血だらけになってそれでも喋り続け、その所為でまた怪我をする。
少女がどんどん傷つき、血だらけになってそれでも喋り続け、その所為でまた怪我をする。
「……は、己の、中に——中、とは———世界。自己の内面と世界の外面、を、繋げ」
少女はそこまで言うと、鈍い音を立てて黙り込んだ。
眉間にあった青白い球体は消え、代わりに血がだらだらとこぼれてゆく。
彼女がぐらりと、階段の段差に向かって落ちてゆく。
少女はそこまで言うと、鈍い音を立てて黙り込んだ。
眉間にあった青白い球体は消え、代わりに血がだらだらとこぼれてゆく。
彼女がぐらりと、階段の段差に向かって落ちてゆく。
「ちくしょ……!」
少女に向かって手を伸ばす。届け、と強く願って。
悪夢のような一瞬、見捨ててしまえと思った自分自身を振り払うように。
球体が迫って来る。少女と、当麻に向かって。
せめて少女の盾になろうと右手をつきだす。しかし。
少女に向かって手を伸ばす。届け、と強く願って。
悪夢のような一瞬、見捨ててしまえと思った自分自身を振り払うように。
球体が迫って来る。少女と、当麻に向かって。
せめて少女の盾になろうと右手をつきだす。しかし。
なにも、起こらない。