とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-185

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匿名ユーザー

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「あんたたち、ちょっと実験台になりなさい!」


一方通行、土御門、海原の三人は、テーブルの上の小さなチョコレートケーキと睨み合っている。
数分前、上品とはいえない笑みを浮かべた結標がアジトにやって来た。
三人が睨み合っているのは、バレンタイン用の試作品らしい。
とりあえず食べて、何かしら感想を言えということだった。

「見た感じでは普通だにゃー。それにしても、バレンタインはまだ一ヶ月以上先だぜぃ?」
「これは…テメェが作ったのかァ?大丈夫なンだろうなァ?」
一方通行と土御門は、チョコレートケーキと睨み合ったままブツブツと呟いている。
海原は無言のまま、チョコレートケーキを様々な角度から観察をしている。
「失礼ね、お菓子くらいなら多少作れるわよ。それに一ヶ月なんてすぐじゃない。
 いまいちだったら改良しなきゃならないんだから、早すぎるなんてこともないのよ」

「そ、それじゃあ。意を決して…い、頂くとしますかにゃー」
覚悟を決め、三人はケーキを口にした。


  「「「…ッ!!」」」


「ハッ、一体どんな薬入れやがったんだァ?危うくテメェに惚れるところだったぜェ」
「まさか結標さんに惹かれそうになるとは。僕の御坂さんへの想いは…いや、そんなことは…」
「一瞬とはいえ、ロリ好き土御門さんがこんな年増にトキメいちまうなんてにゃー。何の魔術だこれは」
各々ブツブツ言いながらも、しっかりケーキを食べ続けている。

そわそわしながらケーキを貪る三人を見ていた結標だが、驚いた表情で海原を見る。
「う、海原?御坂って、まさか超電子砲の?アンタもロリコンだったのね。
 それと土御門、誰が年増ですって?アンタと一歳しか違わないわよ!!
 って、それよりどうなのよ?ごちゃごちゃ言ってないでさっさと感想言いなさいよ!」
そわそわしたり、驚いたり、怒ったり、ラジバンダリ…ではなく、実に忙しそうに表情がかわる。
以前の彼女ならば、これ程くるくると表情をかえることはなかっただろう。
これもあの小さな先生のお陰だろうか。

「聞き捨てなら無い単語が聞こえた気がしますが、美味しいケーキを頂いたので聞かなかったことにしておきましょう」
ケーキを食べ終えた海原は、満足そうな顔で紅茶を飲みながら答えた。目があまり笑っていないが。
何かを思いついたような海原は、申し訳なさそうに
「数に余裕があれば…一つ頂いて帰ってもよろしいですか?」
「ん?構わないわよ。そんなに気に入ってくれるとは思わなかったわ」
「後でショチトルの見舞いに行くつもりなので、彼女にも一つ食べさせてあげたいなと思いまして」
あの褐色の肌の少女と海原がどういった関係かは知らないし、興味もなかった。
しかし、海原がこのケーキを誰かに食べさせてあげたいと思うほど、気に入ってくれたのは純粋に嬉しかった。

「それで、そっちの二人はどうなのよ!?」
一方通行と土御門の方に視線を向けると、いつの間に取り出したのか、二人は既に二個目を食べ始めている。
「ン…認めるのは癪だがウメェな。甘くねェから俺でも食える」
「あぁ、確かに美味いぜぃ。舞華ほどじゃないけどにゃー」
なんとなく気に食わない言い草だが、気に入ってもらえたようなので文句は言わない。
こんな口ぶりでも彼らにしてみれば褒めている方なのだ。
小さいとはいえ、最終的に一方通行は三個目も食べ、チョコレートケーキは完売した。

一方通行はケーキに満足したのか、普段より僅かに上機嫌な表情でソファで寝ている。
「結標がこんな美味いケーキ作れるってのは意外だったにゃー。それに…」
「バレンタインにこれ程の物を渡したい相手とは…。結標さん、彼氏でも出来たんですか?」
結標の顔がみるみるうちに紅潮していく。

しばらくすると、大切な記憶を思い出すように
「以前、『残骸』を持って逃げようとした私が、アレを破壊しにきたそこのグウタラに負けたのは知っているでしょう?
 目標も目的もなくなっちゃった私は、しばらくビルの屋上で倒れてたんだけど、助けてくれた人がいたのよ。
 その人は、見ず知らずの私を病院へ連れて行ってくれて、見舞いにも来てくれたのよね。
 私とはあまりにも違いすぎて、この人はどんな世界を見てるのかなぁって気になって、
 少しの間でもあの人と同じ世界を見てみたいってのが私の新しい目標になったのよ。
 なぜかいつもボロボロで疲れてて、『不幸だー』って口癖になるほど運が悪いらしいから、
 このケーキで少しでも幸福だって思ってもらえたら…ってね」

(結標がモジモジしてる!?キャラが違いすぎて反応に困るぜぃ)
「結標…女の子してるにゃー。ただ、その相手なんだが…。
 自販機を使えばお釣りが出てこなかったり、違うジュースが出てきたりなんてことはないよな?」
「僕も、結標さんが実はこんなに女の子らしい方だったとは思いませんでしたね。
 ちなみにですが、まさかその方は黒髪のツンツン頭だったりしませんよね?」
どうやらこの二人は、『不幸』という単語だけで思い当たる人物がいるようだ。
海原と土御門は、少し引き攣った笑顔でボソボソ話している。

数秒後、わざとらしく何かを思い出したかのような表情を浮かべた海原は、
「さて…僕はそろそろショチトルの見舞いに行かなくては」
と、チョコレートケーキの入った箱に大事そうに抱え、アジトから出て行ってしまった。

(逃げたな。面倒なことになる前に俺も逃げ…)
土御門が立ち上がろうとすると、結標に肩を掴まれた。
「で、なんでアンタたちそんなことまで知ってんのよ。知り合いなわけ!?
 名前は?どこの学校?携帯の番号は?どこら辺に住んでるのよ?」
まさかこんな身近に関係者がいるとは思わなかった。
暇を見つけては街を歩き、あのツンツン頭を探した自分は何だったのか。
やっと見つけた情報をみすみす逃すわけにはいかないのだ。

(あー。差し支えない程度に教えて、隙を見て逃げるかにゃー)
「名前は上条当麻。学校は俺と同じっつーか同じクラス。携帯の番号は自分で聞け。
 ちなみにカミやんはこの土御門さんのお隣さんなんだ…に゙ゃっ!?」
「さぁ土御門!今からアンタん家行くわよ!
 ついでに私を友達ってことにしていいから紹介しなさい!それじゃ、出発♪」
トラウマを克服した『座標移動』の行動力は凄まじかった。
一瞬で土御門の襟首を掴み、結標と土御門は隠れ家から言葉通り消えた。
この日、とある地下街であちこちで、猫撫で声の男の不気味な悲鳴に震える人々がいたらしい。

「にゃー!こうなったら俺も言っちまうぜぃ!不幸だーーーー」


数日後、異常にライバルが多いことに気づいた結標が隠れ家の隅で、涙目で蹲っていたのはまた別のお話。

 終わり。

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