とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-60

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匿名ユーザー

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第七学区の学生向けの飲食店が立ち並ぶ大通り。
今日は天気も良好である。時刻は正午を回ったところであり、昼食を取る大勢の客で賑わっていた。休日なので多くの学生は私服で出歩いている。その大通りの真ん中を学生服で上条当麻はトボトボと歩いていた。休日というのに補習を受け、近くで昼食を済ませようと思いきや、寮に財布を置き忘れてしまった。寝坊をして朝食もまともに取っておらず、上条は腹ペコだった。周囲の飲食店からはいい匂いが漂っていて、余計に食欲を刺激する。
「ああー、ふこ…」

ズドオオン!

快晴の青空から10億ボルトの雷が落ちた。
周囲から悲鳴や絶叫が聞こえた。反射的に右手をかざした上条当麻は、雷を防げたものの腰を抜かしてその場にへたりこんでいた。
粉塵が舞う中、突然周囲の人ごみがザザーッ!と二つに割れた。その先には二人の少女の人影があった。
こんなことをするのは一人しかいない。
学園都市の第三位、『超電磁砲(レールガン)』の異名を持つ御坂美琴である。
常盤台中学の制服を着ている彼女は頭上をバチバチさせながら、上条の10メートル先に立っていた。隣には両手に大きな手提げ袋を携えて、顔を蒼白にしたツインテールの少女がいる。
「ちょ、お、おま、御坂!イキナリ何すんだコラー!」
「お、お、お姉さま…いつもこのような事をあの殿方に?」
「……アンタってやつは」
「…あのー、ミサカさん?ナンデソンナ二オ怒リニ…」
「アンタってやつはァァァああああああああああああああああッ!!」
「えええ!?なんでそんなにキレてんのー!?」

御坂美琴は恋心を自覚した。
そんな彼女にとって、思いもよらぬ強敵(ライバル)が登場したのだ。
自分とは馬の合わない相手。
絶対に敵に回したくない相手。
よりにもよって、御坂と同列の常盤台中学の『超能力者(レベル5)』、至宝院 久蘭。
常盤台中学を支配するクイーン。
そんな彼女のフクザツな乙女心を、人一倍鈍感な上条が理解できるはずも無く、
再び、上条当麻の頭上に雷が落とされた。
その直後、セキュリティーシステムに攻撃性電磁波を感知され、一騒ぎになったのは言うまでも無い。




「…というワケなのよ。分かった?」
「で、何が、というワケなんだ?」
所変わって、とある学生寮の一室。
現在は上条当麻の家に二人の常盤台中学の女子生徒が上がりこんでいた。
テーブルを挟んで、三人とも座り込んでいる。
上条作の粗茶が並べられていた。評価は「まあまあ」の事。
常盤台中学生二人と一般の高校生一人。男子にとっては最上級のステキイベントだが、相手が美琴となると、上条にとってそんな気は微塵も起きなかった。

出会った瞬間に、何の前触れも無く電撃を喰らい、「話があるから」と超不機嫌モードの美琴さんと白井黒子に何故か家まで押し掛けられて、終いには「常磐大中学の寮に来い」とのこと。
「なぜわたくしめが常盤台中学の女子寮に行かねばならんのでしょうか?」
「…頼まれたからよ」
「…つまりあれか?気が済むまで雷撃をかましたいのかお前は」
(ブチッ)
「わかったわかった行きますからビリビリはやめてぇえええええええ!!」
「うわっ、ちょ、お姉様!?沸点低すぎですわよー!?」
御坂が周囲を帯電させたせいで、隣に座っている白井の髪の毛が逆立っている。真剣にビビっている様子だった。
「……だから、ついてきなさい」
「今日じゃないと、ダメか?」
「何よ。アンタ予定あんの?」
「…いや、特に無いんだけど、さ」
「じゃあ、別にいいじゃない。…ってアンタ、何で冷や汗かいてんの?」
「男子寮に女の子がいる時点ですでにヤバいんだよ!こんなことがクラスメイトに知られたら何言われるか分かったもんじゃねーからな」
なっ、と言いながら今さら状況を再認識する御坂美琴。みるみる顔が紅潮していく。
そんな美琴の姿を見て、白井黒子はため息をついた。
「まあ、確かに今のシチュエーションは、発情期の殿方には刺激が強すぎますわね」
「誰が発情期だ。誰が」
上条は彼女たちにウンザリ気味につっこんだ。
だが、上条当麻が冷や汗を流している理由はもう一つあった。

