「―――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」
聞き慣れぬ少年の叫び声と共に、真っ白な世界に覆われた視界が、明確になっていく。
頭に流れ込んでくる黒い何かは、自我が闇に呑み込まれる錯覚を覚えながら、その勢いを増した。
だが反対に、心は高揚し、そして、異常なまでの冷静さがあった。
まるで体全体に熱気と冷気を同時に当てられ、その間で交じり合うような感覚。
胸に溢れんばかりの何かを吐き出すように、白髪の少年は絶叫した。
「ォォォおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああアアア!!!」
頭に流れ込んでくる黒い何かは、自我が闇に呑み込まれる錯覚を覚えながら、その勢いを増した。
だが反対に、心は高揚し、そして、異常なまでの冷静さがあった。
まるで体全体に熱気と冷気を同時に当てられ、その間で交じり合うような感覚。
胸に溢れんばかりの何かを吐き出すように、白髪の少年は絶叫した。
「ォォォおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああアアア!!!」
『一方通行(アクセラレータ)』は、真名(まな)を、取り戻す。
「俺は――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
(アプリケーション〇〇九一。検体番号(シリアルナンバー)二〇〇〇一号。個体名、ラストオーダーより起動の申請。
検体名、アクセラレータ以外の申請は、パスワード――クラス『A』の入力が必要。
入力確認、開始―――――――――――――――――――――――『ブルーE.M.』と判定。
(アプリケーション〇〇九一。検体番号(シリアルナンバー)二〇〇〇一号。個体名、ラストオーダーより起動の申請。
検体名、アクセラレータ以外の申請は、パスワード――クラス『A』の入力が必要。
入力確認、開始―――――――――――――――――――――――『ブルーE.M.』と判定。
『受理』
〇〇九一。アプリケーションコードネーム、『ドラゴンウイング』を確認。『マザー』による検体名、アクセラレータの存在を確認。
〇〇九一。アプリケーションコードネーム、『ドラゴンウイング』を確認。『マザー』による検体名、アクセラレータの存在を確認。
『三次元空間』演算による座標指定。――――――――――――――――――――完了。
アプリケーションコードネーム、『ドラゴンウイング』。
起動―――――――――――――――――――――――――――――――――――開始)
『打ち止め(ラストオーダー)』の無機質な声が、白髪の少年の脳内に響き渡る。
だが、白髪の少年には届かなかった。心の内に鳴り響く轟音に、全てが掻き消されていく。
(AIM拡散力場――――――――――――――――class;3.64。Level『A』と断定。
ヴァルハラとのアクセスによる『共振』を感知。
IFM振動数を空間周波数から逆算―――――――――――――――――――――成功。
130,55[Dz/s] 。SLF;4897.001[BQ/s]。
エマージェンシーモードのブルーアクセスのため、カウント00.00。)
アプリケーションコードネーム、『ドラゴンウイング』。
起動―――――――――――――――――――――――――――――――――――開始)
『打ち止め(ラストオーダー)』の無機質な声が、白髪の少年の脳内に響き渡る。
だが、白髪の少年には届かなかった。心の内に鳴り響く轟音に、全てが掻き消されていく。
(AIM拡散力場――――――――――――――――class;3.64。Level『A』と断定。
ヴァルハラとのアクセスによる『共振』を感知。
IFM振動数を空間周波数から逆算―――――――――――――――――――――成功。
130,55[Dz/s] 。SLF;4897.001[BQ/s]。
エマージェンシーモードのブルーアクセスのため、カウント00.00。)
夜空を焼き尽くさんとする灼熱の戦火の中、一人の少年の叫び声が聞こえた。
『俺』を、呼んでいる。
「おいっ!!大丈夫か!?目を覚ませ!!―――――――――――――――――――――ッ!!!」
『俺』を、呼んでいる。
「おいっ!!大丈夫か!?目を覚ませ!!―――――――――――――――――――――ッ!!!」
聞き覚えの無いはずなのに、ひどく懐かしい声。
「こんなとこで死ぬなよ!!……それに、『打ち止め(ラストオーダー)』はどうした!?」
「こんなとこで死ぬなよ!!……それに、『打ち止め(ラストオーダー)』はどうした!?」
俺の『世界』は、この少年との出会いから、変わりはじめた。
「くそっ!アイツらああああ!!フザケんじゃねえぞ!!おいっ!起きろ!!俺たち、約束しただろ!?必ず生き残るって!」
「くそっ!アイツらああああ!!フザケんじゃねえぞ!!おいっ!起きろ!!俺たち、約束しただろ!?必ず生き残るって!」
その出会いは、さらなる『絶望』の始まりであり、たった一つだけの『希望』。
「聖人だろうが魔神だろうが関係ねえ。世界の意思?バッカじゃねえの」
「聖人だろうが魔神だろうが関係ねえ。世界の意思?バッカじゃねえの」
『俺』は願った。
「いかなる理由があろうと―――、ラを傷つけるやつは許さねえ!!神だろうと悪魔だろうと、全員相手にしてやる!」
「いかなる理由があろうと―――、ラを傷つけるやつは許さねえ!!神だろうと悪魔だろうと、全員相手にしてやる!」
そして、辿り着いたのだ。
白髪の少年は、髪を掻き上げた。
手にこびり付いたのは、一筋の涙。
とある少年の後ろ姿が脳裏に焼き付いていた。
『今の彼』は知らない、真の強者の姿。
その少年が、彼の『名前』を呼び続けていた。
手にこびり付いたのは、一筋の涙。
とある少年の後ろ姿が脳裏に焼き付いていた。
『今の彼』は知らない、真の強者の姿。
その少年が、彼の『名前』を呼び続けていた。
「グチャグチャうっせえンだよ―――――――――――――――――――――――当麻」
白髪の少年の頭に、感情の無い『打ち止め(ラストオーダー)』の声が響き渡る。
(『竜王の翼(ドラゴンウイング)』に関するステータスを確認。
ヴァルハラとのシンクロ率―――――――――――――――――――――――2.00%
ゴッドマターの出力量――――――――――――――――――――――――グリーン
アプリケーション〇〇九一。正常動作―――――――――――――――――――確認)
(『竜王の翼(ドラゴンウイング)』に関するステータスを確認。
ヴァルハラとのシンクロ率―――――――――――――――――――――――2.00%
ゴッドマターの出力量――――――――――――――――――――――――グリーン
アプリケーション〇〇九一。正常動作―――――――――――――――――――確認)
(『接続(アクセス)』―――――――――――――――――『完了(コンプリート)』)
不思議な気分だった。
脳に直接、冷水を流しこんだような冷静さと、激しく燃え盛る激情に体が震えながらも、全身を突き抜ける爽快感がある。
無地の紙に、あらゆる色が描かれるような情報の把握。
全てが見通せるような視界。
『何か』が違っていた。
(血が流れてるのに痛みが無ェ。なのに、風や温度の感覚がある。一体どうなッてンだ?)
「ラストオーダー」
彼の周囲には誰もいない。共に在る『彼女』に話しかける。
「あれはお前の記憶か?」
(うん。って私の記憶を見たの?ってミサカはミサカはとっても恥ずかしがってみたり!)
「…ありゃア、『戦争』の最中か?辺り一面が火の海だったぜ。あの『無能力者(レベル0)』に叩き起こされるヤツだったんだが…あンなこっ恥ずかしいセリフを言うとは、かなりのオメデタさンだなオイ」
心の隅で、自分が決める『善人』の像と被ったことは口が裂けても言えない。
(あちゃー。って、ちょっと待って!?ミサカはミサカはそんな記憶は無いよ!ってそれは違うって断言してみる!)
「…なンだと?」
(私の魂も貴方の魂を通して『神の世界(ヴァルハラ)』にアクセスしてるから、記憶を垣間見ちゃったと、ミサカはミサカは思ったんだけど…)
「なら、『この時代の俺』の記憶の残滓だったンだろうな……おかげで、助かったぜ」
(よく頑張りました!とミサカはミサカは『今の貴方』に盛大な拍手を送ってみたり!)
「手が無ェだろ。お前」
(そういう悪質なツッコミはNGだよ!ってミサカはミサカは貴方のマナーの無さにプンプン怒って警告してみたり!)
「勝手に言ッてろ」
『打ち止め(ラストオーダー)』の声を無視して、何気なく右手を前にかざす。
脳に直接、冷水を流しこんだような冷静さと、激しく燃え盛る激情に体が震えながらも、全身を突き抜ける爽快感がある。
無地の紙に、あらゆる色が描かれるような情報の把握。
全てが見通せるような視界。
『何か』が違っていた。
(血が流れてるのに痛みが無ェ。なのに、風や温度の感覚がある。一体どうなッてンだ?)
「ラストオーダー」
彼の周囲には誰もいない。共に在る『彼女』に話しかける。
「あれはお前の記憶か?」
(うん。って私の記憶を見たの?ってミサカはミサカはとっても恥ずかしがってみたり!)
「…ありゃア、『戦争』の最中か?辺り一面が火の海だったぜ。あの『無能力者(レベル0)』に叩き起こされるヤツだったんだが…あンなこっ恥ずかしいセリフを言うとは、かなりのオメデタさンだなオイ」
心の隅で、自分が決める『善人』の像と被ったことは口が裂けても言えない。
(あちゃー。って、ちょっと待って!?ミサカはミサカはそんな記憶は無いよ!ってそれは違うって断言してみる!)
「…なンだと?」
(私の魂も貴方の魂を通して『神の世界(ヴァルハラ)』にアクセスしてるから、記憶を垣間見ちゃったと、ミサカはミサカは思ったんだけど…)
「なら、『この時代の俺』の記憶の残滓だったンだろうな……おかげで、助かったぜ」
(よく頑張りました!とミサカはミサカは『今の貴方』に盛大な拍手を送ってみたり!)
「手が無ェだろ。お前」
(そういう悪質なツッコミはNGだよ!ってミサカはミサカは貴方のマナーの無さにプンプン怒って警告してみたり!)
「勝手に言ッてろ」
『打ち止め(ラストオーダー)』の声を無視して、何気なく右手を前にかざす。
ブバッ!!と、突然の爆風と共に、前方100メートルにある大量の瓦礫が勢いよく吹き飛んだ。
「……ハァ?」
白髪の少年は首をかしげた。
操作しようとしたでは無く、前方に佇む瓦礫の山が鬱陶しいと『思った』だけだ。
(貴方の力は『ベクトル操作』だけど、この状態時には、触れることが無くても半径三一〇・一七メートルの範囲内なら『ベクトル操作』が可能だよ。でも、この『力』は既存の物理法則が成り立たないから、ミサカネットワークによる演算処理が行えないし、ベクトルの方向性は通常の数万倍だから、緻密な操作が一切行えないの、ってミサカはミサカは説明してみる!)
「…オイ。俺はまだ何もしちゃいねェぞ。ただ手を動かしただけだ」
(『操作』するというより、『思い込んだ』ことがそのまま現実に『反映』するの。けど、今の開発段階では物体を操作することだけ。食べ物が欲しいって望んでも生み出すことはできな…)
「……ハァ?」
白髪の少年は首をかしげた。
操作しようとしたでは無く、前方に佇む瓦礫の山が鬱陶しいと『思った』だけだ。
(貴方の力は『ベクトル操作』だけど、この状態時には、触れることが無くても半径三一〇・一七メートルの範囲内なら『ベクトル操作』が可能だよ。でも、この『力』は既存の物理法則が成り立たないから、ミサカネットワークによる演算処理が行えないし、ベクトルの方向性は通常の数万倍だから、緻密な操作が一切行えないの、ってミサカはミサカは説明してみる!)
「…オイ。俺はまだ何もしちゃいねェぞ。ただ手を動かしただけだ」
(『操作』するというより、『思い込んだ』ことがそのまま現実に『反映』するの。けど、今の開発段階では物体を操作することだけ。食べ物が欲しいって望んでも生み出すことはできな…)
もの凄い勢いで、白髪の少年の手元に何かが飛んできた。
それを掴んで、視認する。
「……缶コーヒーが飛ンできたンだが、しかも俺が飲みてェと『思った』銘柄だ」
(――――――――――――――)
『打ち止め(ラストオーダー)』が沈黙する。
白髪の少年は、『打ち止め(ラストオーダー)』の説明と身に起こった現象で、自身の能力を把握した。
『ある範囲内の物体を支配する力』
それを掴んで、視認する。
「……缶コーヒーが飛ンできたンだが、しかも俺が飲みてェと『思った』銘柄だ」
(――――――――――――――)
『打ち止め(ラストオーダー)』が沈黙する。
白髪の少年は、『打ち止め(ラストオーダー)』の説明と身に起こった現象で、自身の能力を把握した。
『ある範囲内の物体を支配する力』
つまり、演算などを用いて、現実の操作が自分の理想に沿うように動かす力では無く、現実を理想に沿うように動かせる力。
白髪の少年は小さく笑った。
「物事を自分の思い通りに動かせる、か。まるで神様みてェな力じゃねえか」
自分の願望が、領域(テリトリー)内における物理法則(ルール)なのだ。
まさに『神の如き者(ミカエル)』。
神の領域に踏み入った学園都市第二位『絶対能力者(レベル6)』の名に相応しい力。
少年に向かい風が吹いた。白い長髪が大きく風に靡く。
少年は絶叫した。
「物事を自分の思い通りに動かせる、か。まるで神様みてェな力じゃねえか」
自分の願望が、領域(テリトリー)内における物理法則(ルール)なのだ。
まさに『神の如き者(ミカエル)』。
神の領域に踏み入った学園都市第二位『絶対能力者(レベル6)』の名に相応しい力。
少年に向かい風が吹いた。白い長髪が大きく風に靡く。
少年は絶叫した。
「フッ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
かつて自分が願っていた力。二万人の少女を殺し尽くして初めて到達する領域。
その力が、手中にある。
心の奥底から震える驚喜を、体から解き放った。
溢れんばかりの高揚感を噛み締めながら、声を殺して、彼は告げる。
「ラストオーダー」
(…分かってる)
『打ち止め(ラストオーダー)』に声をかけた白髪の少年は、鋭く目を細めた。
その力が、手中にある。
心の奥底から震える驚喜を、体から解き放った。
溢れんばかりの高揚感を噛み締めながら、声を殺して、彼は告げる。
「ラストオーダー」
(…分かってる)
『打ち止め(ラストオーダー)』に声をかけた白髪の少年は、鋭く目を細めた。
「ドラゴンはまだ…死んでねェ」
ターミナルの残骸の向こうに見えるのは、黒い煙が幾つも立ち上がる飛行場。
その先に漂う強烈な存在感を、白髪の少年は感じ取った。
『行くぜ』と思った瞬間、
バオォ!!と、足元の床を、ブリッジを支えていた一本の柱ごと吹き飛ばし、弾丸並みの速度で、前方へと突進した。
風に靡く『竜王の翼(ドラゴンウイング)』は、一本の直線を描いた。
その先に漂う強烈な存在感を、白髪の少年は感じ取った。
『行くぜ』と思った瞬間、
バオォ!!と、足元の床を、ブリッジを支えていた一本の柱ごと吹き飛ばし、弾丸並みの速度で、前方へと突進した。
風に靡く『竜王の翼(ドラゴンウイング)』は、一本の直線を描いた。