とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-125

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

凄まじい轟音と共に、高層ビルと同じ高さの砂埃が舞い上がった。
ブリッジを支えていた石柱は、アメ細工のようにグニャリと折れ曲がり、ブリッジごと黒い翼に呑み込まれていった。白髪の少年の眼前にある、ブリッジの終着点である国際ターミナルの全面ガラス張りの巨大な出入口を突き抜け、あらゆる物を貫通し、ターミナルの反対側で停泊している数機の旅客機を吹き飛ばした。
行倒しになった飛行機は、遅れて一際大きい爆発音と共に炎上した。ブリッジから数百メートル先までの国際ターミナルを跨ぐ一直線上は、ドロドロとした黒い物体一色に染め上げられる。
『一方通行(アクセラレータ)』の背中から噴射されたものは翼というより、何か意志を持った黒い液体のようにも見える。
白髪の少年の背中から噴射している『竜王の翼(ドラゴンウイング)』は、空中で巨大な半円を描くように湾曲し、『一方通行(アクセラレータ)』の正面に伸びていた。
『一方通行(アクセラレータ)』は両腕を前に突き出す。ゆっくりとその腕を真横に広げ、十字架のような格好をとった。
『竜王の翼(ドラゴンウイング)』もそれに倣う。
一対の黒い塊は二手に分裂し、真横に動いた。
バキバキと鉄注や鉄筋はへし折れ、ガラスをふんだんに使用した芸術的な建築物である国際ターミナルは、大量のガラスの破片をまき散らしながら、中心から横一直線に引き裂かれた。
ヒュン、と。
一瞬で、黒色の翼は『一方通行(アクセラレータ)』を中心に、円を描くように仰ぐ。


高層ビルやプロペラの高さ二〇メートルの場所が、真横に切断された。


ズズズウン!!と、大きな音を立てながら、『一方通行(アおクセラレータ)』の真正面にある国際ターミナルと同じように、周囲の建物が崩れ去り、莫大な量の粉塵が吹き荒れた。
瞬く間にして、直径一〇〇〇メートル弱の一帯は、瓦礫の山と化した。
粉塵が荒れ狂う中、黒色の翼はゆっくりと立ち上がり、長さは約五〇〇メートルまで伸びていた。白髪の少年は、空を見上げた。

パン!と、翼の先端から、まるで蠅の群れが霧散するように、黒い物体が四方へと飛び散った。
その破片一つ一つが、鋭い羽根へと変貌する。無数の羽根は、目に止まらぬ速度で粉塵の中を突き抜けていった。
五〇〇メートルまで伸びていた翼は、わずか一〇メートル足らずの長さに収縮した。
白髪の少年は辺りを見回す。自分が立っているのは高さ二〇メートル程のブリッジ。しかし、今は見る影も無く、彼の前後の橋は既に崩れ落ちており、左右にあったガラス張りの塀すら吹き飛んでいた。たった一本の石柱に支えられた一〇坪程度の床に立っているようなものだった。
「――――――――ら――スト――――――オ――――――――――ダ―――――――」
『一方通行(アクセラレータ)』は、必死に言葉を紡いだ。彼の頭に、耳鳴りがしそうなほど大きな声が「聞こえた」。
(今、貴方の魂は『神の世界(ヴァルハラ)』に密接に『干渉(コンタクト)』している。『神の物質(ゴッドマター)』が貴方の感情にリンクして、大量に溢れ出しているから感情をコントロールして!ってミサカはミサカは貴方を支えていることをアピールしてみる!)
「――――――ど――――う――――――やれ――――ヴァ―――――――wrd――」
(自我を忘れないで!気を抜くと、貴方の魂が『神の世界(ヴァルハラ)』に完全にとりこまれて『死んで』しまうから!
―――ッ!!呑み込まれちゃダメ!魂が『神の物質(ゴッドマター)』に溶け込んで霧散しちゃう!
!!!そ、そうだ!あ、あな、貴方の、本当、の、なっ、名前、名前を!思い出して!!
私は知ってるけど、『今の貴方』は知らないはず!!だ、だか、キャッ!)


「ナ―――――3――――――魔―――――――――え――――――em ――――――?」


『時間割り(カリキュラム)』によって『力』に目覚めて以後、彼の世界は一遍した。生徒数二〇〇〇人に届く学校にいながら、彼一人だけの特別クラスが用意された。体育祭にも文化祭にも参加しない。狭い教室に、机がポツンと一つ置いているだけ。
別にそれに不満を持った覚えは無い。
『絶対能力(レベル6)』に進化するための特別クラスで、多くの研究者に囲まれながら、そこで淡々と『時間割り(カリキュラム)』をこなしていった。
『絶対能力(レベル6)』にたどり着ける者として、『一方通行(アクセラレータ)』と呼ばれるようになった。
検体名『一方通行(アクセラレータ)』。
それは、すなわち学園都市最強の称号。『超能力』を身につけるべく、この学園都市に入り、『時間割り(カリキュラム)』を受ける人々全ての憧れの的。
最初、この名前は自ら好んで使っていた。自分は最強だ。自分は特別な存在だ。選ばれた存在なんだ。と、悪を倒す正義のヒーローの素質を持っているものと信じて疑わなかった。両親に名付けられた名前よりも、『一方通行(アクセラレータ)』という名に酔いしれていた。
『一方通行(アクセラレータ)』の真の意味に気づかないまま。

月日が流れ、検体としてのコードネームが自分自身の固有名にすり替わった頃、二万人の『妹達(シスターズ)』殺害による『絶対能力進化(レベル6シフト)』計画が始まった。
外を出歩けば、狂気に満ちた馬鹿な連中に目をつけられ、返り討ちにし、何回、何千回と同じ顔をした少女を殺し続ける日々。彼の表情にあまり変化が見られなくても、彼の心は徐々に深い『闇』に侵されていった。

そして、上条当麻との出会い。
そこで味わった敗北という土の味。
能力を制限され、『打ち止め(ラストオーダー)』無くしては生きられない体となり、様々な人々を通して、『人』としての意味を学んでいる。

『一方通行(アクセラレータ)』では無い、『人』としての自分。
一度たりとも、考えたことは無かった。

真っ白な世界に、『俺』はいる。
(俺は、一体―――――――――――――――――――――――――――――――誰だ?)
(俺の―――名前は――――――――――――――――――何だ―――――――――?)
『俺』の声と、

(俺の――――――――――――――――――――――――――――――――――――)
『僕の――――――――――――――――――――――――――――――――――――』
『僕』の声が、

(名前は―――――――――――――――――――――――――――――――――――)
『名前は―――――――――――――――――――――――――――――――――――』
重なり、

「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ら」
『誰』かの、

「―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ラ」
声が、
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――んラ」
聞こえる。


闇を焼き尽くさんとする灼熱の戦火の中、一人の少年の叫び声が聞こえた。
『俺』を、呼んでいる。


「おいっ!!大丈夫か!?目を覚ませ!!―――――――――――――――――――――ッ!!!」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー