とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-88

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匿名ユーザー

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「皆さーん、ここに幼稚園生くらいの女の…ってエエッー!!上条ちゃーん!一体どうしたのですかー!?」
「小萌センセー!!止めんどいてください!男には死んででもヤらなあかん時があるんです!かっ、カミやんは俺たちを裏切ったんや!男たちの友情を弄んどったんや!仲間のフリをして、一人で笑ってたんやー!」
昼休みが終わる五分前。教室の男子全員は一人のクラスメイトを囲んでいた。
名を上条当麻という。
右手に『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を宿す不幸な少年。
学園都市第三位の電撃から神の御加護まで打ち消せる力を持つ彼はこれまでに数々の人知れぬ功績を生み出してきた。
一〇万三〇〇〇冊の魔道書を保有する少女の運命を、
無意識に吸血鬼の命を奪ってしまう少女の運命を、
実験で産み落とされ、殺されていくだけの少女たちの運命を、
右手一つで、絶体絶命の運命から救い出してきたのである。

だが、そんな彼の右手も現実では何の意味もなさない。

上条に抱きついた少女は、姫神と数人の女子生徒と一緒に教室の外に行ってしまい、残された男子生徒は一言も言葉を介さず、自分がなすべきことを理解した。そして行動に出た。
男たちの扉が今、開かれたのだった。
クラスメイトに囲まれた上条当麻はボロ雑巾のようにフルボッコにされ、漢泣きする青髪ピアスの鉄拳を喰らい、彼の意識は向こうの彼方へと飛んでいった。
そんな光景を、担任、月詠小萌は見たのである。



「どうしたのー、パパァ?元気無いよ?」
真っ黒で、純粋そのものの瞳で上条を覗き込む少女。真っ黒な髪で、真っ白く燃え尽きたようにうなだれる上条。
ここは職員室の近くにある会議室。パソコン一台に、本棚にはクラブ活動に関する日誌。長方形の白いテーブルに、教室にあるイスとは2ランク高いオフィス用の椅子に三人が腰かけていた。
午後の授業は上条のクラスだったのだが、月詠小萌は「自習」と黒板に大きく書いて、現在は会議室で上条の対面に真剣な面持ちで座っていた。
「で、この子は上条ちゃんの一体何です?」
「俺にもサッパリで…」
視線も合わせず、下を俯く上条当麻。呼吸をするたびに体中に激痛が走った。クラスメイトの人たちはマジで殺る気だったらしい。
そして、上条の左腕を力強く抱きしめる少女は頬を膨らませた。またもや激痛が走る。
「もうっ!何言ってるのー?パパはパパだよぉ!」
「………パ、パ?」
「そうだよ!私のパパなのっ!ねー?パパ!」
上条は小萌先生を見た。体が小刻みに震えて何だか目が潤んでいるようにも見える。
「か、上条ちゃん?」
「いっ、いや、本当に知りませんよ…」
「えー!?パパ、大丈夫!?私のこと覚えてないの?昨日もママと一緒にお風呂に入って洗いっこしたじゃん!」
空気が死んだ。上条は再び小萌先生を見た。
「か、か、上条ちゃん?」
わたくしめにも全く身に覚えがないものでして、と言おうとして、上条当麻は口を噤んだ。

上条当麻は記憶喪失だ。

彼は七月二八日以前の記憶がない。
自分は無実だと信じたいだが、記憶がないために『上条当麻』は身の潔白を証明できないのだ。その上、今までの事件を振り返ると過ちが起きてもおかしくない事態に幾度となく遭遇したことがある。記憶が無くなる以前にも、同じような状況が起きていたなら、何らかの拍子で若気の至りを冒してしまったのかもしれない。そう考えると上条はますます塞ぎこんでしまった。
少女の顔を見る。
キラキラと輝く大きな黒い瞳に肩にかかるほどの黒い髪。白いワンピース一枚に赤い皮靴。日にあまり浴びていないような透き通った肌。成長すれば結構な美人になりそうだ。
ん?
その顔をじっと見ていると、上条は誰かに似ているような気がした。顔の輪郭と目つきが知り合いの誰かに似ている。
そんなことを考えていると、
「ほ、ほほ、本当に、上条ちゃんの…娘なのですか?あ、相手の方は一体誰なんですかー!?し、しかもママと一緒にお風呂に入ったなんて、き、昨日も、なんて、じゃあ、いっつも上条ちゃんは、ふぅ~」
顔を真っ赤にした小萌先生はその場で気絶してしまった。刺激が強すぎる妄想は彼女の精神をパンクさせてしまった。
上条はもう一度、少女を見た。
「…あのさ」
「ん?なぁに?パパ」
「もう一度確認するけど、俺の、娘、なんだよな?」
「うんっ!私はとうまパパの娘だよっ!」
とびきりの笑顔で返事をする娘。幼い子の笑顔は、なんて可愛らしいのだろう。
「…そうか、そっか」
「もーう、パパったらー、何か今日はおかしいよ?風邪でもひいたのー?」
上条当麻は『以前の自分』に一言、言ってやりたかった。

アンタ、スゲェよ、と。

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