インデックスがもうじき帰ってくる。
もしも、インデックスと同居していることがバレでもしたら、何を言われるか分かったものでは無い。相手が相手である。魔術の存在を知らない彼女らにとって、インデックスの事情は話しにくいのだ。魔術側との抗争に関わったことのある御坂ですら、その存在を感知していない。だから上条は一刻も早く、この二人を追い出したかった。やたらと突っかかってくる美琴は特に危険だ。
上条は立ち上がると、
「行くなら今から行こうぜ。門限過ぎたら意味ないだろ?」
「……そうね」
そう言って御坂美琴は鞄を持って立ち上がった。白井もそれに続く。
「…御坂。お前何でそんなに不機嫌なんだよ。悪いものでも食ったか?」
「…別に、アンタには関係ないじゃない」

「心配しちゃ悪いのかよ?」

その言葉に、御坂は胸に迫るものを感じた。
唐突に『シスターズ』の時の事が思い出された。
電撃を浴びながらも、私と戦わないという自分の意思を貫き通した少年。
ボロボロになりながらも、絶対絶命の窮地から救い出してくれた少年。
全てを知りながらも、私を心配し、助けにきてくれた少年。

「あ…」

「ん?どうした」
怪訝な顔を作る上条。熱でもあるのかコイツ?と上条は美琴の顔を覗き込んだ。
一瞬上の空だった御坂美琴はふっと我に返った。
意中の相手の顔が急接近する。カァー、茹でタコのように顔を赤くする御坂美琴。
「なっ、何でもないわよ!」
慌てて顔を逸らす彼女を見て、「変なヤツ」と上条は思った。
その時、チッ、と軽い舌打ちが聞こえた。
「白井も、どうかしたのか?」
その一部始終を見ていた白井黒子は苦いものを噛み潰したような渋い顔を作っていた。
「…何でも、ありませんわ」
白井黒子は認めたくなかったのだ。冗談ではすまされない、お姉様の反応から分かるこの事実を。
ある意味、御坂美琴と同じくらい、複雑な心境に陥っていた。
「じゃあ、先に出てくれ。コップ洗って、少し部屋の片づけして行くからさ」
「…殿方、私たちの使ったコップを、舐めまわしたりはしませんわよね?」
「するかボケ!」
上条は即座に突っ込んだ。

コップを台所に持っていき、他の食器も洗いはじめる。
「へぇ、慣れてるのね」
「何覗き込んでんだよ」
「男の一人暮らしって、足場も無いくらい散らかってるイメージがあったからさ。アンタ、性格に似合わず、部屋はキレイにしてるのね」
「一言余計なんだよ。お前は」
「それとさ。干してある洗濯物も入れといたら?何なら私が入れてこようか?洗濯かごはベランダに置きっぱなしみたいだし」
「嫁かお前は」
「よっ、嫁!?」
「いいよ。そんなことしてくれなくても。お前たちは客なんだから、大人しく外に出て…」

ベランダを見て、上条当麻は凍り付いた。

男物のTシャツに紛れて、一枚、女物を下着が干されてあった。
言うまでも無く、インデックスのものだ。
その上、洗濯かごにはインデックスの下着がまだ何着か残っていて干し忘れていた。
少年は愕然とする。
いきなり押し黙った上条を見て、御坂美琴は首をかしげた。
「?どうしたの?急に黙り込んで」
「い、いやっ、なんーでも無いんだ。と、とにかく、外に出てくれ!白井、お前、『空間移動(テレポート)』出来るんだろ!?」
「…はぁ、ですが建物の構造を十分に把握していないので、不用意に跳ぶと危ないのですけど」
「ちょっと?何でそんなに慌ててんのよ」
不審に思う女子中学生二人。
ズバビュン!!と目にも止まらぬ速さでベランダに行き、洗濯かごに洗濯物を入れる上条。
「なっはっはっー。そうだなそうですね洗濯物は入れとかないといけないよなー」
挙動不審すぎる上条の行動。
二人の少女は顔を見合わせた。不審感が増した視線が少年に突き刺さる。
冷や汗をかきつつも、何とか隠すことができたと内心ホッとする上条。ただし、もう一度確認しておこう。

上条当麻は不幸な人間である。

その時、勢いよくドアが開かれた。
三人の視線が玄関へと集中する。
そこにいたのは、瞳を輝かせた銀髪碧眼シスター。

「ただいまー、とうま!ねえ聞いて聞いて!私福引で1000グラムの黒豚の豚肉を当てたんだよー!今日の夕食は盛大に…」

四人は固まった。
ドサリ、と上条の手から洗濯カゴが落ちる。
その中から零れ落ちるのは数着の少女の下着。
御坂と白井はスローモーションで上条を見て、落ちた下着に目を向け、インデックスの方に目をやる。そして再び上条を見た。
三つの視線から刺される上条。全身から、止めど無くダラダラと冷や汗が流れてきた。

最悪だ。

重い沈黙から数秒後、最初に口を開いたのは御坂美琴だった。
「…これはどうゆう事か、説明してくれる?」
ニッコリと笑顔で、眉間に青筋を数本浮かばせながら、バチバチと体中から帯電していた。
「あ、あはははは」
乾いた声で笑うしかない俺。
「…コレハデスネ?それは山よりも谷よりもとてもとても深ーい事「ウチに何の用かな?短髪」」
「ってコラァ!!インデックス!?」
上条は一瞬の内にインデックスの口を塞ぐ。
(んー!んー!何するのかな!?とうま!)
じたばたするインデックスを抑える上条の頭は、すでに真っ白だった。
たまたまウチに遊びにきたインデックスと偶然居合わせたイベント!で誤魔化す目論見は早くも崩れ去る。
言い訳はできない。女物の下着、当然のように家に上がりこんでくるインデックス。証拠は十分すぎるほど揃っていた。
その上、インデックスの背中に回り込んで口を塞ぐ様子も、周りから見れば抱きついているようにも見えるワケで。
目の前に呆然と立ち尽くしている御坂美琴は、下着を見て、こちらを見て、白井と見合わせ、そしてプルプルと指を震わせながら上条を指差した。


「…ま、まさかアンタたち、い、一緒に住んでるの?」

上条当麻の全身から力が抜けた。
上条から解放された銀髪碧眼シスターは強気で御坂を睨む。
「そうだよ!勝手に上がりこんでほしくないかも!」
(お、終わってしまいましたかー…)
ガクリ、と崩れ落ちる上条。周囲からバチバチと、何かを取り出す音が聞こえた。
少年が恐る恐る顔を上げると、
不気味な笑顔を浮かべつつ、何やら両手に物騒な金属矢を握る白井黒子がいた。
「あらやだ殿方ったら。ここはその幼女との愛の巣だったのですね。でもわたくしは『風紀委員(ジャッジメント)』。未成年の不純異性交遊は見逃せませんの♪」
ブチッと、何かが切れる音がした。
その音の先には、周囲をバチバチと帯電させた常盤台中学のエース様。
ペースメーカーを使っている老人が見れば、ショック死しそうなくらい怖い形相をしていた。
「……こ、ここここの、ロリペドがああああッ!!少女監禁趣味はお前だったのかこのボンクラあああ!!」
「んなああああああっ!?それ違っ!?ていうかこの近距離でそれはぎゃあああああああ!!」

とある学生寮の一室で、一人の少年の絶叫が木霊した。

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