その日、御坂美琴は黒いケースを手に街を闊歩していた。
といっても帰宅途中に寄り道をしているだけで、特別な事情があるわけではない。いつも通りの行動をとっているだけだ。
(こうしてるとよくあの馬鹿に会うのよね)
あの馬鹿とは当然、上条当麻のことだ。
(今日もいたりして、って)
そんなことを考え、馬鹿馬鹿しいと頭を掻いたところで気付く。
本当にいた。
ふらふらと鞄片手にぶらつく、ツンツン頭の少年が。
「おう御坂、何してんだ?」
「え、アンタこそ何してんのよ?」
「別に俺は……」
と上条が適当に答えようとしたとき、美琴はその姿を見た。
上条の背後にいる少女を。
「また、アンタって奴はぁーー!」
怒りに任せて雷撃を放つ美琴。何に怒っているのか本人にもわかっていないが、とにかく苛ついたのだ。
「ちょっ、いきなりっ!?」
上条が右手を突き出す。いつも通りに雷を受け止めようとして、
「道端で雷は駄目なの」
右手に当たる前に掻き消えた。
困惑する上条と美琴。そこに少女が割って入る。
髪を子供っぽい髪止めで2つに結った少女が、ハサミを手にそこにいた。まさかそのハサミで電流を切断したのではあるまいに。
といっても帰宅途中に寄り道をしているだけで、特別な事情があるわけではない。いつも通りの行動をとっているだけだ。
(こうしてるとよくあの馬鹿に会うのよね)
あの馬鹿とは当然、上条当麻のことだ。
(今日もいたりして、って)
そんなことを考え、馬鹿馬鹿しいと頭を掻いたところで気付く。
本当にいた。
ふらふらと鞄片手にぶらつく、ツンツン頭の少年が。
「おう御坂、何してんだ?」
「え、アンタこそ何してんのよ?」
「別に俺は……」
と上条が適当に答えようとしたとき、美琴はその姿を見た。
上条の背後にいる少女を。
「また、アンタって奴はぁーー!」
怒りに任せて雷撃を放つ美琴。何に怒っているのか本人にもわかっていないが、とにかく苛ついたのだ。
「ちょっ、いきなりっ!?」
上条が右手を突き出す。いつも通りに雷を受け止めようとして、
「道端で雷は駄目なの」
右手に当たる前に掻き消えた。
困惑する上条と美琴。そこに少女が割って入る。
髪を子供っぽい髪止めで2つに結った少女が、ハサミを手にそこにいた。まさかそのハサミで電流を切断したのではあるまいに。
「誰よこの娘?」
「俺に訊くなよ」
おや? と美琴は首を傾げる。またいつものように、上条がフラグを立てたのだと思っていた。
だが違うようだ。誰だろう?
「その制服、光坂高校よね? 誰?」
少女は「えっと」と目をうろつかせてから、
「ことみ。ひらがな3つでことみ。呼ぶときはことみちゃん」
そう自己紹介した。
そういえば、と思い出す美琴。光坂高校には、能力逆算解除に秀でる女生徒がいると聞いたことがあった。
まさかこの少女が。
「ヴァイオリン?」
何の脈絡もなくことみは言った。彼女の指が指す先には美琴の持つ黒ケース。
確かに中身はヴァイオリンだ。音楽の授業で使ったのだ。
「そうだけど、弾けるの?」
少しケースを持ち上げ、美琴は訊ねる。
ことみはこくりと頷いた。
「弾けるのか? じゃあ聴かせてみてくれよ」
面白そうに上条。彼はその言葉が死亡フラグだと言うことをしらない。
「いいの?」
「まあ構わないけど……」
と、ヴァイオリンを手渡そうとしたところ、
「待ったぁーーっ!」
1人の男子生徒が飛び込んできた。ことみとヴァイオリンの間に割り込む。
「朋也くん?」
「俺に訊くなよ」
おや? と美琴は首を傾げる。またいつものように、上条がフラグを立てたのだと思っていた。
だが違うようだ。誰だろう?
「その制服、光坂高校よね? 誰?」
少女は「えっと」と目をうろつかせてから、
「ことみ。ひらがな3つでことみ。呼ぶときはことみちゃん」
そう自己紹介した。
そういえば、と思い出す美琴。光坂高校には、能力逆算解除に秀でる女生徒がいると聞いたことがあった。
まさかこの少女が。
「ヴァイオリン?」
何の脈絡もなくことみは言った。彼女の指が指す先には美琴の持つ黒ケース。
確かに中身はヴァイオリンだ。音楽の授業で使ったのだ。
「そうだけど、弾けるの?」
少しケースを持ち上げ、美琴は訊ねる。
ことみはこくりと頷いた。
「弾けるのか? じゃあ聴かせてみてくれよ」
面白そうに上条。彼はその言葉が死亡フラグだと言うことをしらない。
「いいの?」
「まあ構わないけど……」
と、ヴァイオリンを手渡そうとしたところ、
「待ったぁーーっ!」
1人の男子生徒が飛び込んできた。ことみとヴァイオリンの間に割り込む。
「朋也くん?」
名を朋也というらしい少年はゼェゼェと息を切らし、だがそれでもことみをヴァイオリンから引き離す。
だがことみは不満なようで、
「これからヴァイオリンを弾くの。朋也くんにも聴いてほしいの」
とか言っている。
先ほどから置いてきぼりな上条と美琴も、ことみが「迷」奏者だろうと気付いた。
上条の頬に冷や汗が。
「ヴァイオリンは学校だけでだ。な?」
「むぅ……」
小さい子のようにむくれることみ。
それをうまく流しながらも朋也は上条たちに、
「衝撃波レベルの怪音波に倒れたくなければ早く逃げるんだ」
などとささやいてくる。
いよいよ冷や汗ダラダラな上条。美琴の表情も引きつり気味である。
「朋也くん、いじめっこぉ……」
「違うぞ、それは」
上条たちはそんな会話に背を向けることにした。
まだ2人とも死にたくなかった。
だがことみは不満なようで、
「これからヴァイオリンを弾くの。朋也くんにも聴いてほしいの」
とか言っている。
先ほどから置いてきぼりな上条と美琴も、ことみが「迷」奏者だろうと気付いた。
上条の頬に冷や汗が。
「ヴァイオリンは学校だけでだ。な?」
「むぅ……」
小さい子のようにむくれることみ。
それをうまく流しながらも朋也は上条たちに、
「衝撃波レベルの怪音波に倒れたくなければ早く逃げるんだ」
などとささやいてくる。
いよいよ冷や汗ダラダラな上条。美琴の表情も引きつり気味である。
「朋也くん、いじめっこぉ……」
「違うぞ、それは」
上条たちはそんな会話に背を向けることにした。
まだ2人とも死にたくなかった。
3日後、不幸にも偶然ことみに出会った上条がヴァイオリンを聴かされたのは、別の話である